建設工事では、工事の開始前に完成予定日が決まっており、その期日を守ることが基本です。しかし、事前に定めた工期が、やむを得ない理由で延長してしまう場合があります。この記事では、工期延長の要因や対応、工期延長しないための施策などを解説します。ぜひ役立ててください。
工期延長が発生する5つの要因
工期を延ばさないためには、できるだけ正確な工期を設定することが大切です。ここでは、工期延長が発生する5つの要因を解説します。
1. 設計ミス
建設工事は、建築士が作成した設計図に基づいて進められます。設計図に不備があると、工期が延びることがあります。たとえば、設計図が完成していない、施主の希望が反映されていない、設計ミスがあるなどの場合です。設計図に不備があると、修正や完成を待つため、工事が予定通りに進まない可能性が高くなります。
2. 施工ミス
建設工事で施工ミスが発生すると、修正ややり直しが必要となり、工期が遅れることがあります。ミスによっては資材が不足する場合もあり、新たに資材を発注し、届くまで工事が止まります。施工ミスは、打ち合わせ不足や指示ミス、図面の見間違いなどが原因で起こり、施工図の書き直しが必要になるため、工期が大幅に延びる可能性があります。
3. 人手不足
建設業界は、人手不足が慢性的な課題です。2024年から残業時間の規制が厳しくなったことで、人手不足の問題は深刻化しています。工事に必要な作業員を確保できず、工期が遅れる場合もあります。大規模な工事やプロジェクトにおいて、工期に影響が出ると予測されています。
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4. 資材不足
資材が不足すると、建設工事のスケジュールに影響が出ます。近年では、コロナ禍やウクライナ危機の影響で資材の調達が困難になり、工事が遅れる場合がありました。資材の拾い出しや積算ミスの原因となり、計算通りに資材が届かないこともあるでしょう。必要な資材がそろわないと、工事が進まず工期延長につながります。
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5. 不測の事態の発生
日本は自然災害が多い国で、地震や台風、豪雨などが工事に影響を与えます。資材の運搬が難しくなったり、生産地が被害を受けたりすることがあります。コロナ禍のような予測ができない事態も、工期遅延の原因です。事故の危険性が増すため、作業中止もやむを得ません。
工期延長によって生じ得る3つのリスク
工期延長が発生すると、建設事業者や施主などにさまざまな影響をもたらします。ここでは、工期延長によって生じ得る3つのリスクを解説します。
1. 残業時間の増加
工期の遅れを最小限にしようとすると、残業が増えます。残業が増えると、従業員の身体的・精神的な負担が大きくなり、施工ミスが起こりやすくなります。ミスを修正するためには、さらに多くの残業が必要になるでしょう。工期延長は従業員に過度な負担をかけるため、注意が必要です。
2. 後工程への影響
工期延長は、後工程に関わる協力会社のスケジュールにも影響を与えます。資材や人員の再手配が必要になり、手間がかかるでしょう。スケジュール変更により納期への焦りが生じ、施工ミスの原因にもなります。資材置き場や機材の調整が必要になるため、再度打ち合わせを行い、問題の発生を防ぐことが重要です。
3. 原価率の上昇
工期が延長されると、原価率が上がります。主な要因はリース品の延長料金と、特別料金での人員確保です。リース品の使用日が増えるとリース料も増加し、追加人員手配や夜間工事が必要になると、さらにコストがかかります。原価の増加は利益を圧迫し、利益率の低下や赤字につながる可能性があります。
適切な利益を確保するためには、原価管理システムを活用して、コストの把握と管理を行うことが大切です。
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工期延長が決まったときの対応
工期延長が決まったときは、速やかな対応が求められます。以下では、主に必要な対応方法を解説します。
関係各所に連絡をする
工期延長する際は、工事関係者や施主に速やかに連絡することが最優先です。連絡が遅れると、資材や人員の手配が難しくなり、工事関係者に迷惑をかける恐れがあります。連絡を怠ると、賠償責任を引き起こすリスクもあるでしょう。上司に状況を報告し、工期延長を決定したあとは、関係者への影響を最小限に抑えることが重要です。
工期延長願を作成して提出する
工期が延長した場合、建設事業者は役所に「工期延長願」の提出が必要です。工期延長願には、以下の情報を記載します。
工事名
施工場所
当初の契約年月日と工期
延長日数
延長後の完成期日
工期延長の理由
建設事業者名
建設事業者の住所
延長理由には、以下の内容を明確に記述することが重要です。
設計ミスや資材の遅延など、工期延長の具体的な理由
どのように工事に影響を与えたのか、原因発生後の現場状況
どのように問題を解決しようとしているのか、原因に対する対処内容
たとえば、「〇年〇月〇日までに工期延長を請求します」と記載すれば、願い出は完了です。口頭での連絡だけでなく、理由と対策を記載することで、理解を得やすくなります。
罰則金(負担金)を確認する
工期が延長すると、建設会社に罰則金(負担金)が発生する場合があります。顧客が受ける被害を補償するために必要です。罰則金の有無や条件は、契約書に記載されているため、必ず確認しておきましょう。店舗や事務所の契約書には、罰則金が明記されていることがあります。工期延長の費用負担については、次の章で詳しく解説します。
工期延長に関する費用負担の注意点
工期延長に伴い増加した費用は、工期延長において責任のある側が負担することが基本です。ここでは、工期延長に関する費用負担の注意点について解説します。
変更契約を別途交わす必要がある
工期が延長されると、追加の人件費や現場維持費が発生します。元請けと協力会社が協議し、別途、変更契約を結ぶ必要があります。追加費用は、原契約の請負工事費とは別に積算し、書面で交付すると建設業法で定められています。工期延長に伴う費用の取り決めは、必ず文書で確認し合うことが重要です。
3か月以内のときは標準積算の方法で計算する
工期が延長され、その期間が3か月以内の場合は、標準積算で増加費用を算出します。増加費用には、追加の労務費や材料保管費、仮設機材の損料、現場事務所費用、材料再運搬費などが含まれます。
延長が3か月を超える場合や標準積算が適用できない場合は、受発注者間で協議して費用を算定しましょう。工期延長に伴う増加費用は、書面での交付が必要であることも注意が必要です。
工期延長しないための対処法3選
以下では、工期延長をしないための対処法を3つ解説します。
1. 工程表を組み直す
進捗の遅れに気づいた段階で、工程表を組み直しましょう。社内だけでなく、発注者や工事関係者とも協議を行い、新しい工程表を作成します。確定後は速やかに発注者に提出し、承認を得ます。承認後は、現場作業員にも新しいスケジュールを共有し、修正後の工程で作業を進めることが重要です。
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2. 余裕を持ったスケジュールにする
大型連休や台風シーズンは、工期延長が発生しやすいといえます。自然災害では、資材搬入の遅れや人員不足が生じ、連休時には作業員の確保が困難になる場合もあります。あらかじめ余裕のあるスケジュールの作成が必要です。工期遅れを避けるために、季節によるリスクを考慮し、適切な計画を立てましょう。
3. 進捗状況を共有する仕組みを作る
建設工事では、自然災害の影響で工期が延びやすいため、発注者や協力会社と進捗状況の共有が必要です。現場全体で進捗を共有できれば、調整や見直しがスムーズにできます。社内でも、ツールを導入してリアルタイムで現場の状況を把握することで、工期延長のリスク軽減を目指せます。
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また、工程表機能を使用し、全体の進捗状況を簡単に把握できます。テンプレートを利用して工程表の作成を効率化し、最新の工程表をリアルタイムで共有します。社内全体での案件進捗が一目でわかり、工期延長を未然に防げるでしょう。
まとめ
自然災害や大型連休による工期延長は避けられない場合もありますが、スケジュール管理や進捗状況の共有でリスクを減らせます。延長が避けられないときは、速やかに協力会社や関係者に連絡をし、対応策を確認しておくとよいでしょう。
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