建設DXとは、建設業界においてデジタル技術を活用し、生産性向上や業務効率化を実現する取り組みです。この記事では、建設DXの概要や取り組み状況、重要視される背景、取り組むメリット、導入時の課題について解説します。また、デジタル技術の種類や進める手順についても解説するので、ぜひお役立てください。
「建設DX」とは何か
建設DXとは、建設業界においてAI、IoT、ICTなどのデジタル技術を効果的に活用し、生産プロセスを最適化、効率化する取り組みです。このデジタル技術の活用を通じて、建設業界が直面している人手不足や技術継承といった課題の解決を図り、業界全体の変革を目指しています。
そもそもDXとは?
DXは、デジタルトランスフォーメーション(Digital Transformation)の略称です。企業がデジタル技術を活用してビジネスモデルを変革し、業務効率化を推進する取り組みのことを指します。
建設DXの取り組み状況
総務省の「令和3年版情報通信白書」には、建設業界のDXへの取り組み状況について、次のようなデータが示されています。
2018年度以前から実施している(13.5%)
2019年度から実施している(3.6%)
2020年度から実施している(3.6%)
実施していない、今後実施を検討(18.9%)
実施していない、今後も予定なし(60.5%)
このデータから、約8割の企業がDXを実施していない状況であり、建設業界においてDXの取り組みが十分に進んでいないことが明らかになっています。
参考:総務省|令和3年版 情報通信白書|我が国におけるデジタル化の取組状況
建設DXが重要視される背景
建設業界の課題を解決する手段として、建設DXの重要性が高まっています。以下では、主な4つの課題について解説します。
人材不足・高齢化
建設業界における深刻な課題の1つが人材不足です。国土交通省の「最近の建設業を巡る状況について」によると、建設業の就業者数は1997年のピーク時には685万人でしたが、2020年には492万人まで減少しています。
また、同報告では就業者の年齢構成についても、55歳以上が35.5%を占める一方で、29歳以下はわずか12.0%にとどまっており、業界全体で急速な高齢化が進んでいることが明らかになっています。
働き方改革による時間外労働の上限規制
働き方改革関連法による労働基準法の改正により、2019年より時間外労働に上限規制が設けられました。建設業界では人手不足による長時間労働が常態化していたため、5年間の猶予期間が設けられていましたが、2024年4月から適用が開始されています。
この規制により、時間外労働は原則として月45時間、年間360時間を上限とすることが定められ、業界全体で働き方の見直しが求められています。
低い労働生産性
建設業は、他業種と比較して労働生産性が低いとされています。その要因として、各現場で作業環境が異なるために、業務の標準化が困難であることや、人手不足や高齢化の進行により、適切な人材配置ができないことなどが挙げられます。これらの課題に対して、デジタル技術を活用した業務効率化が求められています。
現場・対面主義の風潮
建設業界では、現場に足を運ぶ必要性や作業指示書・図面などの共有が必要であることから、対面主義の風潮が根強く残っています。このような特性により、他業界で進むテレワークのような新しい働き方の導入も進まない状況です。
建設DXに取り組むメリット
建設DXへの取り組みは、建設業界が直面するさまざまな課題を解決する手段となります。以下は、建設DXに取り組んだ場合の主な5つのメリットです。
業務効率化・コスト削減が期待できる
デジタル技術を活用することで、建設現場における作業の効率化や、バックオフィス業務の生産性向上を実現できます。業務プロセスの最適化だけでなく、人件費の削減やペーパーレス化によるコスト削減も期待できます。
技術・ノウハウの継承に役立つ
ベテランの職人が持つ技術やノウハウを数値化したり、AIによる映像解析を活用したりすることで、これまで属人的だった技術を組織の資産として蓄積できます。作業の標準化が実現できるほか、若手への技術継承もスムーズに行えるようになります。
新しい価値の創造につながる
DXを進めることで、現場やバックオフィスにおける、さまざまなデータを蓄積・分析できるようになります。これらのデータを活用することで、顧客のニーズをより正確に把握し、効果的な戦略立案に役立てることが可能です。さらに、AIやIoTなどのデジタル技術を活用することで、新しい商品やサービスの開発もできるようになります。
安全性が向上する
建設業は危険を伴う作業も多く含まれますが、現場でドローンやロボットなどを活用することで、作業の安全性を大幅に向上させることができます。特に、点検、測量、配送といった業務において、効果的な活用が期待されます。
働き方改革を促進できる
デジタル技術を活用することで生産性が向上し、建設業界の課題である長時間労働の是正を図ることができます。また、危険な作業にドローンやロボットを導入することで労働負担が軽減され、作業員の健康状態や労働環境の改善にもつながります。
建設DXを導入する際に直面する課題
建設DXを導入する際には、主に3つの課題があります。以下で、資金面、人材面、そして現場特有の課題について解説します。
初期投資がかかる
建設業界のDX推進には、重機のIoT化やタブレット端末の導入、ドローンやロボットの活用など、さまざまな設備投資が必要です。いずれも高額な初期投資を必要とするため、特に中小企業にとって大きな負担となっています。
DXを推進する人材がいない
社内にDXを推進できる人材が不足していることも深刻な問題です。デジタル技術を導入しても、それを使いこなせる人材がいなければ十分な効果は得られません。大手企業では外部からの人材確保も行われていますが、企業規模によってはそれも難しい状況です。
現場作業へのDX導入が難しい
建設業は目視による作業確認や紙の図面管理など、アナログな作業が今なお多く存在する業界です。このような業界特性から、デジタル技術の導入がスムーズに進みにくい状況となっています。
建設DXで使われるデジタル技術の種類
建設DXでは、さまざまなデジタル技術が活用されています。主に使われる7つの技術について解説します。
AI(=人工知能)
AIはArtificial Intelligenceの略で、人間の知性や知覚をコンピューターで再現する技術です。建設業界では、建設現場の画像や映像を分析して進捗状況を可視化したり、建築物の老朽化を自動で検知したりする用途で活用されています。さらに、建築物の構造設計における安全性の判定や、複雑な構造計算にも利用され、より精度の高い建設作業を可能にしています。
ICT(=情報通信技術)・ICT建機
ICTはInformation and Communication Technologyの略で、通信技術を活用したコミュニケーション技術です。建設現場では、タブレットやスマートフォンを用いた情報共有や、建設機械の遠隔操作、監視カメラシステムによる現場管理などに活用されています。
また、重機にICTを搭載したICT建機も普及しており、位置情報を活用した自動制御や、作業の効率化に貢献しています。
IoT(=モノのインターネット)
IoTはInternet of Thingsの略で、建設機械や電化製品をネットワークに接続し、データを収集・活用する技術です。建設現場では、作業員の心拍数などを計測するウェアラブルデバイスや、現場の温度・湿度・位置情報を取得するセンサー、重機との接触事故を防止するシステムなどに活用されています。
また、機械の稼働状況をリアルタイムで監視することで、効率的な現場管理を実現しています。
クラウドサービス
クラウドサービスは、インターネットを経由して各種サービスを利用する技術です。主に、建設現場とバックオフィス間、社外の関係者間での資料や図面の共有、データの一元管理に使われます。契約書などの書類作成ツールや施工工程の管理ツール、建設機械の稼働状況や位置の管理ツールといった、さまざまな用途で活用されています。
ドローン(無人航空機)
ドローンは遠隔操作できる無人航空機です。建設現場では、高所や斜面など危険な場所での点検作業や、広範囲の測量作業に活用されています。特にレーザー3D測量では、上空から建設現場全体を立体的にスキャンすることで、正確な地形データを短時間で取得することができます。
BIM(ビム)/CIM(シム)
BIMはBuilding Information Modeling、CIMはConstruction Information Modelingの略で、3Dモデルデータを作成・活用する技術です。BIMは主に建築領域、CIMは土木領域で活用されており、設計から施工、維持管理までの一連のプロセスを3次元モデルで管理することができます。
5G(第5世代通信)
5Gは、高速で大容量の通信ができる第5世代移動通信システムです。建設現場では、遠方への3D映像の送信や、建設機械を遠隔操作する際の通信の途切れや遅延の改善に活用されています。また、1つの基地局から多数の機器を同時に接続できるため、現場に設置された多くのカメラやセンサーからのデータを、効率的に収集することが可能です。
建設DXを進める手順
建設DXを効果的に進めるには、段階的なアプローチと戦略的な計画が必要です。まずは現場の声から課題を明確にし、DXの目的とビジョンを設定して全社で共有します。次に、SWOT分析などで、自社の状況を分析し戦略を策定し、デジタル人材の確保や組織体制の確立を行います。
プロジェクトの優先順位や目標期限など推進プロセスが定まったら、1つの事業所から段階的に着手するとよいでしょう。定期的にKPIで効果を測定し、継続的な改善を進めることが重要です。
建設DXの成功事例
以下では、建設DXに成功した3社の事例を紹介します。
建設DXで生産性・営業効率が向上、1人年間3億円の売上げが可能に
輝龍株式会社様では、以前は紙での資料管理が主流で、紛失や持ち忘れのリスクが存在し、カラーコピー代や印刷作業の負担も大きな課題でした。デジタル化の推進により、紙の使用量とコピー代を大幅に削減し、年間120万円のコスト削減を実現しました。事務作業の8~9割をスマートフォンで完結できるようになり、営業効率も向上しています。
週休3日も実現可能、建設DXで無駄な現場訪問をゼロに
株式会社コラボハウス様は、従来は職人からの電話問い合わせが頻繁で、遠隔臨場システムも十分に活用できていませんでした。ANDPADの導入により、協力会社との情報共有がスムーズになり、現場訪問を大幅に削減できました。また、「ANDPAD 遠隔臨場」の活用により、現場の画像を関係者全員と共有できるようになりました。
建設DXで”第2創業”を推進、協力会社と連携して生産性向上
株式会社創伸建設様では、膨大な写真管理や資料の個別送付など、協力会社との情報共有に課題を抱えていました。電子黒板を利用し、写真管理業務の7割を効率化することができました。さらに、ANDPADでの工事関連資料の一元管理により、協力会社とのやり取りをスマートフォンで完結できるようになりました。
建設DXを進めるならANDPAD(アンドパッド)
前述した成功事例から、建設DXの効果は明らかです。紙の資料管理からの脱却によるコスト削減、スマートフォンでの事務作業の完結、写真管理業務の効率化など、具体的な成果が表れています。
建設業界が直面する業務効率化、ベテラン職人の技術やノウハウの継承、働き方改革という課題に対し、クラウド型建設プロジェクト管理サービス「ANDPAD(アンドパッド)」は有効な手段となります。
まとめ
建設DXとは、デジタル技術を活用して生産プロセスを最適化する取り組みです。建設業界では、人材不足や技術継承、働き方改革などの課題解決手段として、その重要性が高まっており、導入企業では業務効率化やコスト削減などの具体的な成果が表れています。
クラウド型建設プロジェクト管理サービス「ANDPAD(アンドパッド)」は、シェアNo.1のサービスとして、業種を問わず幅広い導入実績があります。使いやすいUI・UXを実現する高い開発力と、年間数千回を超える導入説明会を実施する手厚いサポート体制が特徴です。建設DXの導入をお考えの際は、ぜひお気軽にお問い合わせください。