取引先の交通費や備品購入費などを、自社が一時的に立て替えるケースは珍しくありません。立替金を回収するためには立替金請求書の発行が必要です。この記事では、立替金の作成方法や注意点、インボイス制度への対応について解説します。ぜひ役立ててください。
立替金請求書とは
立替金請求書とは、取引先の代わりに費用を立て替えた際に発行する請求書です。以下で詳しく解説します。
「立替金」とは
立替金とは、取引先や従業員などが本来支払うべき費用を、企業が一時的に立て替えた際に使用する勘定科目です。たとえば、取引先に代わって商品を購入したり、出張にかかる交通費や宿泊費を負担したりした場合に該当します。これらの費用は、経理上「立替金」として処理され、後日請求を行い回収します。
立替金の回収には「立替金請求書」の発行が必要
立替金を正しく回収するためには、取引先に対して「立替金請求書」の発行が必要です。立替金請求書には、立て替えた費用の内訳や金額、支払い内容を明記し、正式な請求として処理を行います。
「立替金支払依頼書」との違い
立替金請求書と立替金支払依頼書には、明確な違いはありません。企業によって名称が異なる場合があるため、注意しましょう。
「立替経費精算書」との違い
立替経費精算書とは、従業員が業務上で立て替えた費用を、企業に対して精算を請求するための書類です。交通費や備品購入費などが該当し、領収書を添えて提出します。立替金請求書と立替経費精算書は、どちらも立替に関する書類ですが、対象や用途が異なります。
取引先に対して立替金が発生する事例
取引先との取引においては、さまざまな理由で立替金が発生します。主な事例を紹介します。
物品・材料などの購入を依頼されるケース
取引先から物品や材料の購入を依頼され、自社が代わりに支払うケースは少なくありません。たとえば、取引先が必要とする備品や書籍の購入を、外出先で頼まれた場合などが該当します。このような場合、代金を一時的に立て替え、後日請求を行います。
信頼関係のある取引先であれば柔軟に対応できますが、費用の明確化と回収が求められるため、立替金請求書の適切な発行が重要です。
出張費(交通費・宿泊費)を立て替えるケース
取引先との業務で、自社が出張に同行または代理として訪問する際、交通費や宿泊費を一時的に立て替えるケースがあります。たとえば、地方の顧問先企業を訪問する際に、新幹線代やホテル代を自社負担し、後日まとめて請求します。こうした費用は経理上「立替金」として処理され、適切に回収するためには、立替金請求書の発行が必要です。
手数料や配送料を立て替えるケース
取引先との取引において、配送料や各種手数料を自社が一時的に立て替えるケースがあります。たとえば、商品の発送時に元払いで配送料を支払ったり、契約時に必要な振込手数料を負担したりする場面です。これらは、本来取引先が支払うべき費用であるため、後日「立替金請求書」を発行して請求を行います。
立替金請求書の記載項目・作成方法は?
立替金請求書を正しく作成するためには、必要な項目の正確な記載が求められます。記載項目や作成方法について解説します。
記載が必要な項目一覧
立替金請求書を作成する際には、取引先が内容を確認しやすく、スムーズに支払処理ができるようにしましょう。主な記載項目を一覧にまとめました。
項目名 | 内容の説明 |
発行者(自社)情報 | 会社名、住所、電話番号、担当者名など |
請求先情報 | 取引先の会社名、住所、担当者名など |
発行日 | 請求書の作成日 |
立替内容 | 立替日、品目、数量、単価、小計など |
合計請求金額 | 明細の合計金額(税込) |
支払期日 | 取引先に請求する支払期日 |
振込先情報 | 銀行名・支店名・口座番号・口座名義など |
複数の立替がある場合は、内容ごとに明細をわけて記載し、総額とともに内訳がわかるようにします。支払期日や振込先の明確な記載で、取引先が誤解なく対応できます。
立替金請求書を作成するタイミング
立替金請求書は、立替内容と金額が確定した時点で作成します。立替金が複数発生する場合は、一定期間分をまとめて請求すると、事務作業の負担を軽減できます。また、取引先の支払スケジュールに配慮して、タイミングを調整することも大切です。事前に取り決めておくと、トラブルの防止にもつながります。
立替金請求書の作成・送付時の注意点
立替金請求書を作成、発送する際は、正確な記載とタイミングに注意が必要です。誤りや遅延はトラブルの原因となるため、事前確認を徹底しましょう。主な注意点を解説します。
金額・内容に記載ミスがないよう注意する
立替金請求書では、金額や内容の記載ミスがないよう注意が必要です。誤りがあると、再発行や確認作業が発生し、取引先にも迷惑がかかります。送付前には、請求金額や立替内容を必ず確認し、誤りを見つけた場合は訂正せず、新しい請求書を作成し直しましょう。送付後にミスに気づいた場合は、速やかに連絡し、誤った請求書の破棄を依頼し、正しい請求書を再送する必要があります。
作成サイズはA4にする
立替金請求書の作成には、A4サイズの用紙を使用します。ほかの請求書や契約書と同様に、A4サイズで統一すると管理しやすく、取引先にとっても扱いやすくなります。書類整理の手間を省くためにも、A4サイズでの作成がおすすめです。
送付状も添付する
立替金請求書を送付する際は、必ず送付状も添付します。請求書だけの送付は失礼にあたるため、送付状であいさつや請求内容の説明を追記しましょう。これにより、ていねいな印象を与えられ、円滑な取引につながります。
立替金の取引でインボイス制度に対応する方法
2023年10月から開始されたインボイス制度では、立替金の処理にも対応が求められます。具体的な対応方法を解説します。
「適格請求書」と「立替金精算書」の2点の書類が必要
立替払いを行った場合、「適格請求書」と「立替金精算書」の2点を併せて送付します。適格請求書は仕入先から発行され、立替金精算書は自社が立て替えた内容をまとめた書類です。2つの書類を取引先に提出すると、取引先は仕入税額控除を受けることができます。
ただし、立替金精算書のみで対応する場合は、仕入先が適格請求書発行事業者である旨を、必要事項に記載します。
立替金精算書の書き方・記載項目
立替金精算書の書き方は、インボイス制度への対応状況によって異なります。適格請求書に添付する場合は、簡易な内容でも問題ありません。しかし、「どの取引先への支払いか」「何に立て替えたか」の明記が必要です。一方、立替金精算書のみを交付する場合は、インボイスの要件を満たす詳細な記載が求められます。
具体的には、取引年月日、支払先の名称・登録番号、税率ごとの金額と消費税額などが必要です。これらの項目がすべてそろっていないと、取引先が仕入税額控除を受けられないため、記載漏れや誤りがないよう注意が必要です。複数の支払先をまとめて記載する場合は、それぞれの取引内容が明確に区別できるようにしましょう。
立替金請求書にまつわるトラブルとリスクへの対処法
立替金請求書に関する業務では、思わぬトラブルやリスクが発生するケースがあります。トラブルやリスクへの対処法を解説します。
回収が遅くなると、貸付金と認識される可能性がある
立替金の回収が長期化すると、税務署から貸付金と判断されるリスクにつながります。貸付金とみなされると、受取利息の計上が必要になり、未処理であれば申告漏れとなる恐れがあります。立替金は本来、特定の目的で一時的に支払った金銭であり、早期回収が前提です。
しかし、返済期日があいまいで処理が遅れると、貸付金として扱われやすくなります。トラブルを避けるためには、速やかな精算と記録の徹底が重要です。
税務調査で指摘を受けないよう、速やかな処理が必要
税務調査では、立替金の処理が遅れると貸付金や給与とみなされるリスクがあります。立替金は一時的な立替であり、回収が長期間にわたる場合、貸付金として認定されます。適正な利率の受取利息の計上や追徴課税が発生する恐れがあります。
また、役員や従業員への立替金が回収されない場合は、給与と判断され、所得税の追徴課税や源泉徴収漏れになるケースもあります。これらの指摘を防ぐためには、速やかな立替金の処理と回収の実施が必要です。
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まとめ
立替金請求書は、取引先や従業員に代わって費用を立て替えた際に必要な書類です。正確な記載と迅速な発行が求められます。立替金の処理が遅れると、貸付金や給与とみなされ税務上のリスクが生じる可能性があります。インボイス制度にも対応が必要なため、書類の整備と運用ルールの徹底が不可欠です。
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