労務費は、製品やサービスの生産にかかる費用です。この記事では、労務費の定義や人件費・外注費との違い、計算方法、内訳、効率的な削減方法について解説します。労務費管理ツールの選び方も解説しているので、労務費管理に携わる企業担当者は参考にしてください。
労務費とは
労務費とは、製品やサービスの生産に直接かかる費用のことです。たとえば、製造部門の従業員の賃金などが該当します。労務費の適切な管理は、企業の収益性を高め、経営の効率化を図るうえで欠かせない要素です。
労務費と人件費、外注費との違い
労務費と人件費、外注費は、一見似ていても、実際には異なる概念です。以下で、労務費と人件費、外注費の違いについて解説します。
人件費との違い
人件費は、「給与や手当など、従業員に支払われる費用全般」を指します。一方で、労務費は「製品やサービスの生産に直接かかる費用」です。一般的に、人件費は労務費よりも広い意味を持ちます。例えば、販売部門や管理部門の従業員に支払う給与は人件費に含まれますが、労務費には含まれません。
外注費との違い
外注費は、他社に属する人の働きに対する支払いを指します。たとえば、製造業で一部の作業を外部に委託した場合、外注費として計上されます。労務費は自社の従業員への支払いで、消費税はかかりません。一方、外注費は課税対象です。また、所得税や社会保険料は労務費にのみ関係します。
労務費の内訳
労務費は、「賃金」「雑給」「法定福利費」「従業員賞与手当」「退職給付費用」の5つの項目に分類されます。以下で、それぞれについて詳しく解説します。
賃金
賃金は、正社員や契約社員など、常勤の従業員に支払われる基本給を指します。賃金には、時間外労働や休日出勤、深夜勤務に対して支払われる割増手当も含まれ、企業の人件費の大部分を占めます。
雑給
雑給は、臨時に雇用されるアルバイトやパート、日雇い労働者に支払われる給与です。企業は季節的な需要や特定のプロジェクトに対応するために、臨時の人材を活用しています。
法定福利費
法定福利費は、企業が法令に基づいて負担する社会保険料や労働保険料です。健康保険、厚生年金、雇用保険、労災保険などが含まれます。
従業員賞与手当
従業員賞与手当は、従業員の勤務成績や企業の業績に応じて、年末や中間期などに一時金として支給される手当です。これに加えて、通勤手当や住宅手当、扶養手当など、毎月の給与に上乗せして継続的に支給される諸手当も労務費に含まれます。
退職給付費用
退職給付費用は、従業員の退職時に支払う退職金に備え、在職中に費用として計上されるものです。企業の退職金制度に基づき計算され、そのうち製品やサービスの生産に直接結びつく、製造部門の従業員にかかる部分は労務費として計上されます。
直接労務費と間接労務費の違い
労務費は、直接労務費と間接労務費の2つに分類されます。以下で、それぞれの定義について解説します。
直接労務費の定義
直接労務費は、製品やサービスの生産に直接関わる労働に対する費用です。たとえば、システム開発ではエンジニアが実際に開発作業を行う時間にかかる費用が該当します。
間接労務費の定義
間接労務費は、生産に直接関わらない労務費です。具体例は以下の通りです。
- 間接作業賃金:経費処理など、生産以外の作業時間に対する賃金
- 間接工賃金:管理職や事務職など、生産支援に関わる従業員の賃金
- 手待ち賃金:設備故障などで作業できない待機時間の賃金
- 休業賃金:会社都合の休業に対して支払われる賃金
- 法定福利費:会社負担の社会保険料や労働保険料
- 従業員賞与手当:賞与や各種手当などの臨時給与
- 退職給付費用:当期分の退職給付費用
労務費率とは?
労務費率とは、建設業などで請負金額に対する賃金の割合を示す指標です。下請け業者の賃金が把握しにくい場合、厚生労働省が定めた労務費率を請負金額に掛けて賃金総額を推計し、それを基に労災保険料を算出します。
労務費率は主に建設業の労災保険に使用
労務費率は、建設業で労災保険料を計算する際によく使われます。通常は賃金総額に保険料率を掛けて保険料を算出しますが、建設業では賃金の把握が難しいことがあります。そのため、厚生労働省が業種別に定めた労務費率を請負金額に掛けて賃金総額を推計し、労災保険料を算出します。
労務費の計算方法
労務費を算出するには、直接労務費と間接労務費の計算方法を理解する必要があります。また、労災保険料計算に使う労務費率の計算式も知っておくと役立ちます。ここでは、各計算方法について解説します。
直接労務費の計算式
直接労務費の計算式は、次の通りです。
- 直接労務費=賃率×作業時間
※賃率=直接工の賃金÷製品製造の直接作業時間
間接労務費の計算式
間接労務費の計算式は、次の通りです。
- 間接労務費=労務費総額−直接労務費
間接労務費は、労務費全体のなかで直接労務費に該当しない部分を指します。
労務費率を用いた計算方法
労務費率とは、建設業で請負金額に対して賃金が占める割合を表す指標です。労務費の計算には直接使いませんが、労災保険料の算出に必要なため、覚えておきましょう。
- 賃金総額=請負金額×労務費率
- 労災保険料=賃金総額×労災保険料率
労務費を効率的に削減する方法
労務費を効率よく削減するために、押さえておくべきポイントがあります。以下で、詳しく解説します。
業務の効率化によるコスト削減
労務費を効率的に削減するには、業務の無駄をなくし、生産性を高めることが重要です。限られた資源で成果を増やすことで、労務費や人件費率の低減が可能になります。業務フローの見直しやタスク管理ツールの導入、従業員への効率的な作業方法の教育が効果的です。
適切な人材配置による生産性向上
業務の無駄を見直し、作業の流れを改善することが労務費削減に効果的です。業務プロセスの整理や効率化ツールの導入、従業員への適切な教育を通じて生産性を高めましょう。
AI・RPA活用による業務自動化
労務費を効率よく削減するには、AIやRPAを活用して定型的な作業を自動化し、人的負担を減らすのが効果的です。RPAは、データ入力や報告書作成といった定型的な業務を自動化する技術です。
一方、AIはカスタマーサポートやデータ解析など、より複雑な判断や学習を伴う業務を自動化する技術です。これらを活用することで、人的負担を軽減し、労務費の効率的な削減を目指せます。
労務費管理ツールの選定ポイント
労務費管理ツールを選定する際には、見るべきポイントがあります。以下で、5つのポイントについて解説します。
対応範囲
労務費管理ツールを選定する際には、対応範囲を確認しましょう。ツールによって対応できる業務や帳票の範囲が異なります。そのため、導入前に自社の労務業務を整理し、どの業務に負担や課題があるかを把握することが重要です。
他システムとの連携の可否
他システムと連携できるかどうかも、確認すべきポイントです。労務管理では多くの従業員データを扱うため、勤怠管理や人事システムと連携できるかが重要なポイントです。既存のシステムとつなげることで、データの二重入力を減らし、業務を効率化・スピードアップできます。
使いやすさ
労務費管理ツールの選定時には、従業員が操作しやすいかどうかの確認も必要です。実際の操作画面を確認して、自社の業務に合うかどうかを見極めましょう。現場の声を取り入れることで、円滑な運用につながります。
サポート内容
労務費管理ツールを選定する際には、サポート内容を確認することも大切です。ツールに問題が起きた際に、迅速に対応できる手厚いサポートがあると安心して運用できます。また、残業時間が多い場合にアラートで通知するなど、法令遵守を助ける機能が備わっている製品なら、より安心して利用できます。
料金
労務費管理ツールを選定する際には、料金の妥当性も確認しましょう。クラウド型は初期費用が低くても、利用者数に応じて月々の運用費がかさむことがあります。そのため、不要なオプションが含まれていないかもチェックが必要です。また、バージョンアップに追加料金が必要な場合もあるため、その点も考慮して製品を比較することが大切です。
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まとめ
労務費は、製品やサービスの製造・提供に直接関連するコストで、正確な理解と適切な管理が求められます。直接労務費と間接労務費の違いや計算方法を押さえ、業務効率化やAI活用で削減を目指しましょう。労務費管理ツールは対応範囲や連携性、使いやすさ、サポート、料金を重視して選ぶことが重要です。
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