東京都と福岡県に主な拠点を持ち、全国約130所の発電所(設備容量630MW分)の運用保守(O&M)を手掛けるJUWI自然電力オペレーション株式会社(以下、JSEO)では、コミュニケーションのミスマッチなど業務上の課題をいくつか抱えていた。ANDPAD導入でどう課題を解決し、どんな効果が得られたのか。
(写真:オペレーションとマーケティングのスペシャリストとして活躍している、(左から)吉澤さん・佐久間さん・中野さん・野田さん)
自社システムを開発も三つの課題が発生
「約5年前、メンテナンス管理システムをゼロから自社開発したが、様々な課題が表面化してきた」と、JSEO DX推進部責任者の佐久間徹氏は振り返る。
再生可能エネルギー開発/EPC企業である同社は2013年、自然電力とドイツのEPC企業JUWIのジョイント・ベンチャーとして設立された。全国各地の太陽光発電所の点検や是正作業、除草などを近隣のパートナー(協力会社)に委託し、地域密着型のO&Mをしているのがビジネスモデルの特徴だ。
各発電所に同社のプロジェクト(PJ)担当を一人ずつ配置し、オーナーや協力会社との契約からメンテナンス、トラブル対応まで全体のマネジメントを行う。
そんな同社の旧管理システムでは、三つの課題があった。一つ目は、自社開発したシステム運用の専属担当者を常駐させなければならず、ランニングコストがかさんでいたこと。二つ目は、協力会社ごとに連絡方法がまちまちで情報共有にばらつきがあったことだ。O&M案件の増加や多様化を背景に、図面や現場写真、見積書など必要な書類をメールでやり取りすることが増え、煩雑化していた。三つ目は、販売管理との分断。外部のクラウドシステムと現場のメンテナンス業務が分断していたことに起因する。
ANDPADなら悩みの種であったO&Mの課題を一挙に解決できるということで導入を決めた。そして、導入した効果は早速出てきた。
O&Mの質が向上して発電所のダウンタイムが短縮
使い方さえ覚えれば、ANDPADは誰でも利用でき、専属担当者を常駐させる必要がない。システム利用料も月数万円程度でランニングコストを大幅に抑えられた。
目に見えてコミュニケーションミスが減り、発電所のトラブル対応も迅速になった。同社のPJ担当や技術者が協力会社と現地へ同行して是正箇所を撮影後、ANDPADに写真をアップロード。即座に情報共有して状況判断できるようになり、発電所のダウンタイムの短縮につながった。
同社はANDPAD上で、O&M案件を①決まった時期に行う定期点検と②パネルの割れや急な草刈りなどの突発的な対応の二つに分けている。①はANDPAD上に年間スケジュールを立て、その中で②について適宜対応する。
その中で協力会社にもユーザーIDを発行し、情報をリアルタイムで共有、施工完了後は写真付き報告書をオーナーに提出する。協力会社のANDPADの登録ユーザーは約60社に上る。
「ANDPAD専属サポートが付き、導入がスムーズだった。導入前後の説明会やサポートで、我々のシステム管理に関する思考をほぐしてくれた」と佐久間氏は評する。
ANDPADの活用フロー
1.現場調査
現場担当者が是正箇所をスマホで写真撮影
2.写真共有
すぐにデータをアップロードして情報共有
3.作業報告
是正作業が完了したら担当者が本社に報告
4.報告書作成
ANDPAD上で報告書を作成して提出
外部販管システムとAPI連携 情報共有で請求書ミスが減少
ANDPAD導入以前は、外部の販売管理システムと自社管理システムが連携されていなかったため、請求書の発送や受領の確認に当たり、大きな工数を割かざるを得ない状況だった。なぜなら一つのプロジェクトで選ばれた複数の協力会社に対し、担当者が自分の記憶を頼りに、一人で請求書のやり取りをしていたからだ。
ANDPADで販売管理システムとのAPI連携により、JSEOの経理担当がリアルタイムでプロジェクトの状況を把握。情報共有がスムーズになり、請求書の未発送・未受領などの事務作業が大きく改善した。
日本国内でFIT型のO&M案件が減る中、同社は新規事業として建設業のライセンスを取得し、今後は土木・建設の業務へ事業範囲を拡大しようとしている。これらのビジネスも見積作成・工程管理とも複雑であり、旧システムのみでの対応を続けることに対して社内で不安の声が上がった。課題を克服すべく早急に外部システムと柔軟に連携できる管理システムにし、業務効率化を図る必要があった。
同社は再エネ発電所特化型のO&M会社として、パワーコンディショナの老朽化による入れ替え(リプレイス)や新モデルへの交換による出力アップ(リパワリング)といった分野へのビジネス展開を視野に入れている。
より作業が複雑化する中で、旧システムからANDPADへの切り換えで業務効率化へ早めの一手を打った。この柔軟さこそ、JSEOが成長する原動力となっている。
ANDPAD API連携とは?導入後の効果がスゴイ!
↑ 施工と販売管理の情報共有が1つにまとまる ↓
「ANDPAD API連携」を活用することで、ANDPADを自社システムや他システムと連携することが可能。重複した情報入力の手間を省き、常に複数システム間の情報を、最新の状態に維持できる。
JSEOでは、「ANDPAD API連携」の活用により、販売管理システムと連携し、施工情報と会計情報をシームレスにつなげる。案件が増加する中でも、施工状況を確認しながら、請求書発行など会計業務を抜け漏れなく進行できるようになった。
※APIとは「アプリケーション・プログラミング・インターフェース」の略。
※本記事はSOLAR JOURNAL vol.46(2023年夏号)において掲載された記事の転載となります。