新妻鋼業株式会社様のご紹介
埼玉県三郷市に本社を置く新妻鋼業株式会社様は1960年創業以来、「求められている安全・品質の基準を満たし信頼を得る鉄筋専門工事業者を目指す」ことを基本方針に掲げて“作業の安全”“建物の安全”という2つの安全管理を徹底してきた。
主な営業エリアは関東全域の他、東北支店がある福島県周辺の東北地方で、RCマンションを中心に工場や商業施設の他、サーモンの養殖場など多彩な躯体工事を手掛けている。最近では、東京・晴海エリアで建設された2020年東京オリンピック・パラリンピック競技大会の選手村が施工実績としてある。
案件は、元請のゼネコンが新妻鋼業様に発注し、二次下請の協力会社が現場で施工するという流れで進む。社員20名のうち、工事部の5名が番頭として月20件ほどの工事現場を同時に稼働させている。その中で、協力会社や社内の加工場とのコミュニケーションがうまくいかず、鉄筋の加工などでトラブルが起こることがあった。そうした問題を解決すべく、ANDPADの導入を決めた。その経緯と成果について工事部長の伊藤 雅彦様をはじめ関係メンバーに話を伺った。
是正発生の未然防止への意識が高まり、職人の手配もしやすくなった
新妻鋼業様は施工品質を高めるため、常々、コミュニケーションツールがほしいと考えていた。例えば、工事部の担当者が現場の自主検査を行う上で、協力会社の職長、職人との話は個別にはできていたが、伊藤工事部長をはじめ部内の他の社員間で情報共有ができていなかった。また是正箇所があったとき、現場に伝えても実際に手直ししたかどうかを、伊藤部長が把握できていないという課題もあった。
鉄筋がコンクリート内に納まるように、鉄筋の加工形状や寸法などについてゼネコンから指摘されることもあり、そうした問題があれば書面にして現場に流すようにしていたが、その書面も郵送するなど手間がかかっていた。
そこで実際にSNSやクラウドサービスも使って情報共有を試みたがうまくいかない。そんな中、偶然ANDPADのことを知る機会があった。伊藤部長は詳細を確認し、「当社が求める8割以上の機能がANDPADのシステムには備わっている」と感じた。社内協議で「やってみて駄目だったらまた変えればいい」という新妻尚祐社長の判断のもと、2021年に導入した。
導入後、自主検査で是正箇所を写真で撮影し、工事部全体で共有できるようになった。それだけではない。他の現場でも同様の是正が発生しないよう、未然防止する意識を高めることができた。また、協力会社がチャット機能を利用して「こうしてほしい」といった要望を、工事部の担当に直接出せるため、素早い対応ができるようになった。元請に対しては「ANDPADを使って是正指示に対して加工場や協力会社がこうやって是正している」と是正内容を詳しく報告できるようになった。そうすることで、元請からの「新妻鋼業はきちんと現場を管理している」という信頼獲得に貢献している。
伊藤部長は自分の担当現場の状況をある程度把握していたが、「部長という立場である以上、担当外の現場の情報も知っておく必要がありました」と振り返る。自身は外出が多いため、ANDPAD導入以前は月曜日に会社へ行き、20~30分かけて部下の担当者に図面や工程がどうなっているかわざわざ確認したりしていた。
ANDPAD導入以降は、タブレットやスマホを見れば進捗状況がすぐ分かるようになった。出先でも、移動中の電車内や昼食後のすき間時間などで手軽に確認できるようになり、無駄な時間がなくなった。
また職人の手配もしやすくなった。毎日、電話で職人の予定を確認し、エクセルで「応援予定表」を作成してPDFにしている。ANDPAD導入以前は1人を手配担当者として決めており、その人だけが全てを把握しているという状態だった。導入以降はPDFをANDPADに入れておけば、他の担当者が現場で「ここの人員が足りない」「ここは足りているから別の現場にまわせる」といった判断ができ、適正な人数を現場に割り振れるようになった。
鉄筋加工に関する指摘を社内全体で共有し、将来のリスクを減らす
鉄筋工事において重要な工程のひとつが、鉄筋の加工だ。メーカーや材質、径など使用する材料の種類や切断、曲げといった形状の組み合わせが多いからだ。
元請から受注後、現場にいる協力会社の職長から「このような形状に鉄筋を加工してほしい」という指示が出たら、「加工帳」という加工指示書に径、本数、形状などを書き、本社に隣接する自社加工場に加工帳を送って加工してもらう。そうして加工された鉄筋が現場に入ってくる。そこでたまに、加工場の加工員が加工帳を読み間違えて加工したり、そもそも現場の職長が記入間違いしたりして加工ミスが発生する。
ANDPAD導入以前、加工間違いの連絡は工事部の担当と加工場を管理している工場管理部だけのやりとりになっており、どんなミスがあったのか社内全体で把握できていなかった。そもそもミスの数の多寡もよく分からなかったという。連絡は電話でしていたが、言葉だけの説明ではなかなか伝わらない。そうした場合、写真を撮影してメールで送っていた。現場で施工図に変更があり、追加の加工帳を出したいというとき、手元にパソコンもFAXもないと、現場担当者がわざわざ近くのコンビニへ行って加工場にFAXしていた。
ANDPAD導入後は、チャット機能で現場担当者が絵符などを写真で撮影し、誰でも分かりやすい説明を付けて情報共有できるため、社長以下全員がすぐに状況把握できるようになった。加工間違いに関する報告が現場から加工場に送られると、加工場で対策を練り、報告への回答もANDPAD上に残すようにしている。
導入当初は工場長、工場管理部課長、加工場の職員の3人だけアカウントを作成していたが、最近、副工場長のアカウントも追加した。「こういう指摘がきたから今後直していこう」と、具体的にミスの内容を毎朝の朝礼で直接加工場のみんなに伝えている。加工場がどういう傾向で間違いやすいか把握している協力会社もおり、その人たちからの情報も吸い上げて加工場全体で共有できるため、将来的なミスも減らせるようになった。
段階を踏んで利用者を増やすことで導入のハードルを下げた
新妻鋼業様の協力会社はおよそ30社おり、そのうち8人の職長クラスがANDPADを利用している。まだ全員が使っていないのは、そもそもスマホを持っていないという人もいるからだ。徐々に利用の輪を広げるため、スマホ操作に慣れている人から招待している。
最初は積極的に使ってくれそうな職長1人をメンバーに加えることから始めた。その後ステップ2として、新しい現場が始まるタイミングでANDPADを使ってくれそうな別の職長を3人選ぶなど、何段階かに分けて8人まで増やしていった。ある1人の職長がANDPAD上で積極的に進行状況の報告や加工ミスの指摘などをしてくれたおかげで、他の職長も少しずつ使うようになってきた。
当初、職長らは「自分たちにメリットはあるのか」「スマホの容量をアプリにとられる」と利用には後ろ向きだった。だが、工事部から声掛けしながら説得し、実際に使ってみるとスマホで簡単に情報共有ができてチャット機能も使いやすいということで輪が広がっていった。
今では、複数の協力会社が入る工事現場で「元請からこういう図面が来ているが、鉄筋はこの加工で大丈夫か」など、職長同士が会社の垣根を超えてチャットを使い現場の状況について議論を交わすようになった。
ANDPAD導入以前は、職長同士の打ち合わせは現場だけの会話に止まり、どんな内容か詳細まで分からなかった。だが導入以降、新妻鋼業様も会話の内容をチャット上で見られるようになり、対応のレスポンスがしやすくなった。
例えば施工に関して元請に質問するケースでは、協力会社が新妻鋼業様に元請への質問を依頼する、もしくは協力会社が元請に直接質問するという2つのパターンがある。
ANDPAD導入以前は同じ質問が繰り返されることがあった。また、質問数が多いと協力会社が新妻鋼業様に電話やメールをする手間を省いていたため、現場でどんな質問が出ているのか新妻鋼業様が全てを把握できていなかった。だがANDPAD導入以降はチャットを使うようになり、関係者全員が質問内容を把握しやすくなった。職長の方で質問内容を整理してもらえるようになり、質問の重複もなくなった。
新妻鋼業様は建築工事も土木工事も手掛けている。昔からの慣例で建築担当は建築のことだけ、土木担当は土木のことだけしか把握していなかったが、ANDPADを導入して情報を一元管理するようになり、その垣根がなくなった。「様々なタイプの現場があるが、鉄筋工事はどの現場でも共通して出てくる是正がある。今までは担当者が個々の方法で自主検査していたが、最近はどんな現場でどんな是正の指摘が多いかといった情報が全体で蓄積されている。そういう点でみんなの意識が変わった」と伊藤部長は話す。
新妻鋼業様は鉄筋専門工事業者としての信頼を高めるべく、ANDPADの活用により協力会社とのコミュニケーションを深め、元請と現場の認識のズレをなくして、より品質の高い施工現場の構築を目指している。