現場管理費は建築業や土木業に欠かせない経費の1つです。正確な見積もりや正しい費用計上のためには、現場管理費についての知識を得ることが大切です。
本記事では、現場管理費の項目や一般管理費との違い、重視される理由などを解説します。現場管理費を設定するうえでの注意点もまとめているので、ぜひ参考にしてください。
現場管理費について
まずは、現場管理費の基本知識や、一般管理費との違いを見ていきましょう。
現場管理費の概要
現場管理費は、工事現場を管理するために必要な経費であり、工事原価に含まれます。工事原価とは、大きく次の2つに分けられます。
- 純工事費
- 現場管理費
純工事費は、さらに直接工事費と間接工事費に分類できます。直接工事費には建材などの材料費、間接工事費には管理事務所をはじめとする仮設物にかかる費用などがあります。
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関連記事:間接工事費とは?直接工事費との違いや内訳・計算方法を解説
一方、現場管理費には、事務用品費や作業服を手配するための費用などが該当します。現場管理費は、工事に直接関係しませんが、工事を滞りなく進めるためには不可欠な経費です。現場管理費には主に17の項目があり、利益を確保するためには欠かせない要素となっています。
また、現場管理費の計算方法には、次の2種類があります。
- 経費を積算して算出する方法
- 現場管理費率(パーセント)を使用して算出する方法
どちらを用いても構いませんが、一般的には現場管理費率(パーセント)が採用される傾向にあります。現場管理費率(パーセント)は、国土交通省が定める「公共建築工事共通費積算基準」を基にした算出が推奨されています。実際の現場では、ミスや修正を減らすために、見積りソフトや積算ソフト、業務管理システムなどが活用されています。
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参考:ANDPADで粗利管理 資材高騰、職人不足の影響下でも安定して粗利を確保
現場管理費と一般管理費の違い
現場管理費が工事に関連する費用であるのに対して、一般管理費は会社を運営していくための費用となります。つまり、工事の現場で発生しない費用は一般管理費として計上していきます。
関連記事:工事での一般管理費とは?内容や内訳・押さえるべきポイントを解説
工事費の積算を行うためには、現場管理費と一般管理費の項目の違いを認識したうえで、分類していかなければなりません。主な一般管理費の項目は、次のとおりです。
- 従業員の給与
- 福利厚生費
- 広告宣伝費
- 事務所の家賃
- 水道光熱費
- 減価償却費
勘違いしやすいのが、従業員の給与や福利厚生費です。現場で働く作業員を対象とした経費は現場管理費となりますが、本社の従業員を対象とした経費は一般管理費となります。
工事原価における現場管理費のパーセント(比率・相場)
工事原価における現場管理費率の算定方法は2種類あります。1つは必要な費用を積算して算出する方法、もう1つは過去の実績に基づいたパーセント(比率)で算出する方法です。
パーセントは、工事の種類によっても変わってきます。たとえば、公共工事には「土木工事」「建築工事」「電気工事」といった種類があり、現場管理費率の算定式は「建築新営」「建築改修」「電気設備新営」などの工種によって異なります。現場管理費率の目安は、5%〜10%ですが、事業者によっては10%を超えるケースもあります。
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関連記事:建設業の工事原価管理とは|利益率を高める原価管理システムの選定ポイントも解説
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現場管理費の項目
続いて、現場管理費に含まれる17項目を解説します。現場管理費の重要性を理解して、適切な管理に努めましょう。
17項目の経費
現場管理費の17項目は、次のとおりです。
項目 | 内容 |
労務管理費 | 現場の環境を整えるためにかかる費用。 広告宣伝費や交通費、作業服や作業用具などの手配にかかる経費も含まれます。 |
外注経費 | 外部企業に作業を依頼したときの費用。 企業によっては、労務管理費として計上するケースもあります。 |
作業員の給与・手当 | 現場で働く作業員の給与や手当にかかる費用。 毎月の給与に加えて、住宅手当や危険手当などの各種手当も該当します。 |
退職金 | 現場で働く作業員の退職金もしくは退職給付金。 退職金は、労務管理費や作業員の給与とは別の経費として計上します。 |
安全訓練の費用 | 安全に作業を実施するための研修・訓練費。 安全訓練は、工事の内容に応じて実施する必要があります。 |
保険料 | 作業員や建物、設備に関わる保険料。 工事保険、火災保険、自動車保険などの費用です。法定外の労災保険など、現場ごとに必要な保険は異なります。 |
福利厚生費 | 作業員やその家族に提供するサービスや制度にかかる費用。 「法定外福利厚生」と呼ばれるもので、スポーツクラブの利用補助や旅行・レジャーの優待などが含まれます。 |
法定福利費 | 法律で義務付けられている福利厚生費。 厚生年金保険、健康保険、介護保険、労災保険、雇用保険などの費用が該当します。 |
補償費 | 第三者へ損害を与えた場合に補償する費用。 振動や騒音などが原因で、第三者に支払いが発生する場合に計上します。 |
事務用品費 | 現場で使用する事務用品の購入費用。 ペンやノートなどの消耗品のほか、取得価額が10万円未満の電子機器なども含まれます。 |
交際費 | 取引先の対応などに使う費用。 接待費や宴会費に加えて、起工式など現場ならではの費用もあります。 |
動力用水光熱費 | 電力、水道、ガスなどの費用。 現場で使用する電力、水道、ガスのみが対象となります。 |
通信交通費 | 現場で使用する通信に関する費用。 インターネット代、郵送費、電話代などを計上します。 |
工事登録等に要する費用 | 工事実績を登録するための費用。 工事登録することで、業務の円滑化が期待できます。 |
租税公課 | 国に納める税金や公共団体へ納める会費。 契約書の印紙代、申請書の証紙代などが含まれます。 |
公共事業労務費調査に要する費用 | 現場の労務費を調査するための費用。 国土交通省などが実施する調査で、社会保険加入の有無や作業員の給与・手当などが調査されます。 |
雑費 | 上記16項目のいずれにも該当しない費用。 ほかの項目と混在することがないよう、計上する項目のルールを周知・徹底する必要があります。 |
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現場管理費の17項目が重要視される理由
現場管理費の17項目は、すべて工事原価に影響する費用です。現場管理費の理解が不足していれば正しい経費は算出できません。
間違った認識のままだと、工事を受注できなかったり、受注しても赤字になったりするリスクがあります。現場管理費の正確な算出と管理は、現場での作業をスムーズに行うためには欠かせません。
現場管理費を設定する際のポイント
ここからは、現場管理費を設定する際のポイントを2つ紹介します。現場管理費への理解を深めて、自社の利益につなげましょう。
工事原価への影響
前述したとおり、現場管理費は工事原価に含まれます。現場管理費が高額になれば、原価や見積もりも影響を受けて高くなります。工事原価が競合他社より高くなると、価格が原因で仕事が受注できなくなるかもしれません。
経営を安定させるためには、現場管理費を適切に下げて、受注しやすい状況を作り出すことが重要です。ただし、過度なコストカットは作業員の負担も大きくなるため、現場の意見も聞きながら慎重に進めていきましょう。
とくに、労務管理費や安全訓練の費用など、作業員の安全や現場の衛生に関わるところは、しっかりと費用をかける必要があります。「紙の書類を電子化して事務用品費を削減する」「費用対効果の低い交際費の金額を見直す」など、業務プロセスの最適化やコストカットが実現できるような取り組みがおすすめです。
多めのパーセントにしない
現場管理費を含めて、建築業や土木業の経費には相場があります。しかし、明確な規定はないため事業者が現場管理費のパーセントを設定できます。
現場管理費のパーセントを相場よりも高いパーセントにすることも可能ですが、根拠や背景を顧客や取引先に説明できなければ信用が失墜し、受注も遠ざかります。会社の利益を確保することは大切ですが、理由もなく高いパーセントにすることは避けましょう。また、受注したいからといって相場より低くしてしまうと、赤字工事になりやすく、会社の利益を圧迫します。
まとめ
現場の作業をスムーズに進めるためには、現場管理費の正確な算出と管理が欠かせません。一方で、17もの項目が存在するため、分類や積算に手間や時間がかかることもあるでしょう。
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