建築未経験で入社した新卒の育成が課題に
新卒採用に注力し、次世代を担う人材の育成に積極的に取り組む同社は、社員の平均年齢が32~33歳、社員の半数が20代で構成されている業界内でも稀有な工務店だ。社長が20代の新卒社員にも隔たりなく意見を求めるフラットな社風が魅力となり、若い世代が次々とジョインしている。
「社長が『何をするかより誰とするか』を大事にしているので、学歴は不問です。当社でどういう仕事をしたいか、社風に合うかを重視して採用しています。」(山本氏)
人物重視の採用方針のため、新卒採用者のうち、建築学科出身者は2~3割程度。先輩の背中を見て仕事を覚える昔ながらのやり方は、経験や知識がない社員には難易度が高い。しかし、新人に一から仕事を教える研修は以前の同社にはなかった。人材育成の仕組みがないまま、若手中心の体制となったことで、従来の業務フローでのミスやクレームが多発し、一時的に事業の根本にも歪みが生じるまでに。また、同社のメインターゲットである30代半ば世代の人口が商圏内で減少し、手詰まり感も出てきた。
20代の感性を活かした規格住宅ブランドをスタート
そこで同社は、1年かけて規格住宅ブランド『grit(グリット)』を生み出す。20代の社員が多く活躍している点を強みに、商圏内で増加傾向にある20代をターゲットに設定。若手が良いと思うものをプランの細部に反映し、商品化を進めた。
「『モノ』売りから『コト』売りへ移行し、次のキーワードになるのが『感情』だと考えています。自分たちの好きなものを詰め込んだ家だからこそ、若手も感情を込めてお客様に説明できる。お客様も、同世代がいきいきと働く姿に感情を動かされるのではないかと考えました。」(松川氏)
商品化にあたっては、高知県で規格住宅を手がける工務店の協力を得て研修を実施。広告やSNS運用にも、若手の意見を反映している。
「研修で得た学びをもとに、一通り現場を経験して体系的に理解を深めることができました。」(谷口氏)
ANDPAD社内タスク管理で業務を標準化し、経験値の少なさをカバー
20代の感性を活かしたブランドの立ち上げによって、新規顧客層の拡大を狙った同社。規格住宅においては、「生産性が高くて後戻りがない業務フロー」を構築することが成功のキーポイントと考え、外出先からでも効率的な運用ができるANDPADを導入した。
「決め手になったのは、ANDPAD社内タスク管理です。家づくりのステップを順に積み上げる方が、経験のない人は体系的に理解できると考えました。マイルストーンを入れて、タスクとその目的を明確化し、行動を具体的に示せば、経験値の少なさを補えます。」(松川氏)
「ANDPADでタスク管理を行うようになってから、何が残っているかがすぐに確認できるようになりました。手戻りや手配・準備ミスなど、トラブルを抑制するリスクヘッジとして使いたいですね。」(山本氏)
従来の注文住宅と『grit』の規格住宅を合わせた着工棟数を、現在の年間30棟から50棟まで伸ばしていく計画を立てている同社。世代を超えた社員同士の関係性を育むために、新卒採用も継続していく構えだ。70年以上の歴史を持つ同社は、これからも時代に合わせてしなやかに進化を続けていく。
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