「職人を募集しても集まらない」「ベテランの技術を継ぐ人がいない」と悩む建設会社や工務店の担当者も多いでしょう。職人不足への対策では、人数の不足と、仕事を任せられる熟練者の不足を分けて把握する必要があります。
本記事では、最新の統計データをもとに職人不足の現状を整理したうえで、原因・経営リスク・具体的な対策までを体系的に解説します。自社で不足が生じている段階を把握し、優先する対策を選びましょう。
「人手不足」「業務負荷」の課題に対して、経験豊富な専門スタッフが現場監督の業務を代行。具体的なサービス内容やメリット、導入効果をご紹介しています。
職人不足の現状と深刻化の背景
職人不足と聞くと「現場に来る人が減った」というイメージが先行しがちですが、実態はそれだけではありません。
職人不足には、働き手の絶対数が減る「量的不足」と、仕事を任せられる熟練者がいなくなる「質的不足」の2つの側面があります。
1. 頭数が足りない「量的不足」
総務省の「労働力調査(2026年8月)」によると、建設業の就業者数は473万人で、前年同月と比べて2万人(-0.4%)減少しました。減少幅は小さく映りますが、毎年じわじわと働き手が減り続けている点が問題です。 職人の数が減っているのは建設業だけではありません。
同調査で製造業の就業者数は1,018万人となり、前年同月比で21万人(-2.0%)減少しています。 国土交通省の建設労働需給調査(令和8年8月調査)では、主要8職種の過不足率が1.3%の不足を示しました。地域別に見ても全地域で不足が続いており、型わく工(建築)を除くすべての職種で人手が足りていません。 「募集しても応募が来ない」という声が、特定の地域や職種に限った話ではないことがデータからも裏付けられています。
参考:総務省統計局「労働力調査(基本集計) 2026年(令和8年)8月分結果」
参考:建設労働需給調査結果(令和8年8月調査)
2. 任せられる人がいない「質的不足」
量的不足に加えて、現場で深刻さを増しているのが「質的不足」です。人数だけを見ればなんとか頭数はそろっていても、「一人で判断して作業を完結できる職人がいない」「若手だけでは品質を担保できない」という声は少なくありません。
この背景には、職人の技能習得に長い年月がかかるという構造的な問題があります。職人の技能は座学やマニュアルだけでは身につかず、現場での実践を重ねてようやく習得できるものです。 ところが、その技能を持つベテラン職人の高齢化が急速に進んでいます。熟練者が引退するペースに対して、同等の技能を持つ若手の育成が追いついていないため、「人数はいるが任せられない」というギャップが広がっています。
関連記事:建設業の人手不足の要因は?独自調査や事例をもとに2025年問題の対策を解説
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職人不足が起きる主な原因
職人不足の原因は「高齢化」や「若者離れ」だけでは説明しきれません。
職人不足には、以下のような業界特有の構造的な問題が絡み合っています。
- 長時間労働や休日の少なさが残っている
- 賃金・処遇への不満が解消されていない
- 技能習得に時間がかかり若手が定着しにくい
- 重層構造の中で末端の処遇改善が進みにくい
1. 長時間労働や休日の少なさが残っている
2024年4月に建設業にも時間外労働の上限規制が適用され、制度面での改善は進みつつあります。しかし、現場レベルでは工期に追われて長時間労働が常態化しているケースがまだ残っているのが実情です。
厚生労働省の「毎月勤労統計調査2025(令和7)年分結果確報」によると、建設業の年間出勤日数は全産業平均を上回っています。他業種と比較して休みが少ないという印象は、求職者が建設業を選択肢から外す大きな要因になっている可能性があります。
参考:厚生労働省「毎月勤労統計調査2025(令和7)年分結果確報」
関連記事:建設業における働き方改革とは?適用される規制や取り組むべきことを解説
2. 賃金・処遇への不満が解消されていない
「職人が不足しているなら、給料は上がるのでは?」と疑問に思う方もいるでしょう。しかし、建設業の賃金は需給だけで決まるわけではなく、元請から協力会社へと仕事が流れる多層的な構造が価格転嫁を難しくしています。
元請が発注単価を引き上げても、間に入る会社が増えるほど末端の職人に届く金額は目減りします。特に一人親方として働く職人は、社会保険や福利厚生の負担を自分で背負うため、額面の日当がそのまま手取りにならない点も不満の一因です。
3. 技能習得に時間がかかり若手が定着しにくい
職人の仕事は、短期間の研修だけで即戦力になれるものではありません。成果が見えるまでの期間が長く、その間に離職してしまう若手が少なくありません。
加えて、教える側の人材も不足しているという問題があります。ベテラン職人が自分の現場作業をこなしながら若手を指導する余裕がなく、見て覚えるような属人的な教育に頼らざるを得ない現場が依然として多い状況です。
4. 重層構造の中で末端の処遇改善が進みにくい
建設業には、元請から一次・二次・三次と協力会社へ工事が発注される重層下請構造です。この構造自体は専門分業を支える仕組みですが、層が深くなるほど1社あたりの利益が薄くなり、末端で働く職人の賃金や労働環境に投資する余力が限られてしまいます。
この課題に対し、国が推進しているのは、CCUS(建設キャリアアップシステム)です。技能者の経験や資格を可視化し、適正な評価と処遇につなげる取り組みを行います。ただし、システムの普及率はまだ十分とはいえず、構造的な改善には時間がかかる見通しです。
職人不足を放置した場合の3つの経営リスク
「今はなんとか現場が回っている」という状態でも、職人不足への対策を先送りにすれば、経営に直結するリスクが顕在化します。
ここでは、特に影響の大きい3つのリスクを整理します。
- 技能継承の途絶による品質低下
- 熟練者依存による現場体制の脆弱化
- 職人単価の上昇による利益圧迫
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1. 技能継承の途絶による品質低下
熟練職人が1人引退するだけで、その職人が担っていた判断や仕上げの精度を維持できなくなるケースがあります。経験の浅い作業員だけでは微妙な納まりや品質基準の見極めが難しく、施工不良や手直しが増加しやすくなります。
手直しが増えれば追加コストが発生するだけでなく、施主からのクレーム対応にも時間を取られるでしょう。品質の低下が続けば会社としての評判にも影響し、新規受注にも支障をきたしかねません。
関連記事:施工管理の品質管理とは?業務内容や手順・必要なスキルを解説
2. 熟練者依存による現場体制の脆弱化
特定のベテラン職人に現場の段取りや技術的な判断を頼り切っている場合、その職人が病気や怪我で離脱した瞬間に現場が止まるリスクがあります。代わりを務められる人材がいなければ、工程全体が遅延し、他の現場にも玉突きで影響が及ぶでしょう。
工期の遅れは違約金の発生や元請との信頼関係の悪化を招き、次の仕事の受注機会を失う原因にもなり得ます。属人的な体制は、平常時には効率的に見えても、非常時には大きな脆さを露呈します。
3. 職人単価の上昇による利益圧迫
職人の需給が逼迫すれば、当然ながら労務単価は上昇します。必要な職人を確保するために相場以上の日当を提示せざるを得ない場面も増えてきています。 一方で、受注時に決まった請負金額に対して人件費だけが膨らめば、利益率は圧迫されるでしょう。
単価上昇分を発注者へ転嫁できなければ、売上があっても利益が残らないという状況に陥りかねません。 近年は、こうした人件費の高騰を吸収しきれず経営が行き詰まる「人手不足倒産」も増加傾向にあり、職人不足は資金繰りに直結する経営課題といえます。
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職人不足を解消するための対策
職人不足の対策は「とにかく人を採る」だけでは不十分です。採用した人材が定着し、技能を身につけ、少ない人数でも現場を回せる体制をつくることが重要になります。
ここでは、採用から業務効率化まで6つの対策を段階的に整理します。
- 処遇改善と採用方法の見直しで人材を確保する
- 若手が定着する職場環境をつくる
- 作業標準化と段階別育成で技能を継承する
- 多能工化で少人数でも現場を回す
- 外国人材・協力会社の活用で施工体制を補強する
- 建設DX・ICT技術の活用で業務を効率化する
1. 処遇改善と採用方法の見直しで人材を確保する
まず取り組むべきは、求職者に選ばれる条件を整えることです。賞与や退職金制度の導入、週休2日の確保など、他業種と比較されても見劣りしない処遇を整備しましょう。
あわせて、採用チャネルの見直しも欠かせません。従来のハローワークや紙媒体に加え、施工現場の雰囲気が伝わる動画コンテンツ作成やSNSを活用すれば、これまで建設業に目を向けていなかった若年層にもアプローチできます。
関連記事:施工管理の人手不足は解消できる!9の原因と3つの解決策、事例を解説
2. 若手が定着する職場環境をつくる
採用した人材が早期に離職してしまっては意味がありません。入社後の定着には、職場環境の整備が不可欠です。
具体的には、先輩社員が相談役となるメンター制度の導入、定期的な1on1面談によるフォロー、将来の昇給や資格取得と連動したキャリアパスの提示が有効です。 加えて、アシストスーツの導入や重量物の搬送機械化など、身体的な負担を軽減する取り組みも離職防止につながります。
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3. 作業標準化と段階別育成で技能を継承する
定着した人材を一人前に育てるには、育成の仕組み化が鍵を握ります。ベテランの技能を動画マニュアルや写真付き作業手順書にまとめ、誰でも繰り返し参照できるようにしておけば、指導者が付きっきりにならなくても学習を進められます。
さらに、技能レベル表を作成して「入社1年目はここまで」「3年目でこの作業を単独で担当」と段階を明示しましょう。育成の進捗が本人にも管理者にも見えるようになります。教える側のベテランが自分の作業を止めずに済む仕組みをつくることが、育成と現場稼働を両立させるポイントです。
4. 多能工化で少人数でも現場を回す
1人の職人が複数の工種をこなせる「多能工」を育成すれば、限られた人数でも現場を運営しやすくなります。たとえば内装工事と設備工事の基本を兼ねられる人材がいれば、工程間の手待ち時間が減り、全体の工期短縮にもつながります。
多能工化は人手不足の緩和だけでなく、職人本人のキャリアの幅を広げる効果もあります。
5. 外国人材・協力会社の活用で施工体制を補強する
自社の採用・育成だけでは間に合わない場合、外部人材の活用も選択肢に入ります。特定技能制度を利用すれば、一定の技能と日本語能力を持つ外国人材を受け入れられます。受け入れにあたっては、生活面のサポート体制や安全教育の多言語化といった準備が求められます。
また、信頼できる協力会社との関係を長期的に構築することも重要です。繁忙期だけ単発で依頼するのではなく、年間の発注見通しを共有し、安定的な協力体制を築くことで、必要なときに必要な職人を確保しやすくなります。
6. 建設DX・ICT技術の活用で業務を効率化する
人を増やすだけでなく、テクノロジーの活用で1人あたりの生産性を高めるアプローチも欠かせません。ICT施工による3次元測量データの活用、ドローンを使った進捗確認、AIによる配筋検査の自動化など、省人化を実現する技術は着実に広がっています。
中でも遠隔臨場は、現場への移動時間を削減し、監督1人あたりが管理できる現場数を増やす手段として注目されています。カメラ映像やビデオ通話を通じて離れた場所から状況確認や指示出しができるため、少ない人員でも複数の現場を並行して管理できるでしょう。
関連記事:ICT施工とは?概要や進行手順、施工管理でのICT導入の流れ・メリットを解説
関連記事:施工管理を効率化すべき理由とは|効率化する方法やメリットについて解説
職人不足に関するよくある質問
職人不足の程度や今後の影響は、地域や職種によって異なります。業界全体の傾向に加え、自社の施工体制に照らした判断が重要です。 ここでは、職種と将来の見通しに関する疑問に答えます。
職人が不足している職種は?
国土交通省の建設労働需給調査(令和8年8月)によると、主要8職種のうち特に不足が目立つのは、とび工、鉄筋工、配管工などです。高所作業や専門資格が求められる職種ほど、担い手の確保が難しい傾向にあります。
一方、型わく工(建築)は調査対象の中で唯一過剰となっています。職種によって需給状況が異なるため、自社が必要とする職種がどの程度不足しているかを把握したうえで、採用・育成の優先順位を決めることが大切です。
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職人不足は今後さらに深刻化しますか?
現時点の統計では、建設業就業者のうち55歳以上が約3分の1を占めています。この層が今後10年で順次引退を迎えるため、何も手を打たなければ職人不足は加速する見通しです。
加えて、29歳以下の若年層の入職率は低迷が続いており、引退する人数を新規入職者で補えていない状況が続いています。将来的な人材確保に向けて、処遇改善や育成体制の整備を今のうちから進めておきましょう。 施工管理者の不足と将来展望については、以下の記事で詳しく紹介しています。
関連記事:施工管理の人手不足は解消できる!9の原因と3つの解決策、事例を解説
職人の育成・業務効率化にはANDPADの活用が有効
職人不足を乗り越えるには、限られた人材で現場を効率よく回す仕組みづくりが欠かせません。クラウド型建設プロジェクト管理サービス「ANDPAD」の遠隔臨場機能は、その有力な手段の一つです。
ANDPAD遠隔臨場では、現場カメラやビデオ通話、360度画像などの機能を組み合わせることで、現場に行かなくても状況確認や指示出しを完結できます。
主な活用シーンは以下のとおりです。
機能 | 活用シーン |
現場カメラ連携 | 固定カメラの映像を遠隔から確認し、現場への訪問回数を減らす |
ビデオ通話 | スマホで映像を共有しながら指示を出し、電話だけでは伝わりにくい内容を正確にやり取りする |
360度画像 | 図面と連動した360度写真で現場の隅々まで確認し、隠蔽部の確認にも活用する |
これらの機能により、現場監督1人あたりの管理現場数を増やすことが可能になります。ANDPADなら遠隔でも技術指導ができるため、少ない熟練者で育成と現場管理を両立できる体制を構築できます。
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まとめ
職人不足は、単に「人が来ない」という量の問題だけでなく、「任せられる人がいない」という質の問題を含んでいます。その原因は長時間労働や賃金構造、育成体制の未整備、重層下請構造など、業界の構造的な課題が複合的に絡み合ったものです。 対策を講じないまま放置すれば、品質低下、現場体制の脆弱化、利益圧迫といった経営リスクに直結します。まずは自社の職人不足が「採用」「定着」「育成」「熟練者の確保」のどこで起きているかを見極め、優先度の高い施策から着手してみてください。
処遇改善や職場環境の整備に加えて、作業の標準化による技能継承の仕組みづくり、そしてDX・AI・ICT技術を活用した業務効率化を組み合わせることが、これからの職人不足対策の鍵となります。目の前の人手確保だけにとどまらず、少ない人数でも高い品質を維持できる体制を計画的に構築していきましょう。
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