施工体系図は、施工の関係者を図でまとめているものです。工事の内容や工期なども把握でき、現場で掲示して利用します。この記事では、施工体系図の概要や作成する目的、施工体制台帳との違いなどを解説します。保存や掲示の義務、書き方も解説するので、ぜひ参考にしてください。
施工体系図とは
施工体系図は、樹形図を用いて、工事を担当する会社をわかりやすくした図です。大まかに分けると、現場、元請会社、協力会社に関する項目があります。それぞれがツリー型に記載されており、工事の体制や会社の役割などを把握できます。工期や工事内容も、図で把握することが可能です。
施工体系図を作成する目的
施工体系図を作成する目的は、以下のとおりです。
すべての工事関係者が施工の体制を把握できること
施工における役割分担や責任を明確にすること
技術者の配置が適正かどうかを確認すること
施工体系図は、工事に関係する全員が見るものです。そのため、各協力会社の施工分担関係が、一目で把握できることが大事です。
施工体制台帳との違い
施工体系図は、施工体制台帳の内容をシンプルにまとめたものです。工事の名称や内容、工期など、工事の情報の詳細が記載されています。施工体制台帳は、建設業法によって作成義務があるため、元請会社が着工前に作成しなければなりません。
施工体系図の作成・保存義務
施工体系図は、施工体制台帳と同じく作成する義務があります。建設工事は、適正に施工しなければならないためです。また、工事現場に1人の監理技術者を置くことも必要です。施工体系図には、営業関連の図書としての保存義務もあります。営業所ごとに、建設物を引き渡してから、10年間は保存しなければなりません。
公共工事での義務
すべての公共工事において、施工体系図の作成は義務です。工事を受注した元請会社が、下請契約を締結する際に作成しなければなりません。公共工事の場合、施工体系図は工事の関係者だけでなく、市民が見やすい場所に掲示することも義務付けられています。大きめのサイズのものを作成し、目につきやすい場所に掲示しましょう。
民間工事での義務
民間工事も、施工体系図の作成が義務です。ただし、契約の段階では作成の義務がなく、下請金額の総額が5,000万円以上の場合に作成します。建築一式工事の場合は、8,000万円以上の際に作成することが条件です。民間工事の場合、施工体系図は工事関係者に見やすい場所に掲示する必要があります。
義務違反時の罰則
施工体系図を作成しなかったり、虚偽の内容を記入したりした場合は、罰則を受けます。7日以上の営業停止処分が課されるため、必ず作成しましょう。義務に違反した場合は、民間工事と公共工事どちらも営業停止になるため注意が必要です。直接工事を請け負った特定建設業の会社は、協力会社に違反がないように指導が求められます。
施工体系図の書き方と記入例【左側部分】
施工体系図の左側には、発注者名や工事名を記入します。ここでは、書き方を解説します。
発注者
発注者名には、工事を依頼した組織の名称を記入します。企業から工事を受注した場合は「企業名」、公共事業を受注した場合は「発注した都道府県」や「市町村」などを記入しましょう。
工事名
工事名に記入するのは、発注元から依頼された工事の内容です。元請会社が、受注した工事の内容を記入します。「○○(建物名)建設工事」のように、建物名に工事をつける書き方にします。
元請名(事業者ID)
元請名には、発注元の依頼を受注した企業の名称と事業者IDを記入します。事業者IDとは、建設キャリアアップシステムに登録している会社がもつものです。未登録の場合、事業者IDを記入する必要はありません。
監督員名
監督員名は、監督者の名前を記入します。監督員の役割は、一次協力会社を取り締まることです。工事の中心人物として現場に配置され、確認や立ち会い、進行などを担当します。
監理技術者・主任技術者名
監理技術者・主任技術者の名前を記入します。監理技術者は、下請金額が4,500万円以上、または7,000万円以上の工事に必須です。主任技術者は、すべての現場に配置しなければなりません。
専門技術者名・担当工事内容
現場ごとの担当者名と担当する工事内容を記入します。専門技術者には、主任技術者の資格や経験が必要です。下請金額500万円以上の専門工事を受注する場合、資格保持者を配置しなければなりません。
統括安全衛生責任者
統括安全衛生責任者とは、作業員が50人以上の現場に、配置されるのが義務の役職です。しかし、圧気工法や、ずい道橋梁建設などの場合、作業員が30人以上でも統括安全衛生責任者が配置されます。
副会長
副会長には、元請会社が選出した人物の名称を記入します。協力会社から選出された担当者の名前を記入しましょう。共同企業体が指定されている場合は、企業体を形成する事業者の名称の記入が必要です。
元方安全衛生責任者
統括安全衛生責任者が選任した人物の名前を記入しましょう。元方安全衛生責任者は、統括安全衛生責任者のサポート業務を請け負います。作業現場の巡視や安全面の指導など現場のサポートだけでなく、組織の運営も行います。
書記
書記は、議論を目録に収めるために選出される役割です。災害防止協議会で議論された内容をまとめる人の名前を記入しましょう。
施工体系図の書き方と記入例【右側部分】
施工体系図の右側には、工期や会社名などを記入します。ここでは、書き方を解説します。
工期
工事には、契約書にある工期を記入します。工事開始日は「自」の欄、工事終了日は「至」の欄に記入してください。西暦ではなく、元号を使った年月日を用います。
会社名(事業者ID)
協力会社の名称、もしくは事業者IDを記入します。縦には、元請会社と協力会社と契約した企業名を記入しましょう。横には、協力会社と契約した、二次や三次の協力会社の名称の記入が必要です。
代表者の氏名
代表者とは、工事の中心となる人物のことです。該当の人物のフルネームを記入してください。
工事の内容
具体的な工事の内容を記入します。たとえば、雑居ビル・鉄筋コンクリート造・階数、延べ面積などです。工事が複数ある場合、枠内にまとめて記入しなければなりません。
特定専門工事
特定専門工事は、「有」もしくは「無」と記入します。金額が4,500万円未満かつ、鉄筋・型枠工事などの条件を満たす場合は「有」、それ以外の工事の場合は、「無」と記入しましょう。
安全衛生責任者
安全衛生責任者は、事業所の安全を任せる人の名前を書きます。たとえば、現場代理人や主任技術者又は職長などから選出されます。安全衛生責任者を選任する際、資格は必要ありません。
主任技術者
主任技術者は、現場の技術管理を任される人のことです。公共工事、かつ元請会社と4,000万円(建築一式工事の場合は8,000万円)以上の契約をする場合、現場に常駐することが義務です。
専門技術者・担当工事内容
専門技術者の名前だけでなく、附帯工事の内容も記入します。専門技術者は、協力会社に500万円以上の工事を依頼する場合、配置が義務です。指導や安全管理だけでなく、現場によって専門工事が附帯する場合があります。
工期
自社の工事にかかる日数を記入しましょう。協力会社が引き受けた現場の工期を記入してください。記入する際は、右側上部に記入した元号と同じものを用います。
まとめ
施工体系図は、施工の担当が一目でわかるものです。各工事の担当者や、発注元の会社、元請け会社、協力会社などの把握が可能です。公共工事と民間工事には、それぞれ作成や保管の義務があります。違反した場合、罰則を受けるため必ず作成しましょう。
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