出面表とは、働いた人の氏名、時間、日数、現場などを表にした書類のことです。この記事では、建設業で出面表を作成する目的や記載する項目、作成や管理方法について解説します。出面表を取り入れたいと考える人は、参考にしてください。
出面表の概要
出面表とは、具体的にどのようなものを指すのでしょうか。以下では、出面表とはどのようなものか、出面の意味や読み方と合わせて詳しく解説します。
出面とは
出面の読み方は、「でづら」「でめん」です。建設用語では、職人の出勤日数を指します。出面の持つ「顔出しをする」の意味から派生して、使われるようになりました。個人では、出面が報酬につながるため、直接日当のことを指すこともあります。
出面表とは
出面表とは、どの現場で誰が、いつ、何時間、建設現場で作業したかを表にした書類のことです。従業員の出勤簿のようなもので、勤怠簿を出面帳とよぶこともあります。
出面表の目的
出面表を利用することで、管理の手間が省け、業務改善につながります。以下では、目的を5つに分けて解説します。
労務管理のため
出面表があれば、労働者名簿、賃金台帳、出勤簿を作成する手間を省くことが可能です。労働基準法により、企業は労務管理として、労働者名簿・賃金台帳・出勤簿の「法定三帳簿」をつける義務があります。出面表で労働者の氏名や出勤状況、給料の支払い状況を把握可能です。
賃金管理のため
建設業の契約には、常用契約と請負契約があります。常用契約とは定められた仕事に対して、働いた時間分の報酬を支払う契約です。そのため、発注は日数単位で給料も日当です。請負契約は、請負人と特定の仕事を完成させる契約を結び、その成果に対して報酬を支払う契約です。2つの異なる契約も、出面表で給料の支払い状況を把握することで、管理ができます。
安全管理のため
無災害労働日数の作成に、出面表が役立ちます。無災害労働日数は、工程の日数に作業員の数をかけて算出するためです。無災害労働日数とは、業務災害が発生した翌日から、次の業務災害の発生日前日までの日数です。ここでいう災害とは、業務上の死亡災害、休業災害、身体障害等級表に掲げる身体障害を伴うもので、労災申請をしたものです。
業務改善のため
出面表を利用して、労働時間の長さに問題がないか、無理な作業が続いていないかなどを確認できます。従業員の労働時間を可視化することは、適切な人員配置とスケジュール管理、労働環境の整備につながるでしょう。
出面表に記載する項目
出面表に記載する項目には一体何があるのでしょうか。出面表に記載する項目や書き方について解説します。
現場責任者名
現場責任者名は、出面表の左上に記載します。誰が責任者であるか、第三者にもひと目でわかることが大切です。
工事現場名
建設業では、さまざまな現場を扱います。工事現場名は、どの現場かを判断するために重要です。省略したり、通称を使ったりせず、正式名称で記載しましょう。
氏名
現場で作業する従業員や作業員の名前を、フルネームで記載します。同姓の人がいる可能性もあるためです。現場責任者とは別の欄に、従業員や作業員のフルネームを記載します。
労働期間・日数
勤務日と働いた時間を記入します。週・月単位で記載することが基本です。入退場管理と連動することで、記入漏れを防げるでしょう。
工程内容・職種
従業員がどの工程、職種にかかわったかを細かく記載します。複数の人が同じ現場で働くため、工種は「現場監督」「足場」など、詳しく書きましょう。協力会社と直接請負会社の職種が混在しないよう、明確に分けておきます。
労働形態
通常だけでなく、時間外労働や休日労働が発生することもあるため、労働形態についても記載します。通常労働・休日労働・時間外労働・深夜労働を区別することで、正確に賃金計算ができます。
出面表を書く手順
出面表を書くには、一体どのような手順を踏めばよいのでしょうか。出面表は、以下の手順で記載します。
プロジェクトの名称、場所、人員の氏名、連絡先、使用機材の量など、情報をまとめる
出面表のフォーマットを決める。必要に応じて、日付、人員などの項目を記載する
作業内容や日程ごとのプランを整理する
記入した情報を精査し、関係者に共有する
進捗状況に合わせて、都度更新する
出面表の作成方法
出面表は、紙やエクセルなどで作成できます。それぞれの特徴を解説します。
紙で作成する
出面表は手書きでの作成も可能です。紙はツールやプログラムなどの操作方法を覚える必要がなく、誰でも書けるメリットがあります。しかし、1枚1枚に必要な情報を書き込むため、手間がかかるうえ、誤記入や計算ミスなどの人的ミスを引き起こす可能性もあります。ミスを防ぐためには、ダブルチェックが欠かせません。
ツールを活用する
ソフトやアプリなどのツールを活用する方法です。ツールを導入したパソコンやスマートフォンから直接作成できるため、出面表作成のために自社に戻る必要がありません。また、自動計算機能を搭載しているものであれば、管理負担が削減できます。ソフトを導入するコストや慣れるまでの時間がかかる点には、注意が必要です。
テンプレートから作成する
公開されているテンプレートをダウンロードして、出面表を作成できます。
実労働時間・残業時間・早出時間・深夜時間・残業理由が記入できるテンプレート
実労働時間、残業時間、早出時間、深夜時間、残業理由の5項目が記入できるテンプレートです。合計時間や、賃金の計算式を追加できます。
参考:実労働時間・残業時間・早出時間・深夜時間・残業理由が記入できるテンプレート
Excel関数で日付と曜日が自動表示できるテンプレート
年月を入力すると、日付・曜日・土日に色が自動的に表示されます。記載できる項目は、氏名、勤務時間のみです。
参考:Excel関数で日付と曜日が自動表示できるテンプレート
カレンダー管理ができるテンプレート
カレンダー管理ができるテンプレートで、建設業の出面表としても使えます。管理や編集の機能も付いています。
Excel(エクセル)を活用する
Excel(エクセル)は、マイクロソフトのソフトウェア「Microsoft Office(マイクロソフト オフィス)」に入っている、表計算ソフトです。オフィスが入ったパソコンが1台あれば、テンプレートを使って記入ができます。関数を使った計算式を利用すると、時間を削減できるうえ、より正確な出面表の作成が可能です。出面表の作成に役立つExcel関数は、次で解説します。
SUM関数(合計)
SUM関数(合計)は、指定した範囲内の数字を合計する関数です。作業員の勤務時間や日数の合計に活用できます。=SUM(C1:C10)と入力することで、C1からC10までのセルの合計を得ることが可能です。
IF関数(条件付き)
IF関数(条件付き)は、条件を満たすかに基づき、異なる結果を返す関数です。それぞれの時間帯ごとに稼働する人数をカウントし、人員の過不足を算出できます。=IF(B1>12, “手当あり”, “手当なし”)と入力すると、B1セルが12より大きい場合「手当あり」となります。
AVERAGE関数(平均)
セルの平均値を求める関数です。指定した範囲の複数の値の平均値を算出できるため、作業員の平均勤務時間や出勤日数を把握できます。=AVERAGE(A1:A8)を使うと、A1からA8までのセルの平均値が計算可能です。
出面表の管理方法
出面表は、自社に合った方法で管理しましょう。3つの方法について解説します。
紙で管理する
従来は、紙での管理が当たり前でした。紙の出面表は、紛失や劣化、水濡れ、破損などのリスクを防ぐため、慎重に取り扱う必要があります。保管場所も必要です。
Excelデータで保存する
Excelで作成した出面表を、そのままファイルとしてデータで保存する方法です。変更や修正があった際に、リアルタイムで共有できない点は、デメリットといえるでしょう。
クラウド型サービスで管理する
パソコンやスマートフォンで作成できる、クラウド型のサービスやツールを活用すれば、複数のデバイスで管理可能です。クラウド上にデータが保存されているため、データを共有して、リアルタイムでの変更や修正もできます。
出面表を管理するポイント
出面表を管理するには、いくつかポイントがあります。出面表を管理する際は、ミスを防ぐために2つのことを意識しましょう。
エリアごとに担当者を決める
建設現場が大きければ大きいほど管理する項目が多くなり、把握が困難です。1人で管理すると、ミスにつながりかねません。作業員や時間などを把握する担当を、エリアごとに決めましょう。
ダブルチェックを徹底する
記載漏れ、記載間違いなどのミスを防ぐために、ダブルチェックを徹底しましょう。自分のミスは、気づきにくいものです。上司とデータを共有し、ダブルチェックすれば、記載漏れを防げます。
出面表を管理する際の注意点
以下では、出面表を管理する際の注意点を3つ解説します。
記入をルーティンワークにする
出面表は、空いた時間に記載するのではなく、時間を決めましょう。ルーティンワークにすれば、記入漏れを防げます。
情報漏洩に注意する
出面表には、会社にとって重要な情報も記載してあります。管理途中の出面表を誰でも閲覧できる状態で、席を立ってはなりません。カギをかけた引き出しにしまう、パソコンを閉じるなど第三者から見えないようにしましょう。
現場や社内で出面表を共有する
出面表の管理者が不在の場合、記入や管理は代理人が行います。出面表を社内や現場で共有し、担当者が不在でもスムーズに対応できるようにしましょう。共有ファイルの中に、出面管理表を入れるとよいでしょう。
まとめ
出面表を作成すると、作業員の労働時間や安全を管理できるだけでなく、適切なスケジュール、人員配置ができるようになり、業務効率化につながります。出面表は、従来の紙以外に、Excelやテンプレートを使った作成方法もあります。自社に合った方法で作成し、情報漏洩や紛失などに気を付けて管理しましょう。
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