労働時間を実働5~6時間短縮化
トップガーデン(東京都福生市、飯野篤司社長)は、2021年の設立から2年で売上高5億7000万円と急成長を遂げている外構・エクステリア会社だ。なぜ、設立間もない外構専門会社がここまでの成長を遂げているのか?業務の効率・改善に成功した同社のノウハウとDX導入について取材した。
プランナー3名で1案件に対応
同社は、1つの案件に対して、営業1名にプランナー3名のチーム制で提案を行う、いわゆるプロジェクト形式で案件を進めている。顧客は、3名のプランナーから提出されたプランから好きなものを選択できる。このプロジェクト形式の仕組みは、コンペのようにプランを選択できることで顧客満足度が上がるだけでなく、プランの平準化や品質向上、人材育成など、さまざまなメリットを生み出している。
以前は、営業からプランニング、提案、契約、施工管理に至るまで、1案件に対し1名の担当者に任せていたが、プランの品質レベルに差が生じていた。特に若い新人社員は、1人で案件に向き合っていては、行き詰まることも多い。縦割りにして、黙々と闇雲に1人で作業するよりも、チームを組ませて、メンバーで互いにアドバイスをするなど、横断的なやり取りをしながらプランニングを進める方が、社員自身の成長にもつながっていく。また、プランの品質レベルも平準化され、全体的な底上げが図れたことも大きな利点だ。
スピーディーなプラン提出が可能に
もう1つの利点として、顧客へのプラン提出に必要な日数の短縮化が図れる点だ。通常の外構工事では、問い合わせを受けて顧客にヒアリングを行ってから、提案までの日数が短く限られている。というのも、新築を請け負った住宅会社では、外構工事まで請け負わないことが多いため、竣工のめどが立ってから外構工事会社を探す顧客も少なくないという現状があるからだ。一般的な外構会社であれば、ヒアリングからプラン提出までに1週間から2週間を要する。当然、見積書のみでは、施工イメージがわかないので図面やパース図も必要になってくる。2週間後のプラン提出から修正を加えている間に、引き渡し、引っ越しの期日が迫り、結局妥協しながらプランを進めていくしかない。
ところが同社では、3名のプランナーがプロジェクトで動くことにより、早ければその日のうちにプランを提出できる。1人で動いている場合は、当然抱えている現場に行く必要もあり、プラン作成に費やす時間を確保できない場合もあるが、プロジェクトで動くことで、プランニング作業に集中することができる。スピーディーに初回プランを顧客に提出することで打ち合わせの回数を増やし、顧客の要望を漏れなく引き出すことができることで、より顧客の抱いたイメージに近いプラン・施工を実現することができるのだ。
共有機能で新体制をフォロー
この仕組みは、同社の差別化のポイントとなっている一方で、チーム間での情報共有が難しくなるという問題が発生する。そこで、同社ではプロジェクト制に社内の仕組みを変えるタイミングに前後して、クラウド型建設プロジェクト管理サービス「ANDPAD」の導入を開始した。
ANDPADを導入したことで業務の改善化に成功。無駄がない分施主へのサービスにあてられる時間が増えた
縦割りの担当制からプロジェクト制に変えたことで、最も懸念されていたのがチーム間での情報のやり取りだった。
「確認をしなくても履歴を見れば、現状を確認できることが一番ですね。チーム制にしたことで生じてしまう、確認のための伝言ゲームをしたくなかったのです。投げかけた質問に対しての回答が別の質問で返ってくるような効率の悪いことはぜずに、常に一方通行で情報を管理したかった。そのために皆でアクセスできるツールを導入し、無駄な確認作業に費やす時間を減らしたかったのです」(飯野社長)
業務の効率化・改善化を図る中で、同社では、ANDPADの施工管理やチャット、図面などの情報共有機能だけでなく、見積作成、実行予算管理ができる引合粗利管理機能や受発注機能も同時に導入を開始した。見積作成は、もともと別のツールを使っていたが、現場管理、見積もり、受発注、請求関係までできるひとつのプラットフォームを使えば効率アップが図れるという考えが飯野社長の根本にあった。
「いくつか探した中で大手さんも活用しているシステムということもあったのと、自分たちが実現したい内容がサービスに網羅されているということでANDPADを選びました」(飯野社長)
DX化と新体制でエリア拡大も実現
施工管理の活用によって、労働時間も実働5〜6時間まで短縮化が図れ、フレックスも定着。職場環境と労働時間は大幅に改善した。また、業務効率化から生まれた時間を活用し、施主へのサービス提供に時間を費やせるようになり、顧客満足度の向上が図れているのに加え、オウンドメディアやECサイトの開設にも着手し始めている。また、見積作成においては、ANDPADにある同社見積もりのテンプレート利用による見積業務の型化によって、新人営業でも短時間でミスなく見積書を作成することができるようになった。今は、10月からのインボイス制度開始に合わせ、受発注のシステム稼働の準備に備えているところだ。
以前のような対面での打ち合わせも、オンライン会議での打ち合わせに変わり、契約も電子契約でスムーズに進行している。ANDPADをはじめとしたデジタルツールの活用とプロジェクト制の定着がさらに加速すれば、同社が将来展望として挙げている営業エリアの拡大も容易だろう。
施工管理の機能を活用すれば、現場に直接行かなくても、進捗状況を把握し指示・管理ができる、プロジェクトメンバー間での確認も容易になる
(リフォーム産業新聞(2023/9/25発行)に掲載記事の転載)