IoTは多様な業界で導入が増えており、建築・建設業でも同様です。ただし、具体的にどのような効果があるのか理解していない人もいるでしょう。この記事では、建築・建設業におけるIoTの基本情報から、建築・建設業が抱える課題やIoTを導入するメリット、現状などを解説します。自社へのIoT導入を検討している人は参考にしてください。
建築・建設業におけるIoTとは
IoTとは、機械や家電製品などの「モノ」をインターネットに接続することです。作業をオートメーション化する方法の1つであり、近年各業界で注目を集めています。
建築・建設業においては重機や機材、資材、ヘルメットなど、現場で使用するさまざまな「モノ」をインターネットに接続します。インターネットに接続して取得した位置情報や温度、湿度などのデータをまとめて集約したり、双方向でデータ通信をしたりすることにより、作業員や現場監督者の生産性の向上が見込めます。
建築・建設業界はIoTの活用によって働き方改革ができる?
建築・建設業界では業界が抱える問題を解消するために、IoTを活用した働き方改革や、国土交通省による「i-Construction」が推進されています。「i-Construction」とは、建築・建設業が抱える課題を解決するために、国土交通省が提唱した概念です。
IoTを積極的に活用したり、施工時期を平準化したり、従業員の管理をデータ化したりすることで、生産性の向上につながります。生産性が向上すると少ない人員でも効率的に業務を進められ、長時間労働の改善や人手不足の解消へとつながります。
建築・建設業が抱える課題
現在、建築・建設業はどのような課題を抱えているのでしょうか。ここでは、主な3つの課題を解説します。
人材の確保
建築・建設業界では作業員の高齢化が進むなかで、作業環境のイメージにより、新たな人材確保に苦戦する面があります。社会全体で少子高齢化が進んでいることも、人材確保が難しくなっている原因の1つです。
現在の建築・建設業就業者の約3割が55歳以上で、29歳以下の若年層は約1割となっています。そのため、十数年後には現在の熟練した作業員が引退し、人手が足りなくなる可能性があります。
人件費が高騰
企業を悩ませる要因の1つに、作業員の人件費高騰が挙げられます。人材の確保には給与のベースアップや資格手当など手厚い支給が必須ですが、毎月の固定費が増えると企業の利益が圧迫され、企業体力の低下につながります。この問題を解決するためには、限られた人数でもスムーズに作業が行える仕組み作りが必要です。
現場で起こる労働災害の問題
建築・建設現場は、労働災害が発生しやすい環境です。倒壊や高温物との接触、落下などの危険があります。建機が倒壊したり足場が崩れたりすると、怪我を負うだけでなく、最悪の場合には死亡事故につながるケースもあります。年々死亡事故件数は減少しているものの、0にするためには危険を回避するためのシステムや機器の導入が必要になるでしょう。
建築・建設業でIoTを導入するメリット
建築・建設業においてIoTを導入することで期待できる、6つのメリットをそれぞれ解説します。
現場業務の効率化と労働時間の短縮
IoTの導入により、業務の効率化と労働時間の短縮が可能です。Webカメラを活用すると遠隔での現場の管理や状況把握ができ、指示を送ったり現場状況を確認したりできます。これにより、建築・建設現場全体の管理がしやすくなり、業務の効率化が図れます。
また、遠隔で管理することで適切なスケジュール管理が可能になれば、工期を把握しやすくなり、労働時間の短縮にもつながるでしょう。
安全性の向上
建築・建設業界は労働災害が多いため、安全性の向上が大きな課題です。IoTを導入することで、業務における危険を減らせます。たとえば、測量にドローンを活用することで足を踏み入れにくい危険な場所も容易に測量できたり、重機を自動化することで人的ミスを未然に防ぎ、誤操作による危険を回避できたりします。
建築・建設現場には目に見える危険とそうでない危険があるため、IoTを導入することにより多方面からのリスクに備えられるでしょう。
人員コストの削減
IoT化により、人員コストの削減が可能です。Webカメラを活用して現場を管理すると移動時間を省けます。また、少人数で複数の現場を管理することも可能です。IoTで一部の作業を自動化すれば、作業員の労働時間を短縮できます。
資材コストの削減
IoTを導入することで、資材コストも削減できます。図面やデータをパソコン・タブレットなどで一元管理できるため、ペーパーレスにつながります。これまで資料を印刷していた時間や印刷用紙の購入が不要になり、コスト削減へとつながります。また、一元管理により現場の在庫管理や使用する資材の正確な把握ができ、購入した資材が無駄になるケースも減少します。
品質管理の省力化
IoT化より品質管理が省力化でき、安定した品質の提供が可能です。パソコンやタブレットで建築・建設現場の進捗状況や必要な資材、連絡事項を一元管理できるため、品質管理業務の負担軽減につながります。作業管理や労働管理、在庫管理、原価管理も自動化することで品質管理の省力化が可能になります。
また、建築・建設現場における品質の均一化は技術や目視では難しい部分があるものの、IoTの活用でデータ化や分析を実施し、各工程に反映させることで均一化に役立つでしょう。
技術の継承
建築・建設業界では、熟練した職人の技術を若い世代に伝えることが難しいといわれています。しかし、IoTを活用することで難しい技術や知識の共有が容易になるため、経験豊富な職人の技術継承に役立ちます。
たとえば、経験豊富な職人の動きを映像化しバーチャルトレーニングをすると、その職人の知識や技術を習得しやすくなります。映像は何度も見返せるため、1人での反復練習も可能です。
建築・建設業におけるIoT化の現状
建築・建設業のIoT化は、世界的に着々と進んでいます。2020年の市場予想では、2020年から2027年までに14.0%のCAGR(年平均成長率)で拡大し、2027年までに約1,900億ドルに達すると予測されています。
この予測から、IoT化による生産性と安全性の向上や工期の適正化へのニーズが高まっていることがわかるでしょう。日本のみならず海外の建築・建設業界でもIoTの需要は高まっており、今後も拡大していく見込みです。
建築・建設業界におけるIoT活用事例
実際にどのような建築・建設企業がIoTを導入してどのように活用しているのか、4つの事例を解説します。
上村建設株式会社様
上村建設株式会社様では、ANDPAD黒板を活用しています。以前はフロアごとに撮影した、数百枚の写真の整理に現場監督は大きな時間と手間を要していました。また、書類の持ち運びも負担でした。写真の撮影や整理にかかっていた時間が1フロアあたり70分削減でき、書類を持ち運ぶ負担も解消されました。

株式会社野本電設工業様
株式会社野本電設工業様では、以前から写真台帳システムを導入していたものの、従業員ごとの活用度合いにばらつきがありました。また、資料は紙の状態で保管していたため、出先では確認できませんでした。ANDPADの黒板機能を活用することで資料作成の工数が25%削減でき、資料を印刷して保管する手間も削減できています。

株式会社コラボハウス様
株式会社コラボハウス様では、ANDPADの導入により、協力会社との情報共有が円滑になり、現場に行く回数を低減できています。以前は着工後も職人から現場監督へと頻繁に電話がありましたが、案件ごとに現場の写真が確認できるため、現場監督・協力会社双方の負担を減らせています。

株式会社笹川組様
株式会社笹川組様では、AI機能の活用により黒板写真の手間を大幅に削減できています。現場で動き回る時間、写真を整理する時間の両方を短縮でき、効率的に作業を進められています。また、ANDPAD図面の「仕上検査」機能により、検査終了後1時間以内に是正指示をまとめ報告できるようになりました。

まとめ
人材不足や働き方改革などの社会課題を抱えるなか、IoTを導入して自社の課題を解決しようという企業が増加しています。建築・建設業においても、効率化や安全性向上などに活用するケースが増えています。
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