保守点検は、設備や機械が正常に稼働し、想定どおりの性能を維持しているかを確認する作業です。この記事では、保守点検の基本や役割、メリット、課題などを解説します。効率化の方法も解説するので、保守点検について理解を深めたい人は参考にしてください。
保守点検とは
保守点検とは、設備や機械が安全に動き、期待どおりの性能を発揮しているかを確かめるための作業です。点検の際に不具合が見つかった場合は、状況に応じて修理や部品の交換などの対応を行います。場合によっては、稼働を一時的に停止しなければならないこともあります。
日常点検と定期点検の違い
保守作業は、日常点検と、決められた周期で実施する定期点検の2種類に大別できます。日常点検は、機器や設備を使用する従業員が作業の前後や開始・終了時に行うもので、外観の状態確認や基本的な動作のチェックが中心です。
一方、定期点検は、月ごとや数か月ごとなど一定のサイクルで実施し、必要に応じて摩耗した部品の交換や、通常の作業では対応できない箇所の清掃などを行います。点検内容は機器の種類や使用環境によって異なるため、どの項目を確認すべきかを関係者間で十分に協議しておきましょう。
保守点検の目的と重要性
保守点検は、設備や機器が故障したり、不良品を生み出したりする事態をあらかじめ防ぐために行われるものです。定期的なメンテナンスによって、機器を良好な状態で長く使用できるようにします。故障や不良が発生すれば、生産性の低下や余分なコストの発生につながるため、企業にとって計画的な点検は欠かせません。
さらに、点検によって設備の安全性を確保することで、現場全体の安全意識を保ち、安心して作業ができる環境づくりにも貢献します。
保守点検と設備保全、メンテナンスの違い
保守点検・設備保全・定期メンテナンスといった言葉は、いずれも「点検を通じて機器や設備を良好な状態に保つ」という目的で使われます。一般的にはほぼ同じ意味で使われていますが、企業や現場によっては細かく区別している場合もあります。
例えば、「異常がなくても計画的に整備することを設備保全と呼ぶ」「故障などの問題が起きた際に行う作業を保守と位置づける」といった使い分けです。ただし、実務上の違いは大きくないため、言葉の使い分けに過度にこだわる必要はありません。
保守点検の作業手順
保守点検を実施する際には、作業手順の把握が必要です。ここでは、手順に沿って解説します。
1.点検対象の設備・機器を選定する
保守点検を実施する際は、最初に関係者と相談し、点検を行う場所を決めることが大切です。点検対象の設備や機器の稼働状況を確認し、実施内容を明確にしましょう。あわせて、点検に必要な人員や使用する工具・機器を整理し、費用についても事前に把握します。
事前調整をせずに点検を行うと、他の作業を妨げたり、稼働中の機械によって安全を確保できなかったりする恐れがあります。そのため、必ず関係者と打ち合わせを行い、点検内容や条件を前もって確認しておきましょう。
2.点検の実施サイクルと責任者を設定する
次に、点検の実施サイクルと責任者を設定しましょう。あらかじめ頻度と担当を明確にしておくことで、点検の抜け漏れを防止できます。点検サイクルが定まっていないと、実施が後回しになり、設備トラブルにつながる恐れがあります。故障が起きる前に部品交換や修理を行うためにも、点検の頻度と責任者を事前に決めておくことが大切です。
3. 点検内容をチェックリスト化する
次に、点検内容をチェックリスト化しましょう。可視化しておくことで、誰が対応しても同じ流れで点検を行えるようになります。
担当者ごとに作業方法が異なると、確認漏れやミスが起こりやすくなるため、具体的な作業内容を明確に示したチェックリストを用意しましょう。マニュアルには、点検の実施間隔、確認すべき項目、点検の進め方、異常発生時の対応方法などを盛り込むのが基本です。
4. 点検を実行し、結果を記録・報告する
最後に、点検を実行し、結果を記録・報告しましょう。チェックリストを使わずに作業すると、進め方や確認レベルが担当者の経験や判断に左右され、点検品質に差が出てしまいかねません。
また、新任の担当者には必要な知識が十分に共有されず、適切な点検ができない恐れもあります。安定した精度で作業を行うためにも、チェックリストを活用して保守点検を実施しましょう。
保守点検の4つのメリット
保守点検のメリットは、主に4つあります。ここでは、各メリットを解説します。
製造する製品の品質が安定する
保守点検を行うことで、設備や機器の異常や故障を早い段階で把握できます。これにより、生産ラインで不良品が発生するリスクを低減でき、結果として製品の品質が安定します。さらに、品質が安定することで顧客からの信頼が高まり、満足度の向上やリピート購入につながるでしょう。
コスト削減につながる
定期的に保守点検を行うことで、設備にかかる各コスト削減につながります。点検によって消耗や劣化の状況を把握できれば、最適なタイミングで修理や部品交換が行えます。結果的に、メンテナンス費用を無駄なく管理できるでしょう。さらに、継続的な点検によって機器の寿命を延ばせるため、新しい設備を導入する際の投資費用も抑制しやすくなります。
事故を防止できる
保守点検は、作業者の安全確保にも欠かせません。設備や機械の故障を放置すると、誤作動による事故のリスクが高まります。特に機械の近くで作業する現場では、異常がそのままけがにつながる危険があるため、注意が求められます。定期的な点検で設備の状態を把握し、異常を早期に発見することで、労災を防ぎ、安全な作業環境を維持できます。
トラブルに迅速に対応できる
定期的な点検を実施することで、設備や機械の異常を早期に把握でき、大きな故障が起こる前に問題を特定して素早く対応できます。部品の交換や修理もスムーズに行えるため、修理費用や稼働停止時間を抑えることが可能です。さらに、点検を通じて異常の兆候を察知し、あらかじめ対策を取ることで、予期せぬ故障も防げるでしょう。
保守点検が抱える課題
保守点検にはメリットがある反面、課題もあります。ここでは、4つの課題について解説します。
人材が不足している
少子高齢化による労働力不足は、保守点検の現場でも深刻です。細かい作業や特定の資格・スキルが求められるため、技術者の育成や確保が難しく、人手不足が慢性化しています。人材不足の影響で、既存の技術者にかかる負担が増えると、点検に十分な時間を確保できず、作業の精度や安全性、生産性に影響が出る可能性があります。
見落としが発生する場合がある
保守点検では、作業者のミスによって見落としが発生することがあります。特に、繰り返し行う作業や手順の複雑な作業では、作業員の経験量にかかわらず、注意力が途切れるとミスのリスクが高まるでしょう。例えば、長時間の点検で疲労がたまると、本来確認すべき項目を見落としたり、手順を誤ったりすることがあります。
点検記録の手間がかかる・記載ミスのリスクがある
保守点検では、作業内容や結果を記録することが求められます。近年はデジタル化が進んでいますが、依然として紙の点検簿に手書きで記録する現場もあり、作業に手間がかかることが課題です。また、手作業での記録や転記の過程でミスが生じる可能性もあり、正確な記録管理が難しい場合があります。
手順やノウハウが属人化しやすい
保守点検では、作業手順を特定の人に依存してしまうことで、作業漏れが起こりやすくなります。毎回同じ担当者が点検を行う場合、手順やノウハウが特定の従業員だけにしか残らず、休暇や退職の際にスムーズな点検ができないことがあります。
例えば、経験豊富な従業員が機械を調整している場合、その人が不在だと誰も調整できず、ライン停止のリスクが生じかねません。
保守点検の効率化を進める方法
保守点検の効率化を進める方法は、主に2つあります。ここでは、デジタル化で管理作業を最適化する方法と、外部委託する方法について解説します。
デジタル化で管理作業を最適化する
保守点検を効率化するには、デジタル技術やITシステムを導入してDX化を進めることが有効です。これにより、人手不足の解消や異常の予測・自動検出、作業の属人化の解消などが期待できます。
例えば、点検記録を電子化すれば、手書きの入力ミスや転記作業を防ぎ、管理が簡単かつ正確になります。さらに、IoTやAI、監視カメラを活用すれば、普段は無人で設備を運用し、異常発生時に自動で検知・通知する体制を構築でき、さらに効率化が期待できます。
外部委託する
保守点検を効率化するには、外部の専門企業に委託する方法も有効です。人手不足で自社対応が難しい場合、経験豊富な企業に任せることで、点検業務の効率化やデジタル化、管理改善が容易に実現できます。ただし、外部委託には注意が求められます。委託先に頼りすぎると、自社にノウハウが残らず、緊急時の対応が遅れる可能性があります。
保守点検の効率化にはITツール導入が効果的
保守点検の効率化には、ITツールの導入が有効です。現場の作業者がスマートフォンやタブレットで設備の異常を迅速に報告できるツールもあり、保全担当者が適切な対応を行いやすくなります。また、日常点検や定期点検の記録をデジタル化し、クラウドで管理できるツールもあるため、検討してみてください。
まとめ
保守点検は、設備や機械が安全かつ安定して稼働することを確認し、故障や不良を未然に防ぐための重要な作業です。定期的な点検を行うことで、製品の品質安定やコスト削減、事故防止、トラブルへの迅速対応が可能になります。一方で、人材不足や作業ミス、記録の手間、ノウハウの属人化といった課題も存在します。
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