株式会社LIFEFUNDのご紹介
静岡県浜松市に本社を置く株式会社LIFEFUND。「住宅を建てて終わり」ではなく、地域の暮らしを支える「住」のインフラとなるべく、住まいや不動産に関わる事業を幅広く展開している地域密着企業だ。
2015年より新築注文住宅事業にシフトした同社は、約10年で年間148棟(2025年7月~2026年8月実績)を手がける工務店へと急成長を遂げている。平均成長率年133%を誇る同社の躍進を支えているのが、AIの活用だ。「日本一AIを使う工務店」を標榜する同社の取り組みには、今業界から大きな注目が集まっている。
今回は、株式会社LIFEFUNDの代表取締役社長 白都卓磨氏にインタビューを実施。建築業界でのAI活用の現状や組織浸透への課題、今後の展望について、詳しくお話を伺った。
地域の暮らしを支えるインフラを目指し、多角的に事業を展開
株式会社LIFEFUND 代表の白都氏は、静岡県浜松市で生まれ育ち、建築系専門学校を卒業後、地域有数のハウスビルダーで現場監督を経験。その後、24歳で独立し、店舗の設計施工、外壁塗装業などを手がけてきた。2015年からは新築注文住宅事業への転換を図り、現在に至る。
「新築注文住宅事業では、建築家とつくるデザイン住宅『ARRCH』と、性能と価格のバランスを追求した規格住宅『PG HOUSE』の2ブランドを展開しています。不動産事業では、売買仲介・リノベーション・買取再販を一貫して行っています。また、最近では、新たに相続コンサルティング事業と民泊事業も開始しました。浜松市に根ざした工務店の責任として、不動産がきちんと循環し、お客様が資産を有効活用できる流れを生み出したいと考えての取り組みです。今後も、「住」に関わるワンストップサービスの提供を目指し、事業領域を拡大したいと考えています。」(白都氏)

「日本一AIを使う工務店」を目指し、活用を推進
同社が手がけているのは、建築・不動産に関連する事業だけではない。全社員でAIの活用を推進している同社は、社内で培った最先端のノウハウを業界全体に普及させるべく、AI教育事業にも注力している。業界全体の人手不足解消や生産性向上を目指し、活動を続けている。
「当社の正社員57名は、Claude Codeを当たり前のように使って業務効率化を図っています。私は、自社を『社会実験の場』として考えているので、当社の成功事例も失敗事例も、失敗をどう乗り越えたかもすべて知見として蓄積し、同業者のみなさんへ惜しみなく提供していく考えです。」と、白都氏は話す。
社会的にAI活用が急速に進むなかで、住宅業界・建築業界にもその波は押し寄せている。ただ、地域の工務店やビルダーにおいて、同社ほどAIを使いこなしている企業はあるのだろうか。
「私は、AIが組織に浸透するまでに5段階のレベルがあると考えています。レベル1は、ITに明るい一部の個人が利用している段階です。レベル2が、特定の部署だけが利用をしている段階。そして、レベル3が全社標準化です。全社でのAI活用を進める場合、利用するツールの指定やガイドラインの整備が必須になります。レベル4は、AIが自社の独自データを解析し、知見やノウハウを蓄積できている状態。レベル5は、エージェントAIと一緒に働く業務フローが整備された状態です。このように5段階で分けると、現在多くの工務店・ビルダーは、レベル1~2で止まっているのが現実かと思います。」(白都氏)

経営者と社員の「利益相反」がAIの利用浸透を阻んでいる
「AI活用には取り組みたいが、個人や特定部署の利用から浸透が進まない」。そんな課題を抱えている企業は多いことだろう。では、何が浸透の障壁になっているのか、白都氏に伺った。
「組織浸透の要となるのが、経営者がどれだけAI活用にコミットできているかです。いくら社員に利用を呼びかけても、経営者自身がAIを活用していないと組織へは浸透しません。AIの登場は、第四次産業革命とも言われていますが、私もDXとはレベルが異なるくらい、経営者が本気で取り組まなければならない課題だと考えています。2026年、今年は建築業界での「AI組織浸透」元年になるでしょう。正直に申し上げて、ここで方向性が示せなかった会社は加速度的に置いていかれると考えています。」(白都氏)
また、経営者だけではなく、「従業員側にも組織浸透を阻むボトルネックが存在する」と、白都氏は話す。
「従業員がAIを使いこなせるようになって業務効率化が進めば、経営者は生産性が向上したとメリットを感じるでしょう。ただ、AI活用で仕事が早く終わるようになっても、早く帰れるわけでもなく、給与も上がらなければ、従業員には特にメリットはありません。その上、余裕ができた時間に新しい仕事が追加されるのですから、不満がたまるのも当然です。」(白都氏)
白都氏は、この時点で「経営者と従業員の間に利益相反が生まれている」と指摘。利益相反を解消しないままAI活用を推進するのは危険だと話す。
「AIを使って仕事を効率化している社員は、仕事量を増やしたくないので隠れてAIを使うようになります。この状況は『シャドーAI』と呼ばれていますが、経営者の知らないところで情報がAIに学習され、機密漏洩につながるリスクがあります。何より、生産性向上につながるノウハウが社内で共有されなくなるので、結果として業務効率化が進みません。個人でAIを抱え込んでしまい、組織に浸透しなくなるのです。」(白都氏)
利益相反を「人事評価制度」で解消、知見を共有し合える組織へ
実は、白都氏も実際に同じような課題に直面し、試行錯誤を繰り返してきたという。では、どんな取り組みによって利益相反を解消したのだろうか。
「AIの全社利用が浸透している他業界の企業を参考に、当社ではAIの活用度合いを人事評価制度に組み込むことを選択しました。AIを積極的に利用している社員を評価し、報われる制度を構築することで利益相反を解消したのです。」(白都氏)
ただ、個々の社員によってAIに関するリテラシーには差がある。白都氏は「最初から持っている知識やスキルで評価に差がつくようにはしたくない」との思いで、まずは3カ月間でどれだけ活用事例を出せるかを評価基準にした。成功・失敗は問わず「数」を基準にすることで、社員がAIに触る流れを生み出した。
「AIの組織浸透のキーポイントは、個人のAI活用事例を全社共有のナレッジとして蓄積し、横展開できるかどうかです。当社では、人事評価制度の運用によって活用事例を吸い上げ、AIエージェントを使ってナレッジ化し、誰もが使える状態にしていくことを第一に考えました。その上で、AI活用による作業時間削減・品質向上などを計測し、社員の努力を見える化して評価しています。」(白都氏)
また、「大前提として、AIを利用する環境は経営者が構築しなければならない」と白都氏は話す。
「全社員が利用する標準AIツールを指定し、有償アカウントを全社員に配布するのが組織浸透の第一歩です。多くの経営者が懸念している情報漏洩対策においても、経営者がツールやガイドラインを定めれば解消できます。コストを気にする経営者もいますが、例えば1人3,000円程度の有償アカウントを配布したとしても、AIの活用によって上がる成果が3,000円程度で収まることはないでしょう。未来の競合優位性を作る上で、AIがどれほどの投資対効果を生むのかをぜひ考えてみていただきたいと思います。」(白都氏)
「コンテキスト」の積み上げが3年後の未来を変える
さらに、白都氏は、中長期的にAIエージェントを活用する上で大事になるのが、「コンテキスト」だと説く。
「コンテキストとは、AIが質問に回答したり、タスクを処理したりする際に前提とする文脈や背景情報を指します。当社では、『私たちだけが知っていてAIはまだ知らない会社固有の情報』と定義しています。コンテキストを持たないAIエージェントは、『IQ130以上の新卒社員』のような存在です。たとえIQ130以上でも、会社の情報を全く知らない新入社員は仕事ができないでしょう。誰がどんな情報を持っているか、どんな業務フローで動いているか、過去の実績は――こうした情報をきちんと体系化してAIに渡すことで、AIは会社を深く理解した頼れるパートナーになります。」(白都氏)
AIに読ませるコンテキストは、一朝一夕で作れるものではない。ファイルを整理してクラウドに情報を集約するのはもちろん、チャットやメールのログを収集してAIと連携を図ったりと、AIに情報を渡す環境を構築していく必要がある。しかし、この地道なコンテキストの積み上げが、将来に大きく影響すると白都氏は予想する。
「今の時点からコンテキストを意識してAIを活用している会社と、AIと闇雲に会話をしている会社とでは、同じAIエージェントを使い、同じモデルを使っても、3年後には出力結果の品質に天と地ほどの差が出るでしょう。コンテキストを会社の資産と考え、蓄積していく仕組みづくりは必須だと思います。」(白都氏)

AIはベテランが使うほど相性がいい
また、コンテキストの積み上げにおいて重要な役割を果たすのは、経験豊富なベテラン層だと白都氏は話す。一般的に、AI活用との親和性が高いのは若年層のように思えるが、AIとベテランは相性がいいのだろうか。
「建築業界には、専門知識や技術を豊富に持っているものの、ITには苦手意識を持っているベテランが多いと思います。ただ、彼らの脳内には、高度な判断基準や業務フロー、職人的な経験則がある。これらをコンテキスト化し、AIに渡せれば、より精度の高いアウトプットが出せるのは間違いないでしょう。ベテランがAIを活用できるようになったら、まさに『鬼に金棒』です。だからこそ、ベテランがより積極的にAI活用に取り組めるような環境整備は必要になると思います。」(白都氏)
AI活用が「キャリア安全性」の判断軸に
一方の若手世代は、学生時代から勉強や論文作成、悩み相談にAI活用をしているため、AI活用はすでに当たり前と認識している。だからこそ、今の若者は「AIを導入していない企業に対して疑問を抱くはずだ」と、白都氏は推察する。
「近年海外では、『心理的安全性』ならぬ『キャリア安全性』という価値観が広まってきています。キャリア安全性は、『この会社で働き続ければ、自分自身の市場価値が上がる』と思える状態が確保されていることを指す概念です。そして今、このキャリア安全性の判断軸に、AI活用の度合いが大きく影響していると言われています。AIの利便性を実感している若者は、AIを使えない会社に就職したいとは思わないでしょう。特にZ世代・α世代の若者たちは、社員食堂の有無よりも、会社がAIツールの利用を推奨しているかどうかが、入社の重要な判断軸になっています。採用市場で勝ち続けるという文脈においても、経営者は責任を持ってAI活用に取り組むべきだと思います。」(白都氏)
AI教育事業を起点に、建築業界全体の変革へ
現在同社では、AI教育事業領域において、経営者のコミットを促す「建築AI経営研究会」と建築会社のニーズに応じた「個別コンサルティング」の2つを展開している。
「建築AI経営研究会」は経営者限定のコミュニティで、2カ月に1回のペースで研究会を開催。オンライン・オフラインいずれでも参加が可能で、オフラインの場合はワークショップで自分の手を動かして学ぶことが可能だ。毎回経営者150名ほどが参加しており、白都氏は「日本の建築業界で一番AI活用事例が集まる会だと自負している」と話す。
また、個別コンサルティングを実施しており、建築会社のニーズに応じたAI研修、スタートアップ支援、浸透支援などのサービスも提供している。
また、実務者向けに個別コンサルティングを実施しており、建築会社のニーズに応じたAI研修、スタートアップ支援、浸透支援などのサービスも提供している。
「建築AI経営研究会で経営者のコミットを支え、個別コンサルティングでは現場社員がAIを実務で使える環境づくりをサポートしていきます。経営者と現場、この両輪が回っていくと、一気に会社がAI活用推進へ動いていくと思います。ぜひご活用いただければ幸いです。」(白都氏)



