株式会社三興のご紹介
1947年の創業より70年以上にわたって、建築工事に付随する金属製品の設計・製作・施工を手がけている株式会社三興様。同社が取り扱う金属製品は、内外装パネルや手すり、ルーバー、案内板・看板、ベンチ、照明、カーテンレール、トイレットペーパーホルダーなど多岐にわたる。
こうした大小さまざまな金属製品を、トータルに提供できる体制を整えていることが同社の強みだ。特定のジャンルに絞って製品を提供する会社が多いなかで、「お客様の期待にできる限り応えたい」と幅広い要望に対応。その真摯な姿勢に、大手ゼネコンや地場ゼネコンなど、多くの取引先が信頼を寄せている。現在は、大阪府大阪市の本社を拠点に、東京・福岡にも支店を置いて事業を拡大中だ。
同社がANDPADを導入したのは2022年。大阪本社では、大阪駅周辺の再開発や万博開催に向けたリニューアル工事が活発化し、案件が増加している時期だった。今回は、株式会社三興 代表取締役社長 山本様、総務部 西川様、営業部 矢野様にインタビューを実施。ANDPAD導入の経緯や導入後の変化について、詳しくお話を伺った。
金属製品を製作する協力工場、施工を担う職人との情報共有が課題に
同社が携わる案件は、ビル、マンション、駅舎、商業施設、病院などの大規模物件が中心だ。大阪本社では、大阪駅や梅田駅、あべのハルカス、人気テーマパークといった誰もが知るような物件の工事にも金属工事の専門会社として参加している。
同社が製作・施工を手がける金属製品は、ほとんどが建築物に合わせた一点ものだ。同社の営業担当者は、まずゼネコンから提供された設計図をもとに現場で打ち合わせを行い、設計担当者と協力して金属製品の設計図や施工図を起こしていく。その後、約30社の協力工場のなかから最適な工場に製造を依頼する。取り付け工事は、約80名の職人に発注をして現場管理を行っていく。
営業担当者は、「設計担当者」「協力工場」「施工を担う職人」の間をつなぐ役割を担っているのだが、この「関係者間での情報共有に課題があった」と山本様は語る。
「現場でトラブルが起きた時や、お客様からの連絡事項を伝えたい時に、営業担当者は、協力工場と職人、設計担当と3者にそれぞれ連絡をしなければならず、非常に手間がかかっていました。連絡手段も、電話やメール、FAX、メッセンジャーアプリとバラバラで、連絡に行き違いがあったり、『言った・言わない』も発生していました。また、過去に送ったメールの図面を職人さんが最新図面だと勘違いしてしまい、古い図面のまま施工が進行してしまう事態も起きていました。」(山本様)
そこで、同社は、まずメッセンジャーアプリのビジネス版を導入し、社内での情報共有を開始した。運用は順調に進んでいたが、「社員だけではなく、協力工場や職人も巻き込んだプラットフォームが必要なのでは」と感じた若手社員が、ANDPADの導入を提案したという。
「メッセンジャーアプリも便利ではありましたが、協力会社との情報共有にも使えるツールが欲しいと常々思っていました。そんな時にちょうどANDPADから提案をもらい、詳細を聞いた上で社長に導入を提案しました。」(西川様)
若手社員が利用を推進、地道に働きかけを続けた
西川様の提案を受け、山本様はANDPADの導入を決定。ただ、利用が浸透するかどうかは半信半疑だったという。
「当社の社員は若手が多いので、社内では問題なく利用できるだろうと思ったのですが、職人さんの反応が心配でした。金属工事の業界は、まだ手書きの請求書が送られてきたり、FAXも当たり前のように使われているアナログな業界ですから。」(山本様)
そこで山本様は、ANDPADの利用浸透を図るため、年間で取り組むテーマのひとつに「ANDPADの利用浸透」を掲げた。社内会議において、メッセンジャーアプリや電話での連絡はなるべくせず、ANDPADを介して情報をやりとりするルールを決め、あわせて「協力会社に活用を促して成果を上げた社員を表彰する」ことも発表し、社員のモチベーションを高めた。
「経営者から頭ごなしに『これを使え』と言われても、職人さんたちも戸惑うと思ったのです。ですから、デジタルネイティブである若手の営業担当者から丁寧に説明をしてもらい、慣れていっていただくのが一番の早道だと考えました。」(山本様)
では、若手社員はどのように協力会社に向き合っていったのか。
「一度使っていただければ便利だと分かるので、例えば『この資料を持ってきて』と連絡がきたときも、『ANDPADに格納しているから見てくださいね』と声をかけ続けました。スマートフォンの操作ができればANDPADは問題なく利用できますので、職人さんたちも一度使えば、そのまま使用してくれるようになりました。一度使ってみた職人さんから『不便になった』と言われたことはありません。」(矢野様)
「私も現場で打ち合わせをする際に利用をお願いしたり、当社に立ち寄っていただいてマンツーマンでレクチャーをしたりしました。ANDPADのカスタマーセンターも電話をかければ丁寧に返答してくれるので、私も協力会社さんも活用しています。」(西川様)
協力工場と職人が直接やり取りすることで、対応スピードが上がり工期が20%短縮
若手社員たちの地道な働きかけが実を結び、導入から1年ほどでANDPADの利用はかなり浸透してきたという。現在では、受注後に営業担当者がANDPADに案件を作成し、設計担当者・協力工場・職人を招待した上で、図面や資料、注文書などを格納して情報を展開している。
「営業担当者は、5〜6件の小規模現場を同時進行で担当することも珍しくありません。これまでは、どの情報がどの案件のことなのか把握するのに時間がかかっていましたが、今は、ANDPADに現場ごとの情報がまとまっているので分かりやすくなりました。チャットにメッセージを入れれば最新情報を全員に共有できるので、伝言ゲームのように連絡を取りあう必要もなくなりましたし、最新の図面もすぐに確認ができます。」(山本様)
また、金属製品を製作する協力工場と、施工を担う職人が直接やりとりできるようになったことも大きな変化だという。
「これまでは当社の営業担当が間に入って連絡をしていましたが、製品の不具合や納期の問い合わせについて、協力工場さんと職人さんがチャット上で直接やりとりしてくれるようになりました。当社が休日であっても双方でやりとりをしてくださって、ANDPADを開いた時には問題が解決していたこともありました。連絡の手間が省けた分、対応がスピーディーになり、工期が20%ほど短縮しています。」(山本様)
「協力工場からの問い合わせに対して、職人さんが『こうやれば納まるよ』と直接チャットで答えてくれることもあって助かっています。協力工場さんや職人さんから日々発信されるリアルな情報を吸収できるので、若手社員や設計担当者も勉強になっていると思います。」(矢野様)
日報を活用した人工管理で請求漏れも防止
同社では、当日現場に入った人数や作業内容、残業の有無などを記入するフォーマットを作り、毎日報告を上げてもらうフローも構築した。社員からも、ANDPAD経由で直行・直帰の報告を受けているという。この報告機能によって、正確な人工管理も可能になった。
また、ANDPADで全案件の進捗状況が確認できるようになったことで、職人の稼働管理にも改善が見られているという。
「以前は、社員が個々に協力会社さんに依頼していたので、すでに予定が入っている職人さんに何度も『来週入れますか?』と電話をしてしまったり、逆に職人さんが空いていたのに依頼できなかったりする事態が発生していました。今は、ANDPADですべての案件の進捗が確認できるので、『この人は再来週なら数日依頼ができそうだ』と判断できるようになり、協力会社さんの手配がスムーズになりました。」(山本様)
山本様は、現場に関わる情報をANDPADで一元管理できるようになったことで、工事関係者間のコミュニケーションが改善し、生産性が上がったと実感されている。では、今後どのようにANDPADを活用していくか展望を伺った。
「ANDPADの利用浸透によって、社員の負担軽減と残業時間削減にも効果が見えはじめています。また、iPadで図面を確認する社員も増え、ペーパーレス化も進んでいます。ただ、まだ協力会社さん全員が利用してくださっているわけではないので、今後も地道に働きかけを続けていきたいですね。また、今後は九州支店と東京営業所での運用も進めて、拠点間で情報連携できる仕組みをつくり、さらに生産性を上げていきたいと考えています。当社は、業界内でも若手社員が多く活躍している会社ですので、若手社員にDXをリードしてもらい、他社との差別化を図っていきたいです。」