夏の現場作業は熱中症のリスクと隣り合わせです。そのため、熱中症対策は現場の従業員にとって非常に大切です。この記事では、夏場に現場作業をする従業員が取り組むべき熱中症対策について解説します。熱中症に陥りにくい服装についても解説するため、ぜひ最後までご覧ください。
建設現場などで熱中症が起こりやすい理由
熱中症は、暑さや湿気により体温調整が難しくなる状態のことです。熱中症になると、めまいや吐き気など、さまざまな症状が生じます。ここでは熱中症の原因や建設現場で熱中症になりやすい理由などを解説します。
熱中症になる原因・主な症状
熱中症とは、暑さや湿度の影響で体温調節がうまく機能せず、水分・塩分バランスが崩れることで、めまいや吐き気、頭痛などの症状が現れる状態です。厚生労働省の調査によれば、2015年から2024年の10年間で、職場における熱中症による死傷者は年間平均818人にのぼり、そのうち24人が命を落としています。
参考:令和6年「職場における熱中症による死傷災害の発生状況」
建設現場で熱中症になりやすい理由
建設現場は、熱中症のリスクが特に高い環境です。屋外の作業が中心となるため、作業員は直射日光や高温多湿の影響を直接受けます。特に気温が35℃を超えるような日は、危険性がさらに増します。また、建設現場での作業は身体への負担が大きく、疲労の蓄積が熱中症の引き金となる恐れがあります。
建設現場での熱中症対策の法令について
建設現場における熱中症対策については、以下の法令によって定められています。
- 労働安全衛⽣法施⾏令
- 労働安全衛⽣法
- 作業環境測定基準
- 労働安全衛⽣規則
建設業に従事している人は、誰でも法令やガイドラインに沿った対策が必要です。
熱中症に陥りやすい現場
熱中症に陥りやすい現場の代表例として、運送業や建設業、製造業などが挙げられます。ここではなぜ、これらの現場で熱中症に陥る人が多いのか解説します。
運送業
運送業では死亡災害の件数は他業種に比べて少ないものの、傷病者の数が多いという傾向があります。運送の現場では、冷房の効いた車内と炎天下を頻繁に行き来することで、体温調節機能に負担がかかることが多く、これが体調不良の一因とされています。この機能がうまく働かなくなると発汗が減り、喉の渇きを感じにくくなって水分補給が遅れがちになります。
建設業
建設業の現場は屋外作業が中心で、高温多湿な環境にさらされることが多くあります。作業員は安全確保のために厚手の作業着を着用しており、さらに重労働が多いため、体内の熱がこもりやすく、熱中症を起こしやすい状況です。
警備業
警備業は、建設業などに次いで熱中症による被害が多い職種の1つです。屋外での長時間勤務や夜勤による生活リズムの乱れが影響しやすく、さらに、現場へ直行直帰する働き方が一般的なため、熱中症対策が個人任せになりがちであることも、発症リスクを高める要因となっています。
製造業
製造業は建設業に次いで死亡災害の多い業種であり、熱中症対策が欠かせません。屋内作業が中心であるため、「室内なのになぜ熱中症に?」と疑問を持つ人もいますが、その主な原因は放射熱です。工場の屋根に太陽光が当たることで建物内の温度が上がり、加えて機械の稼働によって発生する熱も室内をさらに高温にします。
その他
屋外で体を激しく動かす作業現場では、熱中症のリスクが特に高くなります。たとえば清掃業です。屋外での作業が多く、短時間で複数の現場を回ることもあり、作業員に大きな負担がかかります。また、林業や農業といった一次産業も長時間の肉体労働が伴うため、熱中症になりやすい職種です。暑さの影響を受けやすい環境では、十分な熱中症対策が必要です。
夏場に取り組むべき熱中症対策6つ
夏場に取り組むべき熱中症対策は多岐にわたり、対策グッズの活用や作業環境の見直しが重要です。
1. WBGT値を確認する
快適で安全な作業環境の維持には、毎日、暑さ指数(WBGT値)と天気予報を確認することが重要です。WBGT値は熱中症の危険度を示す目安で、数値が高いほどリスクも上昇します。気温や湿度といった気象情報と合わせて、WBGT値が基準を超える恐れがある際には、事前に十分な熱中症対策を取ることが求められます。
2. 対策グッズを積極的に使う
熱中症対策グッズは、暑さから身を守る便利なアイテムです。代表的なものとして、首元を直接冷やせるネッククーラーや、ひんやりとした感覚を得られる冷感タオル、冷却シート、スプレータイプで手軽に冷却できる冷却スプレー、保冷剤を装着できるアイスベスト、ヘルメットの中に敷くインナーなどがあります。
3. 環境を整備する
現場の暑さ対策として、大型扇風機で風を送ったり水を撒いたりして、地面の温度を下げる方法が有効です。併せて、現場の状況に応じて導入可能な設備を検討することも大切です。
4. 塩分・水分をこまめに補給する
体内の水分や塩分が不足すると、熱中症になりやすくなります。これを防ぐには、水分と塩分をバランスよく取ることが大切で、経口補水液やスポーツドリンク、塩分補給用のキャンディーなどが効果的です。ただし、水だけを摂取すると塩分濃度が下がり、かえって危険な場合があるため注意が必要です。
5. 休憩時間を見直す
休憩のタイミングや時間の見直しは、作業効率の向上や熱中症予防に有効です。休憩中は疲労回復だけでなく、水分や塩分の補給にも役立ちます。たとえば、午前に1回しか休憩を取っていない現場では、回数を増やしたり、1時間ごとに小休憩を入れることで、作業員がよりしっかりと休めるようになります。
6. 熱中症になりにくい服装を心がける
作業現場では安全のために丈夫な作業服を着る必要がありますが、風を通しにくい素材のため、インナーに工夫が求められます。綿よりも、合成繊維で作られたスポーツ向けインナーがおすすめです。吸湿速乾性に優れており、汗をかいても快適に過ごせるうえ、洗濯後もすぐに乾くため着替えの準備も最小限で済みます。
熱中症になりにくい服のポイント
熱中症になりにくい服をテーマに、速乾性やレイヤリングなどのポイントについて解説します。
速乾性が高い
まず重要なのは「吸湿性」と「速乾性」であり、これは次に述べるレイヤリングの考え方とも密接に関係しています。特に夏場は、涼しく過ごすために、肌に直接触れるインナーの素材選びが鍵となります。汗をしっかり吸収し、すぐに乾く機能を持つ素材が望ましく、こうした性質は「吸汗性」や「吸水性」とも呼ばれることがあります。
レイヤリング
次のポイントは「レイヤリング(重ね着)」です。暑い季節に重ね着は不快に思われがちですが、汗をかく時期ほどレイヤリングは効果的です。体温調整が必要な過酷な状況において、登山家が当然のように実践しているテクニックとして知られ、薄着を望む季節でも取り入れる価値があります。
通気性
3つ目は「通気性」です。インナーが汗を吸い取っても、外にしっかりと蒸発させて体温を下げるには、上に重ねる服の風通しの良さが必要になります。通気性が悪いと、せっかくの放熱効果が妨げられるため、インナーとアウターそれぞれの役割に合った素材を選ぶことが重要です。
現場の責任者が行うべき熱中症対策
現場の責任者はチェックシートを設置したり、研修を実施したりすることが望ましいでしょう。それぞれの対策について解説します。
チェックシートを活用する
従業員自身が体調を確認できるチェックシートを活用することで、熱中症の予防に役立ちます。たとえば「めまい」「吐き気」といった症状を項目として盛り込み、作業前に記入してもらうことで、自分の体調を客観的に見直すきっかけになります。
熱中症の危険性を伝える研修を実施する
作業員が自発的に熱中症対策に取り組むようになることで、発症のリスクは大幅に下がります。特に研修は、作業員同士の協力体制を強化する効果もあり、受講者同士が声をかけ合ったり、他の作業員に注意を促す行動も促進されると考えられます。
作業現場の巡視
熱中症のリスクが高まる気温や湿度が高い日、日差しが強い日などは、天気予報を参考にして現場を巡視しましょう。巡視によって現場の状況を直接確認でき、安全性をより正確に判断できます。
熱中症が発生した際の対処
現場で熱中症の疑いがある場合は、必要に応じて応急対応を行ってください。意識がない、またはもうろうとしている場合は、速やかに救急車を呼びましょう。そのうえで、本人を直射日光の当たらない涼しい場所に移動させ、衣服をゆるめて体を冷却します。うちわや扇風機を使って風を送り、氷嚢があれば首筋や脇の下、足の付け根など血流の多い部位を冷やすと効果的です。
建設業の熱中症対策は「ANDPAD入退場管理」活用で対応
ANDPAD入退場管理システムでは、作業者が現場に入場する際に「入場してKYへ」を選択すると、元請企業の作業安全指示書が表示されます。この指示書には作業の概要や安全衛生指示が含まれており、特に熱中症のリスクがある作業者に対する対応策や緊急時の連絡先が記載されています。
KY活動で使用する作業前チェック項目もカスタマイズが可能で、熱中症対策を徹底するための項目を事前に盛り込むことができます。作業前に職長と職人がチェックリストを確認することで、熱中症対策に関する共通認識を高められる効果が期待できます。
まとめ
夏に現場作業を進めるならば、熱中症について徹底的に対策しなければなりません。夏場の建設作業現場で働く際は、塩分や水分を積極的に摂取するなどの対策が必要です。
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