電気工事において、積算で材料費や人件費を正確に把握することは、正しく利益を得るために重要です。この記事では、積算の基本や積算で重要な考え方、積算の手順などについて解説します。積算ツールの選び方も合わせて解説するため、施工管理を行う建設会社で、積算業務を担う人は参考にしてください。
電気工事における積算とは?基本を解説
積算とは、電気工事を含む建設業界で使用される専門用語です。工事の図面や設計図などをもとに、必要な材料費や人件費を算出します。一般的によく使われる見積書は、積算額に、一般管理費と粗利益を加えたものです。電気工事において積算を正しく算出することは、企業の競争力向上と適正な利益獲得のために不可欠です。
積算において重要な考え方
積算をもとに適切な見積書を作成するためには、積算における重要な考え方を把握する必要があります。
積算基準
積算基準とは、電気工事の内容や工事に必要な費用を細かく計算するための指針です。費用は妥当であるか、工事会社が水増し見積もりをしていないかなどを判断する役割があります。価格の妥当性の確認や水増しの防止により、効率的な見積書の作成が可能です。電気工事では、主に以下が積算基準として使用されます。
- 公共建築工事標準単価積算基準
- 電気通信施設設計業務積算基準
- 電気通信施設点検業務積算基準
労務単価
労務単価は、工事を担当する従業員や社員に支払う作業費のことです。基本給や手当などの給料のほか、作業服やヘルメットといった現物支給も含まれます。労務単価は、実際に受け取る給与とは金額が異なるため、注意が必要です。
給与に健康保険料や厚生年金などの法定福利費を含めたものを8時間労働の基準で計算します。公共工事の場合は、「公共工事設計労務単価」が都道府県ごとに設定されているため、これを基準に1人あたりの単価を決定します。
歩掛(ぶがかり)
歩掛(ぶがかり)とは、電気工事に必要な時間と日数、従業員の人数を数値化したデータのことです。単位は「人工(にんく)」で表し、1人工は、1人の従業員が8時間(1日)でできる作業量を指します。たとえば、2人で8時間かかる作業は2人工、1人で16時間かかる作業は2人工です。
歩掛から、特定の作業を完了させるまでにどれくらいの時間がかかるかが明確になります。標準歩掛は、国土交通省「公共建築工事標準単価積算基準」により、細かく設定されています。
電気工事の積算の流れ
電気工事で積算を行う際の流れを3つのステップで解説します。設備の把握、労務費の算出、材料費や経費の算出の順に進めます。
1. 必要な設備を把握する
まず、設計図や指示書をもとに照明やコンセントなどの設備の場所や配線のレイアウトなどを確認します。設備や配線の設置目的もあわせて確認しましょう。同時に、設備の過不足や改修が必要な点がないかも確認します。違法工事にならないよう、建築基準法・消防法や自治体の条例の改正情報の確認も必要です。
2. 労務費を算出する
労務費は、給与や福利厚生など、労働者に関わる費用全般を指す言葉です。直接労務費、間接労務費を作業員ごとに算出し、工事全体の労務費を算出しましょう。一般的に、労務費の算出は、国土交通省「公共工事設計労務単価」をもとに行います。
3. 材料費や経費を算出する
設計図や指示書から必要な材料を拾い出し、材料費の概算を算出します。一般的に、中項目ごとに、建物の面積や部材の数量をもとにした概算を求めます。照明器具の数や配線部材の長さなどの拾い出しの工程を誤ると、赤字工事にもつながります。慎重に行いましょう。
電気工事で積算する際の注意点
電気工事の積算を間違えると、赤字工事につながります。ここでは、注意点を5つに分けて解説します。
図面拾い出しでのミスに気を付ける
積算では、設計図や配線図などをもとに必要な材料の数や長さなどを算出します。図面には、細かく配線や部品などが書かれているため、材料ごとに単価を拾い出す作業は、ミスが発生しやすく面倒な工程です。とくに、図面を引いた本人以外が拾い出し作業を行う場合は、注意が必要です。単価や長さ、数量などを間違えると、顧客からの信用を失うことにもつながりかねません。
原価と利益を適切に設定する
積算において、適切に原価と利益を設定することは、事業を継続するうえで重要です。利益を過度に上乗せしすぎると、競合他社との競争に勝てず、受注が難しくなります。利益の設定を間違えると、赤字工事になる恐れがあります。材料単価や歩掛などを分析し、適正価格での見積もりを出すようにしましょう。
積算にかける時間に注意する
積算に要する時間は人件費に直結します。そのため、積算に多くの時間を費やすほど、人件費は増加します。拾い出しから見積もり作成までは時間がかかるため、専用ソフトを活用するなど効率的に取り組むことが大切です。
工事規模を正確に算出する
工事に必要な人員も、図面や配線図をもとに正確に洗い出す必要があります。労務費や単価を間違えると、人件費が大きく変わり、総額に影響を与えます。洗い出しは、抜け漏れやミスが発生しやすい作業です。とくに、工事の規模が大きくなればなるほど、ミスが発生した場合に正しい合計額との差が開きます。
メモを取り、ダブルチェックを行うなど、必要な人員を正しく算出する取り組みが重要です。
適正な単価設定で見積もる
材料費の単価は比較的変動しにくい一方、労務単価や歩掛の設定は、協力会社ごとに異なる場合があります。この設定金額の違いにより、同じ工事であっても、協力会社ごとに見積額が異なる事態が発生します。
適切な単価設定を行わなければ、自社の利益を確保できないばかりか、顧客からの信頼を失うといった事態を招きかねません。人件費の積算は正確に行い、適正な単価設定で見積額を算出しましょう。
電気工事の積算には専用ソフトの利用がおすすめの理由
電気工事の積算は手間がかかる作業です。また、ミスも発生しやすい業務のため、二重チェックも必要です。積算にかかるコストや時間を抑えるためには、専用ソフトの利用がおすすめです。
見積書のミスを減らせる
専用ソフトには、歩掛の自動入力機能といった自動で計算をしてくれる機能が備わっています。機能を活用することで、計算時の人為的なミスを防げます。電気工事で確実に利益を出すためには、正確な見積書の作成が不可欠です。
管理業務に活用できる
専用ソフトによっては、工程表や受発注などの管理ソフトとの連携が可能です。材料の種類が多岐にわたる電気工事は、原価管理が煩雑になりがちです。エクセルで見積書を作成する方法もありますが、動作が重くなったり、ファイル管理が面倒だったりと、担当者の負担は小さくありません。
顧客管理機能も備わった専用ツールを選べば、管理業務にも活用可能です。また、他の管理ソフトと連携できる専用ツールであれば、管理業務を一層効率化できるでしょう。
書類作成にも対応できる
専用ツールのなかには、工事台帳や日報の作成機能を備えているものもあります。工事ごとに原価を正確に把握するためにも、工事台帳の作成は必須です。これらの書類作成機能を備えた専用ツールを活用することにより、日々の業務の効率化が実現できます。
まとめ
電気工事の積算では、工事に必要な材料や人件費などを、積算基準、労務単価、歩掛をもとに算出します。これにより妥当な見積書を作成でき、適正価格で見積請求ができます。
必要な材料や人工などの洗い出しに不備や漏れがあった場合、赤字工事になる可能性があります。ダブルチェックやメモなどを活用し、正確な洗い出しを行いましょう。積算業務のミスや記載漏れを防ぎ、業務を効率化するには、専用ツールの利用がおすすめです。
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