「自社の粗利率は適正なのか」「売上はあるのに利益が残らない」と感じている建設会社の経営者や管理者は少なくありません。
本記事では、建設業における粗利の基本知識と計算方法を紹介した上で、粗利率が低くなる原因と具体的な改善策を解説します。工事単位で粗利を管理し、安定した利益体質を築くためにお役立てください。
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建設業の粗利は売上と原価の差額
建設業の粗利とは、完成工事高(売上高)から完成工事原価を差し引いた金額です。
ここでは粗利に関する基本用語と、建設業で粗利が重視される理由を整理します。
- 粗利と粗利率の違い
- 粗利と営業利益の違い
- 建設業で粗利が重要な理由
- 粗利計算で差し引く工事原価
1. 粗利と粗利率の違い
粗利は「売上から原価を引いた金額」、粗利率は「売上に占める粗利の割合(%)」を指します。 たとえば、完成工事高1,000万円で粗利が250万円なら、粗利率は25%です。金額と割合では意味が異なるため、両方の指標を使い分けて収益を判断しましょう。
2. 粗利と営業利益の違い
粗利から販売費及び一般管理費(販管費)を差し引いたものが営業利益です。現場で発生する材料費や労務費は工事原価に含まれ、本社の事務員給与や家賃は販管費として扱われます。 粗利が高くても販管費が大きければ営業利益は残らないため、両者を分けて把握する必要があります。
3. 建設業で粗利が重要な理由
建設業は工事の種類や規模によって原価の内訳が大きく変動します。売上だけを追うと、原価超過による赤字工事を見落としかねません。 工事ごとに粗利を管理すれば、採算の良い案件と悪い案件を早期に識別でき、経営資源の配分を最適化できます。
関連記事:建設業における利益率の理想は?計算方法や最近の推移、利益向上のポイントを解説
4. 粗利計算で差し引く工事原価
建設業の工事原価は、主に以下の4つで構成されます。
- 材料費:資材の購入費
- 労務費:現場作業員の賃金・手当
- 外注費:協力会社への発注費用
- 現場経費:仮設費・機械損料・現場事務所の維持費など
何を原価に含めるかによって粗利は変わるため、自社の原価区分を明確にしておくことが重要です。
関連記事:工事原価とは?4つの要素や建設業会計における注意点を解説
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建設業の粗利と粗利率の計算方法
粗利と粗利率はそれぞれ簡単な計算式で求められます。ここでは、計算式だけではなく具体的な数値例とあわせて解説します。
- 粗利を求める計算式
- 粗利率を求める計算式
- 1,000万円工事の計算例
- 人件費を原価に含める考え方
1. 粗利を求める計算式
粗利の計算式は以下のとおりです。
粗利=完成工事高(売上高)−完成工事原価
完成工事高とは、引き渡しが完了した工事の請負金額を指します。完成工事原価には材料費・労務費・外注費・現場経費が含まれ、これらの合計を売上から差し引いた金額が粗利です。粗利が大きいほど、販管費や利益に回せる余力があることを意味します。
2. 粗利率を求める計算式
粗利率の計算式は以下のとおりです。
粗利率(%)=粗利÷完成工事高×100
粗利率を使えば、請負金額が異なる工事同士でも収益性を同じ基準で比較できます。たとえば、500万円の工事と5,000万円の工事では粗利額に大きな差が生じます。一方、粗利率に換算すれば、どちらの案件の収益性が高いかを比較できます。
3. 1,000万円工事の計算例
完成工事高1,000万円、完成工事原価750万円の工事を例に計算します。
項目 | 完成工事高 | 完成工事原価 | 粗利 | 粗利率 |
金額 | 1,000万円 | 750万円 | 250万円 | 25% |
ここから販管費を差し引いた金額が営業利益となるため、粗利率25%がそのまま最終利益率ではない点に注意しましょう。
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4. 人件費を原価に含める考え方
現場で直接作業に従事する技能者の賃金は労務費として工事原価に算入し、本社の管理部門や営業担当の給与は販管費として扱います。この区分を誤ると粗利率の数値がずれ、工事ごとの採算判断を見誤る原因になるため注意が必要です。
関連記事:建設業の労務費とは?人件費との違いや計算方法、管理に使えるツールも解説
建設業の粗利率の目安と業界平均
建設業の粗利率は業種や企業規模によって差があります。平均値をそのまま目標にせず、自社に合った目標を設定することが大切です。
業種別・企業規模別の平均粗利率
一般財団法人建設業情報管理センターの令和5年度「建設業の経営分析」によると、建設業全体の平均粗利率はおおむね20〜25%前後で推移しています。ただし、業種や立場によって水準は異なります。
区分 | 粗利率の傾向 |
総合建設業(元請) | 外注費比率が高く、粗利率は低めになりやすい |
専門工事業(協力会社) | 材料費比率が低い分、粗利率は高めになる傾向 |
大手企業 | スケールメリットがある一方、間接費も大きい |
中小企業 | 案件ごとの原価変動が経営に与える影響が大きい |
関連記事:工務店の平均利益率・目安とは?利益率改善につなげる4つの施策について解説
参考:一般財団法人建設業情報管理センター「建設業の経営分析(令和5年度)概要版」
粗利率と営業利益率の違い
粗利率は売上から工事原価を引いた割合です。一方、営業利益率は粗利からさらに販管費を引いた割合です。たとえば、粗利率が25%でも販管費率が20%であれば、営業利益率は5%にとどまります。
粗利率だけを見て「十分な利益が出ている」と判断すると、本社経費を賄えていない実態を見落としかねません。特に建設業では、現場ごとの粗利率は高くても、管理部門の人件費や事務所維持費といった販管費が利益を圧迫しているケースがあります。 経営の健全性を評価するには、粗利率と営業利益率の両方を定期的に確認しましょう。
自社に必要な粗利率を逆算する考え方
自社の販管費と目標営業利益から必要な粗利を逆算する方法が有効です。
必要粗利額=販管費+目標営業利益
たとえば、年間の販管費が3,000万円で目標営業利益を500万円に設定する場合、必要な粗利額は3,500万円です。年間売上見込みが1億4,000万円であれば、必要粗利率は25%になります。 この考え方を工事単位に落とし込めば、受注時点で必要な粗利率を判断できます。
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建設業の粗利率が低くなる4つの原因
粗利率の低下には共通するパターンがあります。自社に当てはまる原因を特定し、次章の改善策につなげましょう。
- 材料費・人件費の高騰による原価圧迫
- 見積精度の不足と追加工事の請求漏れ
- 原価管理の属人化と予実把握の遅れ
- 価格競争による受注単価の低下
1. 材料費・人件費の高騰による原価圧迫
建設資材の価格上昇や職人不足による労務単価の高騰は粗利率が低くなる原因のひとつです。見積時点の単価で受注しても、着工後に仕入れ価格が上がれば、その差額分だけ粗利は圧縮されます。
たとえば、鉄骨やコンクリートの単価が見積時から10%上昇した場合、材料費が数十万円単位で増加し、当初見込んでいた粗利を大きく下回る可能性があります。工期が長い工事ほど変動リスクが大きくなるため、資材価格の推移を定期的に確認する習慣が必要です。
2. 見積精度の不足と追加工事の請求漏れ
見積段階での数量の拾い漏れや単価設定の誤りは、着工前から粗利を削る原因になります。現場調査が不十分なまま概算で見積もると、実際の施工時に想定外の費用が発生しやすくなります。
さらに、施工中に発生した追加・変更工事を口頭で承認し、そのまま請求しないケースも粗利低下の大きな要因です。追加工事は発生のつど書面で金額を確定し、請求漏れを防ぐ運用が求められます。
関連記事:工事見積書の書き方とは?記載項目や内訳、効率化の方法を解説
3. 原価管理の属人化と予実把握の遅れ
原価集計をExcelや紙で行い、特定の担当者しか状況を把握できない体制では、予算超過の発見が遅れがちです。担当者が不在のときに原価状況を確認できず、判断が後回しになるケースも少なくありません。
結果として、完工後に初めて赤字が判明し、対策を打てないまま次の工事に進んでしまう悪循環が生まれます。工事の進行中に誰でも予実を確認できる管理体制の構築が重要です。
関連記事:建設業の工事原価管理とは?概要や重要性、適切に工事原価管理するメリットを解説
4. 価格競争による受注単価の低下
相見積もりで安い金額を提示し続けると、受注単価が下がり粗利率も低下します。一度下げた価格は元に戻しにくく、低単価での受注が常態化すると経営を圧迫しかねません。
自社の技術力や施工品質、アフターサービスといった価格以外の強みを訴求し、適正な価格で受注できる営業体制を整えることも粗利改善の一つの方法です。
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建設業の粗利率を改善する5つの方法
粗利率の改善には、受注前から完工後までの各段階で対策を講じる必要があります。前章で挙げた原因を踏まえ、実務に取り入れやすい5つの方法を紹介します。
1. 販管費と目標営業利益から必要粗利率を設定する
前章で解説した逆算の考え方を活用し、まず会社全体の必要粗利率を明確にしましょう。目標が数値として定まっていれば、個別工事の受注可否を判断する基準になります。
たとえば「粗利率22%を下回る案件は原則受注しない」というラインを設けると、営業段階で採算の悪い案件をふるいにかけられます。基準がない状態では売上重視の受注判断に偏りやすいため、全社で共有できる数値目標を設定することが第一歩です。
2. 着工前に実行予算を作成して目標粗利を確保する
受注後、着工前の段階で実行予算を作成し、見積粗利との差を確認しましょう。見積時は概算単価で計上していた項目を、実行予算では実際の発注先や数量に基づいて精緻化するため、より現実に近い粗利を把握できます。
想定よりも原価が膨らんでいれば、発注先の見直しや仕様の調整を着工前に行えます。実行予算なしに施工を開始すると、コストの基準がないまま支出が進み、粗利低下に気づけません。
関連記事:実行予算とは?建設業における実行予算の作成目的や作成する際の注意点などを解説
3. 施工中に予実管理で粗利の着地見込みを確認する
施工が始まったら、月次や工程の区切りごとに発生原価と実行予算を比較しましょう。確認する際は、発注済みの金額だけでなく、未発注分の見込み原価も加えた「着地予想原価」で粗利を予測することがポイントです。
差異が生じた時点で原因を分析すれば、資材の発注先変更や工程の見直しなど、完工前に具体的な対策を打てます。完工後の振り返りだけでは手遅れになるため、施工中の定期的なチェックが欠かせません。
4. 材料費・外注費を見直して原価を適正化する
主要な資材や協力会社への発注は、定期的に相見積もりを取って単価を見直すことが効果的です。同じ協力会社に長年発注し続けていると、市場価格との乖離が生じている場合があります。
発注ロットの集約や支払条件の交渉により、原価を数%削減できるケースもあります。ただし、品質や安全性を損なう過度なコストカットはかえって手戻りを招くため、バランスを意識しましょう。
5. 追加変更工事の承認・請求フローを整備する
追加・変更工事が発生した際は、金額と工期への影響を書面で取引先やお施主様に提示し、承認を得てから施工に着手するフローを徹底します。
口頭のみの合意では「言った・言わない」のトラブルにつながりやすく、結果として追加費用を請求できないまま粗利が削られます。 見積書の再提出から承認、請求までを一連の業務として仕組み化し、担当者が変わっても同じ手順で対応できる体制を整えることが重要です。
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粗利率の改善に原価管理システムの活用が有効な理由
改善策を継続的に実行するには、手作業での管理に限界があります。原価管理システムを活用すれば、粗利の把握から改善までのサイクルを効率よく回せます。
1. 工事ごとの原価をリアルタイムに把握できる
原価管理システムでは、発注・請求データが入力されると自動で工事別の原価に反映されます。Excelで月末にまとめて集計する方法と異なり、日々の支出状況をリアルタイムに確認できるため、予算超過の兆候を早い段階で察知できます。
2. 予実差異の早期発見で赤字工事を未然に防げる
実行予算と発生原価の差異をシステムが自動で算出し、一定の乖離があればアラートで通知する機能を備えた製品もあります。「完工してから赤字に気づく」という事態を防ぎ、施工中に軌道修正を行える体制が整います。
3. 蓄積データを次の見積精度向上に活かせる
過去の工事データが蓄積されると、工種ごとの実績単価や原価率の傾向を分析できるようになります。新規案件の見積時に実績データを参照すれば、経験や勘に頼らない精度の高い積算が可能です。見積精度の向上は、受注時点の粗利確保に直結します。
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建設業の粗利に関するよくある質問
建設業の粗利率は何パーセントが理想ですか?
業界平均は20〜25%前後ですが、業種や企業規模によって適正値は異なります。自社の販管費と目標営業利益から必要粗利率を逆算し、その数値を基準にすることをおすすめします。
粗利に人件費は含まれますか?
現場作業員の賃金は「労務費」として工事原価に含まれ、粗利の計算で差し引かれます。本社の管理部門や営業担当の給与は「販管費」に該当し、粗利の計算には含まれません。
1,000万円の工事でいくら利益が出ますか?
粗利率25%で計算すると粗利は250万円です。ここから販管費を差し引いた金額が営業利益になります。仮に販管費の配賦額が150万円であれば、営業利益は100万円です。
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ANDPADを活用した粗利改善の導入事例
クラウド型建設プロジェクト管理サービス『ANDPAD』を活用し、粗利率の改善を実現した2社の事例を紹介します。
収支の透明化で粗利率5〜10%改善【大規模修繕】
ビルやマンションの大規模修繕工事を手がける株式会社タカラベでは、案件ごとの収支管理が不十分で、粗利計算に実態との差異が生じるケースが課題でした。たとえば、アフターメンテナンスで追加費用が発生しても、その情報が社内で共有されず、実際の粗利がゼロにもかかわらず50%と誤って認識されることがあったといいます。
『ANDPAD引合粗利管理』の導入後は、物件ごとに追加工事も含めた一連の収支をまとめて管理するルールを整備しました。収支が透明化されたことで、発注元金と適正な発注金額の差が明確になり、個人の裁量に任せていた仕入れを見直せるようになりました。その結果、粗利率が5〜10%改善しています。
関連記事:粗利率5~10%改善を実現した、大規模修繕の「ビジネス解像度向上」と「組織変革」の軌跡
見積もり精度の向上で粗利率が改善【店舗内装】
店舗内装工事を手がける株式会社玄翁では、『ANDPAD引合粗利管理』で過去の実績データを参照しながら積算できる環境を整備しました。見積作成時間を従来の約3分の1に短縮し、受注時点から粗利を確保できる体制を構築しています。
参考:ANDPADの各機能を活用し、店舗施工における一連の流れを効率化、粗利率向上を実現
工事ごとの粗利を「見える化」するならANDPAD
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「売上はあるのに手元に利益が残らない」「完工するまで最終粗利が分からない」という課題を解消したい方は、ぜひANDPADの引合粗利管理をご検討ください。
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ANDPADには顧客管理から粗利・原価管理まで一元管理できる「引合粗利管理機能」があります。ご利用企業様における具体的な活用方法・導入効果をまとめた事例集をご紹介しています。
まとめ
建設業の粗利率の目安はおおむね20〜25%前後ですが、業種や企業規模によって適正値は異なります。業界平均をそのまま目標にせず、自社の販管費と目標営業利益から必要な粗利率を逆算することが重要です。 粗利率低下の主な原因には、資材・人件費の高騰、見積精度の不足、原価管理の属人化、価格競争の4つがあります。改善に向けては、目標粗利率の設定から実行予算の作成、予実管理、追加変更工事の請求フロー整備まで段階的に取り組みましょう。
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