東京都国分寺市のリガードは、東京都、千葉県、埼玉県で注文事業を展開する。デザインと品質・性能を高いレベルで融合することを目指す家づくりが高い評価を受けている。未来を見据えた成長戦略を描きブランドイメージも一新するなか、データの蓄積・活用が絶対に不可欠とANDPADを導入した。代表取締役の内藤智明 氏、工事部/技術部 部長 住宅事業 副部長の冨士原雄太 氏、工事部リーダーの齋藤 智哉 氏に導入効果を聞いた。
リガードの家づくりとは?
内藤:2011年のスタート当初は不動産事業が柱で、ほどなく建売住宅も手掛け始めたのですが、そもそも家づくりってこれで良かったんだろうかと疑問を持ちました。実は、創業日は東日本大震災の15日後で、自分が起業した意味を考えた時、本当の意味で求められている住宅を提供していきたいと考えたのです。デザインと品質・性能をあわせ持つ住宅を、施工までの責任を負ってお客様に提供する、住宅の本質を追求する集団を目指しています。
翌12年には注文住宅を手掛け始め、現在、年間50棟程度受注し引渡しています。当初は100棟、200棟を目指すぞと数を追っていました。しかし、遅かれ早かれ市場のシュリンクは避けられず、最終的に目指す姿を踏まえ、22年頃から量から質への転換を図りました。21年は年80棟程度の受注で平均単価は2700万円程度でしたが、現在は4000万円を超えるほどになりました。
現在、断熱等級6、耐震等級3が標準ですが、単に性能だけを追っているわけではありません。今やローコストの建売住宅でも実現している性能ですが、パッケージングされた間取りでの耐震3と、高いデザイン性を持ち開放感のある間取りでの耐震3は価値が違います。デザインと性能を高いレベルで融合することを目指しているのです。
一方で、バランスを整えることが重要です。そもそもなぜ断熱性能を高めるのか、性能数値が高いから良いのではありません。医学的なエビデンス、科学的な見解に基づき、18℃以下にならないような家づくりが大切なのです。温度変化が少ない家づくりをした時、はじめて心疾患やアレルギーなどのリスクを減らせ、本当の意味で健康で長生きできるようになる。そのための断熱性能であり、むやみに過剰に高めても意味はありません。
日本の気候のなかで本当に必要なものは何か、私たちはその本質を追求していきたいのです。
本質を追求し続けるうえで重要なこととは?
内藤:先にブランドイメージを一新し、新たなブランドコンセプトとして「人がまんなか。」という言葉を据えました。結局、本質を追求するのは人です。人をまんなかにおいて、健康で快適、安心な空間づくりの理念に共感する人材を創出し続けていきたいと考えています。注文住宅は、色々な部署がバトンをつないで一つの家をつくります。そのバトンの渡し方を間違えると商品、サービスは最適なものとはなりません。今はまだ志半ばですが、社員全員がその高みに改善していく仕組みを構築していきたいと考えています。
その一つの取組みがANDPADの導入であり、23年にANDPAD施工管理、ANDPAD受発注、ANDPAD引合粗利管理など複数のANDPAD製品を導入しました。人をまんなかに置いて質を追求していく、そのうえで掲げたのが「24棟宣言」です。一地域で年24棟受注を目指し、その地域を広げていこうという考えです。そこで課題となるのが情報の管理。複数の拠点展開を考えた時、予実管理、実行管理、工程管理などすべてのデータの蓄積は絶対に必要なものでした。
なぜ、ANDPADを選択したのですか。
冨士原:導入にあたって複数の職人さんに色々と意見を聞いたのですが、取引業者によってさまざまなソフトやツールが使われており困っていると話していました。具体的に何を使うことが多いか聞くと、ANDPADが多かった。であるならばシェアの大きいツールを採用しようと考えました。導入しても使われなければ意味はありません。活用を定着させるために、より多くの人が使っているツールにしようと考えたのです。
具体的に抱えていた課題と導入の効果について教えてください。
齋藤:予実管理ができていないことが大きな課題でした。上棟して初めてその物件の情報がフィードバックできる。タイムラグが非常に長いので改善が回らないのです。拠点が増えればさらにこの問題が大きくなります。
導入の前段階として、従来表計算ソフトで管理していた、あちこちに散らばっている原価情報を一つのマスターデータに統合しました。例えば、同じベニヤ板でも外壁工事と内装工事で単価が違うということもありました。同じものなのに複数のシートをそれぞれ更新する必要があったからです。データ統合により価格の変化をスピーディかつ正確に反映できるようになりました。
また、お客様にお見せする明細はわかりやすく単純化していますが、その裏側は部資材代、施工手間代など細かく分かれています。分析を行うには業種ごとに散らばっている見積もりの単価をまとめ直さなければならず大きな手間がかかります。ANDPADはそれらを階層で表現でき、単価に立てたフラグでまとめ直すこともできるので、非常に予実管理がしやすくなりました。
冨士原:人材教育の改革も大きな目的でした。施工管理、工程管理は各現場監督の経験、能力に依存していたため、色々な面でムラがありました。しかし、新卒を育てていくには教える「型」が必要です。そうでなければ教える人によって差が出て、極端な話、ある拠点には教える人がいないということも起こってしまいます。「型」をつくるためにシステムの導入が不可欠でした。
これまで工程管理は表計算ソフトで作った表を職人さんに渡して、あとは職人さん任せというのが現実でした。ANDPADを導入したことで、私たちがリアルタイムで状況を見ることができるようになり、新入社員に工程管理を教えやすくなりました。現場監督が行うべきタスクを工程表に書き込み、それがチェックリストも兼ねていますので、「この段階では、これが終わっていないとまずい」などと分かりやすく説明することができます。
内藤:ANDPAD導入は、未来を見据えての組織化、教育に非常に効果が出ていると思います。現場経験のない人が在庫管理や単価管理ができている。また、新入社員たちへの教育もスムーズで、現場監督の知識や知見を組織に落とし込みやすくなりました。
経営判断のスピードアップにも効果的だと考えています。原価一覧など、これまでまとめるのに数週間かかっていたものが、ANDPADからいつでも最新情報を確認できるようになりました。
今、国の法律、基準などがめまぐるしく変わっています。市場のシュリンクも進むでしょう。新たな商品開発を行う上で、原価計算などが即座に出せることは非常に助かります。そうした意味からも非常に意義がある投資だと思っています。
これから1~2年で未来の戦略に向けて、データを使えるようにさらにレベルアップしていく必要があると考えています。
(ハウジングトリビューン 2025年5月30日掲載記事の転載)