適切な原価管理は、建設会社の利益を左右する重要な要素です。この記事では、エクセルを使って適切に原価管理をしたいと考えている建設会社の担当者に向けて、エクセルでの原価管理のメリット・デメリット、実践する際の4つのポイントなどを解説します。原価管理の効率化に向けて、ぜひ参考にしてください。
原価管理の目的
原価管理とは、工事にかかる費用を計算・管理することを指し、コストマネジメントともいわれます。この場合の原価には、建設資材のような材料費だけでなく、作業員の人件費、販売費、設備費なども含まれます。
原価管理には、単なる原価計算だけでなく、原価設定の分析、適切な水準への維持・調整まで一連のプロセスが含まれます。数値の可視化により、利益の最大化とリスク管理を実現することが原価管理の目的です。
エクセルで原価管理は可能
エクセルは、表計算ソフトのなかでも特に多機能で柔軟性が高く、原価管理に対応できるツールです。実際に、多くの建設会社がエクセルを使用して、原価管理を行っています。
ただし、効果的な原価管理の実現には、エクセル使用のメリット・デメリットを理解する必要があります。ポイントを押さえて活用しましょう。以下で、これらの点について詳しく解説します。
原価管理をエクセルでするメリット
エクセルによる原価管理の3つのメリットを解説します。
導入費用が不要である
エクセルの大きなメリットは、多くの場合、新たな導入費用が不要な点です。エクセルは、ほぼすべての企業において既に利用されているという調査結果が出ています。建設会社でも、業務用パソコンに既にエクセルがインストールされていることが多いため、原価管理のための専用ツールを新たに導入する必要がありません。
教育コストが抑えられる
従業員の多くは、日常的な業務でエクセルを使用しているため、基本的な操作方法についての教育は不要です。新たなツールの使用方法を一から学ぶ必要がなく、原価管理の手順や考え方に関する教育のみで、教育コストを多くかけずに運用を開始できます。特に、エクセルを使い慣れている従業員がいる場合は、社内での知識共有もスムーズでしょう。
無料のテンプレートがある
エクセルは普及率が高いことから、インターネット上には多くの無料テンプレートが公開されています。自社の業務に合ったテンプレートを見つけることで、原価管理表を一から作成する手間を省けます。さらに、これらのテンプレートは必要に応じてカスタマイズも可能であるうえ、チーム内で様式を統一することで効率的な管理が実現できます。
原価管理をエクセルでするデメリット
エクセルによる原価管理の3つのデメリットを解説します。
属人化のリスクがある
基本的なエクセルの操作性については、多くの従業員が習得しています。しかし、複雑な関数やマクロを活用した高度な原価管理表となると、扱える従業員が限られてしまう場合があります。これにより、原価管理業務が特定の担当者に依存する「属人化」のリスクが生じます。担当者が不在のときや退職した場合、業務の継続性に支障をきたすこともあるでしょう。
リアルタイムでの共有が難しい
エクセルファイルは、専用のシステムと比べると、リアルタイムに共有することが困難です。最新データの共有には、メールでのファイル送信や共有フォルダへの保存など、手動での作業が必要となり、手間がかかります。また、同時編集ができないため、チームの作業効率が低下する可能性があります。
ファイルの管理に手間がかかる
効果的な原価管理には、複数のシートでの管理が必要不可欠です。すべてのデータを1つのシートにまとめると、データ量が膨大になり、適切な管理が困難になります。また、複数の担当者がそれぞれのパソコンでファイルを管理すると、最新版の特定や更新履歴の確認に多大な労力が必要となる場合もあります。
原価管理をエクセルでする際の4つのポイント
エクセルで原価管理をする際には、次の4つのポイントを押さえましょう。
エクセルデータの格納場所を共有する
データの一元管理は、効率的な原価管理の基本です。個人のパソコンではなく、ファイルサーバーやクラウドストレージを利用して、チーム全体で共有できる環境を整備しましょう。クラウドサービスを利用する場合は、情報セキュリティの観点から、情報漏えいといったリスクへの対策確認が必要です。
無料テンプレートを利用する
原価管理表を一から作成するのは、時間と労力のかかる作業です。先述したメリットのように、インターネット上には多くの無料テンプレートが公開されています。自社の業務や管理項目に合致したテンプレートを選択し、必要に応じてカスタマイズすることで、効率的に原価管理ができます。
マニュアルを作成する
データ管理の混乱を防ぎ、一貫した原価管理を実現するためには、詳細なマニュアルの作成が不可欠です。最新版の特定がしにくい事態を予防したり、管理業務に携わったことのない従業員でも作業が容易になったりします。
マニュアルには、データの管理方法だけではなく、専門用語や数値の解説なども盛り込むとよいでしょう。特に、ファイル名の付け方や保存先フォルダの指定など、具体的な運用ルールを明確にすることが有効です。
関数やマクロを活用する
原価管理業務における集計作業の効率化には、作業効率に個人のスキルが影響しにくい、エクセルの関数やマクロの活用が効果的です。以下に、特に有用な関数を紹介します。
SUM関数:原価の合計計算に使用
IF関数:条件に応じた原価計算に活用
VLOOKUP関数:単価表などのマスタ値の参照に利用
これらの機能を活用することで、日々のデータ転記や集計処理を自動化できます。特に、定型業務をマクロで自動化すれば、作業時間の大幅な削減が可能です。
エクセルでの原価管理に利用できる無料テンプレート
以下は、原価管理をエクセルでする際におすすめの、無料のテンプレート2つです。
Microsoftテンプレート「活動ベースのコスト管理」
Microsoftの公式サイトから無料でダウンロードできるテンプレートです。「直接原価」「間接原価」「一般費」「管理費」の管理機能を備えています。また、製品原価と生産単位数の入力で、製造原価の合計を把握できます。安心感と使いやすさを兼ね備えた原価管理ツールです。
bizocean書式テンプレート「原価管理_01_建設業」
建設業の原価管理に特化した無料のエクセルテンプレートです。人、日数、時間などの単位マスタを使用した自動計算や、消費税率変更に対応できる点などが特徴です。建設現場での実務に即した使いやすい原価管理表として活用できます。
原価管理はシステム導入で効率化できる
エクセルでの原価管理は、導入のしやすさというメリットがある一方で、データ管理や共有の面で多くの手間がかかります。これに対し、専用の原価管理システムを導入することで、原価計算、予算・実績の比較、損益分析などを効率的に実行できます。より効率的で正確な原価管理を目指す企業にとって、システム導入は検討に値する選択肢です。
原価管理システムの活用事例
ここでは、原価管理にクラウド型建設プロジェクト管理サービス「ANDPAD(アンドパッド)」を導入した3社の活用事例を紹介します。
粗利管理、資材高騰、職人不足の影響下でも安定して粗利を確保
有限会社立石設計様では、システム導入前は、工事が完了しないと粗利の把握ができませんでした。また、工事管理や受発注管理のソフト入力には多大な時間を要するという課題を抱えていました。
「ANDPAD(アンドパッド)」導入後は、現場ごとの粗利をリアルタイムで把握できるようになり、粗利率が10%向上する見込みとなりました。事前に実行予算が明確になるため、設計変更への迅速な対応も可能になり、業務効率が大幅に改善されています。
詳しい事例は下記ページでご覧いただけます。
参考:有限会社立石設計様の活用事例|ANDPAD(アンドパッド)
営業管理の改善で受注率アップと正確な原価管理を実現
株式会社IPS、ガイソー上尾店様では、見積もり提案時の粗利管理が不十分でした。また、表計算ソフトによる工程管理も煩雑だったため、点検日程の抜け漏れが発生するといった問題が頻発していました。
現在は、「ANDPAD(アンドパッド)」の導入による一元管理で、これらの課題は解決されています。新人営業や事務担当者でも適切な見積もり作成が可能になり、管理者は提案時の原価・粗利率を正確に把握できるようになりました。契約率の向上と業務効率化を同時に実現した好例です。
詳しい事例は下記ページでご覧いただけます。
参考:株式会社IPS、ガイソー上尾店様の活用事例|ANDPAD(アンドパッド)
少数精鋭でもIT化で受注アップ!秘訣は「顧客に使える時間の創出」
株式会社ゴーイングホーム様では、表計算ソフトを使用していた際は、更新作業のミスによる金額の誤りや、協力会社とのやり取りに時間がかかり、提案スピードが低下するなどの問題を抱えていました。
「ANDPAD(アンドパッド)」導入後は、見積もりの計算ミスが解消され、コスト情報の共有が容易になったことで、利益率が5%以上改善しました。さらに、見積もり提出のスピードが2倍に向上し、受注率が30%以上アップするという顕著な成果を上げています。
詳しい事例は下記ページでご覧いただけます。
参考:株式会社ゴーイングホーム様の活用事例|ANDPAD(アンドパッド)
「ANDPAD引合粗利管理」なら現場ごとの原価・粗利をリアルタイムに可視化!
「ANDPAD引合粗利管理」を活用することで、案件全体を通じて原価と粗利を効果的に管理できます。施工前は、テンプレートと過去データを活用した、精度の高い見積もりが可能となり、施工中は、リアルタイムでの工事原価把握により、予算管理が容易になります。
さらに工事完了後は、正確な原価管理により、想定通りの粗利確保の実現が可能です。このような一貫した管理により、確実な利益率の改善を達成できます。
まとめ
原価管理は、導入のしやすさからエクセルによる管理が広く普及しています。しかし、データの一元管理や共有ルールの確立、マニュアルの整備、関数やマクロの活用など、さまざまな工夫が必要です。より効率的で確実な原価管理を目指すなら、原価管理システムの導入をおすすめします。
クラウド型建設プロジェクト管理サービス「ANDPAD(アンドパッド)」は、業種を問わず多くの企業に選ばれている実績があり、直感的に使いやすいインターフェースと充実した機能を備えています。さらに、年間数千回を超える導入説明会の実施など、手厚いサポート体制も整っています。原価管理の効率化に関する相談があれば、ぜひお気軽にお問い合わせください。