建築業界において、現在AIを活用する現場が急増しています。その背景にあるのは、少子高齢化による人手不足や長時間労働といった建設業界の課題です。業界全体の課題を解決するために注目されるAI技術とは、どのようなものなのでしょうか。この記事では、建設業界が抱える課題やAI活用事例、導入における懸念点などを解説します。ぜひ最後までご覧ください。
建設業界におけるAI活用の課題
建設業界が抱える課題には、さまざまなものがあります。ここでは労働人口の不足や高齢化による人材不足、業務の効率化の重要性について解説します。
現場の労働人口が不足している
建設業界の課題として、最も大きいとされるのが「人材不足」です。少子化によって人材が不足している業界は複数ありますが、建設業はそのなかでも特に問題が深刻であるとされています。
現在は、外国人労働者を雇い入れるなど、対応策を講じる企業も一定数おります。しかし、依然として現場の労働人口の不足は、今後の建設業界にとって大きな課題です。
高齢化により人材育成が急務である
加速し続ける高齢化もまた、人手不足に大きく影響しています。特に建設業界では、若年層の就業者が減少しており、2025年には約128万人の労働者が不足すると予想されています。若年層の就業者が減ることは、技術の低下にもつながりかねません。
熟練の技術者が引退するものの、その技術を継承する若年層はいないということは、長い年月をかけて培われたノウハウが消えてしまうことを意味します。つまり、建設業界では人材を確保するだけでなく、限られた人材を早急に育成する必要があります。
業務の効率化が必要
業務の効率化も建設業界にとっては、特に重要です。超過勤務が発生していることで、業界を志す人材が減少していると考えられます。業務の効率化を図り、労働時間を短くすることが求められます。AIをはじめとした最新技術を取り入れることは、業界全体にとって非常に重要です。
国によるAI導入の取り組み
建設業は多くの企業が関与する、国の経済発展に欠かせない産業です。日本国内における建設業は、1990年代前半にピークを迎え、2010年代に再び活況を呈しました。建設業の発展は国全体で目指しているものの、ここまでで解説したように数多くの課題があります。
業界の課題解決を目指し、国土交通省が発表したものが「建設産業の現状と課題」です。具体的には「i-Construction(アイ・コンストラクション)」という取り組みによって、生産性向上を目指します。
建設業界におけるAIの活用事例5選
すでに日本国内では、多くの建設現場でAI技術が活用されています。ここでは、建設業界におけるAIの活用事例を5つ解説します。
株式会社竹中工務店
竹中工務店では「デジタル棟梁」というナレッジ検索システムを導入しています。「デジタル棟梁」とは、生成AIを活用して社内文書を検索し、専門知識を引き出すシステムのことです。建設業の専門知識を基にした、独自のナレッジベースを形成しており、より高度な知識を従業員に共有しています。
また「スマートタイルセイバー(R)」も同社が開発したAI技術です。これは、ドローンで撮影した赤外線画像を利用して、外壁タイルの浮きを自動判定するシステムです。2021年3月、福岡県の地上88mの高層マンションではじめて実装され、超高層建物の外壁調査に成功しました。
清水建設株式会社
清水建設株式会社ではガス圧接継手の施工現場で、画像認識AIのトライアル導入を行いました。これは、スマートフォンを使用して鉄筋継手の画像を撮影し、画像認識AIで外観検査をするシステムです。
目視検査と比較して判定精度や作業時間、画面操作性などを検証し、次のような結果に至ったそうです。目視検査では1カ所あたり約5分かかった作業に対して、画像認識AIの場合は1カ所あたり20秒から30秒で検査が完了しました。
スマートフォンアプリを使用し、鉄筋のサイズを指定するだけで簡単に撮影できる使いやすさも、活躍の場を広げる要因となるでしょう。
株式会社大林組
株式会社大林組では、スマートビルマネジメントシステム「WellnessBOX」の開発・提供を行っています。これはビルマネジメント全般を担当するAIシステムです。IoTやAIの活用により快適性や利便性、安全性を向上させることを目的に開発されました。
AI搭載のカメラによる不審な動きの自動検知システムや、エレベーター利用状況の分析に基づく待ち時間の短縮、室内利用状況の把握による快適な室内温度の維持などを、1つのシステムで賄えるようになりました。
鹿島建設株式会社
鹿島建設株式会社ではロボットを活用し、単純な作業や従業員への負担が大きい作業を自動化しています。ロボットの導入により、下方から上向きの溶接が可能になり、溶接の品質と性能が大幅に向上しました。工程の短縮と従業員の負担軽減だけでなく、業務効率化も実現した事例です。
また同社は2021年、建設工事の危険予知にAI「鹿島セーフナビ(K-SAFE)」を導入しています。「K-SAFE」は厚生労働省のデータを基に、約6万4,000件の災害事例を解析するシステムです。これにより、類似する作業の災害事例を可視化できるようになりました。現場の安全担当者に各種作業の災害事例を提示することで、危険予知に貢献しています。
建設業界にAIを導入する5つのメリット
建設業界にAIを導入することには、5つのメリットがあります。それぞれについて解説するので、ぜひ参考にしてください。
1. 生産性の向上や業務の効率化が期待できる
AIの活用により、建設業の生産性向上が期待できます。最大の魅力は、単純作業の自動化が速やかに進められることです。日々のルーティンワークをAIに任せることで、人間はより高度な業務に集中できます。少ない人数でも、最大限のパフォーマンスを発揮できるでしょう。
近年、ますますAIの性能が進化し、多様な業務へ対応できるようになっています。現状では導入可能な業務には制限があるものの、将来的にはその垣根もなくなっていく可能性があります。
2. 熟練者の技術やノウハウを継承しやすくなる
建設業界では、若年層の人材不足が深刻化しており、ノウハウや技術の継承が困難な状況になっています。熟練の職人が引退する前に、そのノウハウや技術を継承する人材が不足している企業が少なくありません。
AI技術を使用することで、ベテラン職人の動きを映像解析し、その技術を簡単に再現できるようになりました。映像解析から得られたデータは教材として蓄積・活用できるため、新人作業員の教育に役立ちます。
3. リスクの回避や安全性を向上させる
建設業は他の業種に比べて、危険な場所や厳しい気象条件のなかでの作業が多く、労働災害が多い傾向にあります。ロボットやドローンを使用した遠隔作業により、労働災害を未然に防止できます。ドローンを使って映像を撮影し、危険度を判定することで、危険な箇所を見逃すリスクを減らせるでしょう。AIの活用によって、事故の減少が期待できます。
4. 品質の向上が期待できる
AI技術は、業務の自動化だけでなく、業務の品質改善にも役立ちます。AIはヒューマンエラーに陥ることも、その日のコンディションに左右されることもなく、活動ができます。エラーが完全になくなるわけではないものの、期待通りのパフォーマンスがある程度、保証されている点が魅力です。
5. 人手不足が解消される
DX化により、さまざまなデジタル技術を導入することで作業時間を短縮できます。少人数で効率よく仕事をこなせるため、深刻な人材不足に悩む建設業界に最適です。建設業界では若手の人材が集まらない原因として、労働環境や労働条件が挙げられています。
ドローンや自動制御技術の活用により、作業員の業務負担が軽減され、長時間労働の改善につながることが期待されます。これにより、若年層の人材が集まりやすくなり、人手不足の解消が見込まれます。
建設業における生成AIの懸念点
建設業に生成AIなどの最新技術を導入することには、多くのメリットがあります。その反面で、懸念点もあります。ここでは2つ解説します。
建設現場スタッフしかわからない情報がある
AIに情報を学習させても、土地の規模や形状、地区の法令などはエリアごとに異なるため、ケース・バイ・ケースで対応する必要があります。また、インターネット上の情報が最新でない場合もあり、自治体の法令が更新されているケースもあります。
生成AIによる応答が、完全に信頼できない場合があるため、人が現地で確認する作業は必須です。現場の情報は現場でしか得られないため、生成AIの情報を参考にしつつも、再度現地で確認する必要も出てくるでしょう。
不十分な情報に注意する
生成AIが発する情報は、高精度ではあるものの完璧ではありません。ときには、間違った情報が提供されてしまうこともあるでしょう。生成AIが出力する情報を過信することは、危険です。AI技術を導入する場合でも、常に人の手による確認作業が発生する点は、留意すべきです。
建設業界で活用されるAI関連技術
建設業界で活用されるAI技術には、ロボットやドローン、BIM/CIM、IoTなどがあります。それぞれがどのようなシステムなのか、ここで解説します。
ロボット
専業メーカーや建設会社が開発するロボットには、以下のようなものがあります。
パワーアシストスーツ
搬送ロボット
溶接ロボット
吹付作業ロボット
天井施工ロボット
墨出しロボット
上記の作業ロボットは、職人の代わりにさまざまな作業を行えます。ロボットが3K作業(きつい、汚い、危険)を代行することで、建設業界の労働環境を大幅に改善できます。
ドローン
従来の測量は、技術者が現地を歩き回らなければならず、時間も人件費も必要でした。また、危険な場所に立ち入る必要があることも問題視されていました。ドローンを使用することで、時間と費用を削減できるだけでなく、災害現場や危険な場所、高所での測量も容易になります。また、測量データの3次元化ができるため、施工管理や竣工、落成後の保守点検、修繕、補修などにも活用できます。
BIM/CIM(Building/Construction Information Modeling)
BIM(Building Information Modeling)は、ビル建築のプロセス全般にわたって、調査から設計、施工、維持・管理までのすべての段階で、3次元モデルを用いて情報共有を図るシステムです。CIM(Construction Information Modeling)は、BIMを土木工事(道路、橋、ダムなど)にも拡張したシステムです。
IoT
IoTはインターネットに接続し、さまざまな情報を収集するシステムです。建設現場では、主に作業者や建設機械、工事車両などから収集された情報を活用します。
具体的な活用例には、作業状況の把握やトラブル時の迅速な対応、資材や建機の管理、危険個所の探索などが挙げられます。リアルタイムで進捗管理や作業者の状態、資材の管理を可視化することで、効率改善、コスト削減、最適化が実現できます。
AIによる黒板作成を自動化!ANDPADの「黒板AI作成」
ANDPADが提供している「黒板AI作成」は、アップロードして読み取りを開始するだけで、AIによる豆図・黒板内容の読み取り準備ができるツールです。黒板のレイアウトを選択することもできます。また、黒板内容や豆図を確認したり、エクセルのような画面で内容を修正したりでき、使い勝手の良いツールです。
詳細は下記の製品ページよりご覧ください。
参考:黒板AI作成|ANDPAD(アンドパッド)のご紹介ページ
まとめ
建設業界におけるAIの活用をテーマに、業界の課題や事例、導入のメリットなどを解説しました。AIを導入することで、生産性や品質の向上、リスク回避、人手不足の解消などの効果が期待できます。しかし、実際にどのようなAI技術を導入すべきか、まだ検討中である建設会社も多いのではないでしょうか?
そのような方には、クラウド型建設プロジェクト管理サービス「ANDPAD(アンドパッド)」がおすすめです。業種を問わず、数多くの企業・ユーザーに利用されています。使いやすいUI・UXを実現する開発力や、手厚いサポートが特徴なので、ぜひ検討してください。