東洋シポデック株式会社のご紹介
1972年設立で創業60年以上の歴史を持つ東洋シポデック株式会社は、主に分譲マンションなどの大規模修繕工事を中心に、外装改修工事、セキュリティ関連工事といった事業を展開している。創業当初は塗装業者として活動していたが、改修工事の需要に応える形で事業を拡大してきた。大阪市に本社を置き、京阪神(京都、大阪、神戸)地域を中心に、奈良や和歌山など関西地域全般が主要な営業エリアだ。社員数は40人(うち技術者23人)で、協力会社として約50社が参加する「東親会」との連携体制を構築している。
年間の施工件数は、棟数換算で150~180棟にのぼる。取引先はマンション管理組合、管理会社、大手ゼネコンなど民間が中心で、公共工事は行っていない。会社の基本方針として「丁寧な仕事」を重視している。
ANDPADを導入したのは2024年で、導入の主な目的は、業務効率化、働き方改革、クレーム回避だ。具体的には、非効率な事務作業時間の短縮、写真保存や台帳作成時の負荷軽減を目指している。また、施工記録やエビデンスを蓄積し、顧客に適切に示すことで次回のリピート受注につなげており、現在のリピート率は全体の約4割に達している。今回、同社がANDPADを使ってどんな取り組みをしてきたのか、河角様(執行役員 工事部)、黒田様(工事部 部長)、久米様(工事部 次長)、増田様(工事部 所長)、津隈様(工事部 事務)、廣田様(営業部)に話を聞いた。
顧客情報や写真の管理に手間がかかっていた
同社の工事は、営業部が顧客から受注し、見積もりなどを行い、工事部に引き継ぐ。工事部では、設計や現場監督の選定を経て、工事を開始する。工事完了後は、アフター部門に引き継ぎ、アフターフォローを行うという流れである。
ANDPAD導入前は、設計図書や見積書、現地調査資料、施工写真などのデータは、各担当者が共有ネットワークに保存するのが基本だったが、個人PCだけに保存されているケースもあった。また、「各担当者でラベリングが統一されておらず、情報管理が煩雑で共有がスムーズではなく、必要な情報を探し出すのに時間がかかっていた」と河角様は話す。
具体的には、営業段階の情報が個人PCに保存されていると、途中で顧客情報や過去の仕様書などが必要になった際、担当者にわざわざ確認するといった手間が発生していた。「現場ごとの仕様変更も多く、最新版の情報をリアルタイムで把握するのが難しいという課題もあった」(黒田様)。また、途中で担当者が変わると、情報がどこにあるか分からなくなり、さらに時間を要することもあった。
現地調査や施工途中の写真の保存についても同様だ。当時は、デジカメや携帯電話で写真を撮影し、会社に持ち帰ってからPCに取り込んでいた。物件によって写真の枚数は大きく異なるが、大規模物件では数万枚に及ぶこともある。例えば、50戸程度のマンションでも、少なくとも1000枚以上の写真を撮影し、最大で2500枚程度になることもある。案件によっては、その数十倍以上の枚数となる。
これらの写真は、物件ごとにフォルダ分けされていたが、必ずしも現場監督、施工会社など、各人が同じ目線で整理していなかった。また、「撮影枚数が多いため、必要なものとそうでないものを区別し、写真台帳に掲載する作業に時間がかかっていた」と久米様は話す。
右から、河角様、黒田様、久米様
情報の一元管理で探索時間が大幅に削減
ANDPAD導入後は、事務職員による定期的なチェック体制が構築され、個人頼りの五月雨式の情報管理がシステマチックに変化した。ANDPADに案件が登録されていれば、必要な情報があるかどうかを容易に確認できるようになった。営業段階の情報も工事部を含めて一元的に管理し、設計図書や見積書などの情報を可能な範囲で関係者全員が共有できる状態を目指している。これにより、営業部も工事部も同じ情報を基に判断できるようになる。
また、写真の管理については、撮影のプロセス自体は大きく変わらないものの、ANDPAD上で電子黒板を作成し、撮影と同時に黒板付き写真のデータを保存できるようになった。写真ごとに内容を記録する手間が省かれ、業務効率が向上した。「写真データの保存作業が統一され、作業員にとっても楽になった。一度覚えたら、それで作業が進められる。『作業が楽になる』と納得できる形にするのが理想だ」と増田様は話す。
その結果、体感値として情報探索の時間が70~80%削減された。ANDPADにある情報がすべてだという認識が浸透したからだ。以前は、ある人だけが情報を見つけられるといったケースもあったが、その非効率さが解消された。「各部署の情報探索に長けた職員に検索を任せきりの部分があり、その人たちの負担が大きかったが、それも軽減された」(津隈様)。この作業効率化は、従業員の満足度が高いという。
同社では、ANDPAD導入にあたり、営業用と現場監督用の2種類の同社専用ANDPADマニュアルを作成した。営業用マニュアルには、資料の保存方法や引き継ぎなど営業に関するANDPAD操作方法を記載し、現場監督用マニュアルには、日報や写真台帳、工程表の使い方など現場管理に関わる操作を記載している。以前から独自の社内マニュアルは存在していたが、あくまで個人の作業内容を説明する程度だった。しかし、ANDPADマニュアルでは、社内横断で情報を一元管理するために必要な工程が説明されている。同じマニュアルでも、その目的や位置付けは大きく変わり、社内での情報共有を促進することに大きく貢献している。
右から、津隈様、廣田様
クレーム防止のため証拠の残し方を変えた
ANDPAD導入前は、数は少ないものの、施工管理に関するクレームが発生することもあった。例えば、同社は外壁塗装において3回塗りを基本にしているが、2回目の工程が適切に行われたかどうかの証拠がない場合があった。写真が不十分だったり、施工会社によって撮影箇所が偏っていたりしていたからだ。それで、顧客から「本当に3回塗ったのか」と問われた際に、「確実に塗りました」と口頭で説明するだけでは説得力に欠けていた。
ANDPAD導入後は、写真と電子黒板を活用して、各工程を確実に記録し、きちんと証拠を残せるようになった。これにより、顧客からのクレームに適切に対応できるようになった。顧客が見ていない時間帯の塗装工事であっても、写真で証明することで誤解を避けることができ、撮影日時の記録もあるため、いつ施工したのかを明確に示せるからだ。
これを機に、証拠写真の残し方を大きく変えた。以前は工程写真のみを記録していたが、自主検査というカテゴリーを新たに設け、そこで写真を管理するようにした。本社スタッフが2週間に1度現場を清掃巡回し、抜き打ちチェックをしているが、ANDPAD導入後は情報共有が進み、チェック体制が強化された。
写真台帳を作成する手間を省くために、電子黒板を活用するようにした。これにより、施工写真だけでなく、自主検査の写真も同時に記録できるようになり、業務効率もアップした。その結果、「塗装に関するクレームは発生しなくなり、顧客満足度は向上したといえる」(河角様)。
また、「発注元への説明資料にANDPADの活用を盛り込み、受注の際に信頼を得るように努めている」(廣田様)という。競合他社との業者選定のプレゼンテーションの場でも、ANDPADを使っていることをアピールし、差別化を図っている。取引先からは「ANDPADを使っているんですか?」と好意的な質問を受けることもあり、関心の高さが伺える。
今後は、ANDPADによる図面管理も導入を検討している。図面は、すでにPDFなどのデジタルデータにしている。同社では、改修工事の際に設計図書として提供される図面を社内の共有システムにアップロードし、全員で活用している。それをANDPAD導入によって外出先でも確認できるようにするなど、さらに社内業務の改善を進めたい考えだ。
現場で写真撮影を行う増田様