不二電気工業株式会社のご紹介
1955年設立の不二電気工業株式会社(本社:熊本市)は、主に鉄道電気設備や交通信号機、官公庁施設の電気工事を手掛けている。いずれも一般的な住宅や建物の電気設備工事とは違い、特殊な技術が必要となる。また、近年は光ファイバーによる次世代ネットワーク構築関連の工事、携帯端末の無線中継基地局の建設と保守点検など、新規分野へも積極的に進出している。営業エリアは地元・熊本県を中心に、一部県外もある。
社員は約100人、そのうちANDPADを主に使用しているのが大手通信会社の携帯基地局工事を手掛ける無線建設本部で、約40人である。基地局の案件だけで年間300件程度。2023年度は250件ほど追加案件があり、少なくとも500件以上となる見込みだ。
そんな同社では、22年からANDPADの施工管理と黒板機能を利用している。事業拡大の中、主に情報共有、写真管理、黒板管理の三つで課題が出てきた。それをANDPAD導入でどのように克服していったのか、無線建設本部の出田様、事務担当の阪本様に話を聞いた。
写真管理に費やす時間が短くなり、チャット機能で情報共有も改善
同社ではANDPAD導入以前、発注者の大手通信会社からクラウド管理ソフトで情報共有された図面などの資料や、現場施工班が現場で撮影した写真を、事務担当が自社サーバー内へ案件ごとにフォルダを作成し、データの移行作業を行っていた。
写真については、現地調査だけで少なくても1案件当たり200枚以上、工事中は40枚以上を撮影。ビルの屋上に基地局を建てる場合、建物の規模が大きければ現地調査だけで1案件当たり1000枚以上、工事段階では着工から追加工事を含めて2000枚を超えることもある。
以前は、写真を年度ごとに基地局の名前を付したフォルダを作成し、その中で図面と写真を別々のフォルダで管理していた。そのため、フォルダは数百個に上っていた。事務処理担当のスタッフが別の担当者に変わることがあると、新しい担当が複雑なフォルダ構成を把握・理解して作業に慣れるまで時間がかかる状態だった。また、データの検索方法などを伝授するための時間も割かれていた。
ANDPAD導入後は、現場施工班の担当者ごとに写真を各自格納するようにしたことで、リアルタイムで素早くチェックできるようになった。そのおかげで事務担当スタッフも簡単にデータ整理や検索ができるようになり、作業に慣れる時間が短くなり、関係者との打ち合わせもスムーズにできるようになった。
他にも、例えば同じ基地局でシステムを更新するといった追加工事が発生した場合、紙ベースの図面だけだと前回どんな工事をしたのか履歴が不明な部分があり、再調査に時間を要することもあった。それがANDPAD導入後は、写真と図面を突き合わせて過去の状況をすぐ把握できるようになり、再調査する部分を限定できるようになった。こうして無駄な時間が削減され、施工品質の向上にもつながっている。
同社は無線建設本部だけで10班体制(1班あたり3~4人)で動いているため、事務所と現場での情報共有に遅れや漏れが起きていた。
毎日朝一番、作業開始前に、現場施工班へ「一斉周知」という形で注意事項などを共有する時間を設けている。そこで作業に必要な事項が記された書類に記入したり、安全対策のために義務付けているフルハーネスを着用して、専任監視員に確認してもらった上で作業に入る。
以前は、フルハーネスの着用姿や記入した書類をデジタルカメラで撮影し、メールやクラウド管理ソフトで事務所に送って共有していた。そのため、フルハーネスの写真確認が翌日になったり、書類の不備の指摘を現場責任者に電話で伝えるなど情報共有が後手に回り手間もかかっていた。
それがANDPADのチャット機能により、フルハーネスの写真を送ったり、書類の不備があればすぐに赤字で修正した資料を送り返してもらうなど、事務所と現場の情報共有がリアルタイムにできるようになった。「すべての関係者とコミュニケーションが素早くかつ密になり、情報共有の課題がかなり解消された」と出田様は話す。
書類管理の時間を減らして業務改善し、紙の使用量も削減
書類については、以前は必要なデータを紙に出力し、大型ファイルに綴じ、そのファイルを各現場担当者が持ち歩いていた。ファイルは通常で厚さ6センチ、資料が多いときには厚さ10センチに上っていた。
そのファイルが10班分、1班当たり4冊必要で、普段は事務担当の1人がおおむね2〜3日ほどかけて作成していた。年度後半になると繁忙期に入り、班数が2倍に増えることもある。その分、また新たなファイルが必要となり、事務担当からもう1人応援に加わり、手分けしてファイルを作成していた。
資料の入れ忘れがないよう、事務担当2人でダブルチェックしていたが、万が一「この資料がない」と現場施工班から指摘を受けた際は、作業前日までに、事務所へわざわざ取りに来てもらったり、コンビニのネットプリントを利用して渡すなど、無駄な時間と手間が発生していた。さらに修正前の図面など、古いデータのファイルを使っていたケースもあった。
それがANDPADによるペーパーレス化により、現場施工班向けの出力準備がなくなり、事務担当が1人で済むようになった。そのため、「もう1人が別の業務に時間を当てられるようになるなど、業務効率の改善につながった」と阪本様は話す。図面の修正もリアルタイムで反映されるようになった。資料のデジタル化により、現場に持ち運ぶのは、建築確認済みの表示板など現場の掲示物だけで済み、ファイルも薄くなって紙の使用量が10~20%削減された。
他にも、以前は移動経路を紙で印刷して渡していたが、ANDPAD上で現場の地図が確認できるため、現場施工班に基地局の場所を教えるのが便利になった。基地局は山の中にあるケースもあり、現場担当者が行き先で迷うこともあったが、今はスマホで簡単に位置を確認できるため、それがほとんどなくなった。駐車場などの周辺環境の確認も現場施工班が事前に把握できるようになり、事務所から細かい指示を出さずに済むようになった。
初心者でも黒板機能を使いこなし、写真台帳の作成が効率化
発注者に提出する写真台帳については、発注者が指定した表計算ソフトのテンプレートがあり、そこに黒板別に現場写真を貼って作成している。
以前は黒板の種類を施工前、施工中、施工後の3パターンに分けて、事務担当が黒板別に現場写真を表計算ソフトに貼っていたが、その現場写真がどの工程と合致するか判断できる人でないと作業が難しかった。要は、経験値がある程度必要で、属人的だったのだ。写真のサンプルを渡して似たような写真を貼ってもらっていたが、貼り間違いで差し戻されることもあった。そもそも、そのサンプルを探す手間もかかっていた。
ANDPAD黒板を導入したことで、今では現場を熟知した現場施工班にANDPAD上で現場写真を仕分けてもらえるようになり、写真台帳の作成が楽になり、ミスも減った。
黒板の種類も、施工前、遠景、近景、配管、電源、装置、受電盤、基礎など200近い項目に分けた。ANDPADで「写真なし」と検索すると、撮影していない箇所が検索できるため、不足分も容易に把握できるようになった。また、20ページにわたるマニュアルを用意し、月1回の連絡会で黒板機能の使い方を説明するなど、撮影漏れの防止策を講じている。
これらの対策により、初めて台帳を作成する、あるいはまだ作成に慣れていないような初心者でも簡単に作業ができるようになった。
こうして情報共有、写真管理、黒板管理の課題を克服してきたが、思わぬ副産物もあった。
同社では文系出身者も多いが、ANDPADに蓄積された実例を基に、工事に関する技術共有に活用している。また新卒社員を採用した際、各部署を回り全体の仕事を把握してもらう時間を設けているが、ANDPADなら写真や図面を見せながら基地局のイメージを持ってもらいやすいため、教育ツールとしても大いに役立っている。
今後もさらなる受注増の可能性がある中で、業務効率化や技術の伝達は必須だ。企業としての信用力を高めるためにも、同社はANDPADのさらなる活用方法を模索している。