黒板写真のデジタル化で現場DXを進めてきた友渡建設(神奈川県相模原市)が次に挑戦し始めたのは請求査定業務のDX。紙中心だった請求書まわりの作業がどう変わったのか、総務部の森葉子取締役、建築工事部の佐上信之課長に話を伺った。
「つい最近まで紙の請求書が当たり前だった」と話す森さん。これまで同社には、毎月100枚を超える請求書が郵送または手渡しで到着。それを森さんら経理担当が1通ずつ中身を確認して現場ごとに振り分けまとめていた。佐上さんら5人の現場監督が会社まで取りに行き、現場事務所で査定業務を行い、協力会社ごとに振り分けをし、支払い業務へ―これが同社の長年のスタイルだった。
「紙ベースでのやり取りが常態化し、協力会社のメールアドレスも知らない状態だったので、請求書のデジタル化はハードルが高くなかなか踏み込めなかった」という森さんだが、アンドパッド担当者の「一緒にやってみませんか?」の声に背中を押されて『ANDPAD請求管理』の導入を決断。すでに利用していたANDPADで現場業務が大幅に改善できていたこと、5人の現場監督が「査定業務が楽になるならやってみたい」と乗り気だったこと、さらに改正電子帳簿保存法への対応も考えて、請求管理のデジタル化に踏み切った。
請求査定のための移動がゼロに
まず、大きく変わったのが現場監督の移動時間だ。
「私たちの担当現場は会社から1~2時間離れているケースが多い。毎月、請求書を受け取るために会社に行き、査定後また会社に持っていくだけでも移動にかかる負担はかなり大きい。それが今は、パソコンさえあれば、現場にいながらいつでもどこでも請求書の確認や査定業務ができるため、そのためだけに会社に行く必要がなくなり時間的にも肉体的にも助かっている」と佐上さんは話す。
隙間時間にパパッと作業完了
さらに、請求書の確認・出来高査定のための作業時間も大きく改善した。佐上さんは日中、職人・電話対応などで手一杯となるため、毎月10日前後は、現場事務所で1人になれる朝6~8時も2時間を請求書の査定業務に充てていた。だが、この作業が「隙間時間」にできるようになったという。
「毎月すべての請求書がまとまるまで待たなくても、ANDPADに請求書が入ったタイミングで査定できる。昼間、現場事務所から戻って来て一息つくわずか数分の間でも、『請求書が2件来ているから今パパッと処理してしまおう』と気軽に取り掛かれるようになった。1カ月分の量をまとめて一気にやる必要がないので気持ち的にも楽で、このスタイルになってから隙間時間をうまく使えている実感がある」と嬉しそうだ。
また、従来は受領した請求書に対して、現場監督が手書きで新しい伝票を起こしたり、複数工種をまたぐものを1つずつ分解して記載し直したりと、複雑な作業が求められたが、ANDPAD請求管理では紙や手書き作業が一切不要に。「画面上で工種の追加と金額の入力がサクサク進むのが非常に楽。早ければ請求書を受け取ったその日中に査定を終えて経理担当に回せるので、大幅な時短にもなっているはず」。
佐上さんが編み出した朝2時間の1人タイムは、施工図を描いたり、打ち合わせの書類作成がメインに。「頭も体もリフレッシュした状態で事務作業に没頭できるのでミスが減り、現場品質の向上にもつながっていると思う」と話す。
面倒な振り分け・呼び出し作業も楽に
一方、経理担当の手間もだいぶ減ったという。例えば以前は、郵送で来た紙の請求書のサイズを揃えてスキャナーで取り込む作業、記載内容に抜けや間違いがないかを目視で確認する作業、現場ごとに請求書を振り分ける作業が必要だったが、大半の協力会社がANDPAD請求管理経由で請求書をあげてくる今は、これらの負担が大幅に軽減された。しかも前述したように締め日を待たずに、準備ができ次第請求書を送付してくれる協力会社が増えたことで、請求書の処理スピードが驚くほど上がった。
森さんが最も変化を感じているのは、情報の呼び出しが簡単になったことだ。「以前は請求書の紙のファイルを1枚ずつめくらないと欲しい情報に辿り着けなかったが、今は画面上で現場別、工種別、取引コード別と、自由に検索して瞬時に情報を呼び出せるのがとても便利。建設業に特化しているので機能的にも使いやすいうえ、わからないことや改善してほしいことをアンドパッド担当者にメールすればすぐに対応してくれるので、運用面での心配もまったくない」という。
森さんは最後にこう話す。「最初は紙ベースの業務を本当にデジタル化できるか不安だったが、数カ月で軌道に乗り始め、やって良かったと思っている。今後もDXを進め、関係者全員が効率よく働ける環境づくりに挑戦していきたい」。
会社概要
会社名:友渡建設株式会社
本社:神奈川県相模原市
設立:1961年
社員:11人
事業内容:ビル・マンション・オフィス・高齢者施設・店舗の建設工事および修繕工事
(建設産業大予測2025(2025年1月25日発行)掲載記事の転載)