タオルと造船の街から高性能住宅普及の先端地域へ―。
受注棟数は過去5年ほどで軒並み5倍に増加。愛媛県の東予地域を代表するビルダーへと成長を遂げたその背景のひとつにはANDPADの活用があった。建築工房小越(小越啓司社長)の軌跡に迫る。
年間40棟、ZEH受注比率9割超え
愛媛県今治駅から車で10分。平屋建に内装は温かみのあるオシャレな建築物。同市は人口約15万人、新築着工数は年間500戸の地方都市である。ここに全国に先駆けて高性能住宅を展開してきた住宅事業者が存在する。建築工房小越である。建築だけでなく地場産業やデザイン関係で修行を積んだ小越社長は2001年に同社を設立。四半世紀近くここ今治の住まいを支えてきた。
世相は脱炭素全盛ではあるが「環境問題が叫ばれ始めた頃から建築のチカラで社会問題を解決できないかと思案していたところ、エネルギーを自給でき快適で健康に過ごせる高性能住宅という概念に出逢った。今から10年以上も前の話である。有志を集め設計・工法といった勉強会を開くなどノウハウを蓄積していった」と振り返る。創業当初の年間着工数は数棟。夫婦二人三脚で事業を展開し、時代のニーズに応え、高性能住宅を展開する姿勢が反響を呼び『良い家は小越で』とブランド化されていった。
今や年間40棟と同地域における主要な住まいの担い手にまで成長した。長期優良住宅をベースに、断熱性能G2超、太陽光発電はもとより全館空調、家とクルマをつなぐV2Hなどを採用。現状、住宅仕様の最高峰となるLCCMレベルまでを手掛け、ZEH受注比率は9割超と高性能を標準化させた。
棟数の急増に現場管理の仕組み化が必須に。手厚いサポートが決めて
棟数を増やしていく中で、ひとつの課題が発生した。「受注が増えていくにつれ現場工程の遅れや発注ミス、協力企業からのクレームが相次いだ。」そこで管理能力等を高めるためシステムを導入することにしたという。
「当初は現場からも『何故、DXツールを使わなければならないのだ』といった反発もあったが、浸透していく過程で日程調整がスムーズになるだけでなくチームとしてのコミュニケーションが高まった。仕事としての生産性だけでなく、技量により精度が異なってくる断熱施工のレベルも上がっていった。お施主様にとっては長く住まう家がどのような過程で施工されていったのか、工事進捗を写真や資料などで記録・保存されていくことは安心材料であり、再販時にも役に立つ。バラバラだった情報が一つに纏まっていくのは画期的だった」と話す。
小越啓司社長
システム導入の指揮を執った清水万喜氏は「他社製も検討しましたが、使い勝手の良さからANDPADを採用しました。これにより企業としての仕組みの土台を構築できました。今では記録が滞っていれば現場からも『進捗はどうなっている?』といった声が挙がるほどです。定着するのに時間はかかりますが、アンドパッドの手厚くきめ細かいサポートが心強かった」との当時の感触を説明する。
清水万喜氏
『ANDPAD施工管理』は現場で必要な工程表や写真、図面、報告などの工事情報をクラウド上で効率的に一元管理・共有できるというもの。資材の到着遅れや前工程の進捗具合などで起こる工程変更も自動で通知。電話やメールで個別に行っていたやりとりも一本化されるため伝達ミスを削減。事務所での作業を必要としていた写真の管理・撮影、書類や図面の閲覧もスマホで可能。報告業務もスマートに行えるといった特徴がある。
その後、同社は同じくANDPADが展開する『ANDPAD受発注』、『ANDPAD引合粗利管理』も導入した。顧客管理、営業進捗、粗利・原価管理など、経営上の重要なデータを集約・見える化することができる。このことにより、現場情報と経営情報を一元管理できるようになったという。
粗利は約5%改善。日常的なやり取りの工数を体感1/10に
具体的な効果は。現場の司令塔である小越拓海氏は「従来、粗利計算はエクセルで管理していました。現場では突発的に受発注の変更が起こります。今まではその対応がおざなりになっていた訳ですが、ANDPADを活用することでこれらを細かく簡単に見ていくことができ、利益率は約5%も改善されました。やり取りの行き違いによるクレームやトラブルも体感10分の1に削減できています。社内としても働き方の改善に繋がっています」と評価する。
小越拓海氏
加えて今春より、同社は契約から引き渡し、その後のアフターサポートまで顧客コミュニケーションを支援する『ANDPADおうちノート』を導入。
小越社長は「少子高齢化、新築着工の減少が予想される中、今後はリノベーションという分野が需要として見込まれる。お施主様とのコミュニケーションを密に図り、ニーズに応えていくことで、これまで培った高性能化という技術をもって地域におけるお家の主治医でありたい」との展望を語った。
操作説明会の様子
(ZEH MASTER2024 2024年5月31日号掲載記事の転載)