鈴与ホームパル(静岡県静岡市)は、物流やLPガス事業などを手掛ける静岡の有力企業、鈴与グループのリフォーム会社だ。設立は2008年3月。LPガスを手掛ける鈴与商事(静岡県静岡市)からの顧客引き合いが全体の25%にのぼり、顧客が多い静岡、山梨、長野の3県を中心に7店舗を構える。浴室、キッチン、屋根外壁塗装、開口部(窓・玄関)など単価の高い4種のリフォームに注力しており、年間約2200件の工事を受注。前期の売上高は14億5000万円で、そのうち4種が約65%を占める。
同社のDXへの取り組みについて、菅野敦代表取締役社長、井上勇人取締役、伊奈野壯担当部長に話を聞いた。
クラウド管理の必要性を感じて「ANDPAD」を導入
同社は2019年、藤枝店で「ANDPAD施工管理」を導入。藤枝店は当時店長だった伊奈野担当部長と、リフォーム経験の浅い2人を含む4人体制だった。現場管理は、各自が表計算ソフトで工程表を作成。ガラケーを使っていたこともあり、現場写真などの共有が難しかったという。また、工事行程の共有を店舗にあるホワイトボードで行っていたため、出先では互いの予定や、工事の進捗状況がわからない状態だった。こうした状況からクラウド管理の必要性を感じてANDPADを導入した。
ANDPADを活用することで、施工管理の面において業務効率が飛躍的に伸びたという。スマホやタブレットがあればどこでも資料が確認できるようになり、紙での資料管理が減った。また現場状況を写真で共有することで現場に戻る回数が減少した。
「DXを図り、業務効率化を実現したことで、ひとりひとりの生産性が高まり、1人あたりの担当件数を増やすことができました。」(井上取締役)
さらに2022年には、「ANDPAD引合粗利管理」と「ANDPAD受発注」も導入した。これを機に同社では全店舗へANDPADを展開し、受発注や案件管理をANDPADで行うよう統一した。導入の際は、社内研修に加え、協力会社向けの研修も実施した。ANDPADの活用を促進するため、協力会社向けの研修は現在も年2回実施している。研修では、自社で作成した使い方の説明動画や、実際にあった良い活用事例を発表している。こうした努力が功を奏し、徐々に協力会社での利用も増えているという。
同社ではすべての案件の受発注処理をANDPADから行っている。担当者によっては、ANDPADのチャット機能で見積もり依頼を済ませるなど、スピーディーな受発注作業も可能だ。「現場や外出先からチャットで連絡をとり、会社に帰らなくてもその場で見積もり依頼をするケースが増えてきています」(伊奈野担当部長)
請求書処理に関しても、これまで請求書の突き合わせに3~4日間は根を詰めた作業が必要だったが、現在では合間に別の作業ができるほど効率化されている。菅野敦社長は「月末になると受験勉強の追い込みのような雰囲気で声も掛けられないほどでした。今では落ち着いて作業できるようになったと感じています」と話す。
ANDPADに集約されたデータを経営判断に活かす
また、数字管理の面でも「ANDPAD」が役立っている。菅野社長は毎朝移動中に「ANDPAD引合粗利管理」のダッシュボード機能から会社の引合状況、見積もり状況、受注状況、完工状況の4項目を確認することを日課にしている。受注確度をA・B・Cに振り分け、その移行率を注視し、経営判断に役立てる。これらの数字はリアルタイムで反映されており、店舗ごと、スタッフごと、月毎などソートをかけて閲覧することも可能だ。案件管理、引合粗利管理、受発注管理がANDPADで行われる事で、入力された情報から業績に関わる数字をひと目で把握できる。
「9月から翌年8月まで1年間、データは追っています。正しい情報をタイムリーに入力しないと経営判断を誤るので、社内スタッフにはきちんとデータ入力するよう徹底しています」(菅野社長)
リピート率を向上させ、3年後に売上高20億円を目指す
現在、同社では顧客カルテの作成にも注力している。
「顧客カルテは8項目あります。風呂をいつリフォームしたか、施工した場合はどこの協力会社が担当したか、未施工の箇所はどこかなどをまとめています。紙ベースで用意したものをANDPADの顧客情報に落とし込んでいます。」(菅野社長)
2024年6月には、「ANDPADおうちノート」を導入した。お施主様とのコミュニケーションに特化したサービスで、契約から施工中、引き渡し以降もお施主様とチャット、資料・写真の共有が可能となる。
今後は、顧客カルテに記載された顧客情報と、「ANDPADおうちノート」の活用で顧客コミュニケーションの質を向上させ、OBとの接点を増やし、リピート率の改善を目指す。
同社は来年6月、豊橋店のオープンを予定している。店舗の拡大で、3年後の売上高20億円を目指す。
「儲けるという漢字は『信じる者』と書きます。漢字が示すように、売上拡大にはファンを作ることが重要だと思っています。ファンになってもらうのは消費者だけではありません。社内スタッフ、協力会社の職人も含みます。協力会社においては、一緒に仕事しやすい環境を作る。社内では、ワークライフバランスが大切です。DXによって家族との時間も取れるようになる。これが離職率の低下に繋がり、1人当たりの売上額も上がっていく。力がつけばクレームも減り、リピートに繋がる。そのようなサイクルを作っていきたいと考えています」(菅野社長)
鈴与ホームパル株式会社の紹介
鈴与ホームパル株式会社
https://www.homepal.jp/
(リフォーム産業新聞online 2024年12月30日掲載記事の転載)