注文請書は、建設業と密接に関係している文書です。注文書と混同されやすい文書ですが、実際には意味が異なります。この記事では、建設業の注文請書に収入印紙が必要な理由や、契約金額別に収入印紙の負担額などを解説します。注文請書の特徴や他の文書との違いも解説するので、参考にしてください。
注文請書とは
注文請書は、受注者が「注文内容を了承した」といった意思を示す文書です。請負契約は、通常、発注者が問い合わせをして、受注者が見積書を発行するという手順で実施されます。発注を決めたら発注者は受注者に注文書を送付します。受注者は、注文書を受け取った後、発注者に「注文請書」を発行します。
注文請書と注文書・契約書の違い
注文請書は、注文書や契約書と混同されやすい文書ですが、意味が異なります。ここでは、それぞれの違いについて解説します。
注文請書と注文書の違い
注文書と注文請書は、発行する人の立場が異なります。注文書は発注者が、注文請書は受注者が発行する文書です。注文書は、発注書とも呼ばれますが、意味はほぼ同等です。通常、注文書と注文請書が2つそろうことで、契約成立と見なされます。
関連記事:工事注文書とは?記載項目や作成方法、効率化におすすめのシステムなど紹介
注文請書と契約書の違い
注文請書と契約書は、目的が大きく異なります。契約書は、工事内容を含むすべての取引条件について、発注者と受注者が合意したうえで発行される文書です。取引の証明以外に、取引内容を明確にできる文書でもあります。一方で、注文請書は、受注者が注文を受けたことを確認する文書であり、契約が成立したことを示す証拠にはなりません。
注文請書の主な記載項目
注文請書の記載項目は、主に5つです。ここでは、5つの記載項目を解説します。
1. 発行日
注文請書には、書類の発行日を記載します。注文請書の発行日は、注文書記載の日付よりも前の日付にはできません。通常、注文請書は注文書発行後に発行されるため、日付にズレがあると契約の流れに齟齬が生じます。ただし、2つの書類の発行日が同じであれば、問題ありません。
2. 発注者の情報
注文請書には、発注者を明らかにするために、発注者側の企業名や電話番号、住所、担当者名など、発注者の情報を記載します。通常、注文書に記載された内容をそのまま記載すれば、問題ありません。
3. 受注者の情報
注文請書には、受注者を明確にするために、受注者側の企業名や電話番号、住所、担当者名など、受注者の情報を記載します。受注者の情報が明記されていれば、注文内容に対して問い合わせたいときに、迅速に対応できます。
4. 注文内容
注文請書には、注文を受けた工事やサービス内容について、具体的に記載します。工事名称や商品名、金額、単価、数量、納期などが該当する項目です。合計金額の欄には、税抜価格、消費税額、税込価格を記載しましょう。品目によっては、単価や数量などを明記するケースもあります。
5. 支払条件
注文請書には、支払期日や支払方法など、支払条件についても記載します。支払条件の記載は、トラブルを回避するために必要です。記載例は、以下のとおりです。
支払期日:20△△年〇月〇日
支払方法:月末締め翌〇〇日払い
現金△△%、手形△△%、手形サイト〇〇日
注文請書に貼るべき収入印紙の金額
注文請書に貼るべき収入印紙の金額は、契約書に記載された契約金額によって異なります。注文請書に貼るべき収入印紙の金額は、以下のとおりです。
記載された契約金額 | 税額 |
1万円未満のもの | 非課税 |
1万円以上 100万円以下のもの | 200円 |
100万円を超え 200万円以下のもの | 400円 |
200万円を超え 300万円以下のもの | 1,000円 |
300万円を超え 500万円以下のもの | 2,000円 |
500万円を超え 1,000万円以下のもの | 1万円 |
1,000万円を超え 5,000万円以下のもの | 2万円 |
5,000万円を超え 1億円以下のもの | 6万円 |
1億円を超え 5億円以下のもの | 10万円 |
5億円を超え 10億円以下のもの | 20万円 |
10億円を超え 50億円以下のもの | 40万円 |
50億円を超えるもの | 60万円 |
契約金額の記載のないもの | 200円 |
なお平成26年4月1日から令和9年3月31日までの間に作成される注文請書については、印紙税額の軽減措置が適用されます。具体的な税額は以下のとおりです。
記載された契約金額 | 税額 |
1万円未満のもの | 非課税 |
1万円以上 100万円以下のもの | 200円 |
100万円を超え 200万円以下のもの | 200円 |
200万円を超え 300万円以下のもの | 500円 |
300万円を超え 500万円以下のもの | 1,000円 |
500万円を超え 1,000万円以下のもの | 5,000円 |
1,000万円を超え 5,000万円以下のもの | 1万円 |
5,000万円を超え 1億円以下のもの | 3万円 |
1億円を超え 5億円以下のもの | 6万円 |
5億円を超え 10億円以下のもの | 16万円 |
10億円を超え 50億円以下のもの | 32万円 |
50億円を超えるもの | 48万円 |
参考:No.7108 不動産の譲渡、建設工事の請負に関する契約書に係る印紙税の軽減措置
建設業の注文請書に収入印紙が必要な理由
注文請書は、請負契約と売買契約の2つに分けられます。そのなかで、請負契約に該当する契約金額1万円以上の注文請書には、収入印紙が必要です。請負契約の注文請書は、契約に合意し、成立したことを証明するものであるためです。ただし、すべての注文請書に収入印紙を貼らなければいけないわけではありません。売買契約に該当する注文請書は、収入印紙が不要です。
以下は、収入印紙が必要な文書の例です。
工事請負契約書
工事注文請書
物品加工注文請書
広告契約書
会計監査契約書
関連記事:注文書に収入印紙は必要?電子データの場合の対応なども解説!
収入印紙を貼り忘れた場合、どうなる?
課税対象となる注文請書に収入印紙を貼り忘れてしまった場合、印紙税法違反となり、印紙税のみならず過怠税が課せられます。収入印紙の貼り忘れについて自己申告をすれば、印紙税額の1.1倍が過怠税となります。しかし、税務調査で貼り忘れが発覚した場合は、印紙税額の2倍の過怠税を支払わなければなりません。
なお、過怠税は消印を忘れた場合も同様に発生するため、注意しましょう。
建設業の注文請書に収入印紙を貼る際によくある質問
ここでは、建設業の注文請書に収入印紙を貼る際によくある質問を4つピックアップし、解説します。
収入印紙は受注者と発注者のどちらが負担するか
一般的な契約書は2部作成されるため、収入印紙の費用は受注者と発注者で折半します。しかし、注文請書は1部のみ作成されることが多く、金額が少ない場合には、注文請書の作成者が収入印紙の費用を負担するケースが少なくありません。取引金額が大きい場合には、トラブル回避のために双方で事前に話し合い、どちらが負担するのかを決めましょう。
収入印紙の購入場所
収入印紙は、各市区町村役場や郵便局、法務局などで購入可能です。また、コンビニエンスストアや金券ショップで取り扱われている場合もあります。建設業では、契約金額が500万円を超えるケースが多く、印紙税額は1万円以上となることもあります。万単位の収入印紙を購入する際には、全種類を取り扱っている、郵便局と法務局の利用がおすすめです。
収入印紙の貼り方
収入印紙は、注文請書の表紙、または表題部分の左右にある空白箇所に貼るのが一般的です。左右どちらに貼っても構いません。貼り付け方は切手と同じで、裏面を濡らしてから貼ります。また、収入印紙を貼る際には、消印を押す必要があります。消印がないと、印紙税の納付が認められません。
収入印紙を誤って貼ってしまった際の対応
収入印紙を誤って貼った場合、所轄税務署長に対し「印紙税過誤納確認申請書」を提出するとともに、誤って貼った文書の原本を提示することを検討しましょう。所轄税務署長に誤って納めたことを確認してもらうことで、印紙税の還付を受けられます。収入印紙を貼った箇所を切り取ったり、用紙からはがしたりした場合、還付が受けられないため、注意しましょう。
まとめ
注文請書は、建設業と密接に関連しており、受注者が発行する必要があります。請負契約に該当する契約金額1万円以上の注文請書の場合、収入印紙を貼らなければなりません。収入印紙の貼り方を正しく理解し、適切に対応しましょう。
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