施工要領書とは、元請けが作った施工計画書を基にして、協力会社が作成する書類です。提示された施工計画に対して、どのように工事を進めていくか把握するのに必要です。
この記事では、施工要領書の記載内容や、施工要領書が必要な工事について解説します。施工要領書と似ている書類との違いや、施工計画書の概要・関連項目についても解説するので、参考にしてみてください。
施工要領書とは?
施工要領書は、事業における協力会社が作る書類の1つです。作成する意図や記載内容などの詳細は下記の通りです。
施工計画書を基に作成する書類のこと
施工要領書は、元請けが作った施工計画書を参考にして、協力会社が作る書類を指します。工事をするにあたり、元請けは施工計画書を作って、必要となる材料や施工内容などをあらかじめ取り決めます。
しかし、施工計画書は元請けの基準で作成されているため、実際に工事を担当する側の水準と、内容が一致しているとは限りません。そのため、施工計画書を参考にして施工要領書を作ります。具体的には、機器や技術などの水準を合わせて、工事の流れ・手順などを決めます。
施工要領書の作成が完了したら、元請けに提出することが一般的です。元請けと協力会社の間に認識の相違がないかを確認して、トラブルを防ぐためです。
施工要領書と似た書類との相違点
施工要領書と混同されやすい書類があります。代表的な2つの書類を挙げて、それぞれの詳細を解説します。
施工計画書
施工要領書と似た書類として挙げられるのが、施工計画書です。施工計画書は、施工要領書と内容が似通っています。どちらも、工事の手順・工程、必要となる機器・材料など、施工内容に関するさまざまな情報をまとめています。
施工計画書と施工要領書の違いは、作成する者の立場です。施工計画書は、元請けが作成して協力会社に渡します。一方で、施工要領書は協力会社が作成して、元請けに提出します。
関連記事:施工計画書とは?記載が必要な内容や作成手順などを解説!
作業手順書
作業手順書も、施工要領書と似た書類の1つです。基本的には、どちらも施工に関する内容を記した書類となっています。
しかし、作業手順書と施工要領書は、それぞれ重要視している部分が異なります。作業手順書が重視しているのは安全性であり、安全パトロールや検査などで用いられるのが一般的です。
対する施工要領書は、品質を重要視しています。施工の手順や方法などを確立するために作成します。
施工要領書に記載する内容
施工要領書に記載する内容は、工事に関する5W1Hが基本です。5W1Hにおけるそれぞれの詳細は以下の通りです。
- Who:誰が
- When:いつ
- Where:どこで
- What:なにを
- Why:なぜ
- How:どうやって
施工要領書に記載する具体的な内容としては、下記の要素が挙げられます。
- 工事概要
- 工事業者
- 施工する時期
- 施工場所
- 使用する材料や部材
- 施工の進め方
- 安全対策
なお、施工要領書の表紙には目次の記載が必須です。
施工要領書が必要な理由
施工要領書が必要とされる理由は、協力会社が効率的に工事を進めるためです。工事の流れ・手順などの詳細は、元請けが作る施工計画書にも書かれています。そのため、一見すると施工計画書を基にすれば、施工要領書を作り直す意味はないように見えます。
しかし、施工計画書の内容は、元請けの環境を基にして作成されているので、必ずしも協力会社が参考にしやすい形式になっている訳ではありません。実際に工事に取り組む協力会社は、自身が保有している機器や技術などを考慮する必要があるため、施工計画書における工事の流れや手順を、より適した形に変えるために施工要領書を作成します。
施工要領書が必要な工事
基本的に、どんな工事でも施工要領書は必要です。代表的な工事の種類は以下の通りです。
- 溶接工事
- 電気工事
- 空調工事
- 衛生工事
- 溶接工事
- 配管工事
- 塗装工事
- 鉄骨工事
- 左官工事
- 基礎工事
- 躯体工事
- 内装工事
内容については、それぞれの工事ごとに変わります。しかし、工事の手順や流れ、必要となる機器や材料といった項目は、共通して存在していることが一般的です。
施工要領書の作成には施工計画書が必要
施工要領書を単体で作成することはできません。なぜなら、施工要領書は施工計画書の内容を参考にして作られるためです。
施工計画書とは、工事に関わるさまざまな要素を内包している書類です。具体的には、工事の全体的な流れや必要な資材・機器などが記されています。ここからは、施工計画書の詳細についても解説していきます。
施工計画書の作成手順
施工計画書の作成手順は、大きく分けて5段階です。具体的な手順とそれぞれの段階の詳細は下記の通りです。
1. 工事書類と内容を把握する
施工計画書を作成する際は、まず工事書類と内容を把握するところから始まります。図面や契約書、設計書などが代表的な書類です。
それぞれの工事書類の内容から工事の全体像を把握したり、工事における要点を確認したりしておくと、効率よく施工計画書の作成へ移れます。
2. 実際の現場を確認する
工事書類で工事に関する情報を把握したら、実際の工事現場にも足を運びます。施工計画書には、工事現場の状況や周辺の状態も反映させる必要があるためです。
また、現場からは書類よりも精度の高い情報を得られる可能性もあります。現場を直接見ながら、施工内容をシミュレーションしたり、それぞれの工程について精査できたりするためです。これらの情報は、現実的かつ精巧な施工計画書の作成に役立ちます。
3. 発注者と協議する
発注者との協議も、施工計画書の作成における手順の1つです。施工計画書の作成という観点では、発注者との協議は必須ではありません。しかし、施工方針や施工内容などへの認識の違いによる、トラブル・事故の発生を防ぎ、工事や完成品の品質を良くするのに役立ちます。
また、施工計画書が完成する前に発注者との協議をしていれば、完成像や手順などに認識の相違があっても、修正に手間取りにくくなるでしょう。
4. 施工計画書のひな形を用意する
記載するべき内容が決まれば、施工計画書のひな形を用意します。ひな形を活用するべき理由は、1から作るよりも効率的で、記載事項の漏れなども防ぎやすいためです。
施工計画書のひな形の入手方法として一般的なのは、各自治治体・整備局などのホームページからダウンロードすることです。なお、発注先の指定があればそちらを使います。
5. 施工計画書を作成する
各種準備が完了したら、施工計画書の作成に着手しましょう。しかし、入念に準備をしていたとしても、実際に作成を進めながら必要だと判明する情報や物もあるかもしれません。
また、作成している途中で、修正や加筆が発生する可能性もあります。理論上の最短を基準にせず、余裕をもったスケジュール設定も重要です。
施工計画書の主な記載事項
施工計画書の内容は工事や企業によって異なるが、主要な項目は共通しています。具体的には、下記の情報を記載することが一般的です。
- 工事概要
- 工程表
- 現場の組織表
- 現場の運営表
- 総合仮設計画
- 主要資材
- 主要機械 ・船舶
- 施工方針・方法
- 施工管理計画
- 安全衛生管理
- 緊急連絡体制
- 交通管理
- 環境管理
- 再生資源の利用促進と建設副産物の適正処理方法
- 総合評価に関する事項
施工計画書の提出期限
施工計画書の提出期限に、法的な規定などはありません。しかし、積算に必要な情報が施工計画書に含まれているため、見積り作成時点までには完成させるべきです。また、提出期限は工事開始の3週間前までが一般的とされています。
まとめ
工事を効率的に進め、施工物の品質を維持するために、施工要領書は重要な役割を果たします。施工要領書を活用するためには、役割や使用方法を十分に理解する必要があります。
そして、工事の効率化や品質を維持するには、施工要領書だけではなく専用のシステムを導入することも欠かせません。
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