創業73年の笹川組(滋賀県大津市)はここ数年、現場業務の「時短」を模索してきた。ANDPAD導入を機に、業務効率化が叶いつつあるという建築部部長の髙山さん、所長の高畑さん、現場の実務を担当する小谷さん、髙橋さんに話を伺った。
現場の負担が大きい写真管理と仕上げ検査を楽にしたい
笹川組(滋賀県大津市)は、2024年問題を見据え、現場の時短・効率化のために5年ほど前からDXの検討を始めた。
「現場の負担が特に大きかった写真と仕上げ検査を楽にしたいと考え、アプリやオールインワンシステムを探した」と髙山さんはいう。
いくつかは1年ほど使ったが、現場の利用頻度が上がらない、カスタマイズができないなどの課題があり定着せず。困っていたところに登場したのがANDPADだった。
「住宅向けの施工管理アプリのイメージが強かったが、建設向けの開発を強化 すると聞き、シェアの高さや開発力に期待して導入を決めた」と髙山さんは当時 を振り返る。2023年から、ANDPADの黒板・図面機能を工事部で使い始めた。
AI機能の活用で黒板写真の手間が大幅削減
それまで黒板写真では、①書いては消す手間が大変、②黒板を用意する間職人を待たせてしまう、③昼間に写真整理の時間が取れない、④豆図の負担が大きい―といった悩みを抱えていた。
ANDPAD で大きく変わったのは、撮影前に黒板準備ができることだ。
「撮影者がその日どんな写真が必要なのかをあらかじめ考えて黒板を準備・保 存しておけるので、黒板を書いては消す作業が不要で、職人さんを待たせずにタ イムリーな写真が撮れるようになった。加えて、配筋写真の豆図貼付時の手書き作業がなくなったのも嬉しい変化だ」と小谷さん。入社2年目の髙橋さんは、「仕事や移動の合間にパパッと黒板準備が完了するうえ、遠隔で指示をもらえるメリットも大きい。タイパの良さを実感している」と話す。
また、現場で動き回る時間、写真整理の時間の両方が短縮された。「求められる写真整理が簡単にできるので、事務所のイスに座って効率よく作業ができる時間が 増えた。撮った写真は自動で日付・工種ごとのフォルダに並ぶので後で振り返りやすく、これまで1~2時間かけていた写真整理の手間もかなり減っている」と小 谷さんはいう。
ミスのフォロー、進捗確認に活用
管理職の所長らはどんな使い方をしているのか。「いつどこにいてもクラウドで写真確認ができるので、部下たちの撮り漏れ・撮り直しの指摘やフォローがしやすくなった。また、現場が1つ終わると全工程の写真フォルダが完成するため、それを新人教育に活用したい。データが溜まればより精度の高い教材になるはず」と高畑さん。
「昔は公共工事が多く、厳しい施工管理を求められたぶん写真撮影などの勘所 を鍛えられたが、民間工事の割合が増えた今はどうしても抜け・漏れが出やすい。そこで、ANDPADで全現場の工程表や写真を見て工事の進捗や現場の動きを逐一確認している。進捗がわかれば早めに手を打つことができ、ミス・トラブルの防止にもつながる」と髙山さんはいう。
検査・指示書作成が短時間で
もう1つ、現場の時短を実現するために髙山さんが注目し導入を進めたのが、仕上げ検査業務に使えるANDPAD 図面の「仕上検査」機能だ。それまでは、図面を紙に打ち出し、検査員の指摘箇所を走り書きでメモし、検査終了後に100項目に及ぶこともある指摘箇所を清書してまとめ、各協力会社に是正工事を振り分けて依頼する、という作業にかなりの時間が取られていた。
ANDPAD導入後はどうだろうか。「今はタブレット端末を持って検査員の後を ついていき、指摘箇所に“ピン”を立てるだけ。ピン立てした位置に写真を貼り、その場で指摘内容とどの協力会社に直してもらうかまでを画面をタップするだけで入力できる。UIに優れ、直感的な操作だけでここまで仕上げ検査業務を楽にできるのはかなり画期的だと思う」(小谷さん)。
「検査終了後1時間もあれば是正指示のまとめが完了する。以前だと検査報告までに数日かかっていたので大きな変化。入社2カ月ほどの新入社員でも難なく使いこなしている」(髙山さん)
社外との図面・資料共有も簡単に
最近は、図面のやり取りが多い協力会社にもANDPADのアカウントを配布し、ファイルサイズが大きい図面・資料共有の効率化を図っている。「今後も時間がかかる面倒な作業をDXで解決できないか考え、現場の業務効率向上・時短を進めたい」と髙山さんは話す。
株式会社笹川組 のご紹介
社名:株式会社笹川組
本社:滋賀県大津市
設立:1952年
社員:54人(うち工事部36人)
主な実績:滋賀県立芸術劇場びわ湖ホール(JV)、大津地方家庭裁判所彦根支部、彦根総合スポーツ公園陸上競技場(JV)ほか、文化・教育施設、店舗、工場等多数
工事件数:中-大規模プロジェクトを年6~7件(公共・民間の割合4:6)
(建設産業未来ビジョン2024 に掲載されたものの転載になります)