株式会社タカラベのご紹介
ビルやマンションの大規模修繕工事をメインに、塗装・防水工事、内装仕上げ工事などを手がける株式会社タカラベは、1999年に設立された。本社は東京都板橋区で、施工エリアは東京都、千葉県、埼玉県、神奈川県の首都圏が中心。案件により、近隣の県も対応している。案件の半分以上は、元請けとして請け負い、公共工事については、板橋区の学校、図書館、地区センターなども請け負っている。従業員数19名で、防水や雨漏り補修などの小規模工事も含め、年間約1000件もの工事に対応している。
2017年にANDPAD施工管理を、その後、2019年から2020年にかけてANDPAD引合粗利管理を導入した。主な目的は、情報の属人化を防ぎ、ビジネスの解像度を高めることだった。導入後は、現場ごとのチャット機能が効果的に活用され、情報共有の効率化を実現した。また、経済活動の可視化が進み、適正な発注金額の算出や経費管理の改善が達成されたという。
成果を出すまでの具体的な経緯について、同社常務取締役の佐藤様に話を聞いた。
写真と資料をANDPADで一元管理、情報の属人化を解消
同社ではANDPAD導入以前、情報管理は帳簿や個人PCの表計算ソフト、そして個々人の記憶を頼りに運用されていた。この属人的な情報をどのように会社全体で共有するかが課題であり、その解決策として「ANDPADの施工管理機能に着目し、すぐに導入すべきだと直感的に判断した」と佐藤常務は話す。
特に属人的になりやすいのは、顧客とのやりとりの部分である。この点について、ANDPAD施工管理を導入したことで、現場ごとのチャット機能が活用され、情報をチャット上に残すことが可能となった。これにより、従来属人的だった情報を全体で共有する仕組みが構築された。
顧客とのやりとりには、見積もりや現場での軽微な変更も含まれる。例えば、現場監督や営業が顧客と直接話し合い、変更が生じた場合、その情報が個々人の記憶にとどまることが多かった。こうした情報が他の関係者に共有されないまま、該当者が退職するなどの事態が発生すると、過去のやりとりが不明瞭になり、クレームの原因となる可能性があった。そのため、情報の属人化を防ぐ必要性があった。当時は年間500~600件の工事を少人数でおこなっていたため、属人的な情報管理がもたらすリスクを強く感じていた。そこで、リスクヘッジとしてクラウドで全社に情報共有できるANDPADを導入した。
写真の管理については、従来、デジカメで撮影した写真をSDカードからパソコンに移し、社内サーバーに保存していた。現場ごとにフォルダを作成し、写真を格納するというルールを設けていた。しかし、容量に限界があるため、画像解像度を落とすなど加工の手間が生じていた。ANDPAD導入後は、そうした手順を省略してアップロードできるようになり、フォルダ分けによるルール化で、現場ごとの情報が整理され、必要な情報に容易にアクセスできるようになった。
写真撮影は、現地調査から始まり、工事の施工状況、仕上がりまでを記録する。撮影枚数に特に上限は設けていない。大規模修繕の場合、調査だけで150~200枚、工事全体では最低でも300枚以上の写真が必要になる。以前はデジカメで撮影し、帰社後にサーバーへ保存していたが、写真がきちんと整理されておらず、どの工事の写真かを探すだけでも時間がかかるケースが多かった。
ANDPAD導入により、現場監督や職人がタブレットやスマートフォンで撮影し、直接アップロードするようになり、写真整理のタイムラグがなくなり、リアルタイムで写真を確認できるようになった。また、写真の格納場所がルール化されたことで、必要な写真を容易に探せるようになった。これにより、写真管理の手間が大幅に効率化された。
資料に関しても、現在は仕様書、図面、注文書などをANDPADで共有するようにしている。例えば、図面は1現場で最低でも10枚、多い場合は40~50枚になる。以前は紙で管理しており、コピーしてファイルで保管していたため、ラベル付けの手間がかかっていた。現在は、コピー時にスキャンをしてデータ化し、ANDPADに格納している。必要な図面だけを印刷し、それ以外はデータ管理することで効率化が図られた。
ANDPAD引合粗利管理で経済活動を透明化、粗利率が5~10%改善
施工管理の効率化を経て、次は情報管理の必要性が高まった。特に、社内の経済活動の可視化が課題となっていた。当時、ERPシステム(基幹系情報システム)導入も検討したが、設計段階での変更が多く、コストだけがかさむという問題があった。
そんな中、2019年頃にANDPAD引合粗利管理の紹介を受けた。そして2020年頃、コロナ禍で会社の経済活動の把握と共有が急務となった。ANDPAD施工管理では、地図上で現場の位置が確認できるが、そこで何が行われたかまでは把握できない。ANDPAD引合粗利管理を導入することで、その現場で、どんな顧客と、どんな仕事をしたのかという経済活動のコンテクスト(文脈)まで把握でき、より詳細な情報が得られるようになった。これが「ビジネスの解像度を高める」という点で最も重要だった。
さらに、顧客管理において、過去の工事情報は把握できるものの、金額、担当者、具体的な作業内容までは不明確な点が課題で、特に紙面で処理していたアフターメンテナンスに関する収支管理が不十分であった。例えば、10万円の工事を受注し、初期工事で5万円の費用がかかった場合、残りの5万円が粗利として残る。後日クレームが発生し、追加で5万円かかったとしても、その費用が共有されず、実際の粗利はゼロなのに50%と誤って認識されるケースがあった。
そこで、ANDPAD引合粗利管理を活用して、同一案件に対する複数処理を行うようにした。例えば、大規模修繕工事などの大きな案件に対し、追加工事を紐づけて管理する。以前は、大規模修繕工事と、それに付随する小規模な工事(網戸の修理など)を別々の案件として扱っていた。そのため、1年間の経済活動における収支が不明確であった。
現在では、物件ごとに一連の工事をまとめて管理するようにルール化したことで、ブラックボックス化していたアフターメンテナンスの詳細が透明化され、情報共有が容易になった。
こうした取り組みにより、粗利率が5~10%改善した。主な要因は、仕入れの見直しである。発注元金と適正な発注金額の差が明確になり、個人の裁量に任せていた部分を会社全体で管理できるようになった。これにより、同じ工事を同じ業者に依頼した場合でも、結果にばらつきがある場合は、協力会社の選定を見直す必要性も判断できるようになった。また、突発的に資材を購入するといった、不要な経費も削減できた。
顧客・従業員の満足度向上を実現
ANDPAD導入にあたり、社内で運用委員会を設立し、運用のルール作りを徹底した。特に、ビジネスの解像度を上げるという目的を達成するために時間をかけた。
組織変革の理論に基づき、まず古い考え方を溶かし、変革の必要性への理解を促し、変革後に新たなルールを定着させるという手順を踏んだ。この「ビジネス解像度向上」と「組織変革」を二つの柱とし、「ANDPADの運用の意義を常に意識した。細かい技術的な部分だけでなく、大きな枠組みで捉えることが重要である」と佐藤様は考え、具体的な成果を上げてきた。
例えば、顧客満足度と従業員満足度は、定量的に測定できていないものの、感覚的には向上している。顧客満足度に関しては、大規模修繕工事後のアンケートで「綺麗になった」という感謝の声が増えた。写真の共有やコミュニケーションが円滑になったことで、顧客との行き違いも減少した。工事中に顧客から依頼があったことも、忘れることなく対応できるようになった。
従業員満足度については、以前は、場所を選ばず資料や写真の確認、提出をすることが困難であったが、ANDPAD導入後はどこでも作業が可能になった。施工管理担当者は、何のために仕事をしているかを理解できるようになり、生産性が向上。ビジネスの解像度が上がったことで、自分たちが何をすべきかを整理できるようになった。効率化で残業時間が減り、テレワークも推進できた。
今後は「ANDPADをハブとして、外部ソースを増やしたい」(佐藤様)という。例えば、会計システムは税理士事務所と専用線をつないでいるが、ANDPADのデータを加工して入力する手間が多いという課題がある。連携可能なサービスを使い、会計や税務も外部リソースに頼るなど水平展開をしたいと考えている。同社は、既存の技術と新しい技術を組み合わせることで、ANDPADを起点として、新たな展開を生み出そうとしている。