経営者や経理担当者の方のなかには「支払請求書が何かわからない」「支払請求書の書き方が知りたい」このような課題をお持ちの方も多いのではないでしょうか。この記事では支払請求書の基本から、支払い依頼書や支払通知書との違いなどを解説します。
さらに、業務効率化を実現するシステム導入のポイントや、保管期間などの法的要件についてもまとめています。これらの知識を得ることで、支払処理のミスや手間が大幅に削減され、経理業務がスムーズにおこなえるでしょう。建設業における日々の請求管理にお悩みの方は、ぜひ参考にしてください。
支払請求書とは?
まずは支払請求書の基礎について、以下4つの観点から解説します。
- 支払請求書の基礎
- 支払い依頼書との違い
- 支払通知書との違い
- 支払明細書との違い
似ている単語が多く混同されやすいですが、それぞれの違いを把握しておきましょう。
支払請求書の基礎
支払請求書は、提供した商品やサービスの対価の支払いを取引の相手方に正式に求めるための書類です。支払請求書と関連する主な書類の違いは、以下のとおりです。
書類名 | 主な発行者 | 主な目的 | 主な宛先 |
支払請求書 | 売り手(サービス提供者) | 商品やサービスの対価支払いを要求する | 買い手(サービス利用者) |
支払い依頼書 | 社内の支払い担当部署・担当者 | 社内での支払い処理を依頼し承認を得る | 社内の経理部門・承認者 |
支払通知書 | 買い手である支払者 | 支払いをおこなったこと、またはおこなう予定を通知する | 売り手である受取人 |
支払明細書 | 支払う側である買い手や企業の人事部など | 支払金額の内訳や計算根拠を明示する | 受け取る側である売り手や従業員など |
支払請求書には、取引の日時や具体的な内容、金額、支払期限といった情報が明記されます。支払請求書によって客観的に取引の詳細を確認できると、発注者と受注者間における認識の相違が発生しにくくなります。
また支払請求書は、取引があったことの法的な証拠となるだけでなく、社内で会計処理をおこなう際にも役立つ書類のひとつです。インボイス制度の開始に伴い、登録番号や適用税率、税率ごとの消費税額などが記載された適格請求書がなければ、原則として仕入税額控除を受けられなくなりました。
したがって、正確な支払請求書の作成と管理は、円滑な企業活動と適切な税務処理に不可欠といえるでしょう。
支払い依頼書との違い
支払い依頼書は、会社内部で特定の支払いをおこなうために、経理部門や承認者に対してその処理を正式に依頼する際に使用される書類です。支払請求書は「会社対会社」あるいは「会社対個人」といった社外の取引相手への支払いを求めるものです。
一方の支払い依頼書は、会社内の手続きを進める際に用いられます。この書類には、支払先の情報や支払金額、根拠となる支払請求書の番号のほか、どの部門の経費として処理するかといった情報が盛り込まれるのが一般的です。
支払通知書との違い
支払通知書は「指定された金額をいつ支払います」あるいは「支払いました」という事実や予定を通知するために発行する書類です。支払請求書が売り手から買い手への支払いの要求であるのとは対照的に、支払通知書は買い手から売り手への支払いの意思表示、または完了報告としての意味合いを持ちます。
この書類を発行することで、売り手は多数の入金のなかからどの取引先からの入金であるかを特定しやすくなり、入金確認や消込作業がスムーズにおこなえます。
支払明細書との違い
支払明細書は、支払われる金額がどのような計算にもとづいて算出されたのか、その内訳を詳細に示した書類です。支払請求書が取引全体に対する総支払額の要求であるのに対し、支払明細書はなぜその金額になるのかという根拠を示すことを目的として作成されます。
多くの場合、買い手や給与を支払う企業といった支払う側が作成し、売り手や従業員などの受け取る側に交付されます。身近なものでは、毎月の給与明細書も従業員にとって支払明細書の一種です。
支払請求書の書き方
ここでは、支払請求書の書き方について、以下2つのポイントを紹介します。
- 記載必須な項目一覧
- 支払請求書のテンプレート
正しい支払請求書を作成するコツを知って、業務効率化を目指しましょう。
記載必須な項目一覧
支払請求書を正確に作成することは、法律上の要件を満たすだけでなく、取引先との後のトラブルを避け、スムーズな入金を得るための第一歩です。
とくに2023年10月1日から始まったインボイス制度(適格請求書等保存方式)により、消費税の仕入税額控除を受けるための記載要件がより厳格になりました。以下に、支払請求書に必ず記載すべき項目をまとめます。
インボイス制度における主な必須記載項目
項目 | 内容 |
適格請求書発行事業者の登録番号 | 「T」から始まる13桁の番号です。この番号の記載漏れは、買い手側が仕入税額控除を受けられなくなる可能性があるため、発行側は細心の注意が必要です。 |
取引年月日 | 商品やサービスの提供が完了した日付など、具体的な取引の日付を記載します。 |
取引内容 | 提供した商品名やサービス内容を具体的に記載します。軽減税率の対象品目が含まれる場合は、その旨を明確に記載する必要があります。 |
税率ごとに区分して合計した対価の額(税抜または税込) | 適用される税率(10%・8%)ごとに、取引の合計金額を税抜または税込で記載します。 |
適用税率 | 税率ごとの合計金額に対応する税率を明記します(10%・8%)。 |
税率ごとに区分した消費税額等 | 適用される税率ごとに、消費税額および地方消費税額を分けて記載します。 |
書類の交付を受ける事業者の氏名または名称 | 請求先の会社名や個人事業主の氏名を正確に記載します。 |
発行者の氏名または名称 | 自社(請求書を発行する側)の会社名や屋号、氏名を記載します。 |
上記に加えて、以下の項目も記載することで、社内管理の効率化や取引先への配慮につながります。
- 請求書番号:社内での管理や問い合わせ時の特定を容易にするため、独自の番号を付与します。
- 支払期日:支払いをお願いする期限を明記します。
- 振込先口座情報:銀行名、支店名、口座種別、口座番号、口座名義を正確に記載します。
支払請求書を作成する際は、これらの項目を忘れずに記載しましょう。
請求書の書き方については、以下の記事でも詳しく解説していますので、ぜひあわせてご覧ください。
関連記事:請求書の内訳の書き方は?記載例や必要項目、請求明細書との違いをまとめて解説
支払請求書のテンプレート
請求書作成に便利なテンプレートは、インターネット上に数多く存在します。ここでは、そのなかでも手軽に利用できるExcel形式の請求書テンプレートを2種類ご紹介します。
1. シンプルな縦型Excelテンプレート
こちらは、一般的な縦長のレイアウトでデザインされたExcelシートです。
参考:テンプレート
2. インボイス制度対応型Excelテンプレート
次にご紹介するのは、適格請求書等保存方式(インボイス制度)の要件を満たした設計となっているExcelテンプレートです。
参考:テンプレート
このほかにも無料でダウンロードできるテンプレートは複数ありますので、使いやすいものを探してみるとよいでしょう。
支払請求書の作成から保管までの流れ
実際に支払請求書を作る際の流れについて、以下3つのステップで確認してみましょう。
- 支払請求書の作成
- 支払請求書の発行から送付
- 支払請求書の保管
正しい税務処理とスムーズな事業運営のためには、これらの各段階を適切におこなうことが求められます。
支払請求書の作成
支払請求書の作成は請求業務全体の出発点であり、取引の対価を正確かつ確実に回収するための大切な工程です。この段階での正確性が、後の入金管理や取引先との信頼関係に大きく影響します。
作成後は別の担当者による内容の確認(ダブルチェック)をおこない、ミスを未然に防ぐ体制を整えておきましょう。会計ソフトや請求書発行システムを利用すると、計算ミスや記載漏れのリスクを減らし、効率的に作成できるのでおすすめです。
支払請求書の発行から送付
社内の承認プロセスを経た支払請求書は、次に取引先へ確実に届ける発行・送付のステップに移ります。
これは、期日通りの入金とキャッシュフローの安定化につながる重要な作業です。まず、発行日を確定し、請求書に管理番号を付与します。送付方法は、取引先との間で事前に取り決めた方法を選択するのが基本です。主な方法として以下があげられます。
- 郵送
- 電子メール
- 電子請求書発行システム
- FAX
電子メールの場合は、PDFファイル形式で作成し、送信するのが一般的です。なお、不着時のトラブルを回避するために、送付した証跡(送信記録や郵便の追跡番号、システムのログなど)を残しておきましょう。
支払請求書の保管
支払請求書は発行した側も受け取った側も、法律で定められた期間、適切に保管する義務があります。原則として、法人の場合はその事業年度の確定申告書の提出期限の翌日から7年間、個人事業主の場合は5~7年間の保存が必要です。
紙で作成・受領した請求書は、月別や取引先別にファイリングし、紛失や破損がないように管理します。
一方、電子メールで受け取ったPDFの請求書や、電子請求書システムを通じて授受したデータなどは「電子帳簿保存法」の要件に従い電子データのまま保存することが基本です。電子帳簿保存法で定められている要件の一例は、以下のとおりです。
- データの真実性を確保すること
- 必要に応じて速やかに表示・印刷できること
- 取引年月日・取引金額・取引先名で検索できる機能を確保すること
それぞれの要件を把握し、支払請求書を適切に保存しましょう。
請求書の保管方法については、以下の記事でも詳しく解説していますので、ぜひ参考にしてください。
関連記事:請求書のファイリング方法をわかりやすく解説!効率化する方法やポイントもご紹介
建設業の請求書処理を業務効率化する方法
ここでは、請求書処理を効率的におこなうためのコツを紹介します。
- 請求書業務のプロセスを可視化する
- 請求書情報をシステムで一元管理する
- 請求書のやりとりをデジタル化する
- 現場と事務所で情報を共有する
事業を円滑に進めるためにも、これらのポイントをおさえておきましょう。
請求書業務のプロセスを可視化する
まず取り組むべきことは、現在自社でおこなわれている請求書処理の全プロセスを「見える化」することです。
これにより、どこに時間がかかり、どのような無駄があり、どこで業務が滞留しやすいのか問題点を具体的に特定できます。建設業では現場にいる工事担当者のほかに、経理や事務の担当者など、多くの部署が関わります。関わる人数やプロジェクトが増えるとともに、請求プロセスも複雑化しがちです。
これらの各工程にかかる時間や手間を記録することで、どこに改善のメスを入れるべきかが明確になり、改善につなげやすくなります。
請求書情報をシステムで一元管理する
紙のファイルや個々の担当者のパソコン内、あるいは部署ごとに異なるExcelファイルなどで情報が分散していると、必要な情報を探すのに手間がかかります。
このような課題を解決するためには、請求書情報を専用のシステムで一元管理することが効果的です。クラウド型の会計システムや請求書管理システムなどを導入すれば、さまざまなデータを一か所に集約でき、数値の確認も瞬時にできるようになります。
さらに工事原価管理システムと請求データが連携できれば、プロジェクト全体の収支管理の精度向上も期待できます。
請求書のやりとりをデジタル化する
建設業における請求書業務では、今もなお多くの企業が紙の請求書でやり取りをおこなっています。
しかし、この方法は印刷代や紙代、郵送費といったコストがかかるだけでなく、書類の準備や発送作業に多くの時間を要します。こうした課題を解決し、業務を大幅に効率化するのが、請求書のやり取りのデジタル化です。
電子請求書発行システムを利用すれば、作成した請求書データをシステム上で取引先に送信でき、相手もオンラインで受け取ることができます。支払請求書をデジタル化することで、紙での保管に比べて紛失リスクもなく、情報も管理しやすくなるでしょう。
請求書の電子化については以下の記事でさらに詳しく解説していますので、ぜひ参考にしてください。
関連記事:請求書の電子化とは?メリット・デメリット、システム導入時のコツや注意点も解説
現場と事務所で情報を共有する
建設業の業務運営において、工事現場と事務所間における円滑な情報共有は欠かせません。
とくに請求書処理に関しては、現場で発生する経費の情報や、協力会社からの出来高報告、などの情報を正確に伝えることが求められます。この課題を解決するためには、ITツールを活用して現場と事務所がリアルタイムに情報を共有できる仕組みを構築することが不可欠です。
たとえば、クラウド型の建設プロジェクト管理システムや、スマートフォンやタブレットに対応した現場管理アプリ、あるいはモバイル機能が充実した請求書システムなどの導入がおすすめです。これらを活用することで、現場監督や作業員からの情報が事務所で漏れなくキャッチできるようになり、請求業務がよりスムーズにおこなえるようになるでしょう。
建設業の請求管理業務を効率化するなら「ANDPAD請求管理」がおすすめ
「ANDPAD請求管理」は、建設業における煩雑な請求書管理業務を効率化する、クラウド型の請求管理システムです。
ANDPAD請求管理の主な機能として、以下があげられます。
- 取引先からの請求書の受け取り
- 工事ごとの自動仕分け
- 専門的な出来高査定
- 立替経費の精算
- 電子帳簿保存法への対応
- 請求書の承認
- 注文番号や工種との紐付けによる正確な原価管理
- コストの見える化による効率的な予算管理
- 請求書データの出力
- 査定項目のカスタマイズ
ANDPAD請求管理を取り入れることで、これらの業務がスムーズにおこなえるようになります。請求書を受領する一連のプロセスをデジタル化することで、担当者の作業時間を大幅に短縮できるでしょう。
さらに、ANDPAD請求管理には、オプションとして請求書関連業務を代行するBPOサービスがあることも特徴のひとつです。人手不足に悩む企業様や、より戦略的な業務にリソースを集中させたい企業様にとって有効な選択肢となります。
株式会社柴田建設さまの事例:請求書処理を抜本的に効率化、若手が働きやすい環境を実現
ここでは、実際にANDPAD請求管理を導入した企業の事例を紹介します。
柴田建設株式会社様は、ANDPADを導入する以前、紙ベースの業務が中心であったため、業務の非効率化や残業の常態化といった課題を抱えていました。とくに、紙の請求書とデータの照合作業や、過去のデータの検索に多くの時間を要していたそうです。
ANDPAD導入後の効果として、請求業務が大幅に効率化され、会計システムへの入力作業時間が、1日半から約1時間に短縮されました。また、蓄積された請求データを活用することで、顧客に対して迅速なコスト提案が可能になったそうです。
将来的には、施工データを発注者と共有することで双方の業務効率化も目指し、さまざまな施策を組みあわせて働き方改革を実現していくそうです。単なる業務効率化だけに留まらず、従業員の働き方そのものにも良い影響を与える結果となりました。さらに詳しいインタビュー内容は、以下のページからご覧ください。
参考:請求書処理を抜本的に効率化、若手が働きやすい環境を実現
まとめ
本記事では、支払請求書の基礎知識やインボイス制度に対応した請求書の書き方、保管までの実務フローなどを紹介しました。
支払請求書を正確に理解し適切に扱うことは、円滑な取引の実現や健全なキャッシュフロー維持に寄与します。請求書業務のプロセスを見直し、デジタルツールなどを活用して効率化を図ることは、生産性の向上に直結します。
ここで得た知識が、日々の請求業務における正確性の向上や、より戦略的な業務改善への取り組みを後押しするものとなれば幸いです。建設業における請求管理や、業務全体の効率化を目指したい担当者の方は、ぜひANDPAD請求管理の導入をご検討ください。