※本記事は2020年8月発売のハウジングトリビューン(創樹社)別冊内における「働き方改革成功のポイント」という特集において、ANDPAD導入企業である株式会社納得住宅工房様へのインタビュー記事の転載となります
効率性の向上で生まれた余裕を顧客満足度の向上へ還元
静岡県内に6拠点を構え、年間130〜140棟の注文住宅を供給する納得住宅工房では、3年ほど前から現場管理の業務改善に踏み切った。
同社には、常時8〜9名の現場監督が在籍しており、1人当たり年間で18棟の着工と完工を目標にしている。以前からこの目標はなんとか達成できていたが、現場監督の負荷が大きすぎるという問題があった。現場監督の負荷増大に伴い、クレームが増加する懸念もあり、業務改善にメスを入れるべき時期を迎えていたのだ。
同社の杉山勝哉常務取締役は、「私自身も現場監督として現場で仕事をこなしていましたが、何らかの手を打つ必要性を痛感していました」と当時を振り返る。杉山氏は、当時から個人的に協力事業者との電話やFAXでのやり取りから、メールを活用した手法へと移行するための取り組みを進めていた。ただし、メールだけの対応では限界がある。その時に出会ったのが、ANDPADだった。
事前の情報共有が重要、残業時間も減少
杉山氏によると、ANDPAD以外の施工管理アプリの導入も検討したが、チャット機能の有無やクラウドに保存する写真の容量制限の問題などを考慮し、ANDPADの導入を決めたという。また、ANDPADを導入することで、杉山氏がメールなどを活用しながら個人的に行っていた取り組みをより進化させることができるという確信もあった。
ANDPADの導入に当たっては、まず5カ月前に業者会で協力事業者に導入方針を発表。その時点でスマートフォンの利用率は約7割。残り3割の多くは個人事業主の大工であり、高齢化も進んでいた。そこで、携帯電話会社に事前に相談に行き、お勧めプランとスマートフォンの説明を受けて、その情報を丁寧に伝えたという。「上から言うのではなく、できるだけ同じ目線で話をすることを心掛けました」(杉山氏)。
こうした姿勢が奏功し、ほぼ全ての協力事業者がスマートフォンに切り替え、今では150〜180社はある協力事業者のANDPAD利用率は、ほぼ100%。電話やFAXでのやり取りも大幅に減ったという状況だ。
ANDPADを導入したことで、現場監督にも余裕が生まれた。チャット機能や資料共有機能によって、現場に行く必要が少なくなり、1現場当たりの平均的な現場訪問回数は32回から25回へと減ったそうだ。杉山氏によると、着工前の段階から協力事業者に情報を提供していくことで、着工後のやり取りをさらに少なくすることが可能で、現場訪問回数もまだまだ少なくできる可能性があるという。
ANDPADの導入で夕方に現場から帰社し、それから発注業務や報告書作成といった現場監督の日常は大きく変わり、残業時間も月平均で3割程度少なくなった。
施工基準書で現場の迷いも解消、現場監督と施主の交流を強化
同社では、ANDPADの導入と同じ時期に、施工基準書の策定にも着手。施工上のルールを明確化することで、現場での迷いを解消しようとした。
完成した基準書はANDPADで共有しており、協力業者が施工段階で迷っても、基準書を確認すれば、多くの問題は解決できる。その分だけ現場監督の電話が鳴る回数も減っていく。
また、経験が浅い現場監督であっても、ベテランと同じレベルの施工管理を行うことが可能になった。
「人手不足が深刻化するなかで、個人の技能ばかりに頼るのではなく、仕組みやシステムで品質を担保することが大事になってきています」(杉山氏)。
同社では、現場監督に生まれた余裕を最終的に顧客に還元することを目指している。ANDPADは、施主報告機能も備えているが、同社の現場監督はこの機能を使い、施主とのコミュニケーションを行う。
また、今年7月から施主との打ち合わせの段階で、設計担当者だけでなく現場監督も同席するようにした。これによって、現場監督が施主の意図やニーズを理解しやすくなる。結果として、施工品質の面でも施主の想いを忠実に具現化できるというわけだ。
例えば、施主の想い入れが特に強い部分をより丁寧に施工するよう心掛けることで、完成後の満足度向上へとつながる。
同社では、紹介受注を大事にしていることもあり、こうした完成後の満足度向上が、ひいては受注機会の拡大を促していくことになりそうだ。
※8月発売「ハウジングトリビューン」(創樹社)別冊より