平松建築(静岡県磐田市)は、YouTube による発信に力を入れていることで知られている地域工務店。
年間約50棟の受注のうち、約8割以上が YouTube経由だ。先行きの見通せる順調な集客・受注を実現させているのは、代表取締役社長 平松明展さんがけん引するANDPADを基盤としたデータ経営。その視野はさらに広がっている。DXの取り組みや今後の展開について話を聞いた。

代表取締役社長 平松明展さん
大工出身の平松さんが独立したのは 2009年のこと。当初は「請求書の書き方もわからず、工務店経営のことは何もわからなかった」と笑うが、元来、新しいものや数字好きもあって、砂地に水が染み込むように経営・経理の基本を学んでいった。
当初から特に熱を入れているのが、お施主様に提案する資金計画だ。表計算ソフトを使って、建築の見積もりだけでなく、引き渡し後のローンや光熱費の支払いまで組み込んだトータルコストを算出。お施主様の住まいを資産として維持できるような家づくりを提唱して、建築実績を伸ばしていった。
限られた社員数で営業の効率化を推進
現在は社員数24人。そのうち営業・設計担当は6人、工務担当が4人、年間50棟ペースの受注・完工を安定して続けている。限られた人数の中で効率的な営業を実現できている要因のひとつがYouTubeによる発信だ。
2016年に開設したYouTubeチャンネル「職人社長の家づくり工務店」では現在、コンテンツを毎日更新。チャンネル登録者数は20.5万人に到達した(※掲載時点)。
お施主様はまず動画で平松さんのトークを聞き、問い合わせてくる。「アイドリングタイムなしにいきなり商談に入れるようになり、営業効率が格段に高まった」と平松さん。

平松建築が運営する YouTube チャンネル「職人社長の家づくり工務店」
経験値による推測から確かなデータによる見込み管理へ
集客後の案件管理において、同社ではANDPADを活用している。
「元々クラウド化の必要性を感じていて、以前は別の現場管理サービスを使っていました。ANDPADを導入している他企業がレベルの高い施工をしていることや、施工管理から受発注、引合粗利管理と工務店経営の根幹を一元管理できるように開発されていく様子、また圧倒的な使いやすさを実感しANDPADに切り替えました」。
同社では業務の一連の流れがANDPAD上に組まれている。社内会議の場でも、ANDPAD上に集まった全社の案件一覧を見ながら、各担当者が進捗を報告し、対応方針や今後の業務の流れを確認する。報告用の書面をわざわざ作成するという手間がなくなり、効率がいい。
「営業、設計、工務、顧客対応など工務店経営に関連するデータがすべて一元化できるのが理想的です。せっかくのデータも紙の書類の状態では、だれかの机の上に置かれた瞬間、属人的になり、情報が不透明になってしまいます。これまで社員が独自で働いていたのが、必要に応じて社員、協力会社、顧客とデータを共有できるよう仕組み化することにより、皆で進められるようになりました」(平松さん)。
さらに平松社長は、「ANDPAD Analytics」の機能を活用する。「ANDPAD Analytics」は「ANDPAD」 に蓄積したデータを利用し、意思決定に役立つさまざまな指標を可視化できる。受注見込みや受注した工事種別の割合、着工の推移や未着工時の数など、あらゆる情報をグラフ化し、ダッシュボード上に表示できる。

「ANDPAD Analytics」を経営判断に活かす
「経営視点で言うと、私は基本的には、ANDPAD Analyticsの画面を見ています。この画面を見れば、即座に概算契約数を把握でき、見込み顧客リストのうち、どれだけ受注できるかが確度高く推定できる。商談が滞っている案件も一目瞭然で、各フェーズへの打ち手施策に移行できます。これまでは、前年の契約率をベースに経験則で受注の見込みを想定していたが、データの裏付けを持ってリアルタイムに判断できるようになったのが大きいです」(平松さん)。
現在同社では、工務店とお施主様をつなくコミュニケーションプラットフォーム「ANDPADおうちノート」、ANDPADとシステム連携している住宅・不動産業界特化のマーケティングオートメーションツール「Digima」も導入し、さらなるANDPADを使った業務効率化・データの一元化を目指す。
ANDPADによる工務店DXが欠かせない
「これからの高性能住宅を提案していくうえで、旧来の建築見積もりよりはどうしてもコストアップする。”売ったら、作ったら終わり”ではなく、今後も責任をもって家づくりを提案していきたい」(平松さん)。
その取り組みの一環として注力しているのが、「SUMMUT(スムット)」だ。工務店とお施主様をつなぐオンラインの交流の場であり、家づくりを検討している人にとっては、信頼できる工務店を探せる場所、認定工務店では、自社の強みや施工事例などの投稿、見込み客とのマッチングサービスなどを利用できるというもの。

事業拡大に向けて、全国にDXの輪を広げる
「現在、認定工務店は沖縄から青森まで全国70社以上になりました。今後は各社の家づくりのデータを集積して、建築のコストや仕様をさらに最適化することを進めていきたい。そのためにはデータを共有できるよう、DXの輪を広げていかなくてはならないと思っています」(平松さん)。
中古住宅になっても性能を維持し続け、資産価値を保ち続ける、”いい家”をストックしていく。工務店の使命であり、責任だと平松さんは語る。
工務店DXの目的は、次世代への使命感。目指すは世界一の”いい家”。そのためにはANDPADによるDXが欠かせない。
この会社に聞きました
平松建築株式会社/静岡県磐田市
2009年に創業。YouTube 開始からたった1年半で工務店トップクラスのチャンネル登録者数を獲得。月間300件の問い合わせがくる人気コンテンツに育て上げ、安定した受注を得られるようになった。
DX に注力し、業務効率を高めることで、限られた社員数の中でも年間50棟ペースで受注・完工を達成している。
https://www.hiramatsu-kenchiku.jp/
(新建ハウジング7/30号掲載記事の転載)