- Total Productive Maintenance(TPM)とは何か
- Total Productive Maintenanceが注目される理由
- Total Productive Maintenanceで定義される「16大ロス」とは
- Total Productive Maintenanceを構成する「8本の柱」とは
- Total Productive Maintenance導入のメリット
- Total Productive Maintenance導入のデメリット・注意点
- Total Productive Maintenance導入の進め方
- Total Productive Maintenance活動の成果を測る指標
- Total Productive Maintenanceに関するよくある質問
- TPMに取り組むならANDPAD BMがおすすめ
- まとめ
製造現場では、設備トラブルによる生産停止や品質のばらつきなどが課題となります。設備が止まるたびに原因究明や復旧へ時間を要し、生産計画に影響が及ぶケースも少なくありません。こうした課題の改善に役立つのがTPMです。
TPM(Total Productive Maintenance)は、設備の故障や不良などのロスを削減し、生産性や品質、安全性の向上を目指す生産保全活動です。経営層から現場担当者まで全員で継続的な改善に取り組みます。
本記事では、TPMの基本的な意味から16大ロス・8本柱などの概念を解説します。また、OEE・MTBFなどの指標や導入の進め方までわかりやすくまとめています。この記事を読めば、TPMの全体像を理解し、現場に当てはめて考えられるようになるでしょう。
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Total Productive Maintenance(TPM)とは何か
TPM(Total Productive Maintenance)とは、設備や工程に潜むロスを全員参加で排除する活動です。生産システムの効率を最大限に高めることを目的としたマネジメント手法の一つで、1971年に日本で体系化されました。現在では、世界中の製造業で導入が進んでいます。
設備の保全を保全部門だけに任せるのではなく、経営層から現場担当者までが役割を分担しながら継続的な改善に取り組む点が特徴です。生産性や品質、安全性の向上に加え、設備トラブルの未然防止にもつながります。
本章では、以下の3点からTPMについて解説します。
- 設備ロスをゼロに近づける生産保全活動
- TPMが生まれた背景と歴史
- TPMとTQM・TPSの違い
設備ロスをゼロに近づける生産保全活動
TPMの中心にあるのは、生産の妨げになる原因を「16大ロス」として整理し、1つずつ減らしていくという考え方です。この16大ロスは、設備そのものに関するもの、人の動きに関するもの、原材料やエネルギーに関するものという3つのグループに分けられています。それぞれの数は以下の表のとおりです。
| グループ | ロスの数 | 内容の例 |
| 設備の効率化 | 8大ロス | 故障ロス、段取り・調整ロス、チョコ停・空転ロスなど |
| 人の効率化 | 5大ロス | 管理ロス、動作ロス、編成ロスなど |
| 原単位の効率化 | 3大ロス | 歩留まりロス、エネルギーロス、型・治工具ロス |
さらに、TPMで活用するのは、設備がどれだけロスなく稼働しているかを示すOEEなどの指標です。故障の間隔を表すMTBFや修理に要した時間を示すMTTRなども用いて、保全活動の成果を客観的に把握します。数字で見えるようにすることで、問題が隠れている箇所がはっきりし、改善すべき点を的確に絞り込めます。
TPMが生まれた背景と歴史
TPMが重視されるようになった背景には、工場を取り巻く環境の変化があります。近年はロボットや自動化の導入が進み、人の作業が機械に置き換わったことで、たった1つの設備トラブルが工場全体の生産ラインを止めてしまう危険性が高まりました。
以下のような状況の中で、壊れてから修理するという従来のやり方では対応しきれなくなり、壊れる前に兆候を見つけて手を打つ仕組みが必要とされるようになりました。
- 少子高齢化による深刻な人手不足の進行
- 熟練技術者の引退による、設備保全ノウハウの継承不足
- 製品品質に対する要求水準の高まり
TPMは、このような時代の変化に対応するために欠かせない考え方として広まっていきました。
TPMとTQM・TPSの違い
TPMと混同されやすい用語に、TQM(Total Quality Management)とTPS(Toyota Production System)があります。3つは目的も対象も異なるため、整理して理解することが重要です。
| 用語 | 正式名称 | 主な目的 | 中心となる対象 |
| TPM | Total Productive Maintenance | 設備・人のロスを全員参加で削減する | 設備・人・工程のロス排除 |
| TQM | Total Quality Management | 製品・サービスの品質を全社で向上させる | 品質管理・顧客満足 |
| TPS | Toyota Production System | ムダを排除して必要なものを必要な時に作る | 生産方式・在庫・リードタイム |
TPSは「必要なものを必要な時に必要な量だけ作る」という生産方式です。一方、TPMはその実現に向けて、設備の信頼性を支える役割を担います。つまり、TPMはTPSが目指す理想的なものづくりを設備の面から支える重要な仕組みだといえます。
Total Productive Maintenanceが注目される理由
近年、製造業を取り巻く環境の変化によって、TPMへの関心があらためて高まっています。自動化が進んで設備への依存度が高まる一方、人手不足や技術継承の問題も深刻になっています。複数の課題が重なったことで必要とされるようになったのは、設備を守るための体系的な仕組みです。
以下の表に、TPMが必要とされるようになった背景と現場で発生している問題をまとめています。
| 背景となる変化 | 現場で起きていること |
| 設備の自動化・高経年化 | 小さなトラブルが工場全体の停止につながりやすい |
| 熟練技術者の退職 | 保全のコツや知識が特定の人しかわからない状態になる |
サステナビリティ・省エネへの対応 | 設備の不具合を放置するとエネルギーが無駄に消費される |
本章では、Total Productive Maintenanceが注目される理由について、以下の3つの視点から解説します。
- 設備の自動化・高経年化による故障リスクの拡大
- 熟練技術者の退職と保全ノウハウの属人化
- サステナビリティ・省エネへの対応強化
設備の自動化・高経年化による故障リスクの拡大
設備への依存度が高まり、1台の故障が工場全体に与える影響は以前より格段に大きくなっています。ロボットや自動化システムの導入が進み、人の手が機械に置き換わった工場も少なくありません。
チョコ停と呼ばれる短時間の軽微な停止でも、生産ライン全体が止まり、納期遅延に直結します。同時に、設備の高経年化による突発故障も増加傾向にあります。こうした構造的なリスクに対応するためには、壊れてから直す事後保全ではなく、壊れる前に兆候をつかむTPMの考え方が有効です。
熟練技術者の退職と保全ノウハウの属人化
保全に関するノウハウが特定の人にしかわからない属人化の状態が、現場の深刻な問題の1つです。
少子高齢化による人手不足が進む中、長年設備を守ってきた熟練技術者の退職が相次いでいます。熟練技術者の退職によって、機械の異常にいち早く気づくコツや修理の手順といった知識が失われつつあり、技術継承への対応が急務です。
属人化した現場では突発故障が起きても復旧に時間がかかり、生産への影響が長引きます。TPMの「自主保全」や「教育・訓練」の柱は、こうしたノウハウを標準化・見える化し、特定の人に頼らない保全体制の構築に直結します。
サステナビリティ・省エネへの対応強化
設備をしっかり保全し、良い状態を維持することは、環境への配慮を支える基盤として重要です。
近年は、企業に対して環境への配慮を求める声が一段と高まっています。二酸化炭素の排出を減らし、地球環境への負荷を抑えながら事業を続けるカーボンニュートラルへの取り組みが求められるようになりました。エネルギーの無駄な消費を減らす省エネへの対応も、製造業にとって避けて通れない課題です。
TPM活動によって設備の無駄な稼働や圧縮エアの漏洩を削減すると、生産コストの削減と環境負荷の低減を両立できます。ESGの観点からも、企業価値の向上につながる取り組みとして高く評価されています。
Total Productive Maintenanceで定義される「16大ロス」とは
TPMでは、工場の生産性を下げるあらゆる原因を「16大ロス」として体系化しています。設備・人・原単位の3区分に分類され、それぞれを可視化・定量化すると、改善の優先順位が明確になります。まず自分の工場にどのロスが多いかを把握することが、TPM活動の出発点です。
それぞれのロスの内容は以下の表のとおりです。
| 分類 | ロスの数 | 主なロスの内容 |
| 設備に関するロス | 8大ロス | 故障、段取り・調整、刃具交換、立ち上がり、チョコ停・空転、速度低下、手直し・不良、シャットダウン |
| 人に関するロス | 5大ロス | 管理、動作、編成、自動化置き換え、調整測定 |
| 原単位に関するロス | 3大ロス | 歩留まり、エネルギー、型・治工具 |
ここでは、16大ロスを以下の3つに分けて解説します。
- 設備に関する8大ロス
- 人に関する5大ロス
- 原単位に関する3大ロス
設備に関する8大ロス
設備に関するロスとは、機械が突然止まったり、本来の力を出せなかったりすることで生じる8種類の損失です。主に以下のような内容のロスを指します。
- 突然壊れて生産が止まる故障ロス
- 品種を切り替えるときにかかる段取り・調整ロス
- 工具の寿命による刃具交換ロス
- 稼働開始直後に良品が安定しない立ち上がりロス
- 短時間の停止を繰り返すチョコ停・空転ロス
- 本来のスピードより遅く運転せざるを得ない速度低下ロス
- 不良品を作り直す手直し・不良ロス
- 計画的に設備を止めるシャットダウンロス
どれも設備の稼働状況を直接的に悪化させる要因です。
人に関する5大ロス
人に関するロスとは、作業員の動きや配置に無駄が生じて発生する以下の5種類のロスを指します。
- 指示や部材を待つ間に生じる管理ロス
- 無理な姿勢や道具を探す時間などによる動作ロス
- 工程間の作業時間のバランスが崩れて手待ちが生まれる編成ロス
- 自動化できるはずの単純作業をいまだ手作業で続けている自動化置き換えロス
- 品質確認のために頻繁に機械を止めて測定を行う調整測定ロス
設備のロス対策に集中しがちな現場でも、人に関するロスを同時に見直せば、生産効率はさらに高まります。
原単位に関する3大ロス
原単位に関する3大ロスとは、原材料やエネルギーの使い方に起因する損失であり、製造コストに直結する点が特徴です。主に以下のような内容のロスを指します。
- 投入した材料に対して完成した良品の重量が少なくなる歩留まりロス
- 電力・圧縮エア・燃料など不要な消費や漏れによるエネルギーロス
- 金型や治具、工具が摩耗や損傷で発生する修理・再製作費用の型・治工具ロス
原単位に関する3大ロスを削減すると、生産コストの低減と環境負荷の軽減を同時に達成できます。そのため、省エネやSDGs対応といった経営課題にも直接応えられます。
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Total Productive Maintenanceを構成する「8本の柱」とは
TPMは、8つの活動領域をそれぞれの専門部署が担当し、工場全体を支える仕組みになっています。この8つは「8本の柱」と呼ばれ、誰が何をすべきかを明確にする実務の指針です。それぞれの担当と役割を整理すると、以下の表のようになります。
| 柱の名称 | 主な担当 | 役割 |
| 1.個別改善 | 現場リーダー・生産技術者 | 問題の大きい設備のロスを根本から取り除く |
| 2.自主保全 | オペレーター | 清掃・点検・給油などの日常保全 |
| 3.計画保全 | 保全専任部門 | スケジュールに沿った点検・部品交換 |
| 4.品質保全 | 品質管理部門 | 不良品が出ない設備条件の維持 |
| 5.設備初期管理 | 開発・設計部門 | 故障しにくい設備の設計 |
| 6.教育・訓練 | 人事・教育担当 | 設備に強い人材の育成 |
| 7.管理間接部門の効率化 | 購買・生産管理などの事務部門 | 情報遅延や管理業務の無駄の排除 |
| 8.安全・衛生・環境管理 | 安全管理部門 | 労働災害や環境事故のリスク排除 |
1. 設備や工程のロスを削減する
工場の中で最も問題が大きいボトルネック設備を対象に、ロスの根本原因を徹底的に排除するのがこの活動です。現場のリーダーや生産技術者が中心となり、部署の垣根を越えたチームを組んで取り組みます。よく起こる小さなトラブルや繰り返し発生する特定の問題を対象とし、原因を徹底的に分析し、再発しないように対策を打ちます。
1台の設備のOEE(設備総合効率)を改善することが工場全体の生産量増加に直結するため、TPM活動の中でも即効性の高い柱です。
2. 日常的に設備を守る
設備を実際に操作するオペレーターが「自分の設備は自分で守る」という意識のもと行うのがこの活動です。以下のような基本的な作業を習慣化することが設備の劣化を日常的に防ぎます。
- 清掃
- 点検
- 給油
- 緩んだボルトの締め直し
特別な技術がなくても続けられる基本動作の積み重ねが突発故障を防ぐ最大の土台となり、製造現場のオペレーター全員が担当します。また、小さな不具合を放置せずに対応できるため、突発故障や生産停止の防止にも効果的です。
自主保全は以下の7つのステップを段階的に進め、設備の日常劣化を未然に防止するのが目的です。
- 初期清掃
- 発生源対策
- 基準作成
- 総点検
- 自主点検
- 標準化
- 自主管理
3. 計画的に設備を点検・修理する
計画保全は、保全を専門に担当する部署が中心となって実施する活動です。あらかじめ策定した保全計画に沿って、設備の点検や部品交換を行い、故障を未然に防ぎます。
また、設備の稼働状況や劣化の傾向を分析して最適な保全時期を判断できる点が特徴です。日常的な保全を担うオペレーターとは役割が異なり、専門的な知識や技術を活用して設備の安定稼働を支えます。
計画的な保全の実施は、突発故障の減少に加え、修理時間や保全コストの削減にもつながります。
4. 品質欠陥を防ぐ
不良品が生まれない条件を設備に対して設定し、品質不良をゼロに近づける活動です。設備の状態を継続的に測定しながら管理し、条件が本来のあるべき状態からずれてしまう兆候をいち早く察知します。
不良品が発生してから対応するのではなく、発生する前の段階で防ぐという考え方が特徴です。そのために、QMマトリクスを使って不良の発生要因を整理するのが代表的な手法です。
設備・材料・作業方法・作業者(4M)に変更があった際は、影響を確認しながら品質を管理します。こうした活動は、品質管理部門だけでなく、製造部門や生産技術部門とも連携して進めます。
5. 立ち上げ時のロスを減らす
初期管理とは、新しい製品や設備を開発する段階から、故障しにくく保全しやすい設計を目指す活動です。過去に発生した故障の原因や保全活動で得られた知見を設計へ反映すれば、初期不具合の発生は抑えられます。
また、設備の立ち上げ後に大幅な改修や調整を行う必要が減るため、早期の安定稼働にもつながります。設備が完成してから対策を講じるのではなく、企画や設計の段階から品質や保全性を考慮することが、TPMにおける初期管理の大きな特徴です。
6. 設備に強い人材を育成する
設備の異常にいち早く気づけるオペレーターや、専門性の高い保全担当者を計画的に育てるのがこの活動です。
社内研修や外部講習などを活用し、設備の構造や保全技術、安全管理に関する知識を継続的に身に付けます。設備を守る仕組みが整っていても、それを適切に運用できる人材がいなければ十分な効果は得られません。
人材育成を継続すると、保全品質の向上や技術継承が進み、安定した設備運用を支える基盤づくりが実現できます。
7. 間接業務を効率化する
購買や販売、生産管理といった、製造現場を後方から支える事務部門の業務品質を高めるのがこの活動です。情報が遅れて伝わるリスクや管理業務の無駄を防ぎ、製造現場がスムーズに動けるように支援します。
「自部門が製造現場にどのようなロスを発生させているか」を間接部門自身が分析し、業務品質を高めるのが目的です。全員参加を掲げるTPMにおいて、直接部門だけでなく間接部門も改善活動の当事者となることで、工場全体の生産性向上につながります。
8. 安全な職場を維持する
労働災害や環境事故につながる危険な箇所を工場から完全に取り除くのがこの活動です。安全が確保されていなければ生産性の向上は成り立たないという考え方のもと、クリーンで安心して働ける職場環境を維持し続けます。代表的な活動は以下のとおりです。
- 危険箇所の洗い出し
- リスクアセスメント
- ヒヤリハット活動
- KY(危険予知)活動
設備の効率を高める活動と並行して、働く人の安全を守る取り組みも、TPMにおいて欠かせない要素として位置づけられています。
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Total Productive Maintenance導入のメリット
TPMへの取り組みにより、以下の3つの成果が得られます。
- 生産性の向上
- 品質不良の削減
- 人材育成
それぞれが独立した成果ではなく、互いに影響し合いながら工場全体の力を底上げしていく点が特徴です。3つのメリットの関係を整理すると、以下のとおりになります。
| メリット | 関わる主な活動 | 得られる成果 |
| 生産性の向上 | 16大ロスの削減、OEEによる可視化 | 工場全体のアウトプット量の増加 |
| 品質不良の削減 | 品質保全 | 手直しや廃棄コストの削減 |
| 人材育成と現場力の向上 | 自主保全の7ステップ | 異常に気づける感性と保全ノウハウの共有 |
1. 生産性を向上できる
TPMへの取り組みで、これまで見えていなかった設備のロスを可視化できます。工場で発生する無駄は、故障や段取り替え、短時間の停止など16大ロスとして整理されています。これらを1つずつ改善することで、生産性の向上が期待できるでしょう。
さらに、設備の稼働状況を示すOEEを活用すれば、ボトルネックの数値把握が可能です。継続的な改善活動によって、工場全体の生産性が向上し、アウトプットが増加します。
2. 品質不良を削減できる
TPMは、不良品が発生する前の段階で原因を取り除き、品質の安定を目指す活動です。品質保全と呼ばれる柱では、不良品が出ない設備の条件をあらかじめ設定し、その状態を維持しながら、条件がずれてしまう兆候を早期に察知します。
不良が出てから手直しする後工程の品質管理ではなく、不良が出ない条件を保つ前工程の品質保証へのシフトが最大のポイントです。品質不良の削減により、手直しや廃棄にかかる無駄なコストや時間を減らせます。
3. 人材育成と現場力の向上につながる
TPMを実践する過程では、設備に強いオペレーターや専門性の高い保全担当者が計画的に育っていきます。自主保全の7つのステップを通じて、オペレーターは清掃や点検といった基本動作から始まり、設備の構造や仕組みを技術的に理解できるようになっていきます。
学びの積み重ねによって養われるのが、異常の兆候にいち早く気づく力です。さらに、これまで特定の人しか持っていなかった保全ノウハウを組織全体で共有しやすくなり、現場全体の対応力や保全レベルの向上につながります。
Total Productive Maintenance導入のデメリット・注意点
TPMは多くのメリットをもたらす一方で、導入する際にはいくつか注意すべき点もあります。現場の負担増加や定着までの時間、活動の形骸化、データ不足による判断の難しさといった課題が代表的です。
以下の代表的な4つの注意点と、それぞれの対策をあらかじめ把握しておくと、導入後の失敗リスクを低減できます。
| 注意点 | 起こりやすい問題 | 対策の方向性 |
| 1.現場の負担が増える | 清掃・点検・記録作成が新たな業務として加わる | 活動時間を生産計画にあらかじめ組み込む |
| 2.定着までに時間がかかる | 自主保全だけでも7つの段階を踏む必要がある | 小さな成功体験を積み重ね段階的に広げる |
| 3.活動が形骸化しやすい | 点検シートを埋めるだけの作業になりやすい | 数値目標と現場へのフィードバックを欠かさない |
| 4.データ不足で判断しにくい | 故障履歴や在庫情報が属人化している | 指標を絞り込み情報を一元管理する |
1. 現場の負担が増える
TPMを始めると、既存の業務に加えて、清掃や点検、記録作成といった新しい作業が現場に加わります。特に、毎日の生産目標が厳しい状況では、日常点検や改善活動をする時間がシフト内で確保できず、サービス残業や休日出勤でこなさざるを得ません。
対策としては、以下の3点の実践が重要です。
- 業務量のバランスを見ながら段階的に導入する
- 点検項目を必要最小限に絞る
- 活動時間を就業時間内に計画停止として組み込む
全員参加を前提とするTPMを定着させるには、設計段階から現場の負担に配慮する姿勢が大切です。
2. 定着までに時間がかかる
TPMは短期間で成果が出る活動ではありません。設備を運転するオペレーターによる自主保全も、初期清掃から自主管理まで7つの段階を踏んで進めます。清掃を通じて不具合に気づき、点検基準を作り、技能を学び、標準化していくという積み重ねには相応の時間がかかります。
途中で焦って全社的に一斉展開しようとすると、かえって現場の反発を招きやすくなるでしょう。小さな成功体験を積み重ねながら、段階的に広げていく姿勢が求められます。
3. 活動が形骸化しやすい
TPMは、経営層が方針を発表するだけで現場に丸投げしてしまうと、点検シートを埋めるだけの作業に陥りやすくなります。
点検項目が多すぎると、実際には目視を行わず、チェックだけで済ませてしまう場合があるためです。また、改善提案の件数を優先すると、本質的ではない提案が増えるおそれもあります。こうした活動の形骸化を招きやすい点が、TPM導入時の課題です。
管理者が現場を巡回せず、努力を評価しないままだと、現場のやる気も次第に失われていきます。具体的な数値目標と、管理者による現場へのフィードバックが形骸化を防ぐ鍵になります。
4. データ不足で判断しにくい
TPMの効果を正しく評価するには、故障の履歴や点検基準、部品の在庫状況といったデータが欠かせません。
しかし、こうした情報が整理されておらず、個人のパソコンや机の中に散らばったまま、特定の人しか把握していない状態になるケースも少なくありません。監視すべき指標が多すぎると、データ集計だけに現場の管理者の時間が奪われてしまい、本来行うべき現場指導ができなくなる恐れもあります。
デジタル帳票や設備保全システムを活用してデータを一元管理すれば、どの設備のどのロスが大きいかをリアルタイムで把握でき、改善の優先順位を正確に絞り込めます。
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Total Productive Maintenance導入の進め方
TPMを実際に工場へ導入する際は、現状把握から始めて段階的に活動を広げましょう。いきなり全社展開するのではなく、段階的に進めることで、現場の反発を抑えながら着実な定着を図れます。
以下の5つのステップを順番に進め、着実な定着を目指しましょう。
| ステップ | 主な内容 |
| 1.現状のロスを分析する | 設備ごとの停止時間や発生頻度をデータで把握する |
| 2.対象となる設備を選定する | ボトルネックとなっている1台に絞り込む |
| 3.推進体制を構築する | オペレーター・製造課長・保全担当者でチームを組む |
| 4.自主保全を定着させる | 清掃・点検・給油の基準を現場で作り上げる |
| 5.KPIを設定して改善効果を測定する | OEE・MTBF・MTTRで進捗を数値化する |
1. 現状のロスを分析する
TPM導入の第一歩は、工場で発生している課題の正確な把握です。故障やチョコ停と呼ばれる短時間の停止など、生産を妨げるロスを設備ごとに記録します。停止時間や発生頻度を数値として集計し、現状を客観的に把握しましょう。
感覚や経験だけに頼らず、データをもとに課題を可視化すると、改善すべきポイントが明確になります。ここで得られたデータは、対策の優先順位を決めるだけでなく、改善効果を検証するための基準としても活用できます。
2. 対象となる設備を選定する
すべての設備に同時に手をつけるのではなく、まずは1台の設備に絞って取り組むのが重要です。
故障が頻繁に起きていて、工場全体の生産能力を制約している設備、いわゆるボトルネックとなっている重要設備を選び出します。現場を実際に見て回り、仕掛品が山積みになっていたり、後工程の作業者が手待ちになっていたりする場所が手がかりです。
対象を絞れば、限られた人手や時間でも確実な成果を出しやすくなります。
3. 推進体制を構築する
選定した設備に対して、製造部門と保全部門の関係者がチームを組んで集中的に取り組む体制を作ります。工場全体を一斉に動かそうとするのではなく、まずこの1台に対してだけ、徹底的な清掃や緩んだボルトの締め直しを行いましょう。
設備の稼働効率を高められれば、工場全体のアウトプット量が目に見えて増え、その成功体験が経営層と現場双方の信頼感を高めます。経営層と現場が連動して動く組織構造こそが、TPM定着の根幹となります。
4. 自主保全を定着させる
設備を運転するオペレーターが日常的に取り組む自主保全では、清掃や点検などの作業基準の整備から始めます。どこを、どの周期で、誰が実施するのかを明確にし、誰でも同じ手順で作業できる環境づくりが重要です。
また、点検項目やトラブルへの対応については、オペレーターが担当する範囲と、保全担当者が担う範囲を明確に区分します。対応漏れや判断のばらつきを防ぎ、設備の日常的な劣化を抑える保全体制は役割の標準化によって現場に定着します。
5. KPIを設定して改善効果を測定する
活動の成果を客観的に確認するために、測定したデータをもとにOEE、MTBF、MTTRといった指標を主要KPIとして設定します。日々の報告やシステムを通じて進捗を数値化して可視化すると改善活動が継続しやすいでしょう。
設備がどれだけロスなく動いているか、故障の間隔や修理にかかる時間がどう変化しているかを指標が示します。一時的な取り組みで終わらせないよう、日常点検の基準書を定期的に見直し、改善提案の活動と連動させながら、現場の文化として習慣化させるのが大切です。
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Total Productive Maintenance活動の成果を測る指標
TPM活動の効果を正しく評価するには、感覚だけに頼らず数字での確認が欠かせません。そのための代表的な指標は以下の3つです。
- 設備の効率を示すOEE
- 故障の間隔を示すMTBF
- 修理にかかる時間を示すMTTR
これらを使用することにより、改善活動の成果を誰にでもわかる形で説明できるようになります。
OEE(設備総合効率)の計算方法と見方
OEEとは、設備がどれだけロスなく良品を作り続けられていたかを示す指標です。OEEは以下の3つの数値を掛け合わせて算出します。
- 設備が実際に動いていた時間の割合を示す時間稼働率
- 本来の速度に対してどれだけの速さで動けていたかを示す性能稼働率
- 作られた製品のうち良品が占める割合を示す良品率
たとえば、時間稼働率90.3%×性能稼働率71.4%×良品率98.0%=OEE63.2%です。このように、稼働率が高く見えていても、速度低下によって総合効率が大幅に低下していることが数字でわかります。世界標準の目標値はOEE85%であり、現場の現状OEEとの差が改善余地です。
3つの視点から総合的に見ていくと、見落としがちなロスに気づけるようになります。
MTBF(平均故障間隔)・MTTR(平均修復時間)で管理
MTBFとMTTRは、設備の壊れにくさと直しやすさをそれぞれ表す指標です。
MTBFは、設備が故障してから次の故障が起きるまでの稼働時間の平均値であり、数値が大きいほど設備が壊れにくいことを意味します。一方、MTTRは、故障が起きてから修理が完了するまでにかかった時間の平均値を表す指標です。数値が小さいほど早く復旧できているのがわかります。
自主保全でMTBFを伸ばし、計画保全や技能向上でMTTRを縮めるという両面からの取り組みが、設備の稼働を安定させます。
現場・管理者・経営層でチェックするKPIを設定
TPMの指標は、立場によって見るべきものを分けるのが重要です。すべての階層が同じOEEの数字だけを追いかけてしまうと、活動が形だけのものになってしまう恐れがあります。3つの階層で見るべき指標を整理すると、次のようになります。
| 階層 | 主なチェック指標 |
| 現場・オペレーター | 日常点検の実施率、異常発見件数 |
| 管理者・生産技術・保全 | OEE、MTBF、品質不良率、停止損失時間 |
| 経営層・工場長 | 設備保全コスト、設備投資効果 |
現場のオペレーターがチェックすべきなのは、日常点検の実施率や異常の発見件数といった行動に近い指標です。管理者はOEEやMTBFといったロスの分析につながる指標を、経営層は設備投資の効果や省エネの実績といった経営的な指標を、それぞれ確認します。
役割に応じたKPIを層別に管理することで、各階層が自分事として改善に取り組める環境が整い、数値の意味を理解した上での継続的な活動が実現します。
関連記事:MTBF(平均故障間隔)の正しい読み方|数値に表れない現場のリスクと活用のコツ
Total Productive Maintenanceに関するよくある質問
TPMについて理解を深めていくと、現代的な技術との関係や、専門的な分析手法について疑問が浮かぶことがあります。ここでは、IoTやDXとの組み合わせ方、そしてPM分析という言葉の意味について、実務にすぐ役立つ形で解説します。
TPMとIoT・予知保全・DXをどう組み合わせるべきですか?
IoTやAIといった技術との組み合わせが、アナログ中心の活動を「デジタルTPM」へ進化させます。
| 導入する技術 | もたらされる変化 |
| 無線振動・温度センサー | 人の耳や感触では気づけない劣化の初期兆候を自動検知 |
| クラウド型の保全システム | 点検記録・修理履歴・部品在庫を一元管理 |
| 稼働データの自動解析 | ボトルネックや停止要因の特定を高速化 |
たとえば、設備の重要な部品に無線の振動センサーや温度センサーを取り付けておけば、故障が起きる前に部品交換の知らせを受け取れます。事前に部品交換することで突然の故障をほぼゼロに近づけられるでしょう。
さらに、点検記録や修理履歴を1つのシステムで一元管理すれば、紙の記録やExcelでの集計作業から解放されます。その結果、オペレーターは異常の原因を分析するという、本来注力すべき業務に集中できるようになります。
PM分析とは何ですか?
PM分析とは、TPMでも活用される改善手法の1つです。設備の慢性的な不具合や品質問題を体系的に分析し、根本原因を突き止めます。
突発的な大きな故障だけでなく、原因が見えにくい小さなトラブルにも注意が必要です。小さな問題は放置すると積み重なり、年間の損失が大きくなるおそれがあります。慢性的な問題を科学的に分析し、1つずつ取り除くことが設備の技術力向上につながります。
PM分析を継続して実践すれば、設備の安定稼働や品質向上を実現しやすくなるでしょう。その結果、TPMが目指す「ロスゼロ」の実現にも近づけます。
TPMに取り組むならANDPAD BMがおすすめ
製造現場では、設備の点検記録や修理履歴、異常報告などが紙やExcelに分散して管理されるケースも少なくありません。必要な情報をすぐに確認できないと、異常への対応が遅れたり、過去の保全履歴を十分に活用できなかったりする原因になります。
TPMを継続して成果につなげるには、設備に関する情報の一元管理が重要です。現場と管理者が同じ情報を共有できる環境の整備により、改善活動が継続しやすくなります。
ANDPAD BMは、図面や仕様書、設備台帳をクラウド上で一元管理できるサービスです。過去の点検履歴や修繕履歴は、設備台帳へ自動で紐づけて管理できます。スマートフォンのチェックシートに沿って入力するだけで点検が完了し、入力したデータは自動で集計されます。そのため、紙への記入や事務所での転記作業を削減可能です。
修繕の進捗状況は「未実施」「見積中」「実施済」などで可視化され、協力会社を含む関係者とも、リアルタイムで情報を共有できます。
点検計画は設備ごとに一元管理されるため、定期点検の実施漏れを防止できるのも特徴です。蓄積した点検データはAPI連携やExcel形式で出力でき、故障頻度や傾向の分析にも活用できるため、予防保全計画を立案しやすくなります。
さらに、設備台帳をカルテとして活用すると情報の属人化を防止できます。特定の担当者に依存しない保全体制の構築にもつながります。
ANDPAD BMは、日常点検や修繕履歴情報を「カルテ化」します。情報の属人化を解消するだけでなく、スマホで完結する点検報告により転記作業を不要にし、管理業務の圧倒的な効率化を実現 。製造業や多店舗運営における「施設・設備メンテナンス」サービスの詳細をぜひご覧ください。
まとめ
Total Productive Maintenanceは、8本の柱と16大ロスという体系のもと、設備故障や停止ロスを1つずつ減らしていくマネジメント活動です。OEEやMTBF、MTTRといった指標を使えば、感覚に頼らず改善の成果を数値で説明できるようになります。属人化しがちな保全ノウハウも、自主保全のステップを踏むことで、現場全体で共有しやすい体制を構築できるでしょう。


