請求書の管理においては、多くの人に馴染みのあるエクセル(Excel)を用いると便利です。この記事では、請求書の管理の基本事項や発行側・受領側別のエクセルでの管理手順、エクセル管理の課題などを解説します。請求書の管理を効率化する方法についても解説するので、参考にしてください。
請求書の受領・管理について、以下の記事で全体像を解説しています。ぜひご覧ください。
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請求書の管理が必要な理由
請求書は、事業活動において頻繁に発生する重要な書類の1つです。確定申告の根拠となる会計書類であり、法律で保存が義務付けられています。近年は、電子帳簿保存法やインボイス制度への対応も求められるようになりました。
発行側の必要性
請求書を発行する側にとっては、発行漏れや入金確認の漏れを防ぐために、請求書の控えを適切に管理する必要があります。電子データで発行した場合は、電子帳簿保存法に従い、電子形式での保存が求められます。特に2024年1月以降に電子データで発行した請求書は、紙保存が認められないため、注意が必要です。
受領側の必要性
請求書を受領する側にとっては、支払い状況を正確に把握するために、請求書の適切な管理が不可欠です。また、税務申告の根拠となる書類でもあるため、法律で定められている保管期間を遵守して保存することが求められます。2023年10月のインボイス制度の開始により、適格請求書(インボイス)とそのほかの請求書を、区別して管理することも重要になりました。
請求書管理の基本パターン
請求書の管理には、主に月ごとの管理と取引先ごとの管理という2つの方法があります。ここでは、それぞれの特徴を解説します。
月ごとに管理
月ごとの管理は、請求書の発行履歴や入金状況を月単位で把握しやすい方法です。ただし、取引先が多い場合、特定の請求書を後から探すのが難しいため、少数の取引先を持つ企業や、月次の財務状況を重視する企業に適しています。
取引先ごとに管理
取引先ごとの管理は、それぞれの取引先との取引状況を把握できる方法です。取引先ごとの取引履歴が明確になり、長期的な取引関係の把握が容易です。ただし、ファイリングの手間がかかり、月次の全体像は把握しにくくなります。個別の取引履歴を重視する企業に適した方法です。
発行した請求書をエクセルで管理する手順
ここでは、発行した請求書をエクセルで効率的に管理する際の、基本的な手順について解説します。
請求先の一覧作成
まず、請求先情報の一覧を専用のエクセルシートで作成します。郵便番号、住所、会社名、部署名、担当者名、商品名、数量などの項目に分けて記載すると、後で検索しやすいです。請求日、金額、支払期限といった項目も追加し、定期的に更新することで、請求書作成や入金確認の漏れを防止できます。入金状況が一目で把握できるよう、色分けした管理がおすすめです。
テンプレート作成
次に、請求書のテンプレートをエクセルで作成します。複数の取引先に使用できるよう、共通項目を含んだテンプレートを用意しましょう。重要なポイントは、テンプレートの項目と管理表の項目を連動させることです。以下は、テンプレートに含めるとよい基本項目です。
題目
請求先(依頼主の宛名)
発行者名
発行日
請求書番号
請求・取引内容
消費税
源泉徴収額
請求金額
振込先
支払期限
特記事項
テンプレートを活用することで、請求書作成の効率化と管理の簡素化が図れます。
専用フォルダ作成
請求書を月別や取引先別に整理するための、専用のフォルダを作成します。ファイル名には請求書番号、案件名、顧客名などを含め、一定の規則性を持たせることで検索性が向上します。
エクセル管理の運用開始
請求書を取引先へ送付したら、元データは作成した専用フォルダに保存し、管理表のステータスを更新します。ステータス欄はプルダウン式にすると操作が容易になります。管理表は、年単位で定期的にファイル分けし、ファイルサイズの肥大化を防ぎましょう。
受領した請求書をエクセルで管理する手順
受領した請求書をエクセルで管理する手順も、基本的には発行した請求書の管理と類似しています。以下で、詳しく解説します。
取引先の一覧と専用フォルダ作成
発行した請求書の管理と同様に、取引先の一覧表をエクセルで作成します。受領した請求書を管理するステータスには、「未確認」「支払可能」「支払済」などの区分を設けるとよいでしょう。管理表ファイルは専用フォルダに保存しますが、発行と受領の請求書を同一ファイルで管理する場合、シートを分けて管理します。
エクセル管理の運用と支払い管理
請求書を受領したら、エクセルの管理表のステータスを適宜更新します。二重支払いや支払い漏れを防ぐため、未払いと支払済の請求書の仕分けを正確に行うことが重要です。金額の確認を徹底し、誤りを発見した場合には速やかに再発行を依頼します。
請求書の管理をエクセルで行う際の課題
エクセルを使用した請求書管理には、効率性、コスト、継続性などさまざまな課題があります。以下で、主な3つの課題について解説します。
作業効率とコストの問題
エクセルでの請求書管理は、手間とコストがかかる傾向にあります。特に取引先が増加すると、ミス防止のためのダブルチェックやトリプルチェックが必要となり、管理作業の負担が大きくなります。効率化の手段としてマクロの作成がありますが、これにはプログラミング知識が必要となり、導入や維持に追加のリソースが必要です。
データ入力と管理の複雑さ
エクセルを用いた請求書管理では、取引先データや請求情報を手作業で入力する必要があるため、人的ミスが発生するリスクが高まります。また、管理作業が複雑化するにつれて、請求漏れや二重請求などのトラブルが起こる可能性も増加します。さらに、必要な情報を検索して見つけ出す作業も、データ量の増加に伴い煩雑になりがちです。
システムの制約と保守性
エクセルは汎用的なツールであり、請求書管理に特化したものではないため、長期間の使用や大量のデータ管理には制約があります。時間の経過とともにファイルサイズが肥大化すれば、処理速度の低下を招きます。関数やマクロを多用して複雑化したファイルは、担当者の異動や退職によって、メンテナンスの継続が困難になる可能性があります。
請求書は長期的な管理が必要
請求書の保管期間は法律で定められており、法人と個人事業主で異なります。それぞれのケースについて解説します。
【法人の場合】請求書の保管期間
法人は、原則として請求書を7年間保管する必要があります。ただし、欠損金が生じた場合には、10年間の保管が求められます。保管期間は、確定申告書の提出期限の翌日から起算されます。
【個人事業主の場合】請求書の保管期間
個人事業主は、青色申告・白色申告にかかわらず、請求書を5年間保管しなければなりません。ただし、消費税の課税事業者である場合は、適格請求書(インボイス)を7年間保管する必要があります。保管期間の起算日は、法人と同様に確定申告書の提出期限の翌日からです。
請求管理業務はシステム化で効率的になる
請求管理業務を、エクセル管理からシステム管理へ移行することで、効率を大幅に向上させられます。専門的なツールやアプリの導入により、請求書の作成から承認、入金確認までのプロセスを一括管理できるようになります。手作業によるミスや煩雑な作業が軽減され、エクセル管理と比べてより効率的な請求管理が可能です。
請求管理システムとは
請求書の作成、送付、保管などの業務を効率化し、電子化するためのシステムを「請求管理システム」といいます。手作業によるミスの削減や作業時間の短縮が可能です。電子帳簿保存法の改正にも対応しているため、法令遵守が保証されます。
コロナ禍でのワークスタイルの変化やペーパーレス化、デジタル化の加速を背景に、多くの企業で請求管理システムの導入が進んでいます。
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エクセルから請求管理システムへ移行するメリット
請求書の管理をエクセルからシステムへ移行すると、業務効率の向上以外にもさまざまなメリットがあります。ここでは、4つの主なメリットについて解説します。
業務効率の劇的な向上
請求管理業務を、エクセルでの手作業からシステムでの自動化へ移行することで、請求書の作成から入金確認までのプロセスが大幅に効率化されます。作業時間の短縮や人為的エラーの減少により、従業員は付加価値の高いコア業務に集中できるようになります。
関連記事:請求業務の手順と注意点を徹底解説!効率化するための4つの方法もご紹介
データの一元管理と情報共有の円滑化
システムの導入により、請求書はクラウドベースで一元管理できるようになります。これにより、エクセルファイルの散在や版管理の煩雑さといった問題を解消することが可能です。リアルタイムでの情報更新や共有が可能となるため、部門間の連携強化や意思決定の迅速化にもつながります。
請求漏れと入力ミスの防止
システムでの請求書管理には、自動チェック機能や請求スケジュール管理機能が備わっているため、エクセルでの手入力と比べ、請求忘れや二重請求のリスクが低減します。入力作業自体が簡素化されるため、データの正確性が向上する点もメリットです。
テレワーク対応とペーパーレス化の促進
請求書のシステム管理は、エクセル管理の課題だったファイルの共有や更新の煩雑さも解消します。クラウド型のシステムであれば、場所を問わずファイルへのアクセスができるため、テレワークにも対応可能です。紙での出力や保管も不要となるため、コスト削減と環境負荷の軽減にもつながります。
請求管理システムを選ぶ際のポイント
請求管理システムを選ぶ際に考慮すべき、3つの主なポイントについて解説します。
機能性と業務範囲のカバー
導入するシステムは、自社が改善したいと考える業務範囲を、十分にカバーできる機能が備わっていることが重要です。主な機能には、請求書の作成、送付、追跡、入金確認の自動化などがあります。トライアル期間があり、実際の業務環境で機能や操作性を確認できるシステムサービスが理想的です。
使いやすさとアクセシビリティ
システムは、直感的で、使いやすいユーザーインターフェースを持つツールを選ぶことが重要です。導入時の研修時間の短縮と、効率的な日常運用が可能になります。クラウドベースのツールであれば、場所を選ばずアクセスできるため、テレワークにも対応しやすくなるのも利点です。
法律・税制対応とサポート体制
請求書は法的要件を満たす必要があるため、電子帳簿保存法改正やインボイス制度など、新しい法律や税制へのシステムの対応状況を確認することも重要です。また、問題発生時に迅速かつ適切なサポートを受けられるか、サポートの利用時間や言語に制限はないかなども把握しておきましょう。
建設業界に特化した請求管理システム「ANDPAD請求管理」
「ANDPAD請求管理」は、建設業界特有の請求管理業務の課題を解決できるシステムです。建設業界の請求管理では、工事ごとの振り分けや、注文・工種との紐づけ、出来高審査、建て替え経費の相殺などへの対応が課題となっています。
ANDPAD請求管理には、以下のような特徴があります。
請求書の取り込み時に案件を指定できる
個々の請求書に注文番号や工種を入力可能
請求額とは別に審査額を入力可能
相殺金額と相殺理由などの入力が可能
これらの機能によって、ANDPAD請求管理は建設業界特有の複雑な請求管理プロセスを効率化できます。
まとめ
法律で義務付けられている請求書の管理には、エクセルを用いることで状況把握や漏れ防止に役立ちます。汎用性の高いエクセルですが、効率性やコスト面などの課題があるため、専門的な請求管理システムへの移行が進んでいます。
建設業界に特化した請求管理システム「ANDPAD請求管理」は、請求書受領から査定、保管まで一貫して電子化し、毎月の業務負担を軽減します。年間7,000回を超える導入説明会を実施し、手厚いサポート体制が特徴です。請求書管理に課題を感じている方は、システム導入による業務改善をぜひご検討ください。