不二鉱材株式会社のご紹介
不二鉱材株式会社は、製鉄所の高炉やガラス・セメントを製造する溶解炉、都市ごみ焼却施設など、超高温の窯炉に欠かすことのできない「耐火物」を取り扱う専門商社だ。耐火物の原料鉱石を世界各国から調達して窯業メーカー等に供給する「鉱石部」と、セラミックス製品販売と窯炉の設計・施工・メンテナンスを手がける「炉材部」の2部門を擁し、創業より70年以上にわたって日本の産業や社会を広く支えている。
同社では、2022年に「炉材部」でANDPADを導入した。今回は、不二鉱材株式会社 取締役 炉材部長 高橋様、炉材部炉材課 課長補佐 生田様、同課 新規事業担当 藤本様にインタビューを実施。無人施工装置の開発やドローンでの炉内点検など、先進技術を活用して業務の省人化を目指す同社がなぜANDPADを導入したのか。その経緯や導入後の変化について、詳しくお話を伺った。
担当者間の引き継ぎと、完工後の報告書作成に時間がかかっていた
同社の炉材部が主に手がけているのは、大手プラントメーカー・機械メーカーから受注した都市ごみ焼却炉・バイオマス発電プラントなどの改修工事だ。これらの工事は、現地調査・工事計画の立案、劣化した耐火物の解体作業、型枠の組立、耐火セメントの流し込み・吹き付け施工といった流れで進んでいく。同社の営業担当者は、この工事案件の受注から現場の施工管理まで一貫して担当している。
築炉工事は専門性が高く、対応できる会社が少ないため、同社は大阪・東京・名古屋・小倉に4拠点を置き、全国での工事に対応している。ただ、対応エリアが広い分、営業所間・担当者間での引き継ぎに課題を抱えていたという。
「以前は、担当者が個々に工事情報を管理していたので、担当者を変える時には、後任者を出張させて数日かけて引き継ぎを行ってから、前任者を戻さなければなりませんでした。また、昼と夜の2交替制で工事を行う時も対面で引き継ぎを行っていたので、『日中に現場に入った社員が夜に出社する社員を待つ』状態が発生していました。担当者に聞かないとどこに情報があるかも分かりませんでしたし、無駄な移動時間や待機時間があることも非効率だと感じていました。」(高橋様)
また、「完工後の報告書作成にも時間と手間がとられていた」と高橋様は語る。
「完工後、本社や営業所に戻ってから写真台帳や工事報告書をまとめて作成していたため、写真や資料の整理に3〜4日間ほど時間が取られていました。ようやく工事を終えたとしても、完工後の資料作成に時間がかかり、担当者が振替休日を取得しづらい状況になっていました。」(高橋様)
この事態を改善するべく、高橋様は施工管理ツールの導入を検討。5社ほど比較した上で、コストパフォーマンスと機能性を重視し、ANDPADを導入したという。
同社は、まず大阪本社で限定的に運用を開始し、徐々に各拠点へと利用を拡大していった。ANDPAD導入時の社員の方々の反応はどうだったのだろうか。
「最初は『使い方がわからない』『面倒だ』といった声もありましたが、実際に利用しはじめたら1年も経たないうちに利用が浸透しました。以前は私が運用をリードしてきましたが、今では若手社員が『こうすればもっと効率が上がる』と競い合い、ANDPADの活用術を考えてくれています。」(高橋様)
引き継ぎにかかる時間が約20%削減、振替休日の取得率は2倍以上に向上
現在同社では、ANDPADに作成した案件へ「炉材部の担当者全員」を招待し、全現場の状況を共有している。では、ANDPAD導入によって、同社にどのような変化が生まれたのだろうか。
「ANDPAD上で全案件の進捗状況が確認できるようになり、次に担当する現場の状況も分かるようになったので、引き継ぎにかかる時間を20%ほど削減できました。昼と夜の交替勤務の際にも、先に現場に入った担当者はタスクや注意点をチャットで報告するだけですぐに退勤でき、次の担当者はその情報を見ることでスムーズに現場に入れています。現場の状況をイメージした上で業務に取りかかれるようになったことも大きなメリットです。」(高橋様)
「1週間かけていた引き継ぎを数日間で終わらせられるようになったり、そもそも現場での引き継ぎが必要ないケースも出てきています。以前は、週末にかけて出張した場合、引き継ぎが終わらずに月曜まで残ることになり、週末も出張先で過ごさなければならない時がありました。今はこうした事態がなくなっています。」(生田様)
また、黒板機能・日報の活用によって、写真台帳や工事報告書の作成時間も大幅に短縮できているという。
「今までは、逐一黒板を書き直して撮影していたのですが、その手間が一切なくなりました。今はANDPADで事前に設定したテンプレートを呼び出し、スマートフォンで撮影をすれば、写真は黒板別に自動的に整理されてフォルダに保管されるので、写真の取り込みや整理の手間も省けています。ANDPADで図面や資料も共有しているので、工事関連書類に使用する紙も30%ほど削減できました。」(生田様)
「今は、チャットで日々の報告、経費精算を受け付けています。これまで現場完工後に出社して行っていた事務作業を、ANDPADを使って現場で進められるようになり、写真台帳の作成も楽になりました。これによって無駄な出社が減り、振替休日の取得率を約40%→90%以上へと引き上げることができました。社員がプライベートを大切にできる時間も増えたと感じています。」(高橋様)
ANDPADチャットが若手の教育、現場の安全管理に貢献
ANDPADの運用によって全現場の状況を可視化し、業務効率を大幅に向上させた同社。なかでも最も大きな成果を実感しているのが、コミュニケーションの活性化だという。
「先輩から引き継いだ現場で不明点が出てきた時に、タイミングが合わず電話に出てもらえなかったり、メールをしても返答に時間がかかったりと、すぐに疑問を解消できないことがありました。今は、チャットに質問を投げかければ、炉材部全員の中から誰かがすぐにアドバイスをしてくれます。それぞれ得意分野を持つ先輩たちの知恵を借りられるのはとても心強いです。」(藤本様)
「当社では、案件ごとのチャットに加え、さまざまな相談事を受け付けたり、ANDPADの運用を検討したりするグループチャットも作成しています。直属の先輩・上司以外の話が気軽に聞けるようになり、勉強になっています。」(生田様)
「ANDPADで初めてビジネスチャットを使ったのですが、その利便性の高さに驚いています。スピーディーに連絡が取れますし、メッセージの既読・未読も確認できるので、伝達漏れもありません。部下からのメッセージに対して『きちんと見ている』ことをスタンプで簡単に伝えられるのも便利です。」(高橋様)
また、ANDPADチャットの活用は、「安全管理や品質管理にも良い影響をもたらしている」と高橋様は語る。
「私は、炉材部長と兼任して安全推進室 室長も務めています。これまでは3〜4ヶ月ごとに安全協議会を開催していましたが、参加メンバーにしか直接伝達できていなかったため、全員に周知徹底がしにくいと感じていました。今はANDPADに「安全推進室」のグループチャットを立ち上げ、全国の現場で発生したヒヤリハットや不休災害の事例を随時共有しています。社員全員に即時に注意喚起をすることで、全員が自分の行動を振り返ることができ、事故率も下がっていると感じています。」(高橋様)
新規事業の進捗をチャットに報告、全員の意識が揃いはじめた
都市ゴミ焼却炉といった社会に欠かせない施設を維持していくために、同社では新たな工法や点検方法の開発に積極的に取り組んでいる。
最近では、ウォータージェットリモートマシンの高圧水によって、ボイラー水管を傷つけずに、安全かつスピーディーに耐火物の解体工事を進める無人施工装置の開発に成功。他にも、ドローンを活用した炉内点検など、新しいプロジェクトにも次々と着手している。
YouTubeでの情報発信や業界紙への掲載もあり、お客様からの引き合いも着実に増えているというが、新規事業に対する社内の反応はANDPAD導入によって大きく変わってきているという。
「これまで新規事業の担当者がどんなことをしているのか、部内に伝える方法がありませんでしたが、今はANDPADに新規事業の進捗を報告するようにしています。その結果、みなさんが興味を持って情報を見てくれるようになり、自分では思いつかないようなアイデアがどんどん集まるようになりました。課題の解決がスムーズになって助かっています。」(藤本様)
「社員は個々に現場を持っているので、これまでは新規事業に対する関心が薄かったように思います。ただ、今は新規事業の進捗がチャットで可視化されているので、『自分の現場でもこの工法を使ってみたい』といった声が多く上がるようになってきました。社員の協力もあって新規事業開発のスピードも上がってきていますし、全員がベクトルを合わせて業務に向き合えていると感じています。ANDPADは、部署全体の雰囲気も変えてくれました。」(高橋様)
高い専門性が求められる築炉工事業界では、技術力のある人材の不足が大きな課題となっている。同社はこの現状を変えるため、省人化につながる先進的な手法を開発し、業界内への普及に努めている。長年の信頼と実績のもと、新たなチャレンジを続ける同社の取り組みを今後もANDPADを通じてサポートしていきたい。