工程表は、工事の現場管理に欠かせないアイテムです。工事関係者であれは、作成を任される機会もめずらしくなく、どんな目的で活用されるのか、どんな形式で作ればいいのかなどを知っておいて損はありません。
この記事では、工程表の目的や役割、作成方法、作成手順などについて解説します。ぜひ、現場で役立つ工程表の作成に役立ててください。
工事現場で使われる工程表とは?
工程表とは、工事完了までの作業スケジュールが記された管理表です。工期を守るために必要なものなので、工事の規模や種類に関係なく、多くの現場で活用されています。
現場管理だけでなく、取引先とのスケジュール調整や工程の説明などで用いられる場合もあり、工事を進める上でなくてはならない存在です。
工程表と行程表の違いとは?
工程表と同じ読み方をする表として「行程表」があります。工程表は、具体的に工事の作業内容やスケジュールについて詳細に記載したものです。
対する行程表は、目的や目標にたどり着くための方法や、日程、スケジュールなどを大まかに記したものです。ロードマップとも呼ばれ、短期間のプロジェクトよりも長期間のプロジェクトで活用されます。
このように、工程表と行程表はそれぞれ意味や活用シーンが異なるので、作成の際は注意しましょう。
工程表を作成する目的や役割は?
ここからは、なぜ工程表を作成する必要があるのかについて、具体的に解説します。
納期を順守するため
工事を請け負った場合、事前に取引先やお施主様と取り決めておいた納期を守る必要があります。そのためには、納期までに工事が終わるようスケジュールを立てて、しっかり進捗管理しなければなりません。
工程表を用いてスケジュールを細かく管理しておけば、進捗が遅れていても把握や調整がしやすくなります。
関連記事:工程管理とは?建設業で重視される理由・チャート種類・管理方法などを解説
さらに、工程表にマイルストーンを設定することで、作業漏れを防止したり、進捗状況を可視化することができます。
関連記事:【建設業】工程表にマイルストーンを設定する手順やメリット、注意点を解説
タスク管理により工期を短縮するため
工事に必要なタスクを工程表に細かく記載しておけば、全体的なタスク管理がしやすくなります。工事全体の工程とタスクごとの進捗を把握して、効率的に作業を進められるでしょう。状況に応じた人員配置や材料・重機の手配にも役立ちます。
また、工程表を作成する段階で、無駄なタスクに気付ける可能性もあります。工期が短縮できれば、取引先の満足度も高まり、信頼関係の構築にもつながるでしょう。
コストを抑えるため
工事全体のスケジュールやタスク管理ができれば、効率的な人員配置を考えられるため、人件費削減も図れます。材料や重機の手配も効率的に進められるので、コスト管理も容易になるでしょう。
工程ごとに発生するコストをしっかり把握できれば、無駄な人件費や経費を削って、利益を最大化できるようになります。
トラブルを起こさないため
無理な工期の設定やスケジュール設定は、ケガやミスのもとになります。そのため、工程表を作成し、無駄な作業や無理なスケジュールが組まれていないか確認が必要です。
スケジュールやタスク管理を徹底すれば、ミスやトラブルを防げます。万が一トラブルが発生しても、納期までにやるべきことが把握できているため、対処しやすいでしょう。
現場でよく活用される工程表 5種類
前述の通り、工事の現場で活用される工程表には種類があります。ここからは、5種類の工程表について、その特徴やメリットなどを詳しく解説します。
関連記事:主な工程表5種類の特徴とメリット・デメリット
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工程表1. バーチャート工程表
バーチャート工程表は、最も一般的に用いられる工程表です。縦軸にタスクの項目、横軸に日付を示して作成します。
工事全体のスケジュールや工期ごとにかかる日数が一目で分かり、誰でもスケジュールを把握しやすいのが利点です。また、作成も簡単なので、工程が多くても作成に手間取りません。
ただし、それぞれのタスクがどう関係しているのかが分かりにくいので注意が必要です。
以下、バーチャート工程表のメリット・デメリット、作成手順について解説しています。
関連記事:バーチャート工程表とは?メリット・デメリットや作成手順について解説!
工程表2. ガントチャート工程表
ガントチャート工程表は、見た目がバーチャート工程表に似ており、同じく広く使われる工程表です。縦軸にタスク項目を入れるのは同じですが、横軸には進捗率を記入します。
それぞれのタスクごとの進捗状況が分かりやすく、バーチャート工程表と同じく作りやすいのが特徴です。日付も一緒に管理すれば、スケジュール通りにタスクが進んでいるのか確認しやすくなります。
関連記事:ガントチャート工程表とは|バーチャート工程表との違いや作成方法も解説
工程表3. ネットワーク式工程表
ネットワーク式工程表は、〇と矢印で作成される工程表で、全体の流れとタスク毎に必要な日数、タスク同士の関連性が分かりやすいのが特徴です。
1つのタスクを終わらせないと次のタスクが始められないような、ウォーターフォール型の工事の場合に活用されるのが一般的です。タスク管理が容易になり、効率的な工事の進行に役立ちます。
ただし、それぞれのタスクの進捗状況が分かりづらいのが難点です。
以下、ネットワーク式工程表について、概要や作成方法などを解説しています。
関連記事:ネットワーク工程表とは?作成方法や知っておきたい用語・ルールも徹底解説
工程表4. グラフ式工程表
グラフ式工程表は、縦軸は進捗率、横軸に日付を記し、タスクごとに曲線で進捗具合を示した工程表です。バーチャートとガントチャートをまとめたようなグラフですが、その分作成するのも複雑になります。
作業日程とタスクの進捗状況が同時に分かるというメリットがある反面、タスクの関連情報が把握しづらいのはデメリットです。
工程表5. 出来高累計曲線
出来高累計曲線は、工事全体の進捗状況を管理するのに活用され、バナナ曲線などとも呼ばれます。縦軸に進捗率、横軸に日付を記載し、曲線で進捗を示す表です。
早める目安となる「上方許容限界曲線」と、遅れの許容範囲を示す「下方許容限界曲線」を記入するため、工期に対する作業の遅れに気づきやすく、早めに対処できます。
ただし、細かいタスクごとの進捗管理などには向きません。
工程表を作成する代表的な方法
現場管理に活用する工程表は、手書き、エクセル・ワード、専用ツールのいずれかでします。以下では、それぞれの作成方法について詳しく見ていきましょう。
工程表の作成方法1. 手書き
紙に手書きで書く方法でも、工程表は作成できます。自由なスタイルで書けるほか、手を動かして作成するので、頭に入り記憶に残りやすいのも特徴です。紙とペンさえあれば簡単に作成できるため、パソコンなどの機器がない現場で用いられやすい方法です。
工程表の作成方法2. エクセル・ワード
Microsoftのエクセル、ワードでは、工程表のテンプレートが無料で使えます。色やフォントといった要素を入れることで、手書きよりもきれいで見やすい表を作成できるでしょう。
また、エクセルやワードで作成した工程表は、修正やデータの保存もしやすく、管理が簡単です。紙に手書きしたものだと、汚れや破れなどで見えにくくなってしまう可能性がありますが、エクセルやワードのデータであれば、その心配もありません。
以下、工程表をエクセルやワードで作成する方法や注意点、メリット・デメリットも解説しています。
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工程表の作成方法3. 専用ツール
昨今では、工程表が作成できる専用ツールが登場しています。工程表だけでなく、顧客情報や案件情報、見積り作成、労務費管理などを一元管理できるツールやシステムがあります。
操作が簡単で、工程表もスムーズに作成できるものが多いほか、オンライン上で共有しやすいのはメリットです。また、リアルタイムで情報更新が可能なため、トラブルが起ったときの対処にも役立ちます。
効果的な工程表の作成手順
現場で活用したい工程表と作成方法が決まったら、実際に作成していきます。作成する際には、以下の5ステップで進めていくとよいでしょう。
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ステップ1. 工事全体のタスクを把握する
工程表を作成する際には、先に工事を完了するまでに必要なタスクを把握しておく必要があります。着工から納期までの期間や日付、タスクの数、タスク毎の内容など、工事の全体像をしっかり把握しておきましょう。
ステップ2. タスクの優先度や関連性を把握する
工事の全体像を把握したら、どのタスクから始めるべきなのか、優先順位を決めます。タスクによっては、他のタスクが終わらないと進められないものや、単独で進められるものがあるので、それぞれの関係性を確認しましょう。
効果的に活用できる工程表を作成するには、タスクをどの順番で進めていくのか、それぞれのタスクにどれくらいの日数が必要なのかといった、詳細な把握が必要です。
ステップ3. 施工スケジュールを決める
タスクの順番を考えたら、納期までの施工スケジュールを決めます。優先度の高いタスクや関連性のあるタスクとの順番を考えながら、最適なスケジュールを立てましょう。
それぞれのタスクに要する日数はあまり余計に取らず、最低限、トラブルや遅れに対応するために必要な分の日数を取っておくのが大事です。
ステップ4. 工程表を作成する
工事の具体的なスケジュールが組めたら、工程表の作成方法や種類を決め、作成します。
たとえば、各タスクの進捗をしっかり把握したいなら「ガントチャート工程表」、納期を順守したいなら「出来高累計曲線」など、目的に適した種類を選択してください。場合によっては組み合わせて活用してみましょう。
ステップ5. 工程表を共有・周知する
工程表を作成したら、取引先や協力会社、現場作業員など関係者に共有・周知しましょう。工程表は、工事の流れやスケジュールを説明する際にあると便利です。
事前に工程表を共有しておき、関係者がスケジュールを把握しておけば、認識違いなどのトラブル回避につながります。また、指摘があれば早い段階で修正対応できるのもメリットです。
工程表を作成・活用する際の注意点
工程表を作成する際には、細かな情報を入れすぎないように注意しましょう。あまりいろいろな情報を詰め込みすぎると、かえって見にくくなってしまいます。
工程表には、タスクやスケジュールの進捗管理などにとどめ、その他の管理は他のツールと併用して見やすさを優先することが大切です。
工程表は専用ツールがおすすめ!選び方は?
工程表の作成には3種類方法がありますが、特に専用ツールの活用がおすすめです。なかにはリアルタイムで進捗が反映されるものもあり、現場管理がしやすくなります。
また、工程表だけでなく、現場作業に関する業務を一元管理できるものが便利です。選ぶ際には、サポート体制、操作性、既存ツールとの互換性などを見て検討材料にしてください。
まとめ
工事を納期に合わせてスムーズに進めるためには、工程表は欠かせません。現場によって、重点的に管理したい箇所は異なるため、現場での活用目的に応じて工程表の種類を使い分けましょう。
また、頻繁に工程表の作成業務が発生するなら、専用ツールの導入がおすすめです。クラウド型建設プロジェクト管理サービス「ANDPAD(アンドパッド)」なら、工程表のほか、図面や写真などの資料管理や、受発注など施工に関する業務を一元管理することが可能です。
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