小野建沖縄の事業概要と強み
小野建沖縄株式会社(沖縄県那覇市)は、福岡県北九州市に本社を置く鉄鋼商社・小野建株式会社の100%子会社。2004年に小野建の沖縄営業所からスタート。沖縄支店を経て、2010年に現地法人化した歴史があり、東恩納社長はそんな同社を20年以上にわたって引っ張ってきた立役者だ。
事業の柱は大きく2つあり、1つは鋼材の販売・流通を担う鉄鋼事業、もう1つは鉄骨工事・屋根外壁工事・土木工事などの専門工事を担う建設事業で、病院や物流倉庫、ホテルといった大型案件を幅広く手がけている。
大きな強みは、与那国島、西表島、大東島などの離島を含め、広範囲にわたる沖縄県全域をカバーするサービス網と、全員地元採用・地元勤務の地域密着の職場環境を実現していること。沖縄出身者はもちろん、多様な人材が活躍しやすい職場環境も同社の魅力だ。
2025年度の売上高は190億円にのぼる。
課題は「属人化」と「情報共有の不備」
この20年間で目覚ましい成長を遂げる一方で、「属人化」と「情報共有不足」が課題だったと東恩納社長は振り返る。
「担当者が情報や仕事を1人で抱え込み、他の人は資料がどこにあるかわからない、何か問題が起きたときに誰もフォローできない状況が度々ありました。さらに、その時々に応じてメール、LINE、社内共有フォルダといった複数のツールを使うので情報が錯綜しやすく、古い設計図面のまま施工図を書き始めてしまい、後から手戻りになった痛い経験もあります」。
また、営業から受発注、輸送計画、現場対応といった多くの業務や判断が一部に集中しやすい構造も改善したいと考えていた。

ANDPADで「自走するチームに」
そんななか、小野建グループ全体としてDXを推進する方針が打ち出され、小野建沖縄はその先陣を切るかたちで2025年7月にANDPADの本格運用を開始。
施工管理だけでなく、予実管理や引合粗利管理など、段階的に機能拡張ができる点が決め手になったという。
ANDPAD導入にあたり、東恩納社長が描いたグランドデザインは明確だ。
「まず組織力を強化し、チームで課題を共有してチームで解決する“自走する仕組み”をANDPADでつくりたいと考えました。組織が自走すれば、私がすべての現場に関わって管理・指示する構造からも脱却できる。簡単に言えば“社長がすべてに関与しなくても回る組織”にしたいと思ったのです」。
自走する組織の一要素として、全員に「コスト意識を根付かせる」ことも目標に掲げた。

資料共有と残工事の見える化を実現。出面管理にも活用
自走する組織づくりに向けて、「資料共有」という最も基本的な部分から手をつけた。最新の資料・図面を全員がANDPADで把握できる状態にすることを第1ステップとして設定。運用上のルールをつくったうえで、実践と検証を重ね、少しずつ体に馴染ませていくのが同社のやり方だという。
「沖縄らしいところで言えば、鋼材・建材が海を渡って入ってくる際に発行される船積明細書をANDPAD上でリアルタイムに更新・共有するようになりました。担当の事務スタッフが情報を逐次入力し、誰でも入港予定や船便番号がすぐに確認できるので時間短縮になっています。小さな時短の積み重ねですが、残業が減り始めています」。
また、全員にコスト意識を持たせる仕組みづくりも着実に進んでいる。
1つは残工事の見える化。
「工事の進捗に応じて収益や原価を計上する工事進行基準を採用しているので、当日の作業内容と残工事の状況が、ANDPADの工事写真と日報で把握できるようになったのは大きな進歩です」。
もう1つは、従来度々発生していた、追加工事の集計漏れに伴う未回収リスクの低減だ。
「自分たちがした仕事の対価をしっかりといただくという当たり前のことを当たり前にできるよう、ANDPADボードを使って追加工事の管理・集計も始めました。まだ道半ばですが、現場代理人のコスト意識を育てるためにも、成果を急ぐのではなく、まずは仕組みづくりを優先しています」。
東恩納社長は、売上拡大よりも利益確保を重視しており、工事粗利率を3ポイント引き上げることを当面の目標として掲げる。

加えて、職人の出面管理や安全書類管理にもANDPADを利用するようになった。
「大型案件では40〜50人の専門工事の職人さんが次々に入場するため人数の把握すら難しく、安全書類の回収にも課題がありました。そこで、ANDPADのチャット機能を使って、どの現場にどの工種の職人さんが何人入るかを報告するようルール化したところ、出面管理や安全書類の不備が減り、現場代理人の負担軽減につながるなど、徐々に成果が見えてきました」。
DX推進のカギは「若手→ベテラン」への働きかけ
社員の年齢層は20代から70代以上までと幅広く、ANDPAD導入当初はベテラン社員の適応が課題の1つだった。
そこで東恩納社長は、若手社員を「DX推進役」として積極活用。若手が先輩に向けて、ITツールの使い方を発信・提案する独自の文化を育てようとしている。
「たとえば、『出面の数字が間違っているので修正して再投稿してください』といった発信を、あえて若手から先輩に向けて言えるような環境づくりをしています。一口にDXと言ってもいかに運用・定着させるかがカギになるので、デジタルネイティブ世代の習得の早さを最大限に活かしつつ、いまある課題を潰して次の課題解決へと向かう流れをボトムアップ方式でつくりたいのです」。
一方、月1回の工務会議では、ベテランから若手に向けて施工品質や安全管理に関する技術・ノウハウを継承する時間を設定。ANDPADが世代間の橋渡しツールとなり、若手とベテランが補い合う良好な職場環境につながっている。

次なるDXロードマップ
現在は「資料の一元化」と「現場情報の見える化」という基礎固めを着々と進め、次のフェーズとして東恩納社長は、「営業による工事の進捗管理」と「工事と会計データの連携強化」を見据えている。
「進捗・出来高のデータをANDPAD上でリンクさせることができれば、現場写真と進捗率が紐付き、会計上の裏付けにもなります。先日、外部監査にANDPADを使っていると伝えたところ非常にいい反応をもらえたので、自信をもって次のフェーズへと進むつもりです」。
ゆくゆくは、既存の販売管理システムとの連携も視野に入れている。

「スーパーサブコン」として地元の建設業を支えたい
東恩納社長は、鉄骨に留まらず、屋根・外壁・土木・杭・鉄筋といった専門工事をトータルで手がける建設会社——いわば「スーパーサブコン」のポジションを確立させたいと話す。
「さまざまな専門工事をトータルで管理できるプロフェッショナルとして、ANDPADをフル活用することで人手不足に悩むゼネコンの強力なサポーターになりたいのです」。
そして、東恩納社長が抱くもう1つのビジョンが「DX沖縄地方モデル」の構築だ。
「沖縄は、地理的制約や物流面でのハンデが語られることもありますが、多くの人が沖縄に抱く固定観念を打ち破って“DXの地方モデル”を自分たちの手でつくり、小野建グループ全体に成果を発信したいと思っています。地域の制約を越えて、挑戦の幅を広げられるのがDXの面白さです。そんな挑戦ができることが楽しみで仕方がありません」。
沖縄から業界の当たり前を変えていく—。同社のこれからの歩みに期待したい。


