建設業向け施工管理アプリとしてシェアトップの「ANDPAD」。その活用が不動産業界にも広がっている。人手不足を補い業務効率化を図ることを主目的とし、同アプリを開発、そしてサービスを展開するアンドパッドの長濱純人氏に話を聞いた。
【PROFILE】
長濱純人氏
(株)アンドパッド 経営戦略本部 マーケティング部 マネジャー。不動産管理会社を経て2018年にアンドパッドへ入社。現職に就く前は営業部にも所属し、100社を超える工事会社のIT化支援などを担う。2023年より現職。
現場業務の効率化から経営改善までを一元管理
― 「ANDPAD」はどういうサービスでしょうか。
長濱:クラウド型建設プロジェクト管理サービスです。写真や資料の整理、図面、工程表、日報、チャット、受発注などいろいろな機能をオールインワンで提供し、施工現場の効率化から経営改善までを一元管理します。クラウドに上げた情報は関係者で共有でき、例えば、現場からはスマートフォンやタブレットで、オフィスではパソコンで操作できます。
おかげさまで現在、全国約18万社に導入していただき、ユーザーは47万人を超えました。
― 施工管理アプリとしてはトップシェアということですが、その理由は何だと考えていますか。
長濱:いくつかあると思いますが、大きくは3つあると考えています。1つは、常に現場が欲しい機能を追求しているということです。開発当初に工事従事者の声を受けてシステム構築に乗り出したという経緯があり、現在もその流れをくんでいます。
2つ目は徹底したサポートです。シンプルな画面で操作自体もしやすくしていますが、こういったITツールは苦手、使いきれないということもあると思います。そこで当社では導入いただいた企業様向けの説明会を実施し、その数は年間7,900回に上ります。また、電話でも問い合わせを受けています。ご契約いただいた企業やその協力会社など、関係者全員がご利用いただける窓口になっています。
そして3つ目は口コミです。「ANDPAD」でやり取りしてそのスムーズさを実感した方が、別の現場で他の会社の方に広めていただくことも多く、それも大きな追い風になっていると思います。
― 不動産業界でも「ANDPAD」が活用されていますね。
長濱:不動産管理や買取再販や賃貸の原状回復工事、あとは工事部隊を持つ不動産会社などでも利用が進んでいます。利点として、報連相(報告・連絡・相談)が明確になったとよく言われます。原状回復の際、工事完了に気づかず入居者募集開始が遅れたとか、退去日がずれて工事中なのに次の入居者を案内したとか、そういう機会損失が解消され、「言った言わない」もなくなったということです。
また、施工写真は撮ってすぐクラウドに上げて報告ができるので、整理の時間が短縮できたという声や、管理会社からは、遠隔でのコミュニケーションが実現したことで、多くの物件管理の業務を少ない人数で回すことができるようになったという話も伺っております。
― 「ANDPAD」の導入はDXにつながりますね。
長濱:人手不足、担い手不足という今の日本が抱えている喫緊の課題には、DXが必須だと強く感じています。「ANDPAD」に限らず、デジタルツールやITサービスを導入して効率化を図り、業務を改善し、1人あたりの生産性を高め、働きやすさも向上させていく。これはどの業界にも通じることだと思います。
また、私が度々お伝えするのがコア業務とノンコア業務(副業務)についてです。コア業務は実務のものづくりの部分で、現場での施工や管理を指します。一方ノンコア業務は、例えば移動を含め、コミュニケーションを円滑にして1回の確認で済ますことで、手戻り作業をなくせるというようなことです。補助的なノンコア業務をITに置き換えて省力化すれば、本来のコア業務で品質を上げることに集中できます。
― 「ANDPAD」をきっかけにDXを進めた例はありますか。
長濱:まず施工現場からIT化を進め、そこのデータに連動する形でバックオフィス系を整理し、組織を改革していったという実例は見ています。「ANDPAD」に装備された機能で全てが完結できるような環境を整えられた企業もあります。
― DXを進める上で大切なことは何でしょうか。
長濱:DXの先に何を求めるかということも重要だと思います。ある社長の言葉も交えて話すと、現場確認がスマホ1つで会社からできるようになったとか、残業が減ったとか、そうして生まれた空き時間に何をするかが会社のビジョンとして必要ではないかと。例えば会社のステークホルダーとのコミュニケーションに時間を使えるようになり、より満足度の高いサービスが提供できるのではないかということです。
― 今後の展開を教えてください。
長濱:先日発表しましたが、当社は住宅・不動産業界に特化したマーケティングオートメーションツール「Digima」を運営するコンベックスと資本業務提携に向けた基本合意を締結しました。このような連携を通して機能強化やサービスの充実を図っていくとともに、価値提供の領域もさらに広げてまいります。
※本記事は2024年4月1日発行「不動産テック.BIZ vol.10」において掲載された記事の転載となります。