ベストホーム(岡山県岡山市)は、1994年にエクステリアの設計・施工会社として設立。岡山市を中心に新築の外構や
クステリアの施工を手掛けてきた。顧客からリフォームの要望が入るようになり、2010年にリフォーム事業を新設。現在、エクステリアやガーデニング工事の他、リフォームや中古住宅のリノベーション、外壁塗装事業を展開している。
創業時からの案件管理や新人の育成について、DXによりどのように変化したのか話を聞いた。
顧客情報と工事の進捗状況を一元管理
同社は創業以来、紙ベースで施工管理をしてきた。資料は案件ごとにまとめて封筒に収容。
現場に行く時はその封筒を待ち歩いていた。そのため、社内の机の引き出しは封筒で溢れ返り、パソコンには現場写真が次々と溜まっていく状況だったという。
管理ソフトやアプリなどを活用することで、紙の資料を持ち出す機会は減少したが、顧客情報の管理には継続して表計算ソフトを使用していた。業務が拡大するにつれ、またも管理に支障をきたすようになる。
尾崎靖士取締役統括部長は「1店舗なら良かったのですが、複数店舗になると動作が遅くなります。多くのスタッフがファイルを開くと動かなくなり、見積もりすら作れない状況になることもありました」と振り返る。
2022年、顧客情報と施工管理の連携を図るため、ANDPADを導入。顧客情報から見積もり作成、写真の共有、工程表の作成までを1つのアプリで一括管理できるようになった。なかでも、ANDPAD上で写真が共有できる写真管理機能は、現場まで行かないで職人と打ち合わせができるため、営業や現場担当者に好評だ。
さらに経理の業務効率にも効果があった。これまで請求書は項目ごとに振り分けていた。現場の番号などを記入する必要があるため、未記載などがあると経理から請求書が回ってきて、必要項目を埋める必要があった。ANDPADを導入してからは、請求書の確認作業が大幅短縮されたという。
「一日の業務が終わって事務所に戻ってきて、そろそろ帰ろうという頃に請求書が回覧してきました。当社は定時が18時ですが、18時から請求書を確認する社員がほとんど。その作業に当てていた残業時間が少なくなりました」(尾崎部長)
社内ルールを定め情報共有を徹底
同社では社員教育の面でもANDPADを活用している。以前は、中途採用から人材を登用することが多かった。
しかし入社後、仕事への考え方や取り組み方の違いから、長く定着しないことがあり方針を変えた。現在では、毎年2~3人の新卒を採用し、最初の3か月で顧客対応や所作などビジネスの基本を学ぶ。その過程で大切にしていることが、会社の理念を伝え共感してもらうことだ。社員が同じ考えを持って仕事に取り組めることが、顧客満足度を向上させる上でも重要だという。その後、各部署に配属され、20代の先輩社員とバディを組み、実務を身につける。
ANDPADの使い方や情報入力の方法がルール化されているため、教育内容が教育者の違いによるバラつきがない。新卒採用で入社5年目の太田健斗氏は「私が入社した時は、先輩によってやり方が違いました。今では、どこに何の資料を入れるなどのルールが決まっているので使い勝手がよく、新人にも指導しやすいです」と話す。
ANDPADの導入による効果は、業務効率が改善しただけでなく、顧客情報を営業活動にも活用できるところが大きいという。
尾崎部長は「一度施工をしたお客様に、5年先や15年先など、次のリフォーム時期を見越してご連絡することを考えています。しかし、情報がないと何も書けません。そこでANDPADに情報を入力するルールを作りました。お客様の情報は問い合わせいただいたタイミングでの入力を徹底し、電話のやり取りの履歴なども可能な限りANDPADに記録します。現場では、入退場は必須。工事過程を撮影し、毎日の業務報告も義務づけています」
今では、過去30年の顧客情報も管理する。エクステリアやガーデンのOBのほか、外壁塗装の顧客などのデータも入力している。どういう折衝をしたか、担当者は誰だったか。そのような情報を見て、把握した上で顧客と商談する。
また、クレーム内容も情報共有している。トラブルは担当者が代わる際に起こるケースが多いという。前の工事でどんな経緯があり、どのようなやり取りで顧客とこじれたのかが分かれば、同じ過ちを繰り返さないで済む。今では、クレーム対策としてANDPADを通して、情報をしっかり共有するという土壌ができ上がった。
ベストホームでは、お客様のお子様の年齢や名前、またそれが、何年時点かの情報まで細かに入力されている。さらに、日付や詳細な売上のデータ、どこの事業部で受けた物件か、担当者が誰なのかも分かる。ここまで充実していれば、案件を絞り込み、売上傾向の分析も可能だという。
業務改善がなされているのはもちろんの事、さらには情報を詳細に共有することで、より良い営業活動にも繋がっているという。
現場のショールーム化を目指す
同社は今後、顧客満足度の向上を目指す。少子高齢化で工事件数が減っていく中、施主が満足する工事をすることが重要だという。工事の完成度が高ければリピートや紹介に繋がる。尾崎部長は「それには引き渡し後にも満足度が上がっていくような施工品質を提供するこことが大事です」と話す。
現在、取り組んでいるのが現場のショールーム化だ。エクステリアやリフォームなどにおいて、施工箇所の撮影を欠かさず行っている。「ただ安心、安全な施工をしていますと口で伝えても説得力がありません。写真を撮って記録に残し、報告書として施主に毎日提出できるようにしています」(尾崎部長)
引き渡し後の安心安全を担保するために、社員だけではなく職人にも徹底している。現場写真をANDPADでの共有・管理。同社だけではなく協力会社や職人を含め、ANDPADを通じて顧客満足度を高めていく。
株式会社ベストホームの紹介
株式会社ベストホーム
https://besthome-oka.co.jp/
(リフォーム産業新聞online 2024年10月4日掲載記事の転載)