注文住宅を中心に年間約600棟を手掛ける千葉県柏市の広島建設が、クラウド型の施工管理アプリ「ANDPAD(アンドパッド)」を本格導入して約1年。協力会社も含めた社内外の工事管理・コミュニケーションツールとして業務の効率化を図っている。
「写真や資料を一元管理して社内外で共有できるので、業務効率が改善されました。ANDPADに必要な資料を上げておけば、協力会社の人たちがチェックして、自発的に動いてくれます。作業が終われば報告が上がってくるのでとても助かっています」。広島建設住宅工事部工事グループ次長の砥綿伸至氏は、2018年から本格的に使い始めた施工管理アプリ「ANDPAD(アンドパッド)」をそう評価する。
“受注が伸びる一方、マンパワーで施工していくことには限界を感じ、効率的に現場を管理していく方法が必要だと考えていました”
ANDPAD導入前は、各協力会社に渡す図面などの資料を選び、メールやFAXで個別に送っていたが、そうした手間は大幅に解消された。工事が終われば、協力会社から写真付きで報告が上がってくるので、社員が現場に足を運べないときでも工事の進捗を確認できるようになっている。
「受注が伸びる一方、人手は足りない状況が続いています。マンパワーで施工していくことには限界も感じ、効率的に現場を管理していく方法が必要だと考えていました。」同社住宅工事部・生産管理部取締役部長の西田武史氏はANDPAD導入の背景をそう話す。
“コミュニケーションの円滑化で、業務の効率化と生産性向上を期待”
千葉県柏市に本社を置く広島建設は、注文住宅、不動産、特建事業の3分野を柱に事業を展開している。主に千葉県の東葛・京葉エリアと東京都・埼玉県の東部エリアで、年間約600 棟を手掛ける。約250人の社員のうち現場監督が約50人を占める。
受注が伸びるなか、頭を悩ませるようになったのが業務にまつわる負担増だ。社員は、事務作業や顧客対応などで多忙を極めていた。工事の進捗確認や写真撮影のために、こまめに各現場をまわることも重い負担だった。即戦力の人材確保は簡単ではない時代だけに、社員1人ひとりが担う業務の効率化が必要になっていた。
もう1つの課題が、コミュニケーションの円滑化だ。煩雑な資料の作成・整理・手配など、社員は協力会社との連絡に多くの時間を割く必要があった。
協力会社同士のコミュニケーションも対策が必要になってきた。昔のように現場を取り仕切るベテラン大工に伝えれば、まわりの職人が阿吽の呼吸で動いてくれた時代ではない。協力会社が増えたこともあり、互いを知らない会社同士が同じ現場で連携しなければならないことも多くなった。
こうした課題の解決に向けて、同社が着目したのがANDPADだ。「協力会社も含め、1棟の工事に関わるすべての工事関係者が、1つのアプリで情報を共有して円滑なコミュニケーションを取り、業務の効率化や生産性の向上につながることを期待しました」と砥綿氏は振り返る。
“完了報告などの運用ルール、壁内写真は工事管理の証拠にも”
広島建設では約250社の協力会社にANDPADを使ってもらっている。実際の運用に当たっては、工事完了の時点で写真付きで報告するなど一定のルールを設けている。水道や電気のように完成後、壁内に隠れてしまう設備工事でも、配線・配管の接続状況や、水圧試験の様子などを写真で残してもらう。こうした資料は、工事過程での確認だけでなく、適切な工事管理をしていることを建て主に示す証拠にもなる。
「導入から1年が経ちましたが、各社が使いこなすまでにはある程度の時間がかかります。しかし、使いこなせるようになれば業務量は改善されますし、生産性もより高まることでしょう」と西田氏は話す。
日経ホームビルダー2019年12月号掲載