業務のDXは創業間もない新規参入企業こそ早急に取りかかるべき課題だ。もともと中小企業が大きな割合を占めているリフォーム事業者だが、創業間もないリフォーム会社となればなおさら。少人数で現場だけでなく、経営も管理していかなければならない。DXを通じて、無駄な労力や時間をかけることなく、業務効率化を実現でき、創業時期から、高利益を生む体質の事業運営に舵を切ることができる。
経験がDX革命の足枷に
トモハウジング(愛知県豊田市、永田俊幸社長)は、外構・エクステリア、一般リフォーム、太陽光発電システム・蓄電池設置工事事業を3本柱としている。拠点は、本社のある豊田市と静岡市の2店舗。豊田市ではリフォーム、静岡県静岡市では太陽光関連工事を中心に展開している。2021年5月創業の若い会社ではあるものの、長年業界で活躍している豊富な経験を持つ人材が集まった、今後の成長が期待されるリフォーム会社だ。
ところが事業運営を図っていく中で、この豊富な経験が思わぬ障害となることは珍しくない。同社も例外ではなかった。前職の手法を踏襲し、それぞれが独自の方法で案件を管理し、別々の書式で見積書を作成するといった統制が取れない時期があった。そこで導入を図ったのが、現場の効率化から経営改善まで一元管理できるクラウド型建設プロジェクト管理サービスANDPADだ。
取引先からの紹介で、使い勝手の良さを知った若い社員から、自社での導入をすすめられ、活用を開始したのが、創業からまだ間もない時期だった。早速、基本機能の「施工管理」から、そして営業進捗から売上・原価まで、経営の指標となる情報を一元管理できる「引合粗利管理」、受発注業務をデジタル化することができる「受発注」機能も間髪入れずに活用をスタートさせた。
経営側も社員も業務のストレスから解放
まずは、ANDPADのシステム内にすべての案件情報を集約することから始めた。顧客情報や現場写真、図面を指定の保存フォルダに格納したことで、社内で情報が共有され、資料を探す無駄な時間が大幅に削減された。また、共通テンプレートを活用した見積書作成、原価管理、受発注までの一連の営業フローをすべてANDPAD上で実行することができるようになる。
さらにシステム導入によってもたらされた変化に、請求書発行業務の大幅短縮化と社員の意識改革がある。同社はリフォームだけでなく、外構・エクステリア、太陽光関連工事など工事の種類が多岐にわたり、年間300件もの案件を12人のスタッフで対応している。時には発注書なしで、現場が始まり、書類の手続きが後手に回ることもあった。
「経験豊富な社員には、大きな案件を任せているので、原価管理の精度が求められます。ただ、ベテランになると、後で帳尻を合わせられると過信してしまうこともあるので、そこが問題点でした」(永田社長)
ANDPADの「引合粗利管理」機能を活用すれば、予め設定した原価率をオーバーするとアラートで状況を知らせてくれる。粗利管理に限らず、現場の進捗管理においても、これまで属人的な管理となっていたことが、経営側でも把握できるようになった。
「現場写真を時系列で見ていくことで、現場の状況も手に取るように理解できるので、忙しくしている社員の手を止めさせて、報告を求めなくても済みますので、お互いに楽ですね」(永田社長)
経営側で社員の置かれている状況を理解することができれば、第一線で活躍する現場スタッフも業務の滞りや抱え込んだストレスから解放され、意識も本来向かうべき顧客への提案や、営業活動に集中できるようになる。
「私自身、水回わり・内装リフォームの経験が長いのですが、比較すると、ガーデン・エクステリア工事の方が一般リフォームよりもさらに属人的で『どんぶり勘定』の度合いが強いかもしれません。職人さんは、元請けの会社よりも、特定の社員さんからの仕事を受けているという意識が強い傾向があることも、属人化する要因の一つだと思います。未だに『一式』という見積書の表記も見かけます…」(永田社長)
リフォームだけでなく、外構・エクステリア工事も請け負う同社にとって、業界の体質の違いによって見積書の記載方法が異なる点も、問題の一つだったが、「引合粗利管理」機能よって見積書をはじめとする書類テンプレートの統一化を図れれば、こうした混乱もなくなる。
紙やファックスなど、アナログなやりとりが多かった現場をペーパーレス化
半日がかりの請求書作成業務をボタン一つで
さらに「受発注」機能の導入は、大きな変革につながった。ANDPAD導入以前は、年間300件にも及ぶ工事の発注書の書類作成準備から請求書発送までを、一人の経理担当者が一手に引き受けていた。作業時間は、半日に及ぶことも。これでは、本来の経理業務に支障が出てしまう。「受発注」機能を活用すれば、システム上にインポートされた見積書や発注書を確認してボタン一つで、請求書発送作業が終了。また、同システムは、JIIMA「電子取引ソフト法的要件認証」を取得し、先の法改正(電子帳簿保存法第7条に定める法的システム要件)にも対応していることで、法令遵守のもとペーパーレス化が図れるだけでなく、収入印紙も不要。時間・手間だけでなくコストも大幅削減することができる。
バックオフィスの業務課題もANDPADの導入で解決
情報管理が財産を守ることに
「せっかく導入するならば、全てを一元管理したい。それをやっていくことがお客様の財産を守っていくことだと考えています」(永田社長)
ひと昔前は、案件や顧客ごとに紙の書類をファイリングして管理していたことが、今はシステム上で誰でも、いつでも、どこにいても情報を確認し、管理し、見守ることができる。それが住む家そのものだけでなく、お客様の家族、財産を守ることにつながると、永田社長は考えている。今後は、太陽光関連工事など、多岐にわたるリフォーム以外の事業についても書類テンプレートをカスタマイズしたり、受発注をデジタルで対応してもらう協力会社を増やすなど、社員がANDPADをフル活用できる環境を整備していくことが目標だ。
※本記事は2023年7月17日発行「リフォーム産業新聞」において掲載された記事の転載となります。