株式会社イニシオ・ライフサービス様のご紹介
住宅建築を手がける田中住建株式会社(兵庫県伊丹市)の賃貸管理、修繕工事部門を分離する形で、1996年に株式会社イニシオ・ライフサービス様が設立された。大阪、兵庫が主な営業エリアで、「この街の暮らしとともに。」というグループ理念のもと、社員数17名でマンションやアパートなどの建物管理、賃貸仲介などを地域密着型で手がけている。入居中のメンテナンス工事が一番多く、空室のリフォーム工事(原状回復工事)、外壁工事、近隣の一般住宅のリフォームなども担う。
メンテナンス工事は1日3件で月100件弱、リフォーム工事は月30件超、外壁工事は年間4棟ほど。管理棟数は80~90棟、管理してない物件の修理をするケースもあるため、実質100棟近くの物件で様々な工事がある。年間工事数は小さな工事、総合点検なども入れると年間1000件前後に上る。
管理棟数が年々増える中、従来の方法では管理物件に目が行き届かなくなるケースも出てきた。そんな中、施工の改善と効率化を図るためANDPADの導入を決めた。今回、取締役工事部長の藤井隆様に、ANDPAD導入に至った経緯と導入後の成果について話を伺った。
機会損失が減り、社員間の引き継ぎもストレスなく対応
株式会社イニシオ・ライフサービス様では、工事部が管理物件の工事全般を担当しているが、2~3年前まで1人当たり20~30棟の物件を抱えていた。当時4人いた工事担当者のうち、ベテラン社員が退職して3人となり、1人当たりの管理棟数が増えた。その後、大工の専門学校卒の新入社員を1人増やしたが、当然、不動産管理は未経験のため、3人で70~80棟のシェアをして、残りを新入社員で担当していた。
1人当たりの管理棟数が増えたことで、担当者がキャパオーバーになる時期もあった。工程管理ができていると思っていても実はできておらず、施工品質に悪影響を及ぼすこともあった。本来なら工事完了後、すぐに現地確認して入居者募集をかけるのが理想的だが、管理に手が回らなくなり現地へ行くタイミングが遅れれば、その分だけ募集も遅くなり機会損失につながる。
代表取締役社長の大村様が、そうした改善点をクリアするためのツールを探す中で、ANDPADのことを知り、2020年に導入、翌年から本格運用を始めた。
空室リフォームについては、退去の話が出た時点でANDPAD上に案件を作る。その中で退去立ち会いとリフォーム工事を担当する協力会社を選定し、案件メンバーに入れる。イニシオ・ライフサービス様の工事担当者が退去の必要資料をアップして、協力会社がその資料を見ながら入居者と立会日を調整し、同時にANDPAD内に立会予定日を記す。立ち会い後は確認書の写真を撮影し、ANDPADにアップして退去手続きが完了となる。
ANDPAD導入以前は、資料は基本的にメールでやりとりしていたが、メールが埋もれて連絡漏れなども年間に数件程度発生していた。また退去資料を協力会社がメールからプリントアウトしていた。写真については、工事担当者が個別に協力会社とSNSでやりとりするなど、会社全体で情報共有できていない部分があった。
また、その物件の担当者が病気などで休むと誰も状況が分からないという課題もあった。他の担当者に任せるとき、現場で作業する協力会社に、すべての情報を伝え、当日休んだ担当者に連絡を取る必要がないようにしていた。しかしながら、何かしらの相談事が出てくることはよくあり、仕事を休んでもいつでも電話が取れる態勢にしていた。
ANDPAD導入後は、連絡漏れやプリントアウトの手間がなくなり、情報共有も楽になった。入居者募集の機会損失も減った。また、他の担当者の現場を引き継いで対応しないといけないときでも、ANDPADを見れば案件に関するやりとりが把握できるため、社員間の引き継ぎもストレスなく対応できるようになった。
工程、資料などの情報共有が容易になり縦割りの垣根がなくなった
リフォーム工事において、材料の納期、職人の手配という観点から最も肝要なのが、風呂やキッチンなどの住宅設備だ。なぜなら発注をかけても生産の都合などですぐに入手できず、納期が予想外に遅れることもあり、当初予定していた工程が間延びすることがあるからだ。
住宅設備に関しては、材料の納品と取り付けの施工を同時にする。商品が1週間から10日ほどで納められたとしても、それを取り付ける職人の手が空いていなければ施工できない。職人の手配は発注から2週間かかることもあれば、1カ月かかることもある。住宅設備の工事日程が決まらない限り、床の張り替え、壁のクロスといった内装会社の工事日程も決められない。
藤井様の場合、ANDPAD導入以前は、そのスケジュール調整をメールや電話でしたり、現場が重なるときは個人的に工程表を作ったりしていた。それでも各現場で変更が重なると、詳細が分からなくなるケースもあった。
ANDPAD導入後は、住宅設備工事の予定をチャットに書いたり、アプリ内の工程表を変更したりしておけば、内装会社がそれに合わせてANDPAD上で調整してくれるようになった。例えば、もともと内装工事が退去日から1週間後に入る予定だったのが、風呂の設置が1カ月後になると分かれば、その内装会社をすぐに別の工事に組み換えることもできる。
ANDPAD導入前は住宅設備の材料の納品、施工までに2週間程度、間延びすることもあったが、導入後は工事によって1週間程度、間延びを短縮できるようになり工事のタイムラグがかなり減った。内装会社や住宅設備会社もチャットや工程表を確認できるため、リアルタイムで日程調整をしやすくなったからだ。各々が工程表を紙で印刷する手間もなくなった。
またANDPAD導入前は、現場担当者が1人で内装会社や住宅設備会社と個別にやりとりしており、完全な縦割りになっていた。だが導入後は写真や資料、工程表などをシェアしているため、お互いに相談し合ったり、工程表を一目見れば進捗状況が分かったり、チャットだけでも他の現場担当者や協力会社が、どんな流れで作業を進めているのか、おおむね把握できるようになった。これによって縦割りの垣根がなくなった。
部屋の間取りを現在のトレンドに合わせて変えるため、リノベーションをすることもある。そんなとき、間仕切りの解体工事だけ先に入れるかどうか、チャットや工程表を見れば「今は内装工事が入っているから無理。5日くらいで終わるからその後ならOK」といった連絡を取りやすくなる。要は他業種との工程を調整しやすくなったのだ。これにより、ANDPAD導入以前と比較して、工期を1~2日ほど前倒しできるケースも出てきて、工事全体の効率化を図れるようになった。
無駄な時間を削減し、協力会社との関係強化と人材の育成へ
協力会社とのコミュニケーションが密になったおかげで、無駄な時間の削減もできた。例えばリノベーションの際、ANDPAD導入以前は床、壁、クロスなどすべての協力会社を現場に呼んで細かく打ち合わせていた。他にも職人が入るタイミングで工事担当者が現地へ行き、きちんと打ち合わせ通りできているかなどをチェックしていた。
ANDPAD導入以降は、事前に情報共有できるため、わざわざ全員呼んで現地で打ち合わせしなくても、部屋の写真、部材の数量や寸法などをANDPADに載せておけば、各社で確認してもらい施工を円滑に進められるようになった。そのため工事担当者も協力会社も、現場へ行く回数を減らせる環境ができた。
雑工事など小さな作業については、藤井様など工事部の人間が自ら行うこともある。ANDPAD導入以前、空き時間に作業しようと現場へ行くと、先に内装会社が工事しており、雑工事ができないといった空振りも多々あった。導入後は案件ごとの工程をすぐに把握できるため、そうした空振りがなくなり、無駄なく次の現場へ行けるようになった。その意味で「目に見えない経費があきらかに減っている。月全体で半日間分くらい無駄な時間がなくなりました。そこまで多くないと思われるかもしれませんが、業務が多忙を極める中、半日あればできる仕事はたくさんあります」と藤井様は話す。
ANDPAD効果で浮いた時間を使って、より多くの現場の管理をしっかりしたい、小さな現場の工事をもっとしたいという考えから、今後は自前でも施工できる体制づくりをしている。工事部の新入社員の牛田さんは大工の専門学校で知識、技術を学び、現在は、空室リフォームの現場監督の他、解体工事、壁の造作、グループ会社の田中住建が手がける新築木造住宅の棟上げなど、様々な経験をしてもらっている。そうした色々な職種に対応できる人材を育成したいと思えるようになったのも、ANDPADで情報共有がしっかりでき、無駄な時間を削減できたからだ。
ただ課題もある。もともとは空室リフォームの管理のためにANDPAD導入を決めたが、今はどちらかといえば入居中の部屋のメンテナンスで活躍している傾向がある。なぜなら、職人によってはまだ操作に慣れていない人もいて、リアルタイムで現場写真をアップできる人、できない人がまちまちだからだ。
「そうした人たちには使い方を教えたりしながら、徐々にリアルタイムで写真をアップできる環境を整えていきたい」と藤井様は意気込む。ANDPADのポテンシャルを最大限活かし、協力会社との関係をより強化しながら、抜かりなく物件管理を行うことを目指している。