株式会社木村のご紹介
1970年創業の屋根工事会社の株式会社木村は、前身が1911年(明治44年)までさかのぼる老舗だ。メインは新築住宅の金属屋根工事で、コンビニエンスストアなどの小規模店舗や工場のような大型建築物も手掛け、災害復旧に伴うリフォーム案件なども請け負う。他に特殊なアルミ雨樋の設置、ログハウスに置く薪ストーブの煙突工事なども行う。もともと大型建築物の仕事が多かったが、常に職人を自前で多数抱えておくのが難しく、受注金額も景気で左右される不安定さがあり、ここ数年間は安定的な売り上げを求めてハウスメーカーの新築住宅にシフトしていったという経緯がある。
同社取締役会長の木村治様は2022年、「一般社団法人日本金属屋根施工ネットワーク」(JMRN)を設立した。その目的は、全国展開するハウスメーカーの「住宅の施工品質と価格を全国均一にしたい」という要望に応えるためだ。そこで各地の腕利き工務店にJMRN加盟企業となってもらうことで、ハウスメーカーの信頼を得ながら着実に受注を伸ばしている。
全国に職人のネットワークを築く中、写真管理や施工管理、受発注業務においてより効率化する必要が出てきた。そこで、ANDPAD施工管理とANDPAD受発注の導入を決めた。ユーザーは自社で10名、社外メンバーが78名で活用している。利用状況と導入効果について木村様に聞いた。
徹底した写真管理が、会社の成長とリスクヘッジにつながる
新築住宅の屋根工事では、大工が作った下地に防水シートを貼り、その上から細かい部材を付けていく。工期は1軒当たり1~3日ほどで、その間に写真撮影をしていく。枚数は平均20~30枚、かなり細かく撮影するケースで多くて50枚ほどだ。屋根工事で最も重要なのは雨漏りに関わる部分のため、仕上がった後より、途中の防水施工の過程を重点的に撮影するようJMRN加盟企業の間で意思統一している。
例えば、本来入れるべき防水シートが入っていないことが雨漏りの後に分かった場合、屋根材をすべて剥がして点検となる。防水シートがきちんと入っていても雨漏りが起こった場合は、補修費に対して製品保証の範囲内で保険が適用されるケースもあるが、単純な施工ミスの場合は保険適用外となり補修費はすべて自己負担となる。そのため、ハウスメーカーもそういった工程写真の有無を重視している。
他にも、屋根に土足で上がると汚れるため、足場の上できちんと別の靴に履き替えているところも撮影している。そうしなければ、施主から後々「屋根に足跡がついて汚れている」といったクレームにつながりかねないからだ。そのためJMRN加盟企業では、防水シートの状況や靴の履き替えなどを忘れず撮るようにしている。写真管理にかなり神経をとがらせるようになったことで、こうした問題やクレームはなくなった。
ANDPAD導入以前、職人に個々のスマホで撮影してもらい、案件ごとにSNS上でグループページを作り、施工完了後にすべての写真をアップしてもらっていた。ただその方法だと職人ごとにばらつきがあり、細かい部分まで撮影していなかったり、必要箇所を撮り忘れたりといったことが発覚するケースがあった。ANDPADなら写真をリアルタイムでアップでき、不足があれば職人に追加の依頼を出せるため、写真の撮り忘れがなくなった。
また、以前は写真チェックを木村様自身が基本的に行っていたが、ANDPAD導入後は事務担当でも写真が揃っているかどうか判断できるようになり、完了報告までスムーズにできるようになった。
さらに、ANDPADを営業ツールとしても活用している。営業先で、「当社は元請けから要請される前に、自発的に写真を細かく撮って管理している」というアピールができ、信頼感の向上にもつながる。徹底した写真管理が会社の成長とリスクヘッジにつながっている。
資料を真っ先にANDPADにアップして失注を防ぐ
ハウスメーカーからは工程表や図面、案内図といった資料が1件当たり10枚近く送られてくる。以前はそれらを全国の加盟企業にメールで送っていたが、ANDPADでデータ管理するようになってから効率化された。
工場など大型建築物は大手ゼネコンが手掛けているケースが多く、工程は比較的きっちり組まれているが、個人住宅ではそれが難しい。なぜなら建物の規模がまちまちで、大工の技術力やスピード、天候などによっても工程が大きく左右されるからだ。新築住宅は上棟日を必ず最初に決めるため、そこから着工日、中間検査日、引き渡し日などを逆算しながら工程を組む。最近の住宅は早ければ着工から3カ月ほどで完成するため、途中で工程がずれると最初の計画と誤差が出てしまうケースがある。
そのためJMRNでも、屋根工事をする日について木村様と現場監督で打ち合わせるが、どうしても工程上は「○月○日あたりで屋根工事」というアバウトな日程になるのだ。それで現場監督からしばらく連絡がなく、後日思い出したころに連絡すると別の会社に発注されており、失注してしまうケースがあった。そうした受注機会を取り逃すことは、是が非でもなくしたい課題だった。
また、事務員が加盟企業に資料をメールで送って周知しているはずが、実際には送り忘れており、後で慌ててメールを送るといった問題も起こっていた。
そのため今はハウスメーカーから資料が来たら、真っ先にANDPADで案件を作成して、資料をまるごとアップするようにしている。そうすれば関係者への資料の送付漏れがなくなり、加盟企業がいつでもANDPAD上で確認できるからだ。また木村様もANDPADで工程を確認しながら現場監督とチャットなどで連絡を取り合える。正式に発注が来たら、ANDPAD受発注で加盟企業に仕事を発注すれば確認漏れによる失注を防げる。
「ANDPADでは施工管理と受発注が、別の機能として分かれているからこそ管理しやすい。もし一体化していたら、施工管理に案件を立てた時点で受注扱いとなってしまい、当社としては管理が難しくなる」と木村様は話す。
ANDPAD受発注でインボイス制度に素早く対応
ANDPAD受発注を導入した最初のきっかけは、業界に残る企業間のいい加減な慣習だった。
施工店への発注において、ANDPAD導入以前は特に発注書などの書面を交わすことなく「この仕事をお願いね」といった感じで、電話やメールなどによる口約束が多かった。木村様が経営者となってしばらくはそれが当たり前の環境だったが、ハウスメーカーを取引先として全国展開を目指すべく、一般社団法人の設立を模索する中で、「そんなやりとりではきちんとした管理ができない」と感じ、受発注システムの導入を検討し始めた。
一時期、木村様は独自に受発注システムを作ることも考えたが、それだと手間もお金もかかる。そのため、多くのハウスメーカーが使っていて実績があるANDPAD受発注を、管理面やコスト面でも得だと判断して導入を決めた。
また、売り手が買い手に対して正確な適用税率や消費税額などを伝える「インボイス制度」(適格請求書等保存方式)の開始も決め手のひとつになった。簡単に言えば、現行の区分記載請求書に「登録番号」「適用税率」「消費税額等」の記載を追加することが必要となる制度だが、「中小企業にとってこの作業を受発注システムを使わずに行うのは難しい。経理担当を1人増やすなどしないと対応できない」と木村様は苦悩をのぞかせる。
そのため、インボイスなど国の新たな制度にも対応しているANDPAD受発注を使えば、経理担当を1人雇うよりもコスト的に割安で、確実にインボイス制度に対応できると判断したのだ。
もちろん、社外の職人に新しい仕組みを受け入れてもらうには説明会を開いたり、一筋縄ではいかない。だがANDPADさえあれば、「ANDPAD上はこういう体裁になっているから、みんなでその通りにしようよ」と職人を説得しやすくなるというメリットがある。
同社の事務担当にとっても、ANDPAD導入は業務効率化につながった。「資料はメールで」「工程の連絡は電話で」といったばらばらの方法で管理するのではなく、すべてANDPADに一本化した方が簡単だからだ。
株式会社木村は、一般社団法人日本金属屋根施工ネットワークを通じてハウスメーカーの求める高い施工品質と安定の価格をワンストップで全国対応している。その裏で、ANDPADによる業務効率化、全国の加盟企業との連携強化の努力を日々惜しまない。