【PROFILE】
長屋 悠史(ながや・ゆうし)
大学卒業後、webマーケティング会社に入社し、法人営業やwebコンサルティングに従事。2020年に㈱アンドパッドに参画。入社後はインサイドセールス、フィールドセールスを経て、21年から新規部署の立ち上げに従事。電気/設備業界にて営業からカスタマーサクセスまでを一貫して担いながら、新規プロダクト開発にも関わる。23年より現職。
UI・UXへ配慮、導入支援にも注力
― 御社が提供している建設DXツール「ANDPAD(アンドパッド)」の特徴についてお聞かせください。
長屋:当社のANDPADは、現場の効率化から経営改善まで一元管理できるクラウド型建設プロジェクト管理サービスです。機能は多岐にわたりますが、基本的には現場に関わる方々を巻き込んで、コミュニケーションを取ったり、情報共有したり、報告を上げたりということができるようなものになっております。おかげさまで、今年1月時点での利用社数は18万社、ユーザー数では47万人を超える建設業界の皆さまにご利用いただいており、施工管理アプリでシェアNo.1となっております。
― 他社の建設DXツールと比較して、ANDPADの優位性はどのようなところにあるのでしょうか。
長屋:優位性については大きく2つあると考えており、まず1つ目は、圧倒的に使いやすいUI(ユーザーインターフェイス)やUX(ユーザーエクスペリエンス)です。いくら便利なツールであっても、「わかりづらい」「使いにくい」と思われた瞬間に、ユーザーは離れてしまいます。説明書なしでも見たらわかるような画面の設定やデザインというのは、かなり意識してつくっています。
2つ目は、幅広いサービスラインナップです。世に出回っているDXツールは、写真撮影に特化していたり、図面の管理に特化していたりと、何かしらの機能に特化していることが多いのですが、我々の開発思想としては、ANDPADが1つのプラットフォームとして存在し、そこにさまざまなツールが連携して動いていく、というようなイメージです。なので、写真撮影はもちろん台帳作成もできますし、資料もクラウドで管理できる、検査時に活用できる機能もあります。工程表の機能もあれば、チャット機能もあるといったように、ANDPAD1つで多くのことを解決できるようにという考え方で開発を進めてきました。これだけ多機能で広くラインナップをそろえている建設DXツールは他にはないと考えています。
ただし、今挙げた「使いやすさ」と「多機能」というのは、多機能であればあるほど使いやすさ・わかりやすさが薄れていくように、ある意味で相反する部分もあります。そのためアンドパッドでは、ツールをわたして「どうぞ使ってください」ではなく、「この会社だと、どのように使っていけばいいのか」「今の業務の流れがこうだから、ここをANDPADで置き換えていきましょう」というように、使い方まで踏み込んでいくのが特徴です。当社には導入支援を行うカスタマーサクセスという専属チームがあり、お客さまの導入から活用に至るまで伴走型のサポートを行うことで「使いやすさ」と「多機能」を両立させていますので、それが多くのお客さまからの支持獲得につながっていると考えています。
― 今後、さらに開発を検討している機能などはありますか。
長屋:現場での入退場管理やKY活動(危険予知活動)の管理といった安全面での機能などがあります。また、現場にいる人と映像をつないでやり取りを行う遠隔臨場による現場のさらなる効率化の機能も検討しています。すでに住宅会社向けに提供している原価管理や受発注管理などの機能を、ゼネコンや専門工事業者でも使える仕様に変えていくなど、いろいろと検討や開発を進めているところです。お客さまの要望に合わせて、機能のブラッシュアップは絶えず行っていかなければならないと考えています。
サービス拡大で、全方位の建設DXを
― 御社でも独自調査を実施されていましたが、「2024年問題」などへの対応を迫られるなかでも、建設業界のDXがすんなりとは進んでいかない要因は何でしょうか。
長屋:まず建設業界は他の業界と比べて高齢化が進んでいることで、新たにDXツールやアプリなどを導入するとなった際に、すんなりと入っていける方の割合がどうしても低くなる傾向にあります。また、建設業界では依然として人手不足であり、目先の現場をこなすことが最優先事項になりがちで、そうした状況下では今のやり方を変えてまでDXに取り組むことに、二の足を踏んでしまう事業者さんが多いように思われます。
もちろんDXツールの導入によって、業務効率化や省人化などのメリットは間違いなくありますし、実際にANDPADを導入いただいたお客さまからは、「提出書類の作成にかかる時間が25%削減された」「業務の見える化によって人の配置が適切にできて、工期短縮につながった」「粗利がこれだけ改善できた」などのお声もいただいています。
― そうしたなか先般、ANDPADは「IT導入補助金2024」の補助金対象のITツールとして認定されました。
長屋:この補助金については、昨年やその前からも認定をいただいているのですが、一定の条件を満たせば、ANDPADの導入にかかる費用の最大450万円が補助金として交付されるという制度です。やはり目前に迫った「2024年問題」への対応は各事業者とも喫緊の課題ですし、危機感を覚えている会社さまの数自体は明らかに増えてきています。そうしたなかで、ANDPADに対する関心もかなり高まってきていると感じています。今回の補助金認定が導入のハードルを下げる追い風となることを期待しています。
― 最後に、御社の今後の展望についてお聞かせください。
長屋:おかげさまでANDPADは現場管理ツールとしてはシェアNo.1ではありますが、建設業に関わるすべての業種のお客さまが満足できるサービスを提供できているかというと、まだまだ道半ばの状態です。ありがたいことに他のIT企業さまから「連携したい」というご連絡をいただいたりしますし、そういった企業さまとも連携していきながら、サービスの幅を広げることでお客さまに提供できる価値をさらに高め、建設業界のDXはアンドパッドで全方位対応できるようにしていきたいと思っています。
建設DXというものは、ツールを導入すればそれで終わりではなく、導入してからどのように運用していくかが最も重要です。手前味噌にはなりますが、建設DXツールの導入を考えた場合の最適解がANDPADだと思っていますので、「建設DXに取り組みたいけれど、何から手を付けていいのかわからない」などのお困りごとがあれば、ぜひ当社にお声がけいただければと思います。
(坂田 憲治)
※本記事は2024年3月29日発行「I・Bまちづくりvol.70」において掲載された記事の転載となります。