エクセルで請求書を作りたいけれど「どの項目が必要なのか分からない」「計算ミスが心配」と悩んでいませんか?この記事では、初心者でも安心してエクセル請求書が作成できるよう、基本的な作り方から関数を使った自動計算の方法などを段階的に解説します。
これにより、請求業務の手間と時間を大幅に削減し、取引先から信頼される請求書作成が実現できるでしょう。計算ミスや記載漏れを防ぐ注意点も含めて、実用的なノウハウをお伝えしますので、ぜひ参考にしてください。
【4ステップで完成】エクセルで請求書を作る方法
Microsoft Excel(エクセル)で請求書を効率よく作成するための、基本的な4ステップを紹介します。※本記事では便宜上「エクセル」で統一し解説します。
- ステップ1:請求書作成の準備(記載項目の確認)
- ステップ2:請求書のレイアウト設定
- ステップ3:内容や金額を入力する
- ステップ4:最終確認とデータ保管
なお、原則として請求書に決まった書式はないため、好きなようにレイアウト(デザイン)することが可能です。自社に必要な項目を盛り込みつつ、使いやすいレイアウトを準備しましょう。
関連記事:請求書は手書きでもOK!記載項目や注意点、メリット・デメリットをまとめて解説
ステップ1 :請求書作成の準備(記載項目の確認)
インボイス制度(適格請求書等保存方式)に対応した請求書を作成するためには、以下の項目を記載する必要があります。
- 適格請求書発行事業者の登録番号
- 取引年月日
- 取引内容
- 税率ごとに区分して合計した対価の額(税抜または税込)
- 適用税率
- 税率ごとに区分した消費税額等
- 書類の交付を受ける事業者の氏名または名称
- 発行者の氏名または名称
記載漏れや誤りは入金遅延の原因となり、会社のキャッシュフローにも影響を与えかねません。社内でダブルチェックをおこない、内容に間違いがないように記載することが大切です。
ステップ2 :請求書のレイアウト設定
請求書のフォーマットにサイズや縦・横の指定はありません。しかし、一般的にはA4縦型が無難な形式ですので、特別なこだわりがなければこのレイアウトを選びましょう。
フォントは可読性の高いメイリオや游ゴシックなどを選び、本文の文字サイズは10~12pt程度に設定するのがおすすめです。請求書の土台となるレイアウトを制作するのが難しい場合は、既存のテンプレートを使用するとよいでしょう。テンプレートの準備方法については後述します。
ステップ3 :内容や金額を入力する
請求書のレイアウトが完成したら、実際に内容を入力します。請求書に記載する金額は正確さが求められるため、エクセルの関数を活用して計算ミスを防ぎましょう。
たとえば、各品目の金額は「数量×単価」で自動計算し、小計はSUM関数を使って計算します。消費税額はインボイス制度のルールにもとづき、税率ごとに区分した合計額に対し各1回端数処理(切り捨て等)をおこないます。税率の記載が正しくできていないと、仕入税額控除の適用が受けられなくなる場合があるため、注意が必要です。
参照:国税庁 適格請求書等保存方式(インボイス制度)の手引き
ステップ4 :最終確認とデータ保管
入力完了後、発行前の最終確認はかならず実施してください。宛名や発行日、合計金額などに誤りがないかあらためて確認します。レイアウト崩れや改ざんリスクを減らすため、請求書はPDF形式で保存することがおすすめです。
また、ファイル名は「取引年月日_取引先名_書類種別」などに統一し、フォルダも階層化すると管理しやすくなります。なお、作成した請求書データの控えは、電子帳簿保存法に沿って保存する必要があります。
2024年1月からは、電子的にやり取りした請求書(メール添付のPDFなど)は、データのまま保存することが義務化されました。保存する際は、主に以下の要件を満たす必要があります。
- 真実性の確保:タイムスタンプの付与や、訂正・削除の履歴が残るシステムを利用する、などの措置が必要です。
- 可視性の確保:取引年月日、取引金額などで検索できる状態にしておくことが必要です。
ファイル名を「20250531_株式会社〇〇_請求書」のように統一し、フォルダも階層化すると、電子帳簿保存法で求められる真実性・可視性の要件を満たしやすくなります。
エクセルに欠かせない関数やマクロの便利な使い方
エクセルで請求書を作成する際は、関数とマクロの活用で作業の正確性と効率が向上します。ここでは以下3つのポイントを解説します。
- SUMやIFなどの基本関数を活用する
- VLOOKUP関数で入力の手間を減らす
- マクロで定型作業を自動化する
これらを活用することで、請求書の作成時間を短縮することが可能です。なお、以下で紹介するそれぞれの機能について詳しくはMicrosoft Excelのオフィシャルページでご確認ください。
SUMやIFなどの基本関数を活用する
SUM関数やIF関数など、覚えておきたい基礎的な関数を以下の表にまとめました。
関数名 | 主な機能 | 具体的な活用例 |
SUM | 合計値を自動で算出する | 商品やサービスの合計金額の計算 |
IF | 設定した条件に応じて処理を自動化する | 「〇〇円以上で割引適用」などの条件分岐 |
ROUNDDOWN | 指定した桁で数値を切り捨てる | 消費税計算時の1円未満の端数を切り捨て |
ROUNDUP | 指定した桁で数値を切り上げる | 消費税計算時の1円未満の端数を切り上げ |
ROUND | 指定した桁で数値を四捨五入する | 消費税計算時の1円未満の端数を四捨五入 |
これらの関数をマスターすると、請求書の正確性と効率が向上します。手計算を避け、ヒューマンエラーを減らしましょう。
VLOOKUP関数で入力の手間を減らす
VLOOKUP関数は「検索キー」をもとに、データ一覧から関連情報を探し出し、自動で入力する機能です。
VLOOKUP関数の仕組み(具体例)
①まず、請求書のシートに「A-001」のような商品コードだけを入力します。
商品コード | 商品名 | 単価 |
A-001 | (自動で表示) | (自動で表示) |
②あらかじめ用意しておいた別シートの商品マスタ(料金表など)から、入力された商品コード「A-001」に一致する行を、自動で探しにいきます。
商品マスタシート例
商品コード | 商品名 | 単価 |
A-001 | 商品A | 1,000 |
A-002 | 商品B | 1,500 |
A-003 | 商品C | 2,000 |
③該当する「商品A」の情報にもとづき、単価「1,000」が自動的に入力されます。
商品コード | 商品名 | 単価 |
A-001 | 商品A | 1,000 |
なお「Excel 2021」や「Microsoft 365」を利用している企業の場合は、より高機能で直感的に使えるXLOOKUP関数がおすすめです。
マクロで定型作業を自動化する
エクセルのマクロは、定型業務を自動化して業務効率を高める機能です。
データソースからの情報抽出や指定テンプレートへの転記、取引先ごとの個別ファイルでの保存といった一連の作業フローを、一括で実行できます。これにより、作業時間の大幅な短縮に加え、手作業に起因する転記ミスといったヒューマンエラーの発生を防げます。
まずは、操作手順を自動的にコード化する「マクロの記録」機能の活用から着手し、段階的に知識を習得してみましょう。
インボイス制度対応の請求書の作り方
ここでは、インボイス適用の請求書作成における注意点を解説します。
- 適格請求書に必須となる追加項目
- 税率ごとの計算と端数処理ルール
- 修正インボイス発行のポイント
以下で詳しくみていきましょう。
関連記事:適格返還請求書(返還インボイス)とは?返金対応や不要なケース・書き方まで解説
適格請求書に必須となる追加項目
インボイス制度では、適格請求書に従来の項目に加え、新たな情報を追加記載する必要があります。買い手が仕入税額控除を受けるための法的要件であり、記載漏れ等は取引先に不利益を生じさせます。
インボイス制度における主な必須記載項目は、以下のとおりです。
項目 | 内容 |
適格請求書発行事業者の登録番号 | 「T」から始まる13桁の番号です。この番号の記載漏れは、買手側が仕入税額控除を受けられなくなる可能性があるため、発行側は細心の注意が必要です。 |
取引年月日 | 商品やサービスの提供が完了した日付など、具体的な取引の日付を記載します。 |
取引内容 | 提供した商品名やサービス内容を具体的に記載します。軽減税率の対象品目が含まれる場合は、その旨を明確に記載する必要があります。 |
税率ごとに区分して合計した対価の額(税抜または税込) | 適用される税率(10%・8%)ごとに、取引の合計金額を税抜または税込で記載します。 |
適用税率 | 税率ごとの合計金額に対応する税率を明記します(10%・8%)。 |
税率ごとに区分した消費税額等 | 適用される税率ごとに、消費税額および地方消費税額を分けて記載します。 |
書類の交付を受ける事業者の氏名または名称 | 請求先の会社名や個人事業主の氏名を正確に記載します。 |
発行者の氏名または名称 | 自社(請求書を発行する側)の会社名や屋号、氏名を記載します。 |
なお、小売業等では記載事項を一部省略した、適格簡易請求書の使用も認められています。
税率ごとの計算と端数処理ルール
インボイス制度では、消費税額を適用税率(標準10%、軽減8%)ごとに計算をおこない、結果を請求書に区分記載します。
複数税率が混在する場合、税率ごとの取引総額と消費税額をわけて表示しなければなりません。インボイス制度の消費税の端数処理は、事業者間の計算ズレを防ぐための統一ルールです。個々の商品ごとに消費税計算と端数処理を繰り返すのではなく、請求書1枚につき税率ごと(10%・8%)に1回だけ処理します。
まず同じ税率の税抜合計額を出し、その合計に対して消費税を計算します。そこで生じた1円未満の端数を、自社で決めたルール(切り捨て等)で最後に一度だけ処理するのが正しい方法です。
修正インボイス発行のポイント
発行した適格請求書に誤りがみつかった場合、発行事業者は修正インボイスを交付する責任があります。誤った請求書は買手の仕入税額控除に影響し、信頼関係を損なうおそれがあります。
修正方法は主に2つで、ひとつは誤りを訂正し必要情報を記載したものを再交付する方法です。もうひとつは、誤った請求書との関連を示し、修正事項を明示した別書類を交付する方法です。なお、修正前後の請求書は双方で保存義務があるため、処分しないようにしましょう。
【時短】無料エクセル請求書テンプレート活用術
エクセルで請求書を作成するのが難しい方は、無料でダウンロードできるテンプレートの活用がおすすめです。以下2つのポイントをチェックしましょう。
- エクセル請求書テンプレートの探し方
- カスタマイズする際のポイント
これらを参考に業務効率化に役立ててください。
エクセル請求書テンプレートの探し方
無料のエクセル請求書テンプレートはインターネット上で簡単にみつかります。
テンプレートがあれば、一から作成する手間を省き、すぐに請求書作成を開始できます。ビジネス情報ポータルやMicrosoft Office公式サイトで紹介されているものを使用したり、「請求書 テンプレート 無料 エクセル」などで検索したりするのがおすすめです。テンプレートを選ぶ際は、インボイス対応の有無や自社に合うデザインかどうかを確認します。
カスタマイズする際のポイント
無料テンプレートは、自社の業務や法的要件に合わせカスタマイズするとより便利に使用できます。
テンプレートは汎用的に作られているため、特有事項やインボイス制度に未対応の場合があります。自社のロゴや会社情報、適格請求書発行事業者の登録番号を正確に入力し、オリジナルの請求書を完成させましょう。好みに応じて文字のフォントやデザイン、カラーなども調整するとよいでしょう。
エクセルで請求書を作る際の注意点
エクセルで請求書を作成する際の注意点として、下記3つのポイントを把握しておきましょう。
- 請求書のデータ消失に注意する
- 数値の入力漏れに注意する
- 二重請求にならないようにする
これらを押さえておくことで、請求書業務におけるミスやトラブル軽減の効果が期待できます。
関連記事:【発行・受領別】請求書をエクセルで管理する方法とは?手順や効率化のコツも解説
請求書のデータ消失に注意する
エクセルの請求書データは、PCの故障や誤操作で消失するリスクがあります。重要書類である請求書のデータ消失を防ぐため、定期的なバックアップが不可欠です。外部の記憶媒体を用いたり、クラウドストレージへの自動バックアップを有効にしておいたりするとよいでしょう。
数値の入力漏れに注意する
請求書の金額や数量、単価の入力ミスは、請求額全体の誤りに直結するため、細心の注意が必要です。対策として、入力が必須のセルに着色したり、Excelの「データの入力規則」機能で数値制限をかけたりすると、入力漏れや誤りを防げます。
また、合計金額は手計算を避け、SUM関数などで自動計算させることが計算ミスをなくすうえで効果的です。作成後はセルフチェックはもちろん、可能であれば他の人にも確認してもらうダブルチェック体制を整えましょう。
二重請求にならないようにする
エクセルで請求書を管理していると、同じ内容の請求書を2度発行してしまう「二重請求」が起こることがあります。
これは取引先に大きな迷惑をかけ、会社の信用を失う原因になってしまいます。このようなミスを防ぐためには、発行した請求書の情報や入金状況を一覧で管理できる、管理表などを用意するとよいでしょう。請求書番号には年度や日付、取引先の固有番号など、社内の誰がみても分かりやすいルールを決めておくと管理しやすくなります。
建設業の請求業務を効率化する方法
ここでは、建設業の請求業務を効率化する方法を2つ紹介します。
- 請求管理システムを導入する
- エクセルから請求管理システムへ移行するメリット
以下で詳しくみていきましょう。
請求管理システムを導入する
建設業の複雑な請求業務を効率化するには、専用の請求管理システムの導入が効果的です。
請求管理システムは建設業特有の業務フローを考慮したうえで設計されているため、業務の自動化と標準化を支援します。見積書から請求書へのデータ連携や工事台帳連携など多くの機能を兼ね備えています。リアルタイムで数値がチェックできるようになるため、経営戦略を検討する際にも役立つでしょう。
エクセルから請求管理システムへ移行するメリット
エクセルから専用の請求管理システムへ移行することで、データの一元管理や業務の自動化などが実現可能です。
エクセルの関数やマクロなども業務効率化に便利な機能ですが、建設業専用の請求管理システムなら、さらなる自動化を推進できます。
クラウド型の請求管理システムはいつでも最新情報へアクセスできるため、他部門との連携も円滑におこなえます。お金の流れを瞬時に把握できれば経営判断の材料になるため、会社にとって大きなメリットとなるでしょう。
建設業界に特化した請求管理システムなら「ANDPAD請求管理」がおすすめ
「ANDPAD請求管理」は、建設業界の実務に即した請求業務をクラウド上で一元管理できる、建設業特化型の請求管理システムです。主な機能には以下があげられます。
- 請求書の管理
- 注文情報照合
- 出来高査定
- 立替金相殺
- 電帳法準拠の承認・保管
- 会計ソフトとの連携
これらの機能により、紙やExcelに依存した属人的な業務から脱却し、現場と経理がリアルタイムでつながり、手間やミスを削減できます。オプションとしてBPOサービスも用意されており、人材不足の企業を多角的にサポートしています。
株式会社柴田建設さまの事例:請求書処理を抜本的に効率化、若手が働きやすい環境を実現
株式会社柴田建設様は、栃木県宇都宮市で公共建築や木造住宅を手がける会社です。
ANDPAD導入前は紙ベース業務が中心で、請求書処理に時間がかかっており残業が常態化していたそうです。業務効率化を狙い「ANDPAD請求管理」を導入したところ、これまで1日半程度かかっていた作業が、なんと約1時間に短縮されました。
同社では、若手社員が働きやすい環境整備と業務効率化も目標としており、ANDPAD請求管理の導入によって見事叶えられました。請求管理機能に加え、施工管理に役立つ機能も充実しており、データの検索性も向上し、顧客からの問い合わせ対応もスムーズになったそうです。
さらに詳しいインタビュー内容は、以下のページからご覧ください。
参考:請求書処理を抜本的に効率化、若手が働きやすい環境を実現
まとめ
本記事では、エクセルで請求書を作成する基本的な手順、インボイス制度に対応するための重要項目、そして関数やマクロを活用した業務効率化の方法を解説しました。また、データ消失や入力ミスといった、エクセルならではの注意点にも触れました。
正確な請求書の発行は、取引先との信頼関係を維持し、企業の健全なキャッシュフローを守るための根幹です。エクセルは手軽な一方、手作業に起因するリスクも伴います。まずは紹介した手法を実践し、現在の業務プロセスの精度を高めることが重要です。
そのうえで、将来的には建設業特有の複雑な業務フローに対応した請求管理システムの導入を検討することが、事業の成長を加速させる鍵となります。今回の知識をもとに、ぜひ請求業務の抜本的な見直しに着手し、強固な経営基盤を築き上げてください。