現場が本来の“ものづくり”に集中できるよう、DXで業務の効率化を進めてきた佐藤工業(栃木県壬生町)は、半年前に請求査定業務のDXに乗り出した。社内にどんな変化・効果が生まれているか、管理部の藤沼俊行課長、建築部の萩原穣課長に話を伺った。
決め手はUIの見やすさ
同社は、昨年10月に『ANDPAD請求管理』を導入するまで、請求書の受領から査定、承認、保管といった一連の業務をすべて「紙」で行ってきた。
約300枚にのぼる請求書が毎月20日までに郵送で届き、藤沼さんら経理担当は開封して中身を確認し、現場ごとに振り分けてファイリング。萩原さんら現場監督はそれを会社まで取りに行き、前月の資料と見比べながら3~5日かけて査定して再度会社に。経理担当は戻ってきた約300枚の請求書を業者別に並べ直し、現場監督が入力した金額と請求書が合っているかを1枚ずつチェックして支払いへ―。こうした作業に時間を取られるのが「もったいない」と感じた藤沼さんは、「社内効率の向上」を目的に請求管理のDXを決意。いくつかのシステムを検討・試運用して最終的に『ANDPAD請求管理』を選んだ。「UIの圧倒的な見やすさ、建設業に特化している点が一番の決め手になった」と話す。
面倒な現場ごとの振り分けが不要に
DXで経理担当の仕事はどう変化したか。藤沼さんは「何もかもが変わり、事務方の作業が格段に楽になった」と話す。
「請求書の振り分け・並べ替えの手間がゼロになったのはもちろん、年に何回か現場監督から頼まれる過去の請求書の呼び出し作業が不要になったのも大きい」。従来は、ほしい情報にたどり着くまで請求書の原本を1枚ずつめくるしか手がなかったが、それが解消された。ANDPAD導入後は現場監督自身が自由に検索して過去情報を呼び出せるため、探す手間や紙でのやり取り、保管場所が要らなくなった。
また以前は、査定業務に時間がかかる現場監督が一定数いたが、今は催促をしなくても早い段階で査定・承認を完了してくれるため、余裕を持って支払い対応ができるのも嬉しい効果だという。
現在、藤沼さんが請求管理に関わる業務は、査定・承認を終えた請求書の金額と業者が合っているかを目視で確認するだけ、とかなり省力化された。「部署全体だと月50時間ほど削減できた。浮いた時間は、現場の課題・負担をいかになくすかを考える“次の改善作業”に充てている」と話す。
移動・査定の負担を大幅に削減
一方、現場監督の仕事はどう変わったか。萩原さんは「パソコンを開くだけで請求書を即日確認・処理できるのが大きな変化」だと話す。
以前は、遠い現場だと往復2時間かけて請求書を取りに行く必要があったうえ、デスクが書類で占領されるため気軽には査定業務を始められず、一度始めたら中断できないのがネックだった。
「今はパソコン1台で完結するので、請求書が届いたら『すぐやろう』という前向きな気持ちになれるし、画面上でANDPAD請求管理と工事管理台帳を見比べて確認するだけなので煩わしさはゼロ。承認ステータスも見やすい。必要な情報はすべてクラウド上にあり、検索・呼び出しも簡単なので、従来3–5日かけていた査定業務がほぼ半日で終わる。『今日はここまでにして残りは明日やろう』といった時間に線引きがしやすく、場所に縛られずに作業ができるので働き方の選択肢が1つ増えた」と萩原さん。
DXで浮いた時間は「現場」に充てている。「建設は人と人とが繋がる仕事なので、私が現場により多く顔を出し、職人さんの目を見て会話する機会が増えたことで、現場のまとまりがよくなり、ミス・トラブルも減った。現場監督の本来業務である“調整役”に徹しやすくなったというメリットも感じている」。
短期間で目標達成、次のDXへ
『ANDPAD請求管理』を使い始めて半年。藤沼さんは使いやすさ、サポートともに「10点満点中10点」と評価する。
「協力会社の利用率が8割を超え、現場とバックオフィスとの関係性がよりよくなった今、請求管理のDXに関してはほぼゴールに辿り着けた。次の目標は、発注や支払いなど請求書以外の分野でもDXを進め、少しでも現場の仕事をやりやすくすること。現場が“最高の状態”でものづくりができる環境を整えることが、クライアントへの付加価値・貢献につながると思っている」。
会社概要
会社名:佐藤工業株式会社
本社:栃木県下都賀郡壬生町
創業:1877年
社員:45人(うち建築12人、土木12人、営業4人、事務4人)
事業内容:壬生町新庁舎をはじめ、学校・病院・高齢者施設・店舗の建設工事および修繕工事、道路改良工事、護岸工事など(民間・公共比率は5:5)
HP:https://www.marumi-sato.jp/
(建設産業未来ビジョン2025(2025年7月31日発行)に掲載された記事の転載になります。)