工事を安全に進行するために重要な書類の1つが、施工体制台帳です。この記事では代表的で一般的な「全建統一様式第3号」という様式について、基本情報から、書き方や記入例、注意点などを解説します。現在の業務に関連しており、基本から知りたい人は参考にしてください。
施工体制台帳とは?
そもそも、施工体制台帳とはどのような書類でしょうか。はじめに、基本的な情報を解説します。
施工体制台帳の目的
作成する目的は、おもに3つあります。1つ目は、品質や工程、安全など施工上のトラブルを防ぐことです。次に、不良・不適格な会社の参入や建設業法違反の発生を防止します。最後に、安易な重層下請構造による生産性低下の防止です。作成することにより上記のトラブルを防ぎ、工事の品質維持を可能にしています。
施工体制台帳の作成が必要な工事
作成する必要のある工事には、2つの条件があります。まず、公共工事において、発注者から直接請け負った建設工事に関連して下請契約を結んだ際に、作成が必要です。作成したものを工場現場ごとに管理することに加え、書類のコピーを発注者に提出する必要があります。
民間工事においては、発注者より直接請け負った建設工事を施工するために結んだ下請契約の総額が、5,000万円以上となった場合に作成します。施工体制台帳のコピーを提出する必要はありません。ただし、工場現場ごとに管理する必要があり、発注者から閲覧請求があれば閲覧作業に同行しなければなりません。
施工体制台帳の対象者
施工体制台帳は元請会社のみでなく契約を結んだ、工事に関わるすべての協力会社にも作成義務があります。一次協力会社だけではなく、二次、三次の協力会社も対象です。建設工事の請負契約に該当しない場合は、法律上は記す必要はありません。ただし、発注者が記載を求める場合は記さなければなりません。工事に関わる作業範囲をすべて明確にするため、協力会社が多いほど作成時間がかかります。
施工体制台帳の書き方と記入例
工事に関連する事実を、施工の分担関係が分かるように記さなければなりません。また、一次協力会社が複数ある場合は、企業ごとに作成します。どのように記せばよいのか、それぞれの項目について解説します。
1. 会社名・事業者ID
元請会社の企業名を記します。当該企業が建設キャリアアップシステム(CCUS)に加入している場合は、当該事業者のIDも合わせて記す必要があります。
2. 事業所名・現場ID
工事を担当する、事業所名を記します。工事現場が建設キャリアアップシステム(CCUS)に登録されている場合は、現場IDも合わせて記しましょう。
3. 建設業の許可
元請会社が取得している、建設業許可の業種を記します。合わせて、許可番号、許可年月日も記しましょう。
4. 工事名及び工事内容
発注者から請け負った工事の名称、建物や建築物の構造や延べ床面積などの工事内容を記します。
5. 発注社名及び住所
発注を行った企業の、名称や所在地住所を記します。
6. 工期・契約日
発注者と元請会社間での契約に基づいた、工期と契約締結日を記します。「自」の部分には工事開始日、「至」の部分には工事終了日を記す必要があります。
7. 契約営業所
全国各地に支店や営業所がある企業は、工事が発注された際、工事現場に近い支店や営業所と下請契約を結び、工事を実施します。その関係性を把握するために記す項目です。元請契約の項目には、工事請負契約書へ記されている企業名や住所を記します。下請契約の項目には、下請契約を結んだ支店名もしくは営業所名、住所を記しましょう。
8. 健康保険等の加入状況
元請会社が健康保険や厚生年金保険、雇用保険に加入しているか否か、または適用除外なのかを選択し記します。元請契約をした会社と下請契約をした会社が違うケースでは、それぞれの会社が加入する保険組合名や事業所整理番号、厚生年金、雇用保険の事業所整理番号を記す必要があります。
9. 発注者の監督員名・権限及び意見申出方法
「発注者の監督員名」の項目には、発注者より報告を受けた監督員の氏名を記します。また、「権限及び意見申出方法」の項目には、「契約書記載の通り」もしくは「契約書第〇条記載の内容」と記しましょう。
10. 監督員名・権限及び意見申出方法
元請会社が一次協力会社に対して監督するために、選定した監督員の氏名を記します。発注者の監督員と間違わないようにしましょう。「権限及び意見申出方法」の項目には、「契約書記載の通り」または「契約書第〇条記載の内容」と記しましょう。
11. 現場代理人名・権限及び意見申出方法
自社所属の、現場代理人の氏名を記します。現場代理人は元請会社の代理であり、現場の管理業務と発注者への意見申出が職務です。「権限及び意見申出方法」の項目には「契約書記載の通り」または「契約書第〇条記載の内容」と記しましょう。
12. 監理技術者・主任技術者名
監理技術者もしくは主任技術者の氏名を記します。建設業許可を受けた会社であれば、請け負ったすべての工事現場に対し、主任技術者を配置しなければなりません。特定建設業許可が必要な工事であれば主任技術者を配置しなくても構いませんが、元請会社によって監理技術者の配置が必要です。
13. 監理技術者補佐名
監理技術者補佐の氏名を記します。なお、一定の条件を満たし、さらに監理技術者が複数の現場を兼任するケースで監理技術者補佐の配置が必要です。
14. 資料内容
監理技術者補佐が保有する資格を記します。監理技術者補佐になるには、主任技術者の資格に加えて、監理技術者資格もしくは一級施工監理技士補の資格を有していなければなりません。また、主任技術者の資格を有する業種であることも条件となります。
15. 専門技術者名・資格内容・担当工事内容
担当する工事に取り掛かる場合、内容によっては異なる専門的な工事が含まれるため、自社が直接施工するケースがあります。その際は、それぞれの現場や担当する業種に、専門技術者を配置しなければなりません。専門技術者は「主任技術者」の条件を満たす必要があります。「担当工事内容」の項目には、発生した専門的な工事内容を記します。
16. 一号特定技能外国人の従事の状況(有無)
一号特定技能外国人とは、特定産業分野で相当程度の知識や経験を有し、在留資格を保有している外国人のことを指します。一号特定技能外国人が自社に携わっている、もしくは携わる予定がある場合は「有」に〇、携わっていない場合は「無」に〇をします。
17. 外国人建設就労者の従事の状況(有無)
外国人建設就労者とは、建設分野の技能実習を修了した上で、引き続き国内に在留する者、または一旦本国へ帰国した後に再入国する者のことを指します。外国人建設就労者が自社に携わっている、もしくは携わる予定がある場合は「有」に〇を、携わっていない場合は「無」に〇をします。
18. 外国人技能実習生の従事の状況(有無)
外国人技能実習生は、日本に在留し、母国のために日本企業で建設技術を学んでいる外国人のことです。前述した外国人建設就労者とは異なるため、間違えないようにしましょう。外国人技能実習生が自社に携わっている、もしくは携わる予定がある場合は「有」に〇、携わっていない場合は「無」に〇を記します。
19. 一次請負会社記入部分
施工体制台帳の右半分には、一次協力会社の情報を記します。基本的な内容は左側と同じ内容です。会社名、事業者ID及び代表者名、所在地住所、工期、契約日、建設業許可業種と許可番号、許可年月日、健康保険等の加入状況など、元請会社と一次協力会社間で結んだ契約の内容を記しましょう。
施工体制台帳を作成する際の注意点
施工体制台帳を作成する際には、気を付けるべき事柄があります。4つの注意すべき点を解説します。
記載事項に漏れがないか
施工体制台帳には、建設業法施行規則で定められた記載事項をすべて記さなければなりません。記入漏れがあると、発注者から指摘されたり、最悪のケースでは行政処分である営業停止処分を受けたりする恐れもあります。記載項目は多いですが、記載漏れがないか確認してから提出しましょう。
情報は最新か
工事の進行に伴い、協力会社や技術者が変更になる場合があります。変更があった場合はその都度、施工体制台帳を更新する必要があります。施工体制台帳は更新に大きな手間がかかるため、すべての変更を早期に反映させることは容易ではありません。しかし、最新の情報が記されていないと、安全管理やトラブル対応の妨げになる恐れがあります。
添付書類に漏れはないか
施工体制台帳には多くの書類を添付しなければなりません。そのため、書類の添付し忘れに注意しましょう。添付しなければならない書類は具体的に、以下のとおりです。
元請会社と発注者間での契約書を写したもの
元請会社と協力会社間での契約書を写したもの
監理(主任)技術者が有する資格を証明する書類もしくは写したもの
監理(主任)技術者が雇用期間を限定しない雇用であることを証明する書類もしくは写したもの
専門技術者を配置する場合の資格を証明する書類を写したもの
監理技術者の雇用関係を証明する書類を写したもの
非効率な方法ではないか
施工体制台帳の更新には、大きな手間が発生します。しかし、協力会社や技術者の変更が発生するたびに更新しなければなりません。工事の規模が大きいほど頻度と手間も大きくなり、更新が遅れると法令違反となる恐れもあります。これらのリスクを軽減するため、更新システムを導入する企業が増加しています。
まとめ
施工体制台帳は元請会社が作成する、工事に関わるすべての企業の情報をまとめた安全書類です。多くの項目について正確に記し、変更があった場合はその都度変更しなければなりません。
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